関節リウマチ Rheumatoid Arthritis(RA)
概念
■定義…全身の関節滑膜の慢性持続性・骨破壊性の多発関節炎を特徴とする全身炎症性疾患。関節のみの症状にとどまらず、全身症状やさまざまな臓器病変(関節外症状)の合併を認めることが多い。原因は不明であるが、自己免疫機序が関係していると考えられている。
■頻度…わが国に約70万人の患者がいる(有病率0.5〜1%)とみられている。30〜50歳代での発症が多く、男女比は 1:2〜3 で女性に多い。
病因・発症機序・病理
   病因としては、遺伝的要因と環境要因が考えられており、特にHLA-DR4との相関が注目されている。
   病理組織学的には、関節滑膜組織の炎症と増殖が特徴的である。著明な炎症細胞浸潤がみられる。滑膜下基質結合組織は腫瘍にも似て、増殖性・侵襲性が高く、肉芽組織(パンヌスとよばれる)となって、軟骨や骨を破壊するに至る。炎症が強い時に滲出液が増え、関節腫脹の原因となり、骨・軟骨の破壊は関節の変形につながる。
   滑膜組織中のマクロファージからは、TNF-α・IL-1・IL-6などのサイトカインが産生され、炎症に強く関与している。浸潤形質細胞からはリウマチ因子(RF)が産生される。また、関節滑液中に最も多く遊走してきた好中球は、蛋白分解酵素(MMPなど)や活性酵素を放出することにより、同じく骨・軟骨の破壊に働く。
臨床症状
青字は、診断基準に含まれている事項   
関節症状多発性3関節以上)・対称性持続性6週間以上)・変形性の関節炎
手関節・中手指節(MCP)関節・近位指節間(PIP)関節などの手の関節が最も侵されやすく、初発部位も手の関節が最も多く、約50%を占める。ただし、遠位指節間(DIP)関節が侵されることはRAではまれである。罹患関節の疼痛、腫脹、熱感、可動域制限を訴え、炎症が著明であれば発赤も出現する。また、朝のこわばり、安静後のこわばりもほとんど必発する。進行すると骨破壊が起こり、次第に変形してくる(手指の尺側偏位スワンネック変形ボタン穴変形・オペラグラスハンド・槌状趾などがみられるようになる)。最終的には、骨性強直を起こしたり、支持性を失って、関節としての機能をまったく失うこともある。
脊椎には滑膜が存在しないので、RAにおいて通常障害されることはないが、頸椎には滑膜が存在しており、RAによって神経症状をきたしたり、環軸椎亜脱臼が起こったりする。




全身症状微熱、体重減少、全身倦怠感、易疲労感
皮膚症状皮下結節(リウマトイド結節
血管症状血管炎悪性リウマチとよばれる)
眼症状強膜炎、上強膜炎、虹彩毛様体炎、強膜軟化症、乾燥性角結膜炎(2次性シェーグレン症候群の合併)
肺症状間質性肺炎(肺線維症)(←抗リウマチ薬の副作用)、胸膜炎、肺内リウマトイド結節、Caplan症候群(塵肺症患者へのRA合併)
神経症状多発性単神経炎(←血管炎が原因)、環軸椎亜脱臼による頸髄圧迫症状、手根管症候群、尺骨神経障害(←肘関節炎による)
腎症状薬剤性腎障害(DMARDsによるタンパク尿・ネフロ―ゼ症候群、NSAIDsによる間質性腎障害)
アミロイドーシス2次性アミロイドーシス(RAの5%にみられる。アミロイドAタンパクの沈着によるAAアミロイドーシスで、腎障害・消化管障害をきたす)
合併症Felty症候群(白血球減少+脾腫)
検査所見
末梢血検査・白血球数:正常〜軽度増加(Felty症候群・シェーグレン症候群の合併では減少)
正球性正色素性貧血(←鉄の利用能低下による)
・血小板数:軽度〜中等度の増加
血液生化学検査・肝機能障害(薬剤性肝障害が多い。原発性胆汁性肝硬変症の合併)
・腎機能障害(薬剤性腎障害が多い。2次性アミロイドーシスがみられることも)
炎症反応活動性に応じてCRPや赤沈値が亢進
免疫血清学的検査リウマトイド因子(陽性率80%。RAの活動性と相関)
・IgGリウマトイド因子(免疫複合体で、陽性率30%)
・補体C3・C4・CH50(血清中で正常〜高値)
・抗核抗体(間接蛍光抗体法により陽性率40〜50%)
抗Filaggrin/CCP抗体(感度70〜80%、特異度95%以上)
X線検査関節周囲の骨陰影の斐薄化、関節裂隙の狭小化、軟骨下骨の侵食像・びらん像、関節変形・亜脱臼、骨性強直
治療
   RAの治療目標は、関節の疼痛緩和、関節変形による機能低下の防止、関節外症状・合併症の対処、QOLの改善の4点で、薬物療法と理学療法を組み合わせて行われるが、場合によっては外科的療法が取られることもある。
   薬物療法に使われる薬剤には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)・疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)・副腎皮質ステロイド・免疫抑制剤・生物製剤などがあげられる。DMARDsには関節保護作用があるが、確定診断後3ヶ月以内に使用を開始しなければならず、効果は遅効性である。NSAIDsは痛みを軽減するために投与される。ステロイドは、副作用が問題となるため、関節症状のみの症例に対しては使用されないが、生命予後不良な関節外症状に対しては絶対的適応となる。しかし、ステロイドを単独で使用すると、離脱困難になってしまうため、DMARDsと併用して使用される。生物製剤は骨破壊・変性を防ぐために用いられる薬剤で、抗TNF-α抗体などがこれにあたる。
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