定義 | 胃粘膜の急性炎症で、臨床的には急激な上腹部痛、悪心・嘔吐、消化管出血などで発症する。機械的・化学的刺激、細菌や毒素の刺激など発症の契機となる何らかの原因が存在し、内視鏡的には浮腫・発赤などを伴う。さらにびらんや潰瘍を伴う場合には急性胃粘膜病変(acute gastric mucosal lesion:AGML)として診断される。 | ||||||||||||
疫学 | 急性胃炎の定義や概念は不明瞭で、その頻度を正確に把握することは非常に困難であるが、10〜20%程度と考えられている。 | ||||||||||||
病因 |
| ||||||||||||
分類 |
| ||||||||||||
病理 | 胃粘膜の発赤・浮腫が著明で、粘稠な粘液が厚く粘膜を覆い、血液が付着していることもある。組織学的には上皮細胞の変性・壊死・脱落と粘膜固有層の充血、浮腫ならびに白血球浸潤を認める。 | ||||||||||||
臨床症状 | 何らかの原因に引き続いて急激に発症し、上腹部痛、悪心・嘔吐、食欲不振、腹部膨満感を訴える。吐血・下血を伴うこともある。他覚的には心窩部圧痛がある。短時間で症状が改善することも多い。 急性化膿性胃炎では、悪寒・戦慄・発熱・腹膜刺激症状が出現し、重篤である。 | ||||||||||||
検査所見 & 診断 |
| ||||||||||||
治療 |
治療の原則は誘因の除去であり、大多数の症例は特別な治療を必要としないが、場合によっては以下のような誘因除去療法を行うこともある。 ・外因性胃炎→原因除去の目的での胃洗浄、胃を安静に保つための絶食 ・腐食性胃炎→飲用した物質の中和剤の投与 ・感染性胃炎→起炎菌に対する抗生物質の投与 ・化膿性胃炎→起炎菌に対する抗生物質の投与、重篤例では胃切除 症状が強い場合にはそれぞれの対症療法を行う。 ・悪心・嘔吐を訴える場合→禁食、制吐薬の投与 ・出血がひどい場合→輸液、止血薬の投与 ・心窩部痛・胸やけ感が強い場合→制酸薬・酸分泌抑制薬の投与 ・びらんや潰瘍を伴う場合→抗潰瘍薬の投与 |
定義 | 胃粘膜における表層性胃炎に始まり、萎縮性胃炎の過程を経て、最終的に胃萎縮に至る進行性過程の総称である。すなわち、慢性胃炎は、胃粘膜の欠損(表層性変化)とその再生過程における不完全構築(萎縮性変化)よりなるダイナミックな状態である。 | ||||||||||||||
病因 |
| ||||||||||||||
分類 |
| ||||||||||||||
病理 | @粘膜上皮の欠損、再生、A粘膜固有層のリンパ球・形質細胞の浸潤、B固有胃腺の萎縮・過形成、C腸上皮化生 | ||||||||||||||
臨床症状 |
| ||||||||||||||
検査所見 & 診断 |
| ||||||||||||||
治療 | 香辛料やアルコールなどの誘因の回避、食事指導の他、制酸薬・抗コリン薬・粘膜保護薬などを用いた薬物療法が行われる。最近では、H. pylori の駆除による本症の治療の可能性が検討されている。 | ||||||||||||||
予後 | 慢性胃炎は胃潰瘍や胃癌の発生母地となることが多いので、症状が改善しても定期的に内視鏡検査を行って、これらの病変がないかを調べる必要がある。 |
概念 | 消化管の粘膜下層以下に及ぶ組織欠損で、胃液の消化作用が重要な役割を演じているものを消化性潰瘍(peptic ulcer)とよぶ。胃潰瘍は胃角部に発生しやすく、十二指腸潰瘍はほとんど十二指腸球部(中でも幽門近くに多い)に発生する。 |
疫学 | わが国において、胃潰瘍の頻度は約2〜3%で、発生率は年間1.8%(多くが再発)、十二指腸潰瘍はおよそその1/2〜2/3程度と考えられている。欧米では十二指腸潰瘍が多く、わが国では胃潰瘍が多い(しかし、最近わが国においても十二指腸潰瘍の頻度が増加している)。好発年齢は、胃潰瘍は40〜50歳代、十二指腸潰瘍は20〜40歳代にある。また、近年、高齢者や小児においても増加傾向にある。性比では、いずれも男性に多くなっている。 |
病因 |
|
病態生理 |
|
臨床症状 | 自覚症状として最も多いのが心窩部痛であり、上腹部不快感、悪心・嘔吐、吐血(大量出血では新鮮血、中等量以下では黒色血壊orコーヒー残渣様)・下血(タール便)、背痛(関連痛)などが主なものである。高齢者では無症状であることも多い。 |
検査所見 |
|
診断 ・ 鑑別診断 | ・胃潰瘍の好発部位は胃角小弯・体下部小弯であり、大弯側の潰瘍は悪性を考えるべき ・胃潰瘍では、胃癌・リンパ腫などの悪性腫瘍、胃結核、胃梅毒、胃Crohn病などとの鑑別が必要 ・十二指腸潰瘍の好発部位は球部前壁・後壁であり、多発潰瘍や線状潰瘍も多く認められる ・十二指腸潰瘍との鑑別には、胃癌の球部浸潤、肝・胆道・膵からの腫瘍浸潤による潰瘍形成など |
治療 |
|
定義 | サバ、アジ、タラ、ニシン、イカなどの魚に寄生したアニサキス幼虫が胃内に達し、消化管壁に潜入し症状を引き起こす疾患である、アニサキスは魚類の内臓の表面や筋肉中に被嚢して寄生しており、体長は20〜30mm、幅は0.4〜0.6mmで頭端には穿孔歯とよばれる突起がある。幼虫移行症の1つで、人畜共通感染症である。 |
臨床症状 | 魚・イカの刺身などを摂取後、数時間で急激な胃症状(上腹部痛・悪心・嘔吐)を引き起こす。特に再感染例では強い即時型過敏反応を引き起こし、時に急性腹症として開腹手術が行われることがある(激症型)。 |
診断 | 問診で、発症前の生魚摂取の有無を確認することが大切である。画像検査として、X線検査や内視鏡検査を行い、診断は確定する。 |
治療 | 内視鏡下に生検鉗子で虫体を摘出する。 |
定義 | 胃の粘膜上皮から発生する悪性腫瘍で、胃原発性悪性腫瘍の95%を占める。 |
疫学 | 胃癌の発見率は集団健診において0.1%ほどである。胃癌の死亡率は年々減少しつつあるが、わが国において部位別頻度は肺癌に次いで第2位であり、なお多数を占めている。 わが国は世界的にみても胃癌の多発国で,男女とも訂正死亡率の比較では最多である。 男女比では、約1.8:1で男性に多く、50〜60歳代がピークとなっている。 寒冷地に多発する傾向がみられる(秋田・山形・新潟などの北日本に多く、南九州・沖縄に少ない)。 |
病因 |
|
分類 |
|
病理 |
|
臨床症状 | 初期では胃癌に特有な症状はなく、進行するにしたがって局所の症状や転移による症状が加わる。局所症状として潰瘍を伴っていれば、心窩部痛や吐血・下血を生じることもあり、噴門や幽門に通過障害が生じれば、嚥下困難・嘔吐・上腹部膨満感などが生じる。進行するにつれて、るいそう・食欲不振・全身倦怠感などが生じる。 |
検査所見 & 診断 |
|
鑑別診断 | ・胃ポリープ:大きさが 2cm 以上のものはT型早期胃癌との鑑別 ・胃異型上皮:Ua型早期胃癌との鑑別。表面の性状が比較的平滑 ・びらん性胃炎:Ua+Uc型早期胃癌との鑑別。多発傾向がある ・胃粘膜下腫瘍:Borrmann 1型進行胃癌、T型早期胃癌との鑑別。表面平滑で周囲粘膜と同様、架橋ヒダあり ・胃潰瘍:Borrmann 2型進行胃癌、陥凹型早期胃癌との鑑別。クレーター・周堤が比較的整っている ・胃リンパ腫:Borrmann 2型・3型進行胃癌、陥凹早期胃癌との鑑別。潰瘍は比較的浅く、周縁は比較的平滑 ・胃反応性リンパ網内系過形成(RLH):陥凹型早期胃癌との鑑別。多発傾向で、周囲粘膜は比較的整っている ・Menetrier病(巨大皺襞症):Borrmann 4型進行胃癌との鑑別。胃壁の伸展性は良好で、びらん・潰瘍の合併症は少ない |
治療 | ・早期胃癌:内視鏡的粘膜切除or胃局所切除or分節切除などを行う。 ※内視鏡的粘膜切除術の適応…長径2cm以内、転移なし、潰瘍なし、高分化型、粘膜内癌 ・進行胃癌(根治切除可能):リンパ節廓清を含めた外科的切除(Billroth 1法・2法など)を行う。 ・進行胃癌(根治切除不能):姑息的手術、化学療法、放射線療法などを行う。 |
転移 ・ 予後 | 胃癌は、進行すると分化型では血行性、未分化型ではリンパ行性・播種性転移をきたすことが多い。血行性では肝が多く(肝転移がおこると5年生存率がほぼゼロ)、肺・骨にもみられる。特別な名称のついたものとして、左鎖骨上窩リンパ節転移をVirchow転移、Douglas窩への直接播種をSchnitzler転移、卵巣への脈管行性or播種性転移をKrukenberg腫瘍という。 術後も再発が多く、約1年半後におこる腹膜再発が一番の問題となっている。 また、早期胃癌の転移率は、上皮内・粘膜内癌で数%、粘膜下層に及ぶ癌で20%程度であり、ほとんどはリンパ節転移である。 |
定義 | リンパ細網細胞組織における腫瘤形成を主体としたリンパ球の悪性腫瘍であり、節外である胃に原発したリンパ腫をいう。 |
疫学 | 全悪性リンパ腫の約9%を占め、消化管悪性リンパ腫の中では最も多い。また、胃肉腫のうちでも最も頻度が高い。性別は一般に男性にやや多く、年齢は50〜60歳代に多い。 |
分類 | ・非Hodgkinリンパ腫がほとんどで、Hodgkinリンパ腫はきわめてまれ ・Rappaport分類では、組織球型が最も多く、次に低分化型リンパ球型となっている ・腫瘍浸潤形態としては、びまん性が多く、結節型は少ない ・LSG分類では、びまん性大細胞型リンパ腫が最も多い ・細胞表面マーカーでは、B細胞型がほとんどである ※MALTリンパ腫…粘膜関連性のリンパ組織(MALT)から発生する非ホジキン型の リンパ腫である。B細胞性リンパ腫で、粘膜・粘膜下層に長期間とどまり、きわめて 予後良好。 病理所見では、粘膜上皮内のlymphoepithilial lesionが特徴的である。 なお近年、H. pylori との関連が示唆されている。 |
臨床症状 | 腹痛(心窩部痛・上腹部痛)、体重減少、貧血、腹部腫瘤触知、悪心・嘔吐などが多いが、初期には無症状の場合が少なくない。 |
検査所見 & 診断 |
|
治療 | 病期・組織像などにより治療方針は決定される。外科的切除が行われる場合もあれば、化学療法や放射線療法が行われる場合もある。化学療法では、CHOP療法(シクロホスファミド・アドリアマイシン・ビンクリスチン・プレドニゾロン)、CHOP+Bleo(ブレオマイシン)療法、VEPA療法(ビンクリスチン・シクロホスファミド・メルカプトプリン・プレドニゾロン)などが広く行われている。 |
予後 | 胃原発性悪性リンパ腫は一般に胃癌よりも良好であるといわれている。 |
定義 | 胃壁内筋層より発生する筋原性の非上皮性悪性腫瘍である。良性腫瘍は胃平滑筋腫である。 近年、GIST(gastrointestinal stromal tumor)という新しい概念が導入されつつある。これは消化管運動のペースメーカー細胞で、神経筋接合部の周囲に存在するCajalの介在細胞に由来する悪性腫瘍であり、これまで平滑筋肉腫と診断されていた多くの症例がGISTの概念に含まれることになる。 |
臨床症状 | 上腹部痛、胃部不快感、出血、腫瘤触知など。 |
診断 | 基本的に粘膜下腫瘍の形態or壁外性の圧迫様所見をとるため、胃外性の圧迫との鑑別が必要で、超音波内視鏡・CT・血管造影などを用いられる。 |
治療 | 放射線療法・化学療法の効果が低く、外科的切除が最良の治療法ではあるが、発見時に肝転移が多くみられることから、根治させるのは困難である。 |
定義 | 胃粘膜上皮が限局性に増殖して、胃内腔に突出した病変のことをいう。形状は有茎・無茎を問わず、良性を前提とする。 | ||||||||
疫学 | 日本では欧米に比べて頻度が高い。50歳以上の高齢者に多く、男女差はない。部位としては幽門前庭部に多い。 | ||||||||
分類 |
| ||||||||
病因 | 胃粘膜損傷に対する粘膜上皮の代償性過形成による。 | ||||||||
臨床症状 | 特有の症状はなく、無症状で胃集団検診において発見されることが多い。背景胃粘膜は萎縮性胃炎・萎縮性過形成性胃炎を示すことが多く、低酸・無酸症例が多い。 | ||||||||
診断 | X線検査や内視鏡検査である程度診断が可能であるが、悪性腫瘍との鑑別が問題となる場合が多く、確定診断は直視下生検による。 | ||||||||
治療 | 生検を行った上で大きさが1cm以下のものは経過観察とする。大きいもの、増大するもの、異型のあるもの、出血を伴うものでは、内視鏡的ポリペクトミーや粘膜切除術を行う。また、H. pylori 陽性症例に対しては、除菌も行われる。 |
定義 | 通常良性の、上皮組織の新生物で、異型上皮などとよばれるもの。腫瘍細胞は基質中に腺or腺様構造を形成する。 |
疫学 | 高齢の男性に多く、体下部〜幽門前庭に多い。早期胃癌と並存して発見されることも多い。 |
病理 | 形態は過形成性ポリープとUa型早期胃癌との中間の特徴をもち、大きさや形の不整も良悪性の中間を示し鑑別が難しい。 |
診断 | 病理診断も困難な場合があり、生検をくり返し行う必要がある。 |
治療 | 癌化する確率は低いので、通常は経過観察とするが、レーザーorマイクロ波による焼灼療法、内視鏡的ポリペクトミー、粘膜切除などを行うこともある。 |
定義 | 胃に発生した内分泌系細胞の腫瘍。良性のものが多く、H. pylori 感染には無関係。ECL細胞由来のECLカルチノイド腫瘍が頻度としては最も高く、その背景にはA型慢性胃炎やZollinger-Ellison症候群に伴う高ガストリン血症があることが多い。 |
早期ダンピング症候群 | 胃容積の減少と幽門機能の喪失のため、食物が胃腸吻合部より空腸内へ急速に墜落するので、上部空腸の伸展拡張・運動亢進が惹起される。続いて糖質を主体とした高張な食物が空腸内に流入することにより、腸粘膜より大量の水分が分泌されるため、循環血漿量の減少をきたし自律神経症状を呈する。 症状としては、血管運動性症状(冷汗・動悸・顔面紅潮・頭痛・めまいなど)、消化器症状(悪心・嘔吐・腹痛・腹部膨満感・下痢など)があげられる。 |
後期ダンピング症候群 (食後低血糖症) | ダンピング症候群により生じた急速かつ一過性の大量糖分吸収のリバウンド反応として、インスリンが過剰に分泌されるために、食後2〜3時間後に低血糖症状が生じる。 症状としては、血管運動神経性症状(脱力感・めまい・発汗・心悸亢進など)や軽い意識障害などがあげられる。 |
輸入脚症候群 | BillrothU法において形成された輸入脚、およびその吻合部において通過障害が生じるために、輸入脚内に胆汁・膵液が停滞し、内圧の上昇とともに、突然胃内に逆流し、胆汁性嘔吐をおこすもので、頻度は0.5〜2%程度である。食後15〜60分に生じ、胆汁性嘔吐の他、上腹部疼痛・膨満感などの症状を伴う。 |
消化吸収障害 | 十二指腸・上部空腸のバイパスと胃酸分泌低下による鉄・カルシウムの吸収障害により、貧血や骨粗鬆症をおこす。胃全摘例での、ビタミンB12吸収不全に伴う巨赤芽球性貧血などがこれにあたる。他の症状としては、下痢・脂肪便・腹部膨満感・体重減少など。 |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||