輸血医学総論
輸血の歴史
世界の動き日本の動き
1900年   LansteinerによるABO式血液型の発見
1910年   ABO式血液型の重要性の解明
1914年   血液凝固剤クエン酸ナトリウムの開発
1940年   Rh式D抗原の発見
1954年   Daussetによる抗白血球抗体の発見

1981年   AIDSの発見




1952年   日本赤十字社東京血液銀行の誕生
1967年   100%献血達成
1986年   400ml献血・成分献血の施行
1994年   白血球除去フィルターの導入
1996年   輸血後GVHD予防のための放射線照射開始
1997年   輸血に対するインフォームド・コンセントの導入
2000年   血液センターでのウイルスNAT検査の開始
輸血におけるインフォームド・コンセント
同種輸血の場合の内容自己血輸血の場合の内容
・輸血の必要性or可能性がある理由について
・輸血の種類および予定輸血量について
・輸血を受けた場合の副作用・合併症について
・貯血式自己血輸血とその意義について
・自己血輸血の採血を受けた場合の副作用・合併症について
     血管迷走神経反射、血圧低下、意識消失、徐脈など
・必要な検査、採血方法、および保存方法について
・造血剤および造血因子の投与の有無について
・自己血輸血の実施について
     種々の事故により使用不能になる可能性があること
     出血量が少なくて自己血を使わない可能性があること
     出血量が予想より多いと、同種輸血が急遽必要になること
輸血検査
ABO式血液型
血液型日本での
頻度
血球の
抗原
血清中の
抗体
オモテ試験※1ウラ試験※2
抗A抗BA血球B血球
A型39.1%H・A抗B
B型21.5%H・B抗A
O型29.4%H抗A・抗B
AB型10.0%H・A・Bなし
Bombay型※3まれなし抗A・抗B
1 オモテ試験…血球の抗原を調べる検査。抗体を加えて行う。
2 ウラ試験…血清中の抗体を調べる検査。抗原を加えて行う。
3 Bombay型…通常、赤血球膜上にはA・Bという2種類の抗原の他に、A・B両抗原の前駆体であるH抗原が
           発現している。H遺伝子の変異によって、H抗原をはじめ赤血球膜上のすべての抗原が発現されなく
           なったものがBombay(Oh)型で、血清中には抗A・抗B・抗H抗体が検出される。
血液型の変化
   血液型は遺伝によって受け継ぎ、指紋と同じように一生涯変化しないものと考えられているが、ごくまれに以下のように血液型が一過性に変化することがある。
ABO式血液型の変異
(A→O;B→Oなど)
白血病(特に赤白血病)において、腫瘍細胞由来の異常赤血球が産生されて、血液型抗原が消失することがある。この変異は一過性で、白血病の寛解とともに回復する
獲得性B
(O→B;A→AB/B)
直腸癌や細菌感染症によって、血中に癌細胞あるいは細菌由来の酵素が出現するために、赤血球の膜表面にB抗原が一過性に発現されることがある
自然抗体と不規則抗体
   赤血球に対する抗体には、自然抗体(規則抗体)と不規則抗体の2種類がある。
自然抗体ABO血液型の抗Aと抗B抗体のこと。遺伝によって受け継がれ、一生涯変化しないものとされている
不規則抗体抗A・抗B抗体以外の抗体の総称で、その多くは輸血や妊娠などの免疫感作後に産生される。日常よく遭遇する不規則抗体には、Rh系の抗Eや抗Lewis(抗Le)などがある。不規則性抗体の検出は、輸血副作用、血液型不適合妊娠などの原因を調べるため実施される
交差適合試験
   交差適合試験は、血液型の適合性だけでなく、不規則抗体の有無を検出するために、輸血直前に行う検査である。この検査を厳密に行えば、不規則抗体による即時的な輸血副作用(溶血反応)の発生を最小限にとどめて、できるだけ安全な輸血を行うことができるようになる。交差適合試験には主試験と副試験がある。
 患者血ドナー血目的
主試験血清血球患者血清中のドナー血に対する不規則抗体の検出
副試験血球血清ドナー血清中の患者血球に対する不規則抗体の検出
血小板抗原
   赤血球の表面にはHLAの発現はみられず、A抗原とB抗原が発現しているが、血小板の表面上にはHLAクラスT抗原とヒト血小板特異抗原(HPA)が発現している。血小板輸血時には、これらの抗原に対する抗体の反応によって種々の病態がおこることがある。
血小板同種抗原が関与する病態
 病因病態主な症状
輸血後紫斑病
(PTP)
輸血血液中の抗HPA抗体患者の血小板を破壊し、著しい血小板の現象がおこる紫斑
新生児同種免疫性
血小板減少症(NAIT)
母親の抗HPA抗体児の血小板破壊に伴う血小板減少重篤例では、
脳内出血・水頭症
血小板輸血不応状態患者の抗HLA抗体or抗HPA抗体輸血された血小板の破壊血小板輸血不応症
適正輸血
血液製剤の種類とそれぞれの特徴
製剤保存条件有効期限内容適応
赤血球濃厚液
(RCC)
4〜6℃
(冷蔵庫)
採血後 21日間200ml全血(1単位)由来の場合、MAP液が添加され、最終容量は約140mlとなる。Ht値は60〜70%で、Hbは1単位に約29g含まれている。体重50kgの男性に1単位投与すると、Hbが0.5g/dl、Htが1.5%上昇するとされる出血(循環血液量の
        15%以上の減少)
貧血(Hb 8.0g/dl 以下)
再生不良性貧血、
白血病、溶血性貧血
新鮮凍結血漿
(FFP)
-20℃以下
(冷凍庫)
採血後 1年間
※1
融解後 3時間
いったん凍結させて保存し、使用直前に融解させることから、細胞成分はほとんど破壊されるが、凝固因子(糖タンパク)は正常血漿中とほぼ同様の活性を示す凝固因子の欠乏による
出血傾向の是正
血友病、vWD、DICなど
濃厚血小板
(PC)
※2
20〜24℃
(室温)で
水平振盪
採血後 72時間血漿約20ml中に通常0.2×1011個以上の血小板を含む。これを1単位とし、体重50kgの男性に投与すると血小板が5000/μl増えると言われている。通常10単位〜15単位使用される血小板減少症
(2×104/μl 以下)
1 融解後3時間も経過すると、新鮮凍結血漿中の凝固因子(糖タンパク)が変性してしまうから
2 濃厚血小板を室温で保存するのは機能を温存するためで、水平振盪するのは呼吸交換の効率を上げる
      ためである
白血球除去フィルター
   輸血用血液製剤中に残存した白血球は、輸血副作用の1つである輸血後GVHDの主な原因で、これを99.99%以上除去するために開発されたのが白血球除去フィルターである。しかし、白血球を完全に100%除くことは不可能で、105〜106個程度は血液製剤中に残存しており、このフィルターだけで輸血後GVHDの発生を完全に阻止することはできない。そのため、輸血後GVHDの発生する可能性を限りなくゼロに近くするために、白血球フィルターに加えて、1.5Gy以上の放射線照射が行われる。
ABO血液型不一致造血幹細胞移植における輸血
ABO血液型不一致造血幹細胞移植における輸血
   主不適合とは、患者血清によりドナーの骨髄由来の赤血球が溶血する状態のことで、血液型の組み合わせとしては右表のようなものが考えられる。赤血球抗原の種類は患者の方で少なく、抗体の種類はドナーの方で少なくなっている。ABO血液型不一致の造血幹細胞移植においては、最終的に血液型はドナー型に変えられていくが、そこにはいくつかのステップがある。まず、前処置開始後に、ドナー型の血小板・FFPが輸血に使用されるようになる。これは、患者の血液に、抗体の種類の少ないドナー側の血小板・FFPを入れても、溶血がおこらないためである。この段階で、ドナー型の赤血球を入れると、患者の血清中の抗体がこれを攻撃するため、血清中の患者由来の抗体がなくなるまでは患者型の赤血球が、それ以降に初めてドナー型の赤血球を輸血に使用できるようになる。
   副不適合とは、主不適合とは逆に、ドナー血漿により患者の赤血球が溶血する状態のことで、血液型の組み合わせとしては右表のようなものが考えられる。赤血球抗原の種類はドナーの方で少なく、抗体の種類は患者の方で少なくなっている。主不適合の場合と同様に考えると、前処置開始後から、含まれる抗原の種類の少ないドナー型の赤血球を投与し、患者の血球がなくなってから、患者の血球を攻撃してしまう可能性のあるドナー型の血小板・FFPを投与すればよいこととなる。患者の抗体がなくなるよりも血球がなくなる方が時間的に遅れておこるので、図で表すと上のようになる。
   主副不適合とは、患者血清によりドナーの骨髄由来の赤血球が、ドナー血漿により患者の赤血球がそれぞれ溶血する状態のことで、血液型の組み合わせとしては右表のようなものが考えられる。赤血球抗原の種類、抗体の種類とも、患者側とドナー側で大きく異なっている。そのため、前処置開始後から患者の抗体がなくなるまでは、表面抗原をもたないO型の赤血球を使用し、前処置開始後から患者の血球がなくなるまでは、抗A抗体も抗B抗体ももたないAB型の血小板・FFPを用いることになる。
主不適合
患者の血液型ドナーの血液型
OA/B/AB
AAB
BAB

副不適合
患者の血液型ドナーの血液型
ABO/A/B
AO
BO

主副不適合
患者の血液型ドナーの血液型
AB
BA
自己血輸血
   自己血輸血ではウイルスなどの感染症や同種免疫による副作用が少ないことから、最近では患者からの希望も増え、需要も増加してきている。自己血輸血には大別して以下の種類がある。
 血液の由来長所短所(可能性)
術前貯血式手術予定の約2〜3週間前から貯血開始免疫反応、ウイルス感染なし貯血量に制限
患者の貧血状態
貯血期間が必要
増血剤が必要
術前希釈式手術直前に脱血し保管する免疫反応、ウイルス感染なし
緊急時に対応
貯血期間が不要
循環動態の変化
脱血量に制限
術中回収式手術中の出血した血液を回収免疫反応、ウイルス感染なし
緊急時に対応
脂肪・空気塞栓
細菌や癌細胞の混入
   注目を集めている自己血輸血ではあるが、採血時の合併症(迷走神経反射など)、血液の取り違え、採取血液の汚染などの問題をかかえている。
輸血副作用
輸血副作用の種類
 即時型遅延型
溶血性
副作用
即時型溶血反応遅延型溶血性輸血副作用(DHTR)
非溶血性
副作用
発熱性副作用
アレルギ―性副作用
アナフィラキシー様副作用
輸血関連急性肺障害(TRALI)
クエン酸中毒
凝集塊や空気の混入に伴う塞栓症
輸血後GVHD
血小板輸血不応状態
輸血後紫斑病
ヘモクロマトーシス
感染性
副作用
輸血感染症
溶血性副作用
 即時型輸血副作用遅発型輸血副作用
時期輸血開始後、数秒〜数時間以内輸血後7〜10日頃
原因ABO不適合輸血輸血された赤血球抗原に対する既往抗原の存在(免疫の2次応答がおこる)
症状
軽症(ここまでで気づけば治療不要)
輸血肘静脈から腋窩にかけての熱感、血管痛、顔面紅潮・蒼白、不隠状態、胸内苦悶、呼吸困難、頻脈、腹痛、腰痛
中等症(直ちに輸血を中止して治療)
発熱、悪寒・戦慄、悪心、嘔吐、失禁、チアノ−ゼ
重症(死亡につながる)
血圧低下、ショック、血色素尿症、乏尿・無尿、腎不全、DICの合併
即時型輸血副作用に比べて症状は軽く、DICや急性腎不全をおこすことはまれ。症状としては、
  ・発熱
  ・黄疸…輸血された血清中の抗体が結合した赤
     血球は肝脾の網内系で捕捉され、Hbの代謝
     産物であるビリルビンが血中に放出される
      (血管外溶血)
  ・貧血…急速に進行し、輸血を必要とすることが
      多い
  ・褐色尿…血管内溶血により、赤血球中のHbが
      血管内に放出され、腎から排出される
特徴人為的ミスによっておこるものが多い輸血経験者や妊娠既往のある人に多い
治療・輸血の中止(留置針は残しておく)
・輸液(血圧維持・利尿のため)
・(血圧低下の際には)ドーパミン投与
・(乏尿の際には)利尿剤の静注
・血液透析(輸血・利尿剤に反応しない場合)
輸血後日数が経過しているので、診断をつけることが一番重要である。一般に症状は軽く、特に治療の必要はない。しかし、貧血が急速に進行して、輸血を必要とすることが多いので、適合血の準備が必要である
非溶血性副作用
発熱性副作用
【症状】輸血中or輸血後2時間以内の発熱
【頻度】0.4〜2%
【原因】頻回輸血によって患者血清中にできた抗顆粒球抗体・抗HLA抗体・抗血小板抗体および発熱性サイトカイン(IL-1・IL-6・TNFαなど)
【予防】白血球除去フィルターで、ある程度可能。保存前白血球除去を行うと、発熱性サイトカインの産生が抑制される
【対処】直ちに輸血を中止し、必要に応じて下熱剤を投与する。患者血清と輸血製剤のパイロットチューブを血液センターに検索のために提出する。洗浄血液製剤の投与を考慮する
アレルギ―性
副作用
【症状】蕁麻疹・血管浮腫・皮膚紅斑など皮膚に限局したアレルギー反応
【時期】輸血後数分〜30分以内
【頻度】全輸血患者の1〜2%
【原因】濃厚血小板が全体の半数以上を占め、血漿蛋白に対するアレルギー反応が主因と考えられている
【治療】抗ヒスタミン剤(全身性の症状の時にはステロイド剤)の投与を考慮する
【予防】蕁麻疹などの軽症のアレルギー反応を繰り返すものでは、輸血前に抗ヒスタミン剤を投与する(血液製剤中に混ぜると、溶血がおこってしまうので、必ず輸血前に行う)
アナフィラキシー様
副作用
【症状】皮膚などの局所にとどまらず、全身違和感・腹痛・下痢・嘔吐・呼吸困難・喘鳴・頻脈・不整脈・ショックなどの全身症状を伴う重症即時型のアレルギー反応
【時期】輸血後数分〜30分以内(わずか数mlで発症することもある)
【頻度】全輸血患者の0.02〜0.1%
【原因】濃厚血小板が全体の70%以上を占め、血漿蛋白に対する同種免疫反応が主因と考えられている
【背景】頻回輸血患者、輸血に対するアレルギー歴のある患者、妊娠歴のある女性に多い。その他、IgA欠損症(IgG抗体)、トランスフェリン血症、ハプトグロビン血症などのある患者でも高率に発生する
【治療】アドレナリンの皮下投与、ステロイド剤の静注、抗ヒスタミン剤の投与、ドーパミンなどの昇圧剤の投与
【予防】輸血によるアナフィラキシーの既往のある患者では輸血を避ける。どうしても輸血が必要な場合には、血漿蛋白の除去されている洗浄血を用いるか、ステロイド剤などの前投与を行う
輸血後GVHD
(TA-GVHD)
【病態】血液製剤中のリンパ球が患者のHLA抗原を認識し、急速に増殖して患者の体組織を攻撃・障害することによりおこる。当初は免疫不全患者にのみ発症すると考えられていたが、免疫不全のない患者でも、HLAの一方向適合を主要な条件として発症することが分かった
【症状】輸血の1〜2週間後に発熱・紅斑が出現し、肝障害・下痢・下血などの症状が続き、最終的には骨髄無形成・汎血球減少症、さらには多臓器不全を呈し、輸血から1ヶ月以内にほとんどの症例が致死的な経過をたどる
【機序】ドナーのHLAハプロタイプがa/aで、受血者のHLAハプロタイプがa/bの場合(HLAの一方向適合)、受血者側のリンパ球(a/b)は供血者側のリンパ球(a/a)を認識できないが、供血者側のリンパ球(a/a)が受血者側のリンパ球(a/b)のbを認識して攻撃する。その結果、供血者側のリンパ球(a/a)が生着増殖し、受血者の組織を攻撃するようになる
【背景】原疾患は外科系手術患者が全体の約8割を占め、胸部外科開心術症例と担癌患者手術症例に特に多い
【原因】血液製剤としては、リンパ球の力が維持されている新鮮血によるものが約半数を占める
【予防】血縁者からの輸血を避けることと、輸血用血液の放射線照射(15〜50Gy)
   ※放射線照射によりK+濃度が上昇するので、できるだけ早めに使用する
【治療】現時点で確実な治療法はなく、死亡率95%以上
【診断】マイクロサテライトDNA法により、患者以外のリンパ球が増えていることを証明すれば、診断は確定となる
輸血関連急性肺障害
(TRALI)
【症状】輸血の数時間後に、発熱・咳・呼吸困難・血圧低下などが出現する。輸血後に喘鳴を聞いた際には、まずこの疾患を疑わなければならない
【特徴】症状は循環負荷によらない
【頻度】発生頻度は低いが、輸血副作用の死亡原因としては高い
【原因】血液製剤中および受血者血中の抗白血球抗体(抗HLA抗体・抗リンパ球抗体・抗顆粒球抗体)など
【所見】胸部単純X線写真で、両側間質影・肺浸潤影が認められる。心拡大はない
【治療】酸素投与、呼吸と循環の管理、ステロイド使用
輸血後紫斑病
【症状】輸血後1週間くらいに血小板が著明に減少し、これが1ヶ月以上持続する
【病因】輸血により血小板特異抗体が患者血清中に産生され、これが患者血小板を破壊する
【治療】糖質コルチコイド(副腎ステロイド)の投与および血漿交換
ヘモクロマトーシス1mlの全血はFeを0.5mg含んでおり、24時間以内に排泄されるFeは約1mgである。頻回の輸血を受けると、Feが網内系に蓄積し、実質細胞にも沈着して、組織障害をおこす。治療では、deferoxamineを投与して、体内に蓄積されたFeを排出させればよい
クエン酸中毒採血した血液はそのままの状態では固まってしまうので、抗凝固剤が加えられている。その抗凝固剤の中にクエン酸が含まれている。大量輸血時には、大量のクエン酸が体内に入ることになる。クエン酸はCa2+と結合する性質があるため、一時的に血中のカルシウム濃度が下がり、唇や指先がしびれたり、寒気がしたりすることがある。しかし、体内に入ったクエン酸は速やかに代謝されるので、体内に蓄積して害を及ぼすことはほとんどない
   ※急速大量輸血時には、クエン酸中毒による低カルシウム血症以外に
      高カリウム血症がおこることがある
感染性副作用
輸血時に感染症を引き起こす可能性のある主な病原体



B型肝炎ウイルス問診、HBs抗原・HBc抗体、NAT(ウイルス核酸増幅)検査により予防
C型肝炎ウイルス問診、HCV抗体、NAT検査により予防
GB肝炎ウイルス輸血後肝炎の原因ウイルス。現在は輸血のためのスクリーニング検査は行われておらず、目下検討中である
HIV問診、HIV抗体、NATにより予防
HTLV-1問診、HTLV-1抗体により予防
パルボウイルスB-19小児流行性紅斑(リンゴ病)の原因ウイルス。溶血性貧血の患者で赤芽球癆をきたす。スクリーニング検査を検討中
サイトメガロウイルス飛沫感染により、多くの人は成人するまでに免疫を獲得している。免疫不全状態時に輸血で感染すると、骨髄障害・肝障害 ・間質性肺炎などをきたす。白血球除去フィルターで予防可能

エルシニア菌採血後間もない血液では混入したエルシニア菌を迅速確実に検出するスクリーニング法は現在ない。長期保存時には、血液バッグの外観が変化する(MAPであれば、少し赤っぽい色→真っ黒)ことに注意
皮膚常在菌採血部位の消毒により予防


梅毒問診、RPR、TPHAにより予防
プリオンクロイツフェルド・ヤコブ病(CJD)の原因となるタンパク質。イギリスで狂牛病が流行した1980〜1996年に通算6ヶ月以上滞在したことのある人からの献血は断っている
マラリア問診、帰国後献血制限により予防
その他の輸入感染症問診、帰国後献血制限により予防
西ナイルウイルス問診、帰国後献血制限により予防
細胞治療・再生治療と輸血医学
ウイルス不活化
   輸血により伝播するウイルスには、HIV・HBY・HCV・HTLV-1・CMV・HPV B19などたくさんの種類がある。抗原抗体反応を利用した検査やNAT検査(ウイルス核酸増幅検査)がスクリーニングで取り入れられるようになり、血液製剤は以前に比べてはるかに安全なものになってきたが、スクリーニング検査だけで、輸血によるウイルスの伝播を完全に防ぐことはできない。
   そこで、@光増感剤やA化学化合物を使って、血液製剤中のウイルスを不活化させようという取り組みが始められている。
   @の光増感剤(メチレンブルーなど)は、光による励起を利用してフリーラジカルを生成し、ウイルスに障害を与えるものであるが、白血球をも不活化する上、溶血・カリウム漏出・赤血球凝集などの問題がある。
   一方、Aの化学化合物は、ウイルスのDNAを破壊する物質であるが、まだ変異原性など不明な点も数多く残っている。
人工血液製剤
   ヒト由来血液製剤には、感染症リスクの存在、輸血副作用の可能性、血液型への依存性、原料供給の問題、保存期間の短さ、緊急災害時の大量確保の困難さなどの問題があるため、人工血液製剤の研究・開発が最近になって行われ始めている。
   人工血小板は今現在研究中で、製品化にはまだまだ時間がかかりそうである。人工血漿としては、人工的膠質輸液や遺伝子組み替え型ヒトアルブミンの利用が考えられている。人工赤血球は最も開発が進んでおり、人工の酸素運搬体としてさまざまな種類のものが開発されている。日本ではそのいくつかが臨床試験中で、実際に臨床の場で使われ始めるのもそう遠くないかもしれない。
血液浄化療法
血漿交換(PE)分離された血漿を廃棄し、ヒト蛋白成分を含む電解質液で置換する方法で、主に新鮮凍結血漿で置換されることが多い。このように一般に大量の補充液が必要で、適応は血管疾患では血小板減少性紫斑病・尿毒症症候群・過粘稠度症候群・クリオグロブリン血症・輸血後紫斑病など限られたものにすぎない
血液(血漿)吸着
(二重濾過法)
体外循環回路中に2重のフィルターを挿入して、血液中から病因物質or病因関連物質を吸着する方法。2次フィルターでトラップされた血漿大分子だけが廃棄され、1次フィルターでトラップされた血球成分と2次フィルターを通過した血漿の小〜中分子をあわせて体内に戻す
血球除去血液成分中の細胞を分離除去する方法。膠原病(RAなど)、炎症性腸疾患において行われるリンパ球除去、白血病において行われる白血球除去、骨髄増殖性疾患(CML・本態性血小板増多症)において行われる血小板除去の3種類がある
血液透析(HD)腎臓内科で広く用いられる透析法。多孔質膜の中空糸をダイアライザー(透析器)として用い、ここで微小孔を介した血液と透析液との浸透圧差による水分と老廃物の除去が行われる。合併症として、循環不全、出血傾向、脳神経障害、感染、補体系の活性化による肺障害、透析アミロイドーシス、二次性甲状腺機能亢進症などがあげられる
血液濾過(HF)腎臓内科で用いられる血液浄化法。濾過により、半透膜を介して水・溶質の交換を行うものである。水透過性の高い半透膜を通して大量の濾液+溶質が排泄されるため、その分を補充液にて補わなければならない。急性腎不全や肺水腫などの治療の際には、水分除去が目的のため補充液は用いられない(限外濾過)
腹膜透析(PD)腎臓内科で用いられる血液浄化法。腹膜を透析膜として利用し、腹腔内への透析液の注入→貯留→排出をくり返すことにより血液の浄化が行われる
妊娠と輸血〜血液型不適合妊娠による新生児溶血性疾患〜
   新生児溶血性疾患(HDS)とは、胎児赤血球が母体血流に流入することにより免疫刺激を受けて、母体で産生された抗体が胎盤を通過して胎児に移行し、対応抗原をもつ胎児赤血球と結合し、この血球が分娩前or分娩後に溶血に至ることをいう。
   原因となる抗体はIgG抗体である。主としてRhとABO抗原がHDNの原因となるが、Rh型不適合によるものが最も多い。
   RhD(−)の妊婦がRhD(+)の児を身ごもった場合には、抗RhD抗体の有無により2つの対処法がある。RhD不適合輸血あるいはRhD不適合妊娠の既往のために、抗RhD抗体がすでに血液中に産生されている場合には、母体の血漿交換や子宮内胎児輸血を行わなければ、胎児は助からない。一方、母体に抗RhD抗体が存在しない場合には、抗D免疫グロブリンの筋注を行って、母体がRhD抗原に感作されるのを防止しなければ、いずれ抗体が産生されるようになり、胎児はHDSになってしまう。
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