糸球体腎炎とは
概念
   メサンギウム細胞と基質の増殖を伴う病態(病理学上の形態概念)
原因
   糸球体腎炎の多くは、免疫複合体の糸球体沈着によっておこるIII型アレルギー反応が原因である。アレルギー反応によって糸球体に組織障害が起こり、その修復機転として、メサンギウム細胞や血管内皮細胞などの細胞成分が増殖する。
   一般に、抗原が抗体よりも多い場合には、分子量の小さな免疫複合体が基底膜の外側の上皮細胞下に沈着するのに対して、抗体が抗原よりも多い場合には、分子量の大きな免疫複合体がメサンギウムや血管内皮細胞に沈着しやすい。
主要症状
   メサンギウムの増殖によって、糸球体の血流が阻害され、その結果、腎機能低下血尿などの症状を呈する。また、一部の糸球体腎炎では係蹄壁に異常が生じる場合があり、その場合には蛋白尿が出現する(蛋白尿はネフロ―ゼ症候群の主要徴候)。
 急性に経過する糸球体腎炎
 急性糸球体腎炎
(acute glomerulonephritis;AGN)
急速進行性糸球体腎炎
(rapidly progressive glomerulonephritis;RPGN)
概念比較的急激に発症する糸球体腎炎症状が急激に増悪し、数週間〜数ヶ月で末期腎不全の状態に至る予後不良の症候群
病因A群β溶連菌感染後に生じるものがほとんど@抗糸球体基底膜抗体型(IgG型の自己抗体によるもの。肺胞出血を呈するタイプがあり、Goodpasture症候群とよばれる)、A免疫複合型(免疫複合体によるもの。急性糸球体腎炎に続発するものが多いが、他にIgA腎症・ループス腎炎などが基礎疾患となる)、Bpauci-immune型(P-ANCAによるもの)
 病理所見 

【光顕】 びまん性管内性増殖性糸球体腎炎(メサンギウム細胞と毛細血管内皮細胞が増殖(富核)⇒毛細血管の狭小化→虚血状態;糸球体腫大⇒Bowman嚢内腔の狭小化)

【蛍光抗体法】 係蹄壁に沿って、IgGとC3が顆粒状に点々と沈着

【光顕】 びまん性管外性増殖性糸球体腎炎半月体形成がみられるが、時間経過とともに細胞成分が線維成分に置換されて、糸球体硬化とよばれる末期増を呈するようになる)

【蛍光抗体法】 @では係蹄壁に沿ってIgGが線状に沈着、Aでは顆粒状に染色される。Bでは染色されない
症状1〜3週間の潜伏期の後、血尿、高血圧、浮腫を主症状として発症する。その他には、数日で回復する乏尿(その後、利尿期がやってくる)がみられ、ほとんどのケースで蛋白尿もみられる(ただし、量はそれほど多くない)血尿蛋白尿、貧血、乏尿、浮腫、高血圧などの症状が急激に出現する。@の1型であるGoodpasture症候群では、肺胞出血のために、血痰や喀血、肺の拡散障害、拘束性障害を呈する
検査

【尿検査】 血尿は必発、ほとんどのケースで蛋白尿

【腎機能検査】 GFRの低下、BUN・血清クレアチニン値の上昇、濾過率の低下

【免疫学的検査】 菌体成分に対する抗体であるASO・ASKなどの血清濃度の上昇、血清総補体価(CH50)・血清C3値の消耗性低下

【尿検査】 血尿は必発、蛋白尿もほぼ必発

【腎機能検査】 GFRの低下、BUN・血清クレアチニン値の上昇、濾過率の低下

【免疫学的検査】 @では抗糸球体基底膜抗体の検出、Aでは血清補体価の消耗性低下、BではP-ANCAの検出
予後自然軽快傾向が強く、多くの症例で治癒する(小児で90%以上、成人で50%以上)。ごく一部では、発症と同時に急速進行性糸球体腎炎に移行する予後は不良とされて生きたが、治療法の進歩により改善された(5年後に透析が必要となる確率:20%以下)
治療特別な治療法はない。安静と保温、低塩・低蛋白・高カロリー食、水分摂取のコントロール、抗生物質の投与など早期発見・早期治療が重要。発症初期にステロイドパルス療法を行い、さらに加えて、免疫抑制薬・抗凝固薬・抗血小板薬が併用される
 慢性に経過する糸球体腎炎
 IgA腎症
(IgA nephropathy)
膜性増殖性糸球体腎炎
(membranoproliferative glomerulonephritis;MPGN)
概念メサンギウムを中心にIgAがびまん性に沈着する疾患(Berger病ともよばれる)で、わが国で最も多い糸球体腎炎メサンギウム領域と内皮細胞が増殖する上、基底膜も肥厚する疾患で、大半が経過中にネフロ―ゼ症候群を呈する
病因何らかの未知の抗原に対してIgAが過剰に産生されるために、免疫複合体の形成→糸球体への沈着が起こる@T型(免疫複合体によるもので、基底膜と内皮細胞の間に沈着物が生じる)、AU型(正体不明の沈着物が基底膜のど真ん中に生じる)
 病理所見 

【光顕】 いろいろなパターンを呈する

【蛍光抗体法】 メサンギウム領域中心にIgAの顆粒状沈着+多くの場合、C3の沈着

【光顕】 メサンギウム細胞・基質の増加(特に基質の増加が著明な場合には分節構造を呈する)、基底膜の肥厚(特に@では二重輪郭を呈する)

【蛍光抗体法】 係蹄壁やメサンギウム領域に顆粒状にC3の沈着
症状学童期〜青年期にかけて、健康診断などの機会に顕微鏡的血尿により偶然発見される場合がほとんど小児期〜若年成人期にかけて、基底膜が侵されるための蛋白尿とメサンギウム領域の増殖性変化による血尿、腎機能低下などの腎炎症状が出現する。
検査

【尿検査】 顕微鏡的血尿は必発、蛋白尿は出たり出なかったり

【免疫学的検査】 血清IgA値は高値(約1/2の症例で)、血清補体価は正常範囲

【尿検査】 血尿and/or蛋白尿(蛋白尿はほとんどが非選択性)

【免疫学的検査】 血清C3値の消耗性著明低下、血清総補体価(CH50)の低下
予後約70%の症例は予後良好でほとんど進行がみられないが、残り約30%の症例では予後不良で、病変が進行していずれ末期腎不全に至る。なお、線維化の顕著なケース、病初期から多量の蛋白尿を呈するケース、高血圧を伴うケースなどで予後不良である予後は不良。比較的進行性で、10〜15年後には約半数が末期腎不全に至る
治療過度の運動と過剰の塩分摂取を避けること以外、特異的な治療法はない。予後不良が予想される場合には、抗血小板薬の継続投与(→血小板による毛細血管障害を防止)、ACE阻害薬の継続投与(→腎保護作用)、ステロイドの投与(→抗炎症効果)などが行われる基本的にステロイド抵抗性であるが、中にはステロイドパルス療法が奏功するケースもある
遺伝性糸球体腎炎(原発性に糸球体障害を引き起こす一群の疾患)
 Alport症候群良性家族性血尿
 概念・病因 基底膜の主成分であるIV型コラーゲンの異常による遺伝性糸球体腎炎で、多くは伴性劣性遺伝形式をとる基底膜がびまん性に菲薄化し、ところどころで断裂がおこるために血尿を呈する遺伝性糸球体腎炎で、多くは常染色体優性遺伝形式をとる
症状多くは学校検診などで偶然に顕微鏡的血尿により発見される。次第に腎気能が低下して蛋白尿を伴うようになり、男性患者の多くは20〜30歳で末期腎不全に陥る。女性の場合は、非進行性の軽度の血尿を呈する。腎炎症状以外にも、感音性難聴や白内障・円錐角膜などの眼症状を呈することがある無症候性血尿をきたすのみで、蛋白尿はほとんど伴わず、腎機能も終生正常のまま
治療現在治療法はない治療は必要ない

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