5月31日 赤血球の産生と破壊;赤血球系の異常  担当:堀(講師)
※レポートの解答で書くべきところは赤で示している 
1)前赤芽球、CFU-E、網赤血球、BFU-E、好塩基性赤芽球を未分化なものから順に並べよ。このうちエリスロポエチンの感受性が高いのはどれか。
   赤血球は以下の順序で分化していく。
赤血球
前駆細胞
BFU-E前期赤芽球系コロニー形成細胞の略で、骨髄球系幹細胞から分化してくる。SCF、IL-3に感受性が高く、EPO感受性は低い
CFU-E後期赤芽球系コロニー形成細胞の略。EPOによく反応
赤芽球前赤芽球形態的に観察できるもっとも幼若な赤血球系の細胞。EPOの存在下で分化していく
好塩基性赤芽球赤芽球は最初青味を帯びている。EPOの存在下で分化していく
多染性赤芽球Hbの産生が盛んになり、胞体に赤みが増した状態。EPOの存在下で分化していく
正染性赤芽球十分なHb合成を終えて、赤色になった状態。EPOの存在下で分化していく
末梢血中
の赤血球
網赤血球正染性赤芽球から脱核したもの。やや大型で青味を帯びている。通常末梢血の赤血球全体の1〜2%を占める。末梢血検査において赤血球産生能の指標となる
赤血球直径7〜8μmの円形。中心で切って横から見ると両面中くぼみ円盤状を呈する。染色標本ではHbがエオシンに染まり赤味を帯びるが、染まり方は均一ではなく中くぼみ部分が淡く染まり、これを中央淡明という。この部分は赤血球直径の1/3以下が正常である。赤血球は核がなく、タンパク合成能がない
2)成熟赤血球が脱核しbiconcave diskと呼ばれる形態をとることにはどのような利点があるのか説明せよ。
   赤血球が無核であることの利点としては、MHCが発現しないために広く輸血が行えること、酸素運搬に必要のないタンパクや細胞組織をできる限り排除することによって軽量化し、その機能を酸素運搬だけに特化することなどがあげられる。一方、赤血球がbiconcave disk(両面中くぼみ円盤)の形をとることの利点は、表面積を大きくすることによって酸素運搬を効率よく行うことにある。
3)ビタミンB12欠乏によるDNA合成障害のメカニズムを説明せよ。
   ビタミンB12(コバラミン)は、胃底・胃体部の壁細胞により産生分泌される内因子と複合体を形成した後、回腸のレセプターを介して吸収される。吸収された後、ビタミンB12は血中ではトランスコバラミンT・U・Vと結合して存在する。ビタミンB12は主として肝で貯蔵され、1日3〜9μgが腸肝循環し、大部分は再吸収される。
   ビタミンB12は組織細胞内で2つの異なる補酵素型、すなわちメチルコバラミンと5'-デオキシアデノシルコバラミンに変換される。
   メチルコバラミンは、ホモシステインからメチオニンを生成する反応においてメチオニン合成酵素の補酵素として働く。この反応は、5-メチル テトラヒドロ葉酸(貯蔵型葉酸)をテトラヒドロ葉酸(活性葉酸)に換える反応を同時に起こす。こうしてできたテトラヒドロ葉酸は、チミジル酸合成反応(dUMP→dTMP)やプリン体合成反応に必要な補酵素であり、ビタミンB12が欠乏するとテトラヒドロ葉酸の欠乏を引き起こし、その結果DNAの構成成分の1つであるチミン合成がストップしてしまう。
RNAの構成成分であるウラシル合成は正常なため、RNA合成やタンパク合成の異常は軽度で、臨床的には巨赤芽球性貧血とよばれる病態を示す。巨赤芽球性貧血は、骨髄細胞のDNA合成に障害が起こり、骨髄に巨赤芽球が出現する貧血の総称で、ビタミンB12欠乏により生じるほか、葉酸欠乏や先天性代謝異常、薬剤による核酸代謝障害などによっても起こる。
   5'-デオキシアデノシルコバラミンは、メチルマロニルCoAからサクシニルCoAを生成する反応においてメチルマロニルCoAムターゼの補酵素として働く。メチルマロニルCoAはバリンやイソロイシンから生成するもので、きわめて毒性が強い。そのため、ビタミンB12が欠乏した場合には、メチルマロニルCoAはただちに酸化されてメチルマロン酸として尿中から排泄される。尿中メチルマロン酸排泄量がビタミンB12欠乏の指標として用いられるのはこのためである。
   ビタミンB12欠乏の原因としては、@摂取不足、A内因子の欠乏(←胃全摘などによる)、B腸管内での競合による消費、C吸収部位の異常、D不活性化などがある。また、血中での細胞移送を司るトランスコバラミンUの欠損や補酵素型B12への変換障害があれば、細胞はビタミンB12欠乏と同じ状態に陥る。
4)体内での鉄の吸収、運搬、貯蔵について述べよ。
   鉄はFe2+の形で十二指腸の上部から吸収される(健常者でその量は1日約1mg)。吸収された鉄はトランスフェリンと結合して、肝を経て骨髄へ運ばれる。
   骨髄の細胞膜上にはトランスフェリンレセプターがあり、鉄-トランスフェリン複合体は細胞内に取り込まれる。鉄イオンはフェリチンあるいはヘモジデリンとして細胞質内に貯蔵され、体内の鉄欠乏時にはここから鉄が放出される。
トランスフェリンは再び血漿中に戻り、鉄の運搬を行うためにリサイクルされる。
   体内には3〜4gの鉄があり、その65%はヘム鉄としてHb中に存在している。フェリチンやヘモジデリンとして細胞質内に貯蔵されているのは体内の鉄の約30%で、残りは筋肉中のミオグロビン、ミトコンドリア内のシトクロムなどに微量に存在する程度である。
5)生理的な赤血球の破壊はどこでどのように行われるのか。また、そのとき赤血球から出るヘモグロビンの代謝について説明せよ。
   赤血球は120日の寿命の後、脾・肝などの細網内皮系(網内系)細胞によって捕捉・貪食され、処理される。その際に赤血球中のヘモグロビンはヘムとグロビンに分解される。タンパク質であるグロビンはアミノ酸に分解されて再利用される。
   一方のヘムは開環し、鉄を放出する。鉄はトランスフェリンにより運搬されて再び骨髄に移送され、フェリチンとして貯蔵された後、再利用される。開環したヘム(緑色のビリベルジン)は還元され、間接型ビリルビン(水に不溶)となり、アルブミンと結合し肝に運ばれグルクロン酸抱合をうけ、直接ビリルビン(水溶性)として胆汁から排泄される。直接型ビリルビンは腸管でさらに還元・酸化を受け、種々のウロビリン体として糞便に排泄される。ウロビリン体の一部は腸管より吸収され、腸肝循環をなす。
6)赤血球恒数(MCV、MCH、MCHC)それぞれの計算式を意味を説明せよ。
赤血球恒数計算式意味正常値
平均赤血球容積
(MCV)
Ht(%)   
 ――――――――×10
赤血球数(106/μl)     
 
1個あたりの赤血球の容積を表す。MCVが正常範囲にある場合は正球性、85fl以下の場合は小球性、100fl以上の場合は大球性とよぶ85〜100fl
平均赤血球Hb量
(MCH)
Hb(g/dl)   
 ――――――――×10
赤血球数(106/μl)     
 

赤血球の平均ヘモグロビン含有量
 
27〜35pg
平均赤血球Hb濃度
(MCHC)
Hb(g/dl)   
 ―――――×10
Ht(%)   
 
赤血球内のHbの飽和度を表す。MCHCが正常範囲にある場合を正色素性、32%以下にある場合を低色素性とよぶ32〜36%
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