因子 | 慣用名 | 特徴・性質 |
I | フィブリノーゲン | 共通系。フィブリノーゲンの減少or質的異常は、トロンビン時間の延長をおこす |
II | プロトロンビン | 共通系。肝で産生される際にビタミンKが不可欠。FXa-FV-Ca2+-リン脂質複合体の働きによってできるトロンビンは、肝で合成されるアンチトロンビンIII(ATIII)や、血管内皮細胞から分泌されるトロンボモジュリン(TM)によって不活化され、調節を受けている |
III | 組織因子(TF) | 外因系。血管内皮下組織などで産生され、血管内皮細胞障害時に血中のFVIIaなどと複合体を形成し、外因系の凝固反応を開始させる |
IV | Ca2+ | 内因系・外因系・共通系のすべてで働く、凝固因子で唯一の無機物質(他はすべて分子量約5万以上の糖タンパク) |
V | 不安定因子 (プロアクセレリン) | 共通系。肝で合成されるプロテインC(PC)によって不活化される |
VII | 安定因子 (血清プロトロンビン転化促進因子) | 外因系。肝で産生される際にビタミンKが不可欠 |
VIII | 抗血友病因子(AHF) | 内因系。肝・脾のマクロファージにより産生される。血友病Aは第VIII因子の先天的活性低下によっておこる。プロテインCによって不活化される |
IX | Christmas因子 | 内因系。肝で産生される際にビタミンKが不可欠。血友病Bは第IX因子の先天的活性低下によっておこる。アンチトロンビンIIIによって不活化される |
X | Stuart因子 | 共通系。肝で産生される際にビタミンKが不可欠。アンチトロンビンIIIによって不活化される |
XI | 血漿トロンボプラスチン 前駆物質(PTA) | 内因系。内因系のカスケードにおいて2番目に活性化される |
XII | Hageman因子 | 内因系。高分子キニノーゲン・プレカリクレインとともに、内因系のカスケードの最上位に位置する |
XIII | フィブリン安定化因子(FSF) | 共通系。強固な止血栓の形成に不可欠な分子で、フィブリン網の形成後にその安定化因子として働く。アレルギ―性紫斑病(Scho¨nlein-Henoch紫斑病)の多くで第XIII因子の低下が認められる |
vWF | von Willebrand因子 | 血小板の膜表面の糖タンパク(GP)Ib/IXが、血管内皮下組織のコラーゲンと結合する際(血小板の粘着)に、"糊"として働く糖タンパク。血小板中のα顆粒内に存在する |
定義 | 血小板膜の糖タンパク(GP)IIb/IIIa複合体の量的・質的異常に起因する血小板凝集能の障害による先天性出血性疾患。常染色体劣性遺伝形式をとる |
病態 | 血小板の凝集は、血小板表面のGPIIb/IIIaにフィブリノーゲンが結合し、血小板相互間を架橋することによって起こる。血小板無力症では、GPIIb遺伝子またはGPIIa遺伝子の構造異常や点突然変異によってGPIIb/IIIaの欠損や機能異常をきたし、血小板凝集能が低下して、止血障害を起こす |
臨床症状 | 生後まもなくから、皮膚・粘膜出血をきたす。鼻出血、紫斑、歯肉出血、月経過多などがみられる |
検査所見 | 出血時間は著明に延長。ADPやコラーゲンによる凝集は低下。血餅退縮※の不良。血小板膜糖タンパクの解析によるGPIIb/IIIaの異常を検出 ただし、血小板の数・形態、PT・APTT、リストセチン凝集は正常 血清が中から絞り出される現象。これはフィブリンが血小板のGPIIb/IIIaに結合し て起こるため、血小板無力症では血餅退縮の不良をきたす |
診断 | 出血傾向があり、血小板数は正常で出血時間は著明に延長し、血餅退縮が不良ならば、本症が疑われる。ADP凝集の欠如があれば確定的である。検査が可能であればGPIIb/IIIaの異常を確認する |
治療 | 止血困難時に血小板輸血を行う |
定義 | 第IX因子の活性の先天的欠乏により出血傾向をきたす疾患(第VIII因子の活性の先天的欠乏によるものは血友病Aとよばれる)。伴性劣性遺伝で、男性が発症し、女性は保因者となる |
病態 | X染色体上の第IX因子の遺伝子の異常による、これらの因子の産生低下や、機能の低下した異常な因子の産生に起因する。第IX因子は内因系血液凝固反応に重要であり、活性低下により血液凝固が遅延し、止血障害が起こる。凝固因子は、正常の30%程度あれば凝固は遅延しないため、もう1つのX染色体が正常である女性保因者は止血障害をきたさない |
臨床症状 | 出血症状の重症度は、患者のこれらの因子の欠乏の程度による。1%以下は重症、1〜5%は中等症、5〜25%は軽症となる。重症例では、乳幼児期から打撲部の皮下血腫、関節内出血(熱感と腫脹を伴う激痛)、筋肉内出血、血尿、頭蓋内出血などを生じる。軽症例では、抜歯や外傷後の止血困難で気づくことがある |
検査所見 | APTT・全血凝固時間は重症度に応じて延長する。第IX因子の活性の低下(25%以下) ただし、PTとフィブリノゲン濃度、血小板数と出血時間、vWFの活性・抗原量は正常 |
診断 | 上記の症状を呈する男性患者に対し、APTTが延長しPTが正常であり、第IX因子の活性が低下していれば、診断がつく |
治療 | ・補充療法:出血時や手術時に部位と程度に応じて、第IX因子を輸注 ・血友病性関節症に対するリハビリテーション |
定義 | 血中のvWFの欠乏or質的異常による血小板の粘着障害に起因する先天性出血性疾患。常染色体優性(一部の病型は劣性)遺伝形式をとる |
病態 | vWFの欠乏or質的異常に起因する血小板粘着不全による1次止血障害をきたして、出血傾向を生じる。また、血中でvWFは第VIII因子と複合体をつくり、第VIII因子を安定化させる作用をもつため、vWFの欠乏や異常に伴って第VIII因子活性も低下する。 vWFの異常の内容により、T型(量的減少)、U型(質的異常)、V型(欠如)、血小板型(血小板膜の異常によるvWFの吸着)の4病型に分けられる |
臨床症状 | 病型や vWF活性の低下の程度によって異なる。多くは幼児期から皮膚・粘膜出血をきたす。特に鼻出血が多く、紫斑、歯肉出血、消化管出血、月経過多などもみられる。関節内や筋肉内の深部出血は通常みられない |
検査所見 | 出血時間延長。APTT延長(第VIII因子活性の低下による)。リストセチン凝集は異常(通常低下)。vWF活性(リストセチン・コファクター活性として測定)やvWF抗原量は低下 ただし、血小板数と血小板形態、PT、ADPやコラーゲンによる凝集は正常 |
診断 | 皮膚・粘膜出血があり、血小板数正常、出血時間延長、APTT延長があればvWDを考え、vWF活性の低下が認められれば、診断は確定する |
治療 | ・vWFを含んでいる加熱第VIII因子濃縮製剤の静注 ・デスモプレシン(DDAVP)※の点鼻or静注(T型に対して有効) ※DDAVP…出血時に、血管内皮細胞からのvWF放出刺激作用がある |
定義 | 血小板減少症・巨大血小板・出血傾向を特徴とする疾患。常染色体劣性遺伝形式をとる |
病態 | 血小板粘着に必須の粘着タンパクであるvWFのレセプターであるGPIb/IX複合体の欠如or分子異常のために血小板粘着障害がおこり、その結果として種々の凝固障害の症状を呈する |
臨床症状 | 通常、幼時期・小児期に皮下出血斑、鼻出血、歯肉出血などの出血症状を呈し、それ以後は過多月経、消化管出血、外傷後の止血困難などを時折認める |
検査所見 | リストセチン凝集の欠如(正常血漿添加によっても是正されない)、血小板数は軽度減少 ただし、ADPやコラーゲンによる凝集、vWF抗原量は正常 |
診断 | 皮膚・粘膜出血があり、リストセチン凝集が欠如し、ADPやコラーゲンによる凝集は正常であるが、vWF抗原量は正常であり、血小板数が軽度減少し、多くは大型血小板であるという特徴から診断可能である |
治療 | 輸血 |
@血管の異常によるもの ・先天性:遺伝性出血性末梢血管拡張症など ・後天性:アレルギー性紫斑病など |
A血小板の異常によるもの ・血小板減少 血小板産生の低下:再生不良性貧血など 血小板の破壊・消費:特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、 播種性血管内凝固症候群(DIC)など 分布の異常:脾腫を伴う疾患 ・血小板機能異常 内因性:血小板無力症など 外因性:vWD、薬物性など |
B凝固・線溶の異常によるもの ・凝固因子活性の低下 先天性:血友病など 後天性:ビタミンK不足や凝固因子インヒビター ・線溶の亢進:先天性プラスミンインヒビター欠損症など |
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