薬理学とは

   治療目的で使用する外来性の化学物質であるところの薬物が、どのように変化し効果を発揮していくのかということを研究する薬物作用学と、薬物がどのようにして作用部位に到達して作用し代謝されるのかということをテーマとする薬物動態学の総称を薬理学という。


薬物作用学

   薬物は生体機能を抑制したり、刺激したりするものであるが、それは薬物が生体物質を補充したり、生体物質の合成・分解を阻害したり、生体物質放出を促進・抑制したり、生体物質の取込みを抑制したり、生体物質の作用を模倣・阻害したりすることによって行われている。
   薬物はそれぞれ薬物標的(薬物受容体)とよばれる特定の生体内分子に特異的に高親和性に結合して、その作用を発揮する。1900年前後に染料の研究を行っていたPaul Ehrlichの有名な言葉に「結合なくして作用なし」というものがあるが、薬物の作用機序はまさにこれを体現したものとなっている。なお、薬物標的は、下の表にあげるように生体内の情報伝達分子である場合が多い。
薬物標的おもな薬物作用
核内受容体ステロイド
(プレドニゾロン、タモキシフェン)
 
チャネルAChニコチン性受容体クラレチャネルが
開くのを妨げる
電位依存性
Naチャネル
テトロドトキシン(フグ毒)
アコチニン(トリカブト毒)
キシロカイン(局所麻酔薬)
Caチャネルニフェジピン、ベラパミル
(抗高血圧薬)
Gタンパク連関受容体非常に多数 
ポンプ

トランス
ポーター
Na+, K+-ATPaseジギタリスポンプ・
トランスポーター
の働きを阻害
モノアミン
トランスポーター
コカイン
(脳内のドーパミンレベル↑)
Na+, K+, 2Cl-
共輸送体
利尿薬
第2次
伝達物質
ホスホジエステラーゼテオフィリン
(抗気管支喘息薬)
cAMP → 5'-AMP 
の反応を阻害
バイアグラcGMP → 5'-GMP 
の反応を阻害
   ここで、薬物作用を考える上で重要な言葉の定義を行っておく。
アゴニスト agonist
(作用薬)
標的に働いて、その本来の機能を発揮させるもの
アンタゴニスト antagonist
(拮抗薬)
標的に結合するが、それ自身では作用を発揮せず、アゴニストの作用を阻害するもの
ミメティックス mimetics
(模倣薬)
人工アゴニストで、天然のアゴニストの作用を模倣するもの
ブロッカー blocker
(遮断薬)
アンタゴニスト一般、またはチャネル抑制薬
オープナー opener
(開放薬)
チャネルを開放させるもの
リガンド ligand
(基質)
活性を問わず、標的に結合する(低分子量)物質
   また、薬物と似た言葉に薬剤があるが、薬剤は剤型化した薬物(処方されるお薬)のことを指し、薬物より狭義である。薬物の名称には、化学名、一般名、商品名、開発コード名の4つがある。臨床では商品名が用いられるが、薬理の教科書・授業では一般名が用いられている。


薬物作用論

(1) アゴニスト作用とその解析
   アゴニストをA、薬物受容体をR、アゴニスト・受容体複合体をARと表すと、薬物の作用EはARに比例するので、アゴニストの作用は以下の式で表すことができる。
アゴニスト作用の解析

(2) アンタゴニスト作用とその解析
   アンタゴニストには、競合アンタゴニスト非競合アンタゴニストの2種類がある。前者は、受容体への結合をアゴニストと競合して行うものであり、最大反応に変化はおこらず、用量作用曲線がシルドの式にしたがって右方に移動する。一方の後者は、受容体に不可逆的に結合して、それを不活化するものであり、ED50(最大反応の50%の作用が得られるアゴニスト濃度)には変化はおこらず、最大反応の抑制がおこる。
アンタゴニストの作用

(3) 薬物の受容体結合の解析
   
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