脳幹
Brain stem
脳幹とは?
   中脳midbrain・橋pons・延髄medullaからなる。遠心性線維はいくつかの運動性の脳神経核に分かれて存在する。一次求心性線維はいくつかの感覚性の脳神経核に終止する。その機能と構造は複雑である。脳神経核以外にも網様体、モノアミン系、上行路・下行路・小脳前核群といった脳幹に特有な構造が見られる。
 
脳幹(断面図)
 
   上の図中で、アルファベットのところをクリックすると、各位置での横断面の図が表示されます。

脳幹運動系の特徴
@様々なモダリティの感覚情報による調節が重要である
   味覚・嗅覚・視覚・聴覚・平衡感覚はすべて頭部の特殊な感覚器官によってつかさどられている。したがってこれらの感覚信号によって起こる反射の多くは脳幹を介して起こる。前庭動眼反射・前庭頚反射・視運動性反応が重要。
 
A粘膜や触覚による調節が重要
開口反射 (舌や口腔の機械的刺激あるいは侵害刺激によって開口筋の収縮と閉口筋の弛緩により開口する)
咬筋反射 (下顎骨を下に向かって叩くと、開口筋の伸張反射により口が閉じる)
嚥下反射 (食塊などが舌の後部、咽頭後壁に触れると飲み込む)
瞬目反射 (角膜や目の周辺に物が触れたり近づいたりすると、目が閉じる)
咳くしゃみ反射 (気道粘膜の刺激によりくしゃみが起こる)
 
B関節を介さないことが多い
 
C自律神経系に関連する

脳幹の機能
@頭部顔面の運動のパターンを作る
   咀嚼・呼吸・発声・嚥下などは一定のパターンをもった運動で、生命維持活動の基本となる。これらの運動パターンは延髄網様体にあるパターン発生機構で作られる。パターン発生機構は対応する運動ニューロンと直結する。
 
A姿勢の反射性調節
2つのメカニズムがある
<代償的姿勢調節>   すばやい反射によって行われる
a)頭部を地面に対して垂直に静止させることが目的。それによって外界を正しく見ることができる。
      頭部が動いたり傾いたりすることを検出 → 前庭器官(→前庭頚反射が重要)
      頭部が動いたらそれに対応して身体を動かす → 頚反射   前庭動眼反射
 
b)姿勢の変化の検出器
      直線運動 → 耳石器
      回転運動 → 半規管
            ※前庭反射は、体性感覚と視覚による反射によって補佐されている
 
c)前庭頚反射(VCR)
頭部を地面と垂直に保つために行われる反射。
『頭が回転した時に、頭がそれと反対方向に回転する反応』
半規管からの信号は前庭神経核を介して、主に内側前庭脊髄路を通って頚筋の運動ニューロンに伝えられる。
 
d)頚反射
頭と頚の位置関係は上位頚椎の関節・靭帯・頚筋筋紡錘などの受容器によって検出され、その情報に基づいて四肢の姿勢反射が起こる。
 
e)その他の姿勢調節反応
立ち直り反射 …身体の重力方向に対する位置が前庭、体表、頚部、視覚などの感覚より与えられて起こる。腹臥位にしても立ち直るなどといった反応のこと。
踏み直り反射
飛び直り反射
 
<予測的姿勢調節>
予測的姿勢調節は随意的な運動の一環として行われるのであって、これらを明確に区別することは難しい。
 
B動作の発現
個々の運動パターン発生機構によって機械のように精密な運動が作られる。しかし、それは適切な状況下で適切な対象に対して行われる必要があり、また、異なる運動パターンが協調する必要もある。脳幹にはそのような機能を担う領域が存在する。
(例)上丘 … 特定の対象に眼球と頭を向ける
中脳歩行誘発野 … 姿勢と歩行の調節
中脳中心灰白質 … 感情の変化に伴う運動、姿勢、自律神経性の変化
 
C脳活動レベル調節
上位脳の全体的レベルは脳幹によって制御される。例えば、睡眠と覚醒は脳幹網様体によって制御されている。

脳幹から脊髄への下行路
   上記のように、脳幹は、身体の平衡・姿勢の保持、四肢−体幹の定型的な運動調節、顔面の脳神経支配筋の運動をつかさどる器官である。
   脳幹からの下行路には、下表に挙げるとおり、錐体外路系3つとそれ以外の経路2つとがある。
 




前庭脊髄路前庭神経核起始:平衡感覚に関係する耳石器と半規管からの反射経路。伸筋に対する興奮と、屈筋に対する抑制により肢を進展。伸筋のα・β運動ニューロンを単シナプス性に興奮させて、屈筋をTa抑制ニューロンを介して抑制する。伸張反射の促進系。
視蓋脊髄路起始は視蓋。眼球と頭の協同運動に関与。
橋網様体脊髄路前庭神経核から信号を受けて伸筋を支配して姿勢を保つ。伸張反射の調節を行う。伸張反射の促進系。


延髄網様体脊髄路脊髄の外側を下がり、姿勢制御で屈筋反射を促進。
赤核脊髄路赤核を起始とする。脊髄後外側部を下がり、遠位の屈筋を制御して屈筋反射を促進。
 
脊髄への下行路
 
※除脳固縮
除脳を行うと、伸筋の緊張が高まるために四肢が伸張し、脊柱が弓なりになる。γバイアスが増し、筋紡錘の感度が上昇して伸張反射が異常に亢進するのが原因。脊髄後根を切断すると症状は消える。

脳幹反射のまとめ
@頭部・顔面の運動パターンの形成 (脳神経による)
 
咬筋反射閉口筋運動ニューロンの伸張反射 (下顎を下げると口が閉じる)
開口反射舌−口腔粘膜の刺激 ⇒ 開口筋の興奮(収縮)、閉口筋の抑制(弛緩)
嚥下反射食塊などが舌の後部・咽頭に触れる ⇒ 舌、口腔、咽頭、喉頭、食道の筋が共同して飲み込む
吸引・咀嚼反射開口筋・閉口筋の収縮、および舌の突出・後退のリズム (延髄網様体に内在する機構)
嘔吐反射 
咳・くしゃみ反射気道粘膜の刺激 ⇒ 口腔、咽頭、喉頭、胸部、腹壁の筋の共同
発声反射 
瞬目反射角膜や目の周辺に物が触れる ⇒ 眼瞼が閉じる
涙腺分泌反射 
瞳孔反射網膜に入る光の強さ↑ ⇒ 瞳孔径が小さくなる
 
A姿勢反射
 
立ち直り反射側臥位にしたり、倒れ掛かったりした時に、頭部や頚部を正常に立て直す反射。前庭・体表面・頚部からの情報による
前庭頚反射
(VCR)
≪半規管系≫
頭の回転加速度を三半規管が検知。前庭神経核に興奮が伝えられ、網様体を介して(介さない場合もある)、頚筋の運動ニューロンに刺激が伝達される。
≪耳石器系≫
卵形嚢と球形嚢の有毛細胞が頭の傾きと直線加速度の大きさを検出。頭が傾くと、耳石器からの求心性インパルスにより緊張性迷路反射が起こる。右に傾くと、右の肢は進展し、左の肢は屈曲する。
頚反射頭と頚の位置関係の変化が頚椎の関節、靭帯受容器、頚筋の筋紡錘で感知されて起こる四肢の姿勢反射。頚を一側にねじると、その側の前肢と後肢が進展し、対側の肢は屈曲する。
※中脳のレベルで切断された場合、除脳固縮とよばれる伸張反射の亢進が見られるが、この場合頚反射も亢進する
 
B眼球運動
 
前庭動眼反射
(VOR)
耳石器、半規管どちらの刺激でも起こる。前庭一次求心性線維→前庭神経核ニューロン→外眼筋運動ニューロンの3シナプス性が最短。脳幹網様体を経由するものもある。
AAでの横断面 AAでの横断面 BBでの横断面 BBでの横断面 CCでの横断面 CCでの横断面 DDでの横断面 DDでの横断面 EEでの横断面 EEでの横断面
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送