全身性エリテマトーデス Systemic Lupus Erythematosus(SLE)
概念
■定義…膠原病の代表的疾患であるとともに、典型的な全身性自己免疫疾患である。多彩な自己抗体の出現などの免疫異常を示し、免疫複合体の沈着を基盤とした多臓器障害を呈する慢性炎症性疾患である。
■頻度…わが国では人口10万人あたり8〜10人程度。男女比は 1:9〜10 と圧倒的に女性に多く、発症年齢は20〜40歳代にピークがある。
病因
   遺伝的要因、アポトーシスの異常、女性ホルモンの関与などが想定されている。
病理
   フィブリノイド変性を特徴とする炎症像(腎ではワイヤーループ病変として観察される)が、全身の血管・結合組織に認められる。特に、皮膚や腎糸球体によく現れる。
   SLEに特徴的な病理学的所見としては、ヘマトキシリン体、脾動脈のオニオンスキン病変、Libman-Sacks心内膜炎がある。
病態生理
   免疫学的に、Tリンパ球の機能異常とBリンパ球の活性化亢進がもとになり、多種の自己抗体と非特異的免疫グロブリンの産生が亢進している。これらによる免疫複合体の形成と補体の活性化により、多臓器に炎症、障害を惹起する。SLEではこのV型アレルギー反応が病態形成の中心をなす。自己抗体の中では、特に、抗2本鎖DNA(抗ds-DNA)抗体が病態形成に重要である。
臨床症状
青字は、米国リウマチ学会の診断基準に含まれている事項   
全身症状発熱、全身倦怠感、易疲労感、体重減少
皮膚・粘膜症状蝶型紅斑(頬部紅斑)ディスコイド疹、手指・爪周囲紅斑、皮膚血管炎、網状青色皮斑、頭髪の大量脱毛口腔・鼻咽頭の無痛性潰瘍光線過敏症Raynaud症状
関節症状骨破壊を伴わない対称性多発性関節炎(非びらん性関節炎)、
Jaccoud型関節炎(骨破壊はないが、骨変形を伴う)、
大腿骨頭壊死(←ステロイド剤大量投与の副作用)
腎泌尿器症状ループス腎炎→※持続性蛋白尿・顕微鏡的血尿・テレスコープ沈渣ネフロ―ゼ症候群・腎不全へ移行
ループス膀胱炎(間質性膀胱炎)
中枢神経症状
CNSループス
頭痛などの軽微な症状から、脳血管障害や痙攣発作などの中枢神経症状、また、躁うつ症状、分裂病様症状、意識障害などの多彩な精神症状
心肺病変漿膜炎(血管炎により、胸膜炎・心外膜炎などがおこる)
Libman-Sacks心内膜炎(心弁膜に血栓性疣贅ができる。抗リン脂質抗体と関連)
間質性肺炎(ループス肺臓炎):肺野のすりガラス状陰影、板状無気肺、縮小肺
急性肺胞出血:血痰・喀血・進行性貧血・呼吸不全を呈し、死亡率高い
肺高血圧症:難治性で予後不良
消化器症状自己免疫性肝炎orルポイド肝炎ループス腹膜炎による腹水貯留、蛋白漏出性胃腸症
血液症状白血球減少症リンパ球減少が高度に起こる。特にT細胞(CD4+)の減少が著しい)
血小板減少症(抗血小板抗体による)
溶血性貧血(抗赤血球抗体による)
ループス抗凝固因子(APTTが延長して、血栓症状が起こり、抗リン脂質抗体症候群とよばれる)
   ※ ループス腎炎の組織学的分類(WHO)
         T. 正常糸球体
         U. メサンギウム病変
         V. 巣状分節状糸球体腎炎
         W. びまん性糸球体腎炎…一番頻度が高い上、腎不全に移行しやすい
         X. びまん性膜性糸球体腎炎
         Y. 末期の硬化性糸球体腎炎
検査所見
抗核抗体蛍光抗体法による抗核抗体(FANA)(出現率95%以上)
LE細胞
自己抗体LE因子抗dsDNA抗体抗Sm抗体がSLEに対して特異性が高い
他には、抗リボソームP蛋白抗体、抗リン脂質抗体なども
その他の
免疫学的異常
高γグロブリン血症、梅毒血清反応生物学的偽陽性(BFP)、免疫複合体、低補体血症など
炎症反応SLE活動期には、赤沈は著明に亢進するものの、CRPは低値を示す
SLEの特殊亜型
亜急性皮膚ループスエリテマトーデス(SCLE)
   皮膚症状が主症状で、光線過敏症を示す特徴的な再発性環状紅斑を主徴とするSLEの亜型。抗SS-A/Ro抗体・抗SS-B/La抗体と関連。
新生児ループス
   SLEや自己免疫状態の母親から生まれた新生児が、先天性心ブロック・皮膚紅斑・血球減少症・肝脾腫などのSLE様症状を呈することがある。これはIgG型自己抗体が胎盤を通過して胎児に入ることによって惹起されるものと考えられている。抗SS-A/Ro抗体抗SS-B/La抗体が関与。
薬剤起因性ループス
   抗不整脈薬のプロカインアミドや降圧薬のヒドララジンを服用中に、発熱・紅斑・関節炎・血球減少・抗核抗体などのSLE様症状を発現することがある。抗ヒストン抗体が高率に陽性。原因薬剤の中止により軽快することが多いが、免疫学的異常は遷延することが多く、時にSLEに移行する。
抗リン脂質抗体症候群
   リン脂質と反応する自己抗体の存在を特徴とする疾患群で、くり返す動静脈血栓症や習慣性流産などの血栓症状を合併することが多い。真の対応抗原はリン脂質と結合する血清蛋白β2グリコプロテインT(GPI)など。
治療
   治療の基本は副腎皮質ステロイド。病態に応じて、中等量からパルス療法を含めた大量までを適宜使用する。腎病変が著明な場合を中心に、免疫抑制薬の併用を積極的に行う。その他、重症の場合には、血漿交換やγグロブリン大量療法なども組み合わせて施行する。
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