顎・口腔の外傷
上顎骨骨折 fracture of the maxilla
 分類 
歯槽突起骨折
前歯部に多くみられ、しばしば歯の破折・脱臼・脱落を伴う。歯肉・口唇の損傷を伴うことが多い。
骨体部横骨折
骨折線の方向が左右方向に走るもので、骨折線の位置によってLe Fort分類が行われる。
Le Fort分類
 別名骨折線臨床上の特徴
I型horizontal
type
梨状口の下部から両側性に犬歯窩を経て上顎結節に及ぶ最も頻度が高い。上顎の歯槽突起・口蓋骨が一塊として可動性を示し、患者は義歯を入れているような感じと訴える(floating maxilla)
II型pyramidal
type
前頭鼻骨縫合から両側性に上顎骨と前頭骨・涙骨・篩骨との骨縫合を経て眼窩下壁から下眼窩裂に入り、頬骨上顎縫合を通り、上顎骨側壁・翼状板を経て、翼状上顎窩に至る上顎骨骨体の大部分が頭蓋から分離し可動性となるが、一般に症状は出にくい
III型頬骨前頭縫合から両側性に上顎骨前頭縫合・眼窩内を経て、下眼窩裂・頬骨側頭縫合を通り、上顎後壁を水平に走る(翼状突起の骨折も合併)最もひどいタイプ。患者の顔は間延びし、Donky face様顔貌と形容される。失明や眼球破裂、脳脊髄液の流出がみられる可能性がある
上顎骨骨折
骨体部縦骨折
歯槽突起or上顎骨に上下方向に骨折線が走るもので、正中部に多く、切歯の歯槽窩・正中縫合・口蓋正中縫合に亀裂を生じ、片側性のLe Fort型の骨折を合併することが多い。骨折部の歯と歯の離開、骨折片の転位による咬合異常がみられる。
症状顔面の変形(顔面が間延びしてDonky faceとよばれる)、外傷性腫脹、疼痛、咬合不全、開口障害、開咬・咬合面のズレ、顔面・口腔・鼻などからの出血、呼吸困難、鞍鼻、眼窩周囲の皮下出血etc.
診断単純X線撮影(前方単純X線、側方単純X線の他、パノラマ、ウォータース撮影、ベルチコ、軸位頬骨弓撮影etc.)、CT撮影(軸位撮影、3次元再構成画像)
治療救急処置として、創面の消毒・止血、呼吸困難に対する処置・気道の確保、創面の閉鎖を行った上で、骨折片の整復、骨折片の固定(顎間固定、マイクロプレート等による固定etc.)、後処置(顎運動機能訓練を含む)を実施することになる。上顎骨骨折においては骨折自体を治すことはもとより、上下顎咬合関係の回復を完全に行えないと、患者の将来のQOLが著しく低下してしまうため、骨折片の固定が他の骨折に比べて重要となる。
下顎骨骨折 fracture of the mandible
 疫学 外力を受ける頻度が高いこと、関節部などで介達骨折が生じることがあること、病的骨折を引き起こす病変(嚢胞、腫瘍など)の発生率が高いことなどから、上顎骨骨折よりも頻度は高い。
好発部位としては、オトガイ部が最も多く、下顎骨骨折の約半数を占めている。次いで下顎角部、関節突起、大臼歯部、歯槽突起部の順になっている。
症状顔面の変形、外傷性腫脹、疼痛、咬合不全、開口障害、開咬・咬合面のズレ、顔面・口腔などからの出血、歯の損傷、呼吸困難etc.
診断単純X線撮影で骨折の診断が行われるが、顎関節突起部骨折では単純X線撮影だけでは診断が難しい場合があり、特殊撮影(シェーラー法)、眼窩関節方向撮影、断層撮影などが必要となる場合もある。
治療基本的に上顎骨骨折の場合と同じ。
歯・歯周組織疾患
齲蝕 dental caries
 概念 いわゆる「虫歯」。歯の無機質(硬組織)の脱灰と有機質の溶解が起こり、歯の表面から歯質が崩壊して歯に穴(齲窩)が開いてくる。齲蝕には自然治癒は起こらず、いったんできた齲窩は治癒されない限り次第に大きくなる。全疾患の中で、罹患率の最も高い疾患である
分類
【齲蝕第1度(C1)】 エナメル質のみ破壊されたもの。無症状
【齲蝕第2度(C2)】 破壊が象牙質に及ぶ。冷刺激により歯痛を来す
【齲蝕第3度(C3)】 歯髄or歯髄腔にまで波及。以下の病態のために持続性歯痛を来す
   歯髄炎(急性化膿性炎症)を起こした後、歯髄壊死に陥り、最終的に歯根膜炎(根尖性歯周炎)に至るという臨床経過をたどる。歯髄炎が、歯髄の浮腫により歯髄の内圧が上昇し、三叉神経が刺激されるために主として夜間性の疼痛をきたすのに対して、歯根膜炎は歯根膜の浮腫による病態であるため、"歯が浮く"ような感じと硬いものを噛んだ際の疼痛が主訴となる。この歯髄炎と歯根膜炎が歯痛の2大原因であり、救急診療において両者の鑑別が問題となる場合がある。
歯痛の2大原因〜歯髄炎と歯根膜炎〜の鑑別
 痛みの種類寒冷反応関連痛咬合痛打診痛リンパ節腫脹歯の浮動感患歯の明示抗菌剤
歯髄炎刺痛、夜間増強不可能無効
歯根膜炎鈍痛、持続性可能有効
【齲蝕第4度(C4)】 歯冠部は消失し、歯根部のみが残存(残根)
齲蝕分類
 合併症 感染性心内膜炎や老人の嚥下性肺炎の原因となりうる
治療
痛みと感染に対する治療
   感染に対しては、細菌感染に陥った歯質の完全な除去を行う。歯痛に対しては、脱灰エナメル質・感染象牙質を削除して、齲窩にカルボール系消毒剤等を鎮静・鎮痛目的で貼付する。その後、修復治療へと進む
歯質の修復治療
   齲窩が比較的小さいものに対しては、窩洞形成と消毒の後、填塞(レジン充填、セメント充填、アマルガム充填など)を行う。歯質の大きな崩壊に対しては、削除部分に支台を築造した後、被覆冠、前装冠・ジャケット冠などが選択・実施される
歯髄炎に対する治療
   歯内療法を行う。鎮痛・鎮静後、局麻下にて歯髄の完全摘出、歯髄・根管腔内の感染有機質や壊死組織の掻爬・完全除去を行い、根管を消毒する。その後、歯髄・根管腔を充填・閉鎖する。その上で、前述の修復治療を行う
歯根膜炎に対する治療
   鎮痛・消炎・薬物療法に続いて、保存療法として歯内療法を実施、さらに充填、歯冠修復を行う。保存的治療が無効の時は急性炎が消退した後に、歯根尖切除術などの外科療法を行うこともある
歯周病 periodontal disease
 概念 辺縁歯肉の炎症が進行して、歯槽骨に病変が波及したもの(辺縁性歯周炎)
疫学青年期以降に増加。男性に比べて女性に多い
原因口腔内細菌、歯石、食渣、不適合充填物、補綴物、口呼吸、歯列不正、栄養障害(糖尿病・ビタミン欠乏)、外傷性咬合etc.
病理歯周組織の慢性炎症所見、歯槽骨の辺縁からの吸収、歯面と辺縁歯肉との間隙の拡大⇒盲嚢(歯周ポケット)の形成、盲嚢からの排膿or出血etc.
症状初期・中期は無症状であるが、進行すると歯肉出血、口臭、歯の動揺、咀嚼時歯痛、歯肉の退行、歯根露出、知覚過敏などがみられる
治療初期は歯石の除去、盲嚢の掻爬。進行期は歯肉の切除、歯肉皮弁、骨移植、連続固定。晩期には抜歯
予防歯垢の清掃、歯石の除去、咬合の調整が重要
口腔粘膜疾患
口内炎 gingivostomatitis
   局所的or全身的原因により惹起された口腔粘膜の炎症の総称。口腔粘膜とは、口唇粘膜・頬粘膜・口蓋粘膜・舌粘膜・歯肉粘膜・口底粘膜の総称であり、いずれも扁平上皮でできている。症状から以下の4つに分類される。
 カタル性 
口内炎
【原因】食物・アルコール・タバコ・放射線などによる刺激などの局所的原因の他、感冒・インフルエンザ・扁桃炎・気管支炎・胃腸障害・内分泌異常などの全身性病変の際にも生じることがある。また、薬剤性に発生する場合もある
【症状】口腔粘膜の腫脹・発赤、びらん・潰瘍形成、味覚の異常、舌苔、口臭、流涎、(発熱性疾患では)口唇・口腔の著明な乾燥etc.
【治療】含嗽、口唇・口腔乾燥に対するグリセリン塗布、口腔汚染源の除去、原疾患の治療etc.
潰瘍性
口内炎
【原因】口腔内常在菌である紡錘菌・スピロヘータなどの嫌気性菌の感染が原因。全身抵抗力の低下、口腔の感染防御能の低下などが背景にある。急性壊死性潰瘍性歯肉炎、カタル性口内炎などに引き続いて発症することもある
【症状】前駆症状として全身違和感、発熱、頭痛。口腔粘膜灼熱感、口腔内潰瘍、自発痛、刺激痛、流涎、口臭、顎下リンパ節の有痛性腫脹、発熱etc.
【治療】口腔内の清掃、消毒薬の塗布・噴霧吸入、抗生物質の投与etc.
壊疽性
口内炎
【疫学】強度の全身衰弱(麻疹、肺炎、無カタラーゼ血症、白血病など)のある小児にみられる
【原因】紡錘菌、スピロヘータ、レンサ球菌などの混合感染
【症状】歯肉炎、頬部の腫脹・硬結・壊疽性崩壊、腐敗臭、皮膚破壊、骨壊死、高熱etc.
【治療】補液、ビタミン剤・抗生物質・解熱剤などの投与、口腔内の清掃・消毒、実質欠損に対する形成手術etc.
 アフタ性 
口内炎
【概念】境界明瞭な有痛性の小潰瘍。赤い丘疹や小水疱が先行することが多い。組織学的には線維素性炎
【原因】全身的変調の部分症状
【症状】円形〜楕円形の小潰瘍、強い疼痛
【治療】抗生物質・ステロイド含有パスタ・レスタミン軟膏の塗布、口腔内の清掃
黒毛舌 black hairy tongue
   糸状乳頭の角質増生のため乳頭が著しく延長し、これに食物残渣、微生物、タバコの色素などが沈着して、黒い毛が生えたような外観を呈する。抗生剤・ステロイド・抗癌剤の投与などにより、口腔内の常在菌叢が変化することが誘因となる。
口腔カンジダ症 oral candidiasis
   易感染性宿主に起こるCandida albicans による感染症。口腔内菌交代現象の結果、カンジダが異常増殖し、口腔粘膜に白色の被苔が生じて、粘膜はザラザラした感じになる。被苔は容易に剥がれ、びらんを生じると飲食物の刺激に対して過敏になる。慢性に移行すると偽膜は剥離しにくくなり、白色の被苔は肥厚し、一見白板症のようにみえることもある。
白板症 leukoplakia
   粘膜の過角化に基づく限局性の白斑。口腔粘膜の白斑の大部分は症候性白板症であり、歯牙の鋭縁・義歯・タバコなどの刺激によって生じた良性病変である。しかし、本症の10%程度で悪性化が認められる(白板症の一部は前癌病変)。悪性化を疑わせる特徴としては、白斑の表面が疣状ないし乳頭状で、表面に潰瘍を生じるものである。
歯肉肥大 gingival hypertrophy
   抗痙攣薬(フェニトインetc.)、免疫抑制剤(シクロスポリンetc.)、Ca拮抗薬(ニフェジピンetc.)などの薬剤の長期連用により起こる。原因薬剤の休薬により改善が認められる場合もあれば、歯肉切除術が必要となる場合もある。また、口腔内衛生環境も本症の発症と関わっていることから、歯の十分な清掃も本症を予防する上で重要である。
歯肉萎縮 gingival atrophy
   俗に言う「歯槽膿漏」。歯肉炎・歯周病などによって、炎症が惹起され、組織破壊が起こったものである。糖尿病患者では重症化しやすいと言われている。
顎・口腔の嚢胞
☆単純X線で写らない嚢胞=粘液嚢胞ガマ腫
粘液嚢胞 mucoele
   口腔粘膜下に散在する小唾液腺の導管の閉塞による貯留嚢胞で、口唇・頬粘膜などに膨隆が形成される。無痛性ではあるが、増大傾向や再発傾向がある。治療は嚢胞摘出により行われるが、取り残すと再発するため慎重に行う必要がある。
ガマ腫 ranula
   舌下腺・顎下腺の導管の閉塞or狭窄による貯留嚢胞で、口腔底(舌下部)に膨隆が認められる。内容物は唾液で、無色透明な粘液である。治療は粘液嚢胞と同様に嚢胞摘出により行われるが、取り残すと再発するため慎重に行う必要がある。
顎・口腔の腫瘍
エナメル上皮腫 ameloblastoma
 概念 歯胚上皮(=エナメル上皮)に由来する良性腫瘍
疫学歯原性腫瘍で最も多く、その約40%を占める。下顎(特に大臼歯部下顎枝)に好発する
症状初期は無症状。進行するにつれて、顎骨の膨隆が認められるようになる
検査X線検査→多胞性or単胞性の円形・類円形の透化像
治療原則として腫瘍の完全摘出を行い、必要に応じて自家骨や人工骨などによる顎骨再建術を行う 
口腔癌 
   顎口腔領域の非歯原性の上皮性悪性腫瘍をさす。口腔粘膜が発生母地であるため、組織学的には扁平上皮癌がほとんどで、粘膜の存在する歯肉・舌・口唇・頬粘膜・口蓋粘膜・口底のすべてから癌は発生しうるが、日本では舌癌と歯肉癌が多く、他の癌の発生頻度は低くなっている。口腔癌の原因としては、物理的・化学的刺激、ウイルス、放射線、遺伝、免疫不全などが考えられている。
   症状としては、有痛性or無痛性の腫瘤、潰瘍(特に易出血性で難治性のもの)、潰瘍面の接触痛、下口唇の麻痺、舌運動障害、嚥下障害、開口障害、歯痛、歯の動揺・弛緩、三叉神経痛様の疼痛などがあげられる。口腔癌は所属リンパ節への転移を起こしやすく、リンパ節腫大を主訴として来院してくることもある。
   治療は、手術、放射線照射、抗癌剤による化学療法、免疫療法を組み合わせた形(集学的治療)で行われる場合が多い。
エプーリス epulis
   歯肉に生じる良性の有茎性の腫瘤、炎症性の組織増殖、および良性の腫瘍を含めたものの総称。結合組織の増殖が本疾患の本態である。妊娠期の女性をはじめ、20〜30歳代の女性に起こることが多い。
唾液腺疾患
唾石症 sialolithiasis
 概念 腺体内or排出管内の炎症産物や異物を誘因とする石灰沈着物のこと(主成分はリン酸Ca)
疫学中年以降の男性に好発するが、漿液腺である耳下腺に起こることはまれで、粘液腺である舌下腺or混合腺である顎下腺に多く発生する
症状摂食時の唾液流出障害に伴う突発性腫脹、唾仙痛などで、食後30分程度でこれらの症状は自然消退する
診断X線にて小円〜長円形の石灰化物が確認されるが、多くの場合触診にて硬固物として触れることができる
治療導管の出口に近い小形の唾石など自然排泄を期待できるものに関しては経過観察とするが、通常は摘出術を施行する。腺体外導管の唾石に対しては唾石の単純な摘出のみであるが、腺体内の唾石に対しては腺体とともに摘出する場合が多い
口腔乾燥症 xerostomia
   唾液の分泌不全による。Sjo¨gren症候群の1症状として出現したり、放射線治療後の合併症として起こったりすることが多い。唾液のもつ多彩な作用が著しく低下するため、舌乳頭の萎縮、味覚障害、粘膜平坦化、多発齲歯、咀嚼・嚥下・発語の障害などの症状が認められる。
唾液腺の炎症
唾液腺導管炎
【原因】剥離性異物、唾液塞栓、膿栓唾石症に伴う感染などが引き金となって、口腔内常在菌が排泄管から逆行性に感染を起こす
【症状】導管開口部の発赤・腫脹・排膿、自発痛、圧痛、特に摂食時の疼痛+排唾後の軽快etc.
【診断】導管開口部圧迫による膿汁分泌、唾液腺造影による導管の不規則拡張
【治療】抗生物質・NSAIDsの全身投与、導管の洗浄消毒
 唾 


 急性唾液腺炎 
【疫学】耳下腺、顎下腺に好発
【原因】開口部・導管からの感染、唾石などの異物、隣接組織からの炎症の波及、腹部消化管などの大きな手術後、全身抵抗力の減弱、脱水、唾液分泌低下などが原因。起炎菌はグラム陽性球菌によるものが大多数
【症状】急激な唾液腺の有痛性腫脹・発赤・熱感、唾液分泌異常、開口障害、全身倦怠感、発熱、耳痛、蜂窩織炎etc.
【治療】全身的な抗生物質投与、局所冷庵、経導管洗浄、(膿瘍形成時は)切開・排膿
慢性唾液腺炎
【疫学】顎下腺に頻度が高く、耳下腺にもみられる
【原因】急性唾液腺炎からの移行、唾石症に併発
【症状】唾液腺の持続性腫脹、慢性導管炎の併発、軽度の疼痛、唾液腺部の不快感、唾液腺の硬化etc.
【治療】原因の除去、抗生物質投与、場合によっては唾液腺摘出などの外科処置を行うこともある
 急性流行性耳下腺炎 
mumps
【疫学】小児に好発。季節的には春に多い
【原因】接触感染or唾液による飛沫感染
【症状】2〜3週間の潜伏期の後、唾液腺(主に耳下腺)の腫脹を呈する。腫脹に先立って、軽度発熱、全身倦怠感、頭痛、下顎後方の圧痛などの前駆症状を呈する。耳下腺部の自発痛・圧痛を伴い、特に顎運動、唾液分泌時に疼痛が激しい。腫脹は3〜4日で最高に達し、片側から両側性に拡大する。発熱、倦怠感など全身症状はあるが、一般に予後は良好で、1〜2週間後解熱、腫脹は消退する
合併症としては、主に成人患者で起こる急性睾丸炎、卵巣炎、膵炎、脳脊髄炎、涙腺炎、甲状腺炎などがある
【診断】抗ムンプスウイルス抗体↑、発病初期の血中アミラーゼ↑
【治療】局所冷庵、抗ウイルス剤投与、γ^グロブリン製剤の投与
慢性硬化性唾液腺炎
【概念】唾液腺の両側性硬結を呈する疾患。本態は間質性炎症であるが、1年〜数年の経過で一見腫瘍塊様を呈するため、Ku¨ttner腫瘍ともよばれる
【疫学】顎下腺に好発。青年男子に多い
【症状】唾液腺の両側性無痛性の腫大・硬化
【診断】67Gaシンチにて高度の取り込み
【治療】有効な治療法はない。顎運動障害などを引き起こす場合には、摘出を行うこともある
Sjo¨gren症候群
【概念】外分泌腺に対する自己免疫疾患で、更年期の女性に多く発生する
【症状】腺症状として乾燥性角結膜炎口腔乾燥があり、これらは診断基準に含まれている。また、皮疹(環状紅斑・高γグロブリン血症性紫斑病)、呼吸器症状、腎障害(間質性腎炎・遠位尿細管性アシドーシス)、リンパ病変(B細胞性悪性リンパ腫の合併が多い)、関節痛・関節炎Raynaud's現象などの腺外症状が合併してみられることが多い
【診断】涙液分泌検査(ローズベンガル試験・シャーマー試験)、唾液分泌検査(ガム試験・サクソン試験)、唾液腺造影におけるapple tree sign、抗SS-A抗体/抗SS-B抗体の検出など
【治療】口腔乾燥には対症的に人工唾液。その他、ステロイド、NSAIDs、去痰剤、ビタミン剤(ビタミンB群)、唾液腺ホルモン剤(パロチン)などの投与
Mikulicz病涙腺、唾液腺の同時両側性腫脹で特有の顔貌を呈し、涙腺、唾液分泌減少、口腔乾燥を来す原因不明疾患。Sjo¨gren症候群と同種疾患とされるが、男性例も多い。ステロイド内服が著効する
Heerfordt症候群ブドウ膜耳下腺熱ともいわれ、サルコイドーシスの一型で、ブドウ膜炎、耳下腺腫脹、発熱を特徴とする疾患
小児反復性耳下腺炎反復性耳下腺腫脹を来す疾患で、腺が破壊され点状造影像を呈する。男女比は2:1で、好発年齢は4〜10歳。緑色レンサ球菌など口腔内常在菌による末梢導管を中心とした慢性炎症で、その急性増悪によって反復腫脹する。急性増悪期に起炎菌に感受性のある抗生物質を投与し、腺破壊をできるだけ作らないようにするとともに、唾液分泌を促進させ、自浄するように図る(導管内洗浄作用)。ワクチン療法も試みる
唾液腺の上皮性腫瘍


 多形性腺腫 いわゆる"混合腫瘍"で、唾液腺腫瘍の中で最も頻度が高い。良性ではあるが、時々再発がみられる。組織像を見ると、上皮性の成分と類粘液様・粘液様・軟骨細胞様の成分が混在して認められる。臨床像は、単発・実質性・無痛性の腫瘤をなす。治療は腫瘍の完全摘出により行われるが、その際には腫瘍被膜を残さぬよう注意しなければならない。
単純性腺腫上皮系の腫瘍細胞が、腺組織様の規則的パターンを示すもの。良性で、再発は少ない。腺様リンパ腫(ワルチン腫瘍)や好酸性腺腫(オンコサイトーマ)などがここに含まれる。腫瘍の全摘出により予後は良好である。
粘表皮腫扁平上皮・粘液分泌細胞および中間型の細胞の存在を特徴とする腫瘍。低悪性のタイプから高悪性で予後不良のタイプまでさまざまである。局所浸潤性がある上に、時に転移も起こす。治療としては多形性腺腫に準じた腫瘍の完全摘出が行われる。
腺房細胞腫唾液腺の漿液性分泌細胞に似た円形or多角形の腫瘍細胞が、層状〜房状に配列する。良性・再発性のものから軽度悪性のものまである。ほぼ全年齢層に見られ、女性に多い。


腺様嚢胞癌特徴的な蓮根の切り口様〜篩状の組織所見を示す、浸潤性で悪性の腫瘍。小唾液腺・顎下腺に好発し、50歳前後の女性に多い。局所浸潤性で神経鞘に沿って発育する傾向を有する。
腺癌管腔様〜乳頭様腺構造をなす悪性の上皮性腫瘍。再発・遠隔転移が多く、予後不良である。
類表皮癌角質を形成する細胞or細胞間橋をもつ細胞からなり、扁平上皮癌とほぼ同義に用いられている。発生率は低い。
未分化癌分化度が非常に低くて、局所浸潤性・遠隔転移性に富む、高悪性度で予後不良の上皮性腫瘍。
 悪性混合腫瘍 多形性腺腫に発生した癌で、きわめて予後不良 である。60歳代にピークがあり、女性にやや多い。耳下腺に多く発生し、術後顔面神経麻痺を合併しやすい。
顎関節の疾患
顎関節の脱臼 dislocation of the temporomandibular joint
   下顎頭が関節窩の外に出て、元の位置に復帰しえない状態で、下顎頭の移動の方向によって前方脱臼、後方脱臼、側方脱臼などがある。脱臼を起こす誘因としては、大きなあくび、歯科治療時や経口挿管時の過度の開口、外傷(下顎頚骨折etc.)などがあげられ、患者側の素因としては、関節窩の浅いこと、下顎頭の平坦化、関節包・靭帯の弛緩などがあげられる。
   脱臼の方向として最も一般的に見られるのは前方脱臼である。両側性の前方脱臼の場合、下顎骨は全体として前下方に移動し、談話・咀嚼・嚥下・閉口に障害をきたす。顔全体が間延びしたような印象を受け、関節部の疼痛を訴える場合が多い。治療は、新生例に対してはヒポクラテス法やボルフェルス法などの徒手整復が、陳旧例(習慣性脱臼)に対しては種々の手術的処置が行われる。
顎関節強直症 ankylosis of the temporomandibular joint
   下顎骨骨折時の変形治癒などに続発して、下顎頭・関節窩に線維性癒着をきたし、開口不能になる病態で、咀嚼・談話障害を伴う。小児期に発現すれば、下顎骨発育不全をきたし、鳥貌とよばれる特徴的な顔貌を呈する(小下顎症)。
顎関節症 arthrosis of the temporomandibular joint
 概念 顎関節や咀嚼筋の疼痛関節(雑)音開口障害ないし顎運動異常を主要徴候とする慢性疾患群の総称 
分類・I 型:咀嚼筋障害(開口筋or閉口筋の障害)
・II型:関節包・靭帯障害(慢性外傷性病変による)
・III型:関節円板障害(最も多い、復位を伴うものと伴わないものとに分かれる)
・IV型:変形性関節症(退行性病変が主、いわゆるOA)
・V型:I 〜IV型に該当しないもの
口腔顎顔面領域の神経疾患
疼痛、知覚麻痺を主体とするもの
三叉
神経痛
【分類】真性(本態性)のものと仮性(症候性)のものとに分けられる。
【疫学】真性のものは、中年以上に発症し、女性に多く、通常緩徐進行性である
【症状】真性とされるものは、1〜2秒の激痛発作が一側の三叉神経の分枝領域(第2枝・第3枝が普通)に生じ、不快感が数秒続いて忽然と症状が消失することが特徴的である。鼻唇溝口や口腔内粘膜に疼痛誘発帯が存在し、このため、洗面、歯ブラシの使用、会話、咀嚼などによって疼痛発作が誘発され、重症例では洗面、ひげ剃り、摂食などが困難になることがある。発作間欠期には、他覚的な異常所見は認められない。また、Valleixの3圧痛点(眼窩上孔、眼窩下孔、オトガイ孔)がみられる
仮性のものは帯状ヘルペス後神経痛(第1枝に好発)、動脈瘤、腫瘍による圧迫などがあり、一般に疼痛は非発作性で、その持続が長い
【診断】@疼痛は発作性で激痛が数秒から数分続く。無痛期には全く痛みがない、A疼痛発作は刺激で誘発される、B疼痛は三叉神経の支配領域に限局する、C疼痛は顔面の正中より片側に限局され他側へ及ぶことはない、D皮膚の触覚や痛覚の低下や脱出はない
【治療】薬物による対症療法としては,carbamazepineやphenytoinなどの抗痙攣薬が有効である。その他、神経ブロックや神経捻除術なども行われる。近年、その病態として神経血管説が提唱され、三叉神経からその圧迫血管を離す手術(Jannetta手術)がとられ、かなり高い手術成果があげられている
顔面痛三叉神経またはこれに関係をもつ感覚路や中枢の刺激性病変による顔面の疼痛。病態不明のものとして非定型顔面痛、片頭痛性顔面痛、翼口蓋神経痛がある。群発頭痛、Tolosa-Hunt症候群、Raeder傍三叉神経症候群なども顔面痛を呈することがあるが、心因性の場合も少なくない
顔面
 感覚異常 
三叉神経の伝導路、中継核、中枢の病変によって顔面の感覚異常をきたすことがある。脊髄(延髄)空洞症やWallenberg症候群では三叉神経脊髄路やその核が病変に含まれ、痛覚や温度覚が障害されるが、その他の感覚要素が保たれる(解離性感覚障害)。視床病変では異常感覚過敏〜不快痛(視床痛)をきたしやすい
舌咽
神経痛
【症状】咽頭を中心として激痛発作を生じ、時に耳部、上顎部、頸部などに放散する。嚥下や舌の運動によって疼痛発作が誘発されやすい。三叉神経痛とは疼痛の発作領域が異なるが、疼痛の性質は類似する
【疫学】頻度は少なく1/10〜数十分の一とされる。女性に比べて男性に多く、30〜40歳代に好発する
【分類】症候性のものと本態性のものとに分類される。症候性のものは持続性の疼痛をきたす傾向が強い
【治療】本態性のものは三叉神経痛と同様にカルバマゼピンやフェニトインなどの抗痙攣薬が有効
 舌咽神経 
麻痺
ほとんどの症例で迷走神経の麻痺を伴っており、また副神経や舌下神経とともに高位第IV脳神経麻痺の臨床像をとるか、Guillain-Barre´症候群などにみられるような両側性咽喉麻痺の型をとることが多い
味覚障害味覚障害の原因は非常に多彩で、局所的には舌炎、老人性変化、放射線障害、Bell麻痺、聴神経腫瘍などがあり、全身的には貧血、肝不全、糖尿病、低亜鉛血症、中枢神経障害、薬物性、心因性のものなどがある
運動麻痺を主体とするもの
 顔面神経 
麻痺
【分類】末梢性麻痺と中枢性麻痺に分けられる。特発性末梢性顔面神経麻痺をBell麻痺とよぶ
【原因】末梢性麻痺の病因として、外傷、新生物、感染症(中耳炎、乳様突起炎、脳炎、髄膜炎、骨髄炎などに続発するもののほか、帯状疱疹、単純ヘルペス、ポリオ、ハンセン病などの直接的感染)、肉芽腫(サルコイドーシスなど)、血管障害(多発性動脈炎、糖尿病など)、脱髄性(Guillain-Barre´症候群)などが知られるが、日常もっとも多く経験するのは病態不明のもの、すなわちBell麻痺である
中枢性麻痺(核上性)は脳血管障害などでみられ、前頭筋が侵されないのが特徴的である
【症状】Bell麻痺はしばしば一側の顔面に寒冷刺激が加わった後に発症する。Bell麻痺は男女、性別を問わず、また特別の発症季節もなく発症する。急性の一側性の全表情筋の麻痺を主徴とし、これに同側の味覚低下、涙腺分泌障害、アブミ骨筋麻痺による聴力過敏を伴うことがある
【予後】Bell麻痺の予後は比較的良好で、50〜80%の症例はほぼ完治するが、時に再発する
 舌下神経 
麻痺
【症状】一側の舌下神経麻痺が生じると、同側の舌が麻痺・萎縮し、口外へ舌を出させると患側へ曲がる。自覚症状は乏しく、舌性構音障害をきたすこともない
【原因】一側性の単麻痺は延髄内側症候群、脊髄(延髄)空洞症、舌下神経鞘腫などに発現するがまれで、多くは腫瘍性病変による下位の他の脳神経障害を伴ったり、あるいは両側性障害として、運動ニューロン疾患、Joseph病、ポリオ、Guillain-Barre´症候群などに発症する
 迷走神経 
麻痺
【症状】咽頭の口蓋帆挙筋が一側性に麻痺するとカーテン徴候を認める。喉頭筋は反回神経、下喉頭神経を経て支配を受け、輪状甲状筋以外のすべての筋が迷走神経の支配下にある。一側の迷走神経(反回神経)が麻痺するとその側の声帯麻痺をきたし、嗄声を生ずる。完全麻痺では、声帯は遺体位をとり動かない。迷走神経の両側性完全麻痺は胸腹部の内臓機能障害をきたす
痙攣を主体とするもの
 顔面痙攣 
【症状】一側の顔面神経支配筋に限局した不随意収縮であり、通常は眼瞼に初発し、次第に頬部筋、口輪筋、広頸筋に及ぶが、前頭筋は侵されない。これらの筋の収縮は同期しており、ひどくなると開眼維持が困難となる(痙攣性チック)
【原因】顔面神経起始部の血管による圧迫が原因のことが多い。末梢性顔面神経損傷の治癒後に生じることもある
【治療】頭蓋内神経血管減圧手術など
口腔
 ジスキネジア 
【症状】口唇、舌、下顎の不随意運動を呈するもので、口すぼめ、咀嚼運動、開口、舌の挺出、捻転などである
【原因】特発性(老人)、薬剤性(レボドパ、抗コリン剤、向精神薬)、ジストニア(Meige症候群)の部分症状など
【治療】薬物療法として、抗てんかん薬、向精神薬、脳代謝改善薬などが投与される
口腔顎顔面部の症状を伴う中枢神経系の異常
球麻痺延髄の病変で、IX・X・XIIの各脳神経が核or核下性に両側性に障害され、発語・嚥下・咀嚼ができなくなること。それに対して、皮質延髄路の障害により、同様に発語などが障害されることは仮性球麻痺とよばれる。急性の球麻痺はGuillain-Barre´症候群、ボツリヌス中毒、ジフテリア後などにみられ、慢性の経過をとる疾患にはALS、脊髄(延髄)空洞症、脳幹下部腫瘍、MSなどがある
 Sturge-Weber 
症候群
顔面の広範な血管腫、脳軟膜の血管腫による神経症状、ぶどう膜の血管病変による眼症状を合併する母斑症の一種。血管腫は三叉神経第1枝領域、または顔面全体に及ぶ単純性血管腫である。てんかん、片麻痺、知能障害などの症状を示す
 Gradenigo 
症候群
側頭骨錐体尖炎の際に現れる症候のうち、化膿性中耳炎+外転神経麻痺+患側三叉神経痛を呈するものをいう。中耳の炎症の錐体尖端部への波及により、外転神経が圧迫され、三叉神経が刺激されることが病因である
 Guillain-Barre´ 
症候群
神経症状の中心は、弛緩性の運動麻痺で、深部腱反射は早期より消失する。顔面神経麻痺、嚥下障害、構音障害、深部感覚障害、自律神経症状(不整脈、洞性頻脈、血圧の変動、発汗異常)を伴う場合がある
 ジフテリア後麻痺 ジフテリアに感染した際に起こる多発神経炎で、発病後3〜5日の早期に起こることもあるが、特有なのは第2〜3病週に起こる後麻痺である。患者の10〜20%に何らかの麻痺が起こるが、多いのは軟口蓋麻痺で嚥下困難や誤飲を起こすので注意を要する
 Babinski-Nageotte 
症候群
橋延髄移行部の広範な病変によって起こる症候群。同側の小脳症状と側方突進現象(←索状体障害)、同側のHorner症候群(←網様体障害)、同側の顔面温痛覚鈍麻(←三叉神経脊髄路核障害)、対側頸部以下の温痛覚性知覚鈍麻(←脊髄視床路障害)と、対側の顔面を除く半身麻痺(←錐体路障害)が主症状である
 Horner症候群 縮瞳+眼瞼下垂+眼裂狭小の三主徴候(Homer's triad)に、同側顔面の無汗症などを伴う症候群。交感神経の障害により瞳孔散大筋が麻痺し,瞳孔が縮小する。また、上・下眼瞼の眼板筋の麻痺により眼瞼下垂と眼裂狭小が起こる
 Wallenberg症候群 延髄背外側の病変により、同側顔面の解離性知覚障害(←三叉神経脊髄路核障害)、第IX・X脳神経麻痺、Horner症候群、小脳失調、眼振、および反対側半身の解離性感覚障害を呈する症候群。多くは椎骨動脈の血管障害による
Avellis症候群疑核、孤束核、および脊髄視床路の病変により、迷走神経、副神経の内側枝、および上行性の知覚路の障害を起こして出現する症候群。症状は、@病変と同側の軟口蓋・咽頭・喉頭の麻痺、それによる構音・嚥下障害、咽頭・喉頭の知覚障害、およびA病変と反対側の温・痛覚低下からなる
Garcin症候群一側の脳神経がIからXIIまで広範囲に麻痺を生じ、脳圧亢進症状が認められず、かつ四肢には運動・知覚の障害が全くない症候群。この症候群は頭蓋底部の骨腫瘍によって起こることが多い。上咽頭部、副鼻腔などの悪性腫瘍が頭蓋外から頭蓋底に浸潤した際にもこの症候群が現れる
Foix症候群一側のIII・IV・VIの各脳神経麻痺とV神経の障害を示す症候群(海綿静脈洞症候群)。海綿静脈洞の炎症、血栓、動脈瘤、腫瘍などが原因となる
上眼窩裂症候群上眼窩裂付近の病変によって、III・IV・V1・VIの各脳神経と上眼静脈が障害される。III・IV・VI脳神経麻痺による外眼筋および内眼筋麻痺(→眼筋麻痺)、眼瞼下垂に加えて、V1の知覚麻痺が出現する。結膜浮腫、眼球突出もみられる。自覚症状としては頭痛、眼痛をきたす。原因として、後部副鼻腔炎、腫瘍、外傷、骨膜炎など
頸静脈孔症候群頭蓋底の外傷、圧迫、クモ膜炎、神経腫、サルコイドーシスなどによって一側のIX・X・XI脳神経が頚静脈孔を通るところで障害されるために起こる症候群。上咽頭収縮筋の一側性の麻痺によるカーテン徴候、舌の後ろ1/3の味覚消失、軟口蓋・咽頭・喉頭の半側運動・知覚障害をきたし、そのため嗄声となり、嚥下障害も伴う
その他の神経異常
舌痛症
【概念】他覚的に器質的or機能的異常所見がみられないにもかかわらず、舌の軽度な持続的痛みを訴える病態
【原因】心因との関わりが大きく、舌癌の恐怖、家庭・社会での心理的ストレスなどが心因としてあげられる。また中年の女性に多いため、更年期の自律神経障害との関連も多いと考えられている
【症状】痛みの特徴は表在性、限局性、持続的、軽度の痛みで、自発痛を舌の先端部・舌側縁部に訴える
【診断】口内炎やタバコ刺激、ビタミンB群の不足による舌炎、口腔乾燥症、腫瘍、三叉・舌咽神経痛、心気症、うつ病などとの鑑別が必要
【治療】面接中心の簡易精神療法を主とし、抗不安薬、抗うつ薬、漢方薬を適宜用いる
 帯状疱疹 
【疫学】比較的高齢者に多い
【症状】片側性に神経痛様の疼痛が数日から1週間続き、一定の神経の分布領域に一致して浮腫性の紅斑が出現し、その後数日間に水痘が多発する。水痘は10日程度でびらんとなり、痂皮化して2〜3週で治癒する。水痘が発生してから4〜5日後に全身に水痘に似た水痘がみられることがあり、汎発疹とよばれる。痛みの強い疾患であるが、一般に疼痛は皮疹が治癒する頃には消失する
※顔面神経膝神経領域の帯状疱疹では、水痘は耳介・外耳道などにみられ、片側の顔面神経麻痺、味覚障害、内耳障害がみられ、Ramsey Hunt症候群とよばれる
【治療】重症度により抗ウイルス薬の点滴静注剤、経口剤、外用剤を使い分ける
【予後】皮疹の治癒後も長期にわたって続く痛みを残す場合が高齢者を中心に多くあり、帯状疱疹後神経痛とよばれる
Frey
症候群
耳下腺の手術または外傷後、ある期間おいて食事摂取に伴って同側の耳前部、側頭部、頬部の皮膚に一過性の発汗、紅潮、発赤、異常感などの症状が出現することをいう。耳介側頭神経を経て耳下腺内に入る副交感神経性唾液分泌神経の損傷による変性後、同時に神経支配を失った耳介側頭神経の皮膚汗腺分泌や皮膚血管拡張にかかわる自律神経が再生する過程で、汗腺や血管拡張神経を誤って支配する結果発症すると考えられている
口腔外科疾患と全身疾患
口腔に症状を表す全身疾患
口腔症状疾患 主な全身症状 
粘膜潰瘍顆粒球減少症高熱、顆粒球の減少
粘膜の貧血、出血白血病貧血、発熱、白血球の増殖
粘膜の紫斑、点状or斑状出血特発性血小板減少症(ITP)紫斑、出血、血小板減少
抜歯後出血、血腫血友病関節内出血、凝固因子欠乏
粘膜出血von Willebrand病紫斑、血腫、凝固因子欠乏
反復性の粘膜出血遺伝性出血血管拡張症(Osler病)鼻粘膜出血、皮膚細血管拡張
粘膜紫斑単純性紫斑病紫斑(出血はない)
片側性神経に沿う水疱(V2・V3帯状疱疹神経痛
粘膜の水疱、びらん、潰瘍天疱瘡皮膚の水疱(Nikolsky徴候+)
粘膜の紅斑全身性エリテマトーデス(SLE)関節痛、発熱、リンパ節腫脹
粘膜の再発性アフタベーチェット病皮膚の結節性紅斑、ブドウ膜炎、外陰部潰瘍
舌乳頭の消失、舌背の平滑化Plummer-Vinson症候群鉄欠乏性貧血
肉芽腫性口唇炎、溝状舌Melkerson-Rosenthal症候群顔面神経麻痺
顎骨の変形軟骨形成不全症小人症、O脚
多数歯の埋伏、咬合不全鎖骨・頭蓋異骨症大泉門・小泉門・矢状縫合の開存
顎骨骨髄炎、歯の萌出遅延大理石病広範な骨の脆弱化
歯の変色骨形成不全症小人症、皮膚の斑状出血
歯の欠損、エナメル質減形成ピクノジスオストージス長い長管骨、太鼓バチ様肥大
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