軟部腫瘍
 概念 軟部組織および末梢神経由来の腫瘍であって、非常に多様性に富む集団である
疫学良性軟部腫瘍は正確な頻度の把握は難しいが、人口10万人あたり年間約300例くらいと考えられている。悪性軟部腫瘍は人口10万人あたり2〜10例程度とされている
分類まず良性と悪性に分類され、その上で腫瘍がどの組織への分化傾向をもっているかによって以下のように分類されている。
 良 




脂肪腫成人の良性軟部腫瘍で最も頻度が高い。成熟脂肪細胞が増殖したもので、時に巨大化し悪性との鑑別が問題となることがある
血管腫多くは組織奇形を基盤とした血管増殖で、全身各所に発生する。しばしば静脈結石を伴う
腹壁外デスモイド線維芽細胞が増殖したもの。浸潤性・再発性が高いが、基本的に治療は不要で経過観察で十分である
ガングリオン間接包や腱鞘、関節周囲結合組織の粘液腫様変性によって生じた小嚢胞の癒合したもの。手指、手、足背に好発する
 色素性絨毛結節性滑膜炎 関節内滑膜組織の絨毛状・結節状増殖性病変。膝関節に好発し、再発性の関節血腫を主症状とする





 悪性線維性組織球腫 
(MFH)
50〜70歳台に好発するwaste box的な疾患群。多形性を示す線維芽細胞様細胞と組織球様細胞から構成され、多彩な組織像を示す。最近は、診断技術の進歩により、MFHの診断は減少傾向にある
脂肪肉腫40〜60歳台に好発する。病理所見から4つの型に分類されるが、そのうちの円形細胞型と多形型が特に悪性度が高い。粘液型と円形細胞型では、共通して融合遺伝子TLS-CHOP・EWS-CHOP)が認められる
平滑筋肉腫50〜60歳台に好発。化学療法抵抗性で、腫瘍塞栓を合併しやすく、治療成績が悪い
滑膜肉腫20〜40歳台に好発。四肢の関節近傍に多く発生する。融合遺伝子(SYT-SSX)が認められる。比較的化学療法が奏効する
横紋筋肉腫小児の悪性軟部腫瘍として重要であるが、高齢者に多く発生する多形型もある。増殖が速く、悪性度はかなり高いが、化学療法に対して感受性をもつ。しかし、遠隔転移が多く、予後は不良である
神経芽細胞腫副腎髄質から主に発生する悪性腫瘍で、小児に多くみられる
診断診断は、原則として生検により決定される。生検法には以下のようなものがある。
 穿刺細胞診 診断が困難な場合が多く、あまり用いられない
針生検侵襲が少ない半面、採取材料が不十分で診断不能となる場合がある(病理医の腕にもよるが)
切除生検
(excisional biopsy)
腫瘍全体を被膜とともに摘出するという方法で、3〜4以下の浅いところにある腫瘤に対してのみ行われる。悪性腫瘍の場合には、追加広範切除が必要となる
切開生検
(incisional biopsy)
皮膚を切開して直接腫瘍の一部を採取するというもの。悪性腫瘍が疑われる場合の最も一般的な生検法である。後の手術の際に腫瘍とともに切除しうる場所、方向に皮膚切開を入れる(四肢の場合は原則として縦方向
治療治療の基本は手術による切除である。また、放射線療法・化学療法も、手術に対する補助療法あるいは手術不能例に対する治療として実施される
腫瘍内切除切除縁が腫瘍実質内を通過する場合で、腫瘍が残存しているものと考えられる
 腫瘍周辺部切除 腫瘍をその被膜部or反応層部で一塊として切除する場合。良性腫瘍ではこれで十分だが、悪性腫瘍では非常に高率に再発がみられる
広範囲切除 腫瘍実質や反応層を露出することなく、正常組織で覆ったまま一塊として切除するというもの。悪性腫瘍の場合は最低この切除法を行う必要がある
 radical resection 腫瘍の存在するコンパートメントを全切除するというもの。局所再発率は最も低い
 骨腫瘍
 概念 骨に発生した腫瘍で、原発性と転移性に大きく分けられる
分類病態から、良性、悪性、腫瘍類似疾患(反応性病変・発生異常など)に分類される。主な原発性の骨腫瘍には以下のようなものがある。
 良 
 多発性外骨腫 骨の表面に突出して増殖する軟骨帽をかぶった骨腫瘍のことで、小児期に、長管骨に発生することが多い。常染色体優性遺伝形式の遺伝病で、EXT1あるいはEXT2が原因遺伝子として同定されているが、遺伝子異常のある症例でも症状発現がみられない場合もある(無症候性キャリアーもいる)。通常、良性の腫瘍で、骨格の成長が止まるとともに軟骨帽が消え、腫瘍もそれ以上成長しなくなる。しかし、3〜10%の頻度で悪性化することがあり、軟骨帽がいつまでも増殖し続けたり、単純X線写真で著しい石灰化がみられたりする場合には、悪性化を疑う必要がある
骨巨細胞腫20〜30歳台に好発し、膝の上下に発生することが多い。X線所見では骨端部に限局した骨透亮像がみられ、その中に泡沫状陰影が認められる。良性に分類されているが、良性・悪性の両方の要素をもち、再発を起こしやすいといわれている

骨肉腫10〜20代の膝周辺に好発する最多の骨原発悪性腫瘍。X線所見では、骨破壊と骨新生像がみられる
Ewing肉腫20歳未満に好発する。白人>黒人=アジア人という人種差を示す。骨盤・大腿骨・上腕骨などに好発する。X線所見では不規則な虫喰状・浸潤性の骨破壊とともに、外骨膜反応像が認められる
軟骨肉腫10代以降の各年齢に発生する。大腿骨・骨盤に好発する。放射線療法・化学療法はほぼ無効で、手術療法が中心となる
疫学発生頻度は、癌腫の1/100ほどで、最も多い骨肉腫でも日本国内において年間200〜300例程度である。骨腫瘍では基本的に人種差はみられないが、Ewing肉腫に限って白人>黒人=アジア人という人種差が認められる
原因原発性骨腫瘍の大部分は原因不明である。まれに、先天病変の悪性化によって起こったものや、遺伝的要因によるもの(多発性外骨腫、遺伝性網膜芽細胞腫からの2次発癌など)、抗癌剤・放射線などが原因となる医原性のものなどがある。
また、患者の年齢が上がるほど、転移性骨腫瘍の頻度が高くなる
診断画像検査の手段としては、単純X線、CT、MRI、シンチグラフィー、血管造影などがある。この中でも、単純X線は重要で、腫瘍の存在部位(多くは骨幹端に発生)や、骨破壊所見地図状<虫喰状<浸透状の順に悪性度が高くなる)、骨膜反応(←一般に悪性)、石灰化像(←軟骨系腫瘍の特徴)などが認められる
治療手術・放射線・化学療法の3本柱で治療は行われるが、どの治療法が主になるかは腫瘍の種類によって異なってくる。
  ・骨巨細胞腫…腫瘍部の切除+自家骨移植が原則
  ・骨肉腫…化学療法が重要で、さらに手術が行われる(5年生存率:50〜70%)
  ・Ewing肉腫…放射線療法・化学療法・手術のすべてが同様に奏効する(5年生存率:30〜60%)
  ・軟骨肉腫…放射線療法・化学療法が無効で、手術が中心となる

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