肺癌の組織分類
 小細胞癌扁平上皮癌腺癌大細胞癌
頻度14.2%37.7%39.8% 7.1%
喫煙との関連++++±
好発部位肺門部肺門部肺野末梢中間領域〜末梢
病理像小型の未分化な細胞がびまん性に胞巣状・索状に増殖。時にロゼットまたは小管腔を形成する。間質は少ない角化・細胞間橋を有する細胞が充実性に胞巣を形成癌細胞が管状・腺房状・乳頭状に増殖。粘液産生もみられる大きな核、著明な核小体、豊富な細胞質を有する大型細胞が特定の配列を示さず胞巣を形成
画像的特徴早期からリンパ節転移を起こしやすいため、腫瘤陰影の大きさのわりには閉塞性肺炎・無気肺などの2次陰影が少ない辺縁明瞭で、notch sign,lobulationがみられる。腫瘤の末梢側に閉塞性肺炎・無気肺を示す。時に空洞形成もみられる辺縁不鮮明で、spicular radiation,fuzzy margin,鋭いnotch signがみられる。胸膜陥入像を示すことが多い辺縁明瞭で、鈍なnotch signを示し、内部は比較的均一で、濃度が高い。増殖速度が速く、腫瘤陰影は一般に大きい
転移性非常に転移が速い局所再発しやすい脳などへ遠隔転移しやすい
治療化学療法が
第1選択
StageVA以下では手術が行われる(StageT・Uでは根治手術、StageVAでは姑息的手術)。StageVB以上では手術は不可能で、内科的療法が行われる

無気肺
   肺葉や肺区域内のガスの消失によって肺容量が減少した状態のこと。胸部X線画像において、下図のような特徴的パターンを示すことから診断が可能である。
無気肺の画像パターン
肺癌の進展(TNM分類)
T 原発腫瘍
TX原発腫瘍の存在が判定できない、あるいは画像上または気管支鏡的に観察できないが、喀痰または気管支洗浄液中に悪性細胞が存在する
T0原発腫瘍を認めない
Tis上皮内癌
T1腫瘍の最大径が3cm以下で、肺組織または臓側胸膜に囲まれており、気管支鏡的に癌浸潤が葉気管支より中枢に及ばないもの(=主気管支に及んでいない)
T2腫瘍の大きさまたは進展度が以下のいずれかであるもの:
 ・最大径が3cmを越えるもの
 ・主気管支に浸潤が及ぶが、腫瘍の中枢側が気管分岐部より2cm以上離れているもの
 ・臓側胸膜に浸潤のあるもの
 ・肺門に及ぶ無気肺あるいは閉塞性肺炎があるが一側肺全体に及ばないもの
T3大きさと無関係に
 ・胸壁(上葉溝腫瘍を含む)、横隔膜、縦隔胸膜、壁側心膜、横隔膜神経のいずれかに直接浸潤する腫瘍(隣接葉は含まない);または
 ・腫瘍が気管分岐部から2cm未満に及ぶが、気管分岐部に浸潤のないもの;または
 ・無気肺あるいは閉塞性肺炎が一側肺全体に及ぶもの
     ※主気管支に進展が及んでも、浸潤が気管支壁内に限局している表層浸潤型の腫瘍は、T1
T4大きさと無関係に
 ・縦隔、心臓、気管、食道、椎体、気管分岐部、大血管(大動脈・上大静脈・下大静脈・肺動脈幹・心膜内部の左右の肺動脈・心膜内部の左右の上下肺静脈)、臓側心膜に浸潤の及ぶ腫瘍
 ・同一肺葉内に存在する腫瘍結節
 ・悪性胸水・悪性心嚢水を伴う腫瘍
 ・壁側および臓側の胸膜播種病巣
 ・迷走神経反回神経枝への浸潤による声帯麻痺、あるいは上大静脈閉塞、または気管や食道への圧迫
N 所属リンパ節
NX所属リンパ節が判定できない
N0所属リンパ節転移なし
N1同側気管支周囲および/または同側肺門リンパ節及び肺内リンパ節転移で、原発腫瘍の直接浸潤を含む
N2同側縦隔リンパ節転移および/または気管分岐部リンパ節転移
N3対側縦隔、対側肺門、同側または対側斜角筋前、又は鎖骨上窩リンパ節転移
M 遠隔転移
MX遠隔転移が判定できない
M0遠隔転移なし
M1遠隔転移あり。同側又は対側の他肺葉内に存在する腫瘍結節を含む

臨床病期分類とTNM分類
 潜伏癌 TXN0M0
0期TisN0M0
TA期T1N0M0
TB期T2N0M0
UA期T1N1M0
UB期T2
T3
N1
N0
M0
M0
VA期T1
T2
T3
N2
N2
N1, N2
M0
M0
M0
VB期Tは無関係
T4
N3
Nは無関係
M0
M0
W期Tは無関係Nは無関係M1

肺癌の診断



原発巣による・咳嗽・喀痰(肺門部発生の扁平上皮癌・小細胞癌に多い)
・血痰(20%;肺門部早期癌に多くみられる)
・胸痛(20%;腫瘍の壁側胸膜・縦隔・肋骨への浸潤により生じる)
・発熱(腫瘍・壊死・2次性細菌感染などによる)
・喘鳴(太い気管支内腔にポリープ様の腫瘍が存在する場合)
胸郭内臓器
への浸潤・ 
転移による
・Pancoast症候群
肺尖部に発生した肺癌(主に扁平上皮癌)が胸壁を浸潤→肋骨を破壊→頸部交感神経節・上腕神経叢に浸潤→上腕痛やHorner症候群を呈する
・上大静脈症候群
肺癌の縦隔側への浸潤or縦隔リンパ節の腫大→上大静脈が圧迫閉鎖→上肢の静脈圧↑→顔面・頸部・上肢の腫脹
・反回神経麻痺による嗄声
反回神経への圧迫・浸潤→声帯の運動が制限。反回神経の走行から左反回神経麻痺による場合が多い
・横隔神経麻痺による横隔膜挙上
・胸水貯留(→胸痛・呼吸困難・心悸亢進など)
・心膜液貯留(肺癌の心外膜への浸潤→動悸・息切れ)
・閉塞性肺炎(肺癌による気流閉塞→粘液・脂肪の貯留→泡沫細胞の形成)
遠隔臓器への
転移による
・脳転移による症状(頭痛・嘔吐・言語障害・片麻痺・意識障害など)
・骨転移による症状(限局性の疼痛)
・その他、肝・リンパ節・副腎に転移しやすい
転移と無関係
・骨・関節症候(扁平上皮癌あるいは腺癌に多い)
ばち指(肺癌以外でも、慢性の心肺疾患、肝疾患、消化器疾患で出現)
肥大性肺性骨関節症(長管骨の骨膜性骨新生+上下肢の腫脹・疼痛・関節痛+ばち指)
・筋・神経症候
亜急性小脳変性症(脳圧亢進症状がなく、小脳症状が出現。小細胞癌で多い)
末梢性ニューロパチー(知覚性と運動性ニューロパチーがみられる)
多発性ミオパチー(筋原性の筋力低下→起立・歩行が困難となる)
Eaton-Lambert症候群(下肢の近位筋の易疲労性・脱力を呈する。小細胞癌に多い)
・内分泌症候
ADH不適合分泌症候群、Schwarz-Bartter症候群(ADH不適合分泌
     →腎による水の再吸収↑+尿中へのNa排泄↑→低浸透圧血症、低Na血症など)
異所性ACTH症候群(ACTH産生→コルチゾール分泌↑→低K血症、高血糖など)
高Ca血症(消化器症状、CNS症状、腎症状、心症状など。扁平上皮癌で多い)
女性化乳房(小細胞癌に多く、hCG・hPLの産生によると考えられている)
診断肺癌は無症状の時期、たとえ有症状でも腫瘍が限局している時期に発見し、診断・治療することが望ましい。肺癌早期発見のための集団検診は胸部X線写真と喀痰細胞診が行われている。近年、微小な肺癌発見のため、ヘリカルCT検査も行われている

 
外科治療
術式特徴
標準術式T・U期に対する肺葉切除と同側の肺門・縦隔リンパ節郭清を行うという術式。5年生存率は、T期で65〜80%、U期で40〜50%となっている。
拡大手術進行肺癌に対し原発腫瘍や転移したリンパ節から病変が及んだ隣接臓器の合併切除を伴う術式。VA期は外科的切除が比較的容易であり、20〜35%の5年生存率が得られているが、VB期以上では完全切除が困難なことが多く、手術をあきらめざるを得ない場合が多い。
縮小手術早期の原発性肺癌に対して楔状切除や区域切除といった肺葉切除以下の切除を行う術式。心肺機能の低下や全身状態に問題があり、肺葉切除が不可能なためやむを得ず行う消極的縮小手術と、肺葉切除が可能な症例に対し楔状切除や区域切除を行い、肺切除を行った時と同じような治療成績を期待して行う積極的縮小手術とに分けることができる。
胸腔鏡下手術微小な肺野型肺癌に対して、縮小手術の1手段として行われる手術。肺癌に対するリンパ節郭清を含めた肺葉切除も胸腔鏡下に行われている。

 
放射線治療
非小細胞癌に対する根治的照射法
   局所病変+縦隔リンパ節を中心に照射を行う。まず、大きな照射野に対して40〜46Gy(1回線量は2Gy)照射してから、局所病変に14〜26Gy(総線量:60〜70Gyまで)を追加照射するという方法が一般的。
   合併症としてよく見られるのは、放射線性食道炎による嚥下困難や放射線性脊髄炎による白血球減少などである。ごくまれに放射線性肺臓炎が起こることがある。放射線性肺臓炎とは、正常肺が20〜30Gy以上の放射線照射を受けることによって、主に照射中に起こる炎症症状である。発熱や咳嗽が強度であればステロイド投与が必要となり、まれに炎症が照射野外に拡大して致命的になる場合もあり、注意が必要である。
小細胞癌に対する放射線療法
   小細胞癌に対する治療は、化学療法が中心である。しかし、遠隔転移がなく、病変部位が限局している場合には、化学療法単独よりは放射線を併用した方が、有意に局所制御と生存率向上をもたらすことが証明されたため、現在では総線量50Gyの照射が行われる場合が多い。
   また、全脳への予防照射を行って、局所制御および延命効果を得ようとする動きもある。
孤立性肺腫瘤に対する定位放射線照射
   最近始まった、肺野型孤立性の早期肺癌に対する照射法。局所病変に対して12Gyを4回照射することにより、高線量照射と同じ効果を得ようとするものである。

化学療法
   第1選択は小細胞癌であり、完全寛解となることもまれではない。多剤併用療法で行われ、シスプラチン(CDDP)とエトポシド(VP-16)の組み合わせが現在の標準的方法となっている。しかし、再発率も高く、患者の延命に貢献していない。非小細胞癌もCDDPにより奏功率はやや向上するが、標準的方法はない。
   他に使われる薬剤としては、カルボプラチン(CBDCA)やイリノテカン(CPT-11)、タキソールなどがある。
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送