11月9日(月)W 痴呆(アルツハイマー病、血管性痴呆)  担当:大澤(助手)
症例1
70歳、男性。
主訴:もの忘れ。
現病歴:1999年12月に駐車場に自動車を止めたが、止めた場所がどこかわからなくなった。自分で自動車を運転しているが、信号無視を繰り返したり、自動車をこすることが頻回にある。また、最近もの忘れが多く、妻が心配し、医療機関受診を薦めたが、自分では具合の悪い点はないと思っている。約1年前から、歩行の速度がやや遅くなっているほかには著変無く、尿失禁もない。
既往歴:特記すべきことはない。
家族歴:同様の症状のものはない。他に特記すべきことはない。

問1.病歴聴取上、確認すべきことを挙げよ。
喫煙歴・飲酒歴・食事習慣・職業歴などの生活歴、尿失禁・歩行障害・錐体路徴候・錐体外路徴候などの神経学的異常所見の有無、身だしなみなど外観の異常の有無、(うつ病による仮性痴呆を想定して)発動性・注意力の低下の有無、(薬物中毒による痴呆を想定して)薬物服用の有無、(意識障害を想定して)症状の変動の有無など
初診時現症
血圧142/90mmHg
身体学的には異常ない。
礼節は保たれている。
意識は清明で痴呆のスクリーニング検査(Mini Mental Scale Test)を行った。
MMS スコアは20/30
  日付:昭和52年、5月23日、金曜日、秋 2/5
  場所:京都府、京都市、京大病院、2階、近畿地方 5/5
  3物品の直後再生:駅、鳥、学校 3/3
  計算(7series):93、86、81 2/5
  3物品の再生「東京と広島」 0/3
  物品1鉛筆、腕時計)の呼称:鉛筆のみ可 1/2
  言語理解: 3/3
  文章の復唱: 1/1
  書字: 1/1、図形の模写 OK 1/1
  読字:OK 1/1
神経学的には、特記すべき所見はなかった。
頭部MRI像:大脳の全般的萎縮を認めた。血管病変はみられなかった。
頭部SPECT像
  両側頭頂葉でのRI取り込みが低下しており、頭頂葉の血流低下が示唆された。

問2.考えられる診断は何か。
Alzheimer病

症例2
55歳、女性、食品加工業、既婚。
主訴:物忘れ。
現病歴:生来健康で、夫に先立たれた後は、女手一つで一人娘を養育してきたが、平成4年秋(54歳)に娘が嫁ぐと、「つまらない」「さびしい」などと訴え、徐々に口数が少なくなってふさぎ込むようになり、職場の同僚からも「元気がない」と指摘されるようになった。それでも休まず働いていたが、職場では次第に仕事の手順がわからなくなり支障を来すようになった。平成5年(55歳)には時間や曜日がわからなくなり、また、財布や時計をどこかに置き忘れては、「なくなった」と訴えるようになったため、同年11月M病院を受診し、入院した。
既往症:特記すべきことなし。高血圧、うつ病の既往もない。
家族歴:同様の症状のものはない。他に特記すべきことはない。

入院時現症:
身だしなみは整っており、栄養状態も良好。礼節は保たれているが、表情の動きは少なく、低い単調な声で応ずる。
自分の年齢、生年月日は正答するが、現在の日時、計算には誤答し、5つの物品の記銘も不十分である。また、読字には問題ないが、書字では錯字がみられ、構成失行もみられた。着衣失行や失認はみられない。
血圧108/80mmHg.脈拍70/分。胸腹部に異常を認めない。神経学的に項部硬直なし、脳神経に異常は認めず、運動障害、感覚障害も認めない。
頭部CTスキャン検査:大脳の全般的萎縮を認めた。血管病変はみられなかった。

問3.考えられる診断、鑑別すべき疾患は何か。
Alzheimer病。鑑別すべきは、うつによる仮性痴呆、血管性痴呆、Lewy小体を伴う痴呆、Pick病、前頭側頭痴呆など

症例3
74歳、女性。
主訴:もの忘れ、尿失禁。
現病歴:1980年頃より高血圧症(170/100mmHg)を指摘され、近医にて降圧薬を投与されていた。1993年頃より後頭部の頭重感、ふらつき感を訴えて、1995年、近医を受診、血圧150/90mmHg。神経学的には特に異常は指摘されなかりた。その後、徐々に動作が緩慢になり、1995年頃からはあまり歩かなくなった。1993年頃よりもの忘れが目立つようになり、セーターの上にパジャマを着ようとしたり、ズボンを2枚はこうとするなど着衣にも支障を来すようになった。さらに、尿失禁もみられるようになった。受診時、ごく軽い右片麻痺と左上肢の筋固縮を認めた。深部腱反射は、四肢ともに亢進し、Babinski徴候陽性。歩行は不安定で、歩幅は小さい。
家族歴:特記すべきことなし。

受診時所見
血圧160/100mmHg、脈拍60/分。収縮期心雑音(+)。
意識は清明で、MMSE 8/30。
見当識、記銘力、計算いずれも障害され、自発性の低下を認めた。
構音障害があり、下顎反射は亢進。軟口蓋の動きが不良で、病的泣きがみられた。ごく軽度の右不全麻痺を認め、深部腱反射は右>左で亢進。
頭部MRI、脳血流SPECT:

MRIでは、前頭葉の側脳室周囲を中心とした白質に広がる梗塞巣がみられる。被殻にも小梗塞巣がみら
れる。SPECT像水辺断では、梗塞巣が存在する白質のみならず、前頭葉全体に血流低下がみられる。  

問4.考えられる診断は何か。
Binswanger型脳血管性痴呆

症例4
80歳、男性
約1ヶ月前に階段から転落し、頭部を打撲した。その後元気であったが、受診前日に計算ができなくなっているのに気づいた。頭痛はない。ごく軽度の麻痺が右上下肢認められた。長谷川式簡易知能評価スケールは30点満点中9点で、記銘力の低下が認められた。
頭部CTでは、左脳室が小さく、左大脳円蓋部に低吸収の部分がみられた。

頭蓋内慢性占拠性病変(CT)。80歳の
男性。軽度の右不全片麻痺と痴呆症状   

問5.考えられる診断は何か。
慢性硬膜下血腫による痴呆
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