健常人の尿酸代謝
ピリミジン塩基は尿素まで分解されるが、プリンは尿素に比べて高分子である尿酸までしか分解されないため、核酸の代謝で問題になるのはプリン塩基(アデニンとグアニン)である
プリン代謝はDe novo合成系とsalvage合成系の2つの系に分かれる
De novo合成系は肝臓で働いており、グルコースからペントースリン酸系を経てPRPP、IMPを元にしてAMP・GMPを作る経路
salvage合成系は全身の組織で動いている経路。アデニン・ヒポキサンチン・グアニンをPRPPに結合させると同時に、AMP・IMP・GMPにリサイクルする。リサイクルに必要な酵素は、アデニンがAPRT、ヒポキサンチンとグアニンはHGPRTである(HGPRT完全欠損症はLesch-Nyhan症候群とよばれる)
キサンチンを尿酸に代謝するのがキサンチンオキシダーゼであり、これが痛風治療薬アロプリノールの阻害ターゲットである
 痛風の定義と臨床症状
 定義 高尿酸血症を原因として尿酸塩の結晶が析出して急性炎症を発現する疾患
症候
痛風発作
70%が第1中足趾関節でおこる。突然激しい疼痛と発赤、腫脹を伴って発症し、24時間以内にピークに達する。白血球数の増加、CRP値の上昇、赤沈の亢進が起こる。片側性、単関節炎の形で約10日前後で、軽快・寛解する。コルヒチンが特異的に効果を示す。治療をしなければ年に数回の頻度で起こり、その後頻度が次第に高くなり足関節、足背関節、膝関節など他関節も侵されるようになる
痛風結節
過剰の尿酸塩が軟骨の内外、骨、滑膜、腱、皮下組織に沈着し、結節を形成したもの。好発部位は耳介軟骨
痛風腎
尿酸結晶が遠位尿細管・尿細管腔内に析出するため、尿流障害、尿細管腔閉塞、間質への尿酸塩沈着が起こり、上行性のネフロンの障害が惹起される
痛風のX線所見
T度:軟部組織の腫脹
U度:限局性の骨多孔症像、骨辺縁部の不鮮明化
V度:骨の打ち抜き像、骨辺縁の侵食像
W度:骨破壊像



偽痛風(ピロリン酸Caが関節内に析出し、痛風に似た関節炎を起こす疾患)
大関節(特に膝)が侵されやすい点、高齢者に好発し、性差がない点が異なる。X線で関節軟骨部に石灰化をみる(痛風では骨萎縮や打ち抜き像)。血液尿酸値は原則として正常。関節穿刺を行い、関節液内にピロリン酸Caの結晶を証明できれば診断確定
感染性関節炎(ブドウ球菌・レンサ球菌・淋菌・結核菌感染などおこる関節炎)
関節以外の感染所見。関節液で著明な白血球は細菌感染を疑わせる。塗沫染色や培養、抗原検出などの細菌学的検査で感染を証明する
慢性関節リウマチ
関節液に尿酸結晶をみない。多関節が侵される。関節外症状の有無から鑑別
治療
発作時
・インドメタシンなどのNSAIDsが第1選択
・発作予感期にコルヒチン(腹痛、下痢、悪心・嘔吐などの副作用をきたすので、あまり好まれない)
     ※発作時には尿酸産生抑制薬も排泄促進薬も投与してはならない
        (←尿酸値の急激な変動は尿酸の析出を促すと考えられているから)
間欠期
【食事療法】プリン摂取制限(プリンの多い食物:魚類、肉類、レバー、酒の肴、ビール)
・アルコールは控えめに(アルコールは尿酸の排泄を抑制する)
・アルカリ食品を積極的に摂取(野菜、海草、牛乳など)
・水分を多めに摂取(腎での析出を防ぐ)
・肥満があれば是正する(肥満は体内で尿酸の合成を促す)
運動療法  肥満防止の意味で行われる。1回約30分の軽い有酸素運動を毎日持続(無酸素運動は尿酸の析出を促進)
【薬物療法】・尿酸合成抑制薬(アロプリノール:キサンチンオキシダーゼの阻害)
・尿酸排泄促進薬(プロベネシド、ベンズブロマロン:尿中排泄量が増えるので尿路結石に注意を要する)
 高尿酸血症と他の生活習慣病の関係
高血圧・高脂血症・糖代謝異常・肥満などといった生活習慣病と高尿酸血症とは非常に関わりがあるし、実際に合併例も多い。高カロリー・肉過食・過飲などの原因の重なりや、代謝系での関わりが考えられる。代謝系の関わりとしては、例えば、内臓脂肪蓄積→門脈遊離脂肪酸の増加→肝臓中性脂肪合成の亢進→プリン体de novo合成の亢進、といった機序が考えられている。
また、高尿酸血症が心血管障害の原因の1つとなるという知見も最近重ねられており、動脈硬化→虚血性心疾患・脳血管障害の因子としても注目されている。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送