特殊感覚
味覚
   味蕾は化学受容器であり、刺激を受けると1次ニューロンの軸索に神経インパルスが発生する。1次ニューロンの軸索は第VII・IX・X脳神経と一緒に走行し、孤束核に終わる。孤束核から視床VPM核または橋の傍腕核に、2次ニューロンが情報を伝える。3次ニューロンには、橋から食欲中枢などのある間脳へ情報を伝えるものと、視床から島皮質の味覚野へと味覚情報を伝えるものとがある。
味覚経路
   味覚には、酸味・苦味・塩味・甘味の4種類があり、それぞれ異なる味蕾によって感知される。それぞれの味蕾は舌での局在も異なっている。味蕾は花びらのような形をしており、明細胞・暗細胞・中間細胞がある。味蕾の先端には味孔があり、そこに上皮の微絨毛が突出している。1次ニューロンの神経終末は味蕾の底部にある。
味蕾
味蕾の種類酸味苦味塩味甘味
舌での局在側方後方前方
味覚を感じる仕組み先端膜の電圧ゲートK+チャネルのH+による遮断→味蕾細胞が脱分極→底部から神経伝達物質を放出先端膜のGタンパクの活性化→ホスホジエステラーゼ活性化→cAMP↓→底部のCa2+チャネルを開く→味蕾細胞が脱分極→底部から神経伝達物質を放出先端膜からのNa+流入による脱分極→底部から神経伝達物質を放出先端膜のGタンパクの活性化→cAMP濃度↑→タンパクキナーゼAの活性化→底部のK+チャネルの不活化→味蕾細胞が脱分極→底部から神経伝達物質を放出
嗅覚
   嗅覚は、鼻粘膜の化学受容器によって感受され、嗅球嗅索嗅皮質へと直接大脳に連絡する。嗅覚は、すべての感覚の中で唯一、視床を通らずに大脳に投射している感覚系である。
   嗅覚受容体は嗅線毛である。嗅線毛は、嗅上皮にある嗅覚受容器ニューロンの軸索である。嗅覚受容器ニューロンは双極ニューロンであり、もう1つの軸索が嗅糸(嗅神経)となり篩骨篩板を通って、嗅球に連絡する。
   臭気物質は、鼻粘液中の臭気物質結合タンパクと結合して嗅線毛に接触する。臭気物質は、臭気物質結合タンパクから離れて、嗅線毛のGタンパク連結受容器に結合する。陽イオンが細胞内に流入して、発生器電位が閾値に達すると、嗅覚受容器ニューロンが興奮する。
   嗅球は前脳の一部であり、嗅索は前嗅核・外側嗅索・前交連前脚の線維を含む。左右の嗅球は前嗅核により連絡されている。嗅覚を脳に伝えるのは外側嗅索で、外側嗅条を通って、梨状皮質・嗅結節・扁桃体・外側嗅内皮質に線維を出す。
   嗅皮質の主な部位は、前嗅核・梨状皮質・嗅結節・扁桃体・外側嗅内皮質であり、これらは外側嗅索などを介して互いに連結している。嗅皮質は旧皮質に相当し、新皮質と違って6層構造をもたず、3層からなっている。
   嗅覚に関する記憶は、外側嗅内皮質から海馬への線維連絡によって行われている。また梨状皮質と前嗅核から視床下部へ線維連絡があり、これは摂食行動と関係する。
聴覚
   耳は、外耳・中耳・内耳に分けられる。外耳は、耳介と外耳道よりなる。耳介は5kHz以上の音を、外耳道に導くことができる。
   中耳は、鼓膜と小骨(つち骨・きぬた骨・あぶみ骨)よりなる。中耳は、鼓膜に来た音のエネルギーを、卵円窓を介して、蝸牛の液体に伝える。この間に音は数十倍に増幅される。小骨にはあぶみ骨筋と鼓膜張筋があり、非常に大きな音から耳を守る。あぶみ骨筋は第VII脳神経が支配し、鼓膜張筋は三叉神経が支配する。これらの筋肉が収縮すると、音の伝達が減少する。
   内耳は、蝸牛・前庭・半規管よりなる。蝸牛はかたつむりのような形をした器官で、その断面を見ると、前庭階・中間階(蝸牛階)・鼓室階に分かれている。中間階は内リンパ液で満たされており、その中に聴覚受容器であるCorti器官が存在する。一方、前庭階と鼓室階は外リンパ液で満たされており、蝸牛頂にある孔によりつながっている。卵円窓を介して伝えられた音はリンパ液の波動に変わり、前庭階から鼓室階へとその振動は伝えられていく。最終的に音圧波は正円窓を通って蝸牛外に出て、耳管を介して鼻咽頭に送られる。
   中間階と鼓室階は基底膜によって境されている。鼓室階のリンパ液の波動は、この基底膜を振動させ、Corti器官にある有毛細胞(1つの内有毛細胞と3つの外有毛細胞)が刺激される。
   Corti器官は、らせん神経節から求心性線維を受ける。らせん神経節の双極細胞からの求心性神経線維にはI型とII型の2種類がある。全蝸牛神経の90%以上を占めるI型求心性線維は、内有毛細胞に達しており、聴覚刺激を伝える。一方、II型求心性線維はわずかにしか存在しないが、外有毛細胞に達して、聴覚の感受性の調節に重要な役割を果たしている。
   ま有毛細胞には遠心性の線維も来ており、内側オリーブ蝸牛遠心性線維は内有毛細胞に、外側オリーブ蝸牛遠心性線維は外有毛細胞に、それぞれ達している。また、蝸牛の底部と頂では、基底膜の幅や有毛細胞の高さが異なっており、音の周波数によって刺激される有毛細胞が異なる(低周波数の音は頂に近い方で、高周波数の音は底部に近い方で処理される)。この周波数による局在の違いは中枢に入っても維持され、低周波数の音は核の外側に、高周波数の音は核の内側に位置する。
   聴覚は以下の図に示すように、上オリーブ下丘内側膝状体を通って、上側頭回の一次聴覚野・二次聴覚野に伝えられる。
聴覚の上行路
   一次聴覚野と二次聴覚野は相互線維連絡があり、左右の聴覚野どうしも相互に線維連絡をもっている。一次聴覚野の周囲には、聴覚連合野があり、聴覚連合野は主に上側頭回の後部に位置する。優位大脳半球にはWernicke野があり、そこが障害されるとWernicke失語(発語は可能、言語理解が障害)が起こる。
   聴覚経路には上行路のほかに、雑音と聞きたい音の区別に関与する、フィードバックによる下行路も存在する。聴覚野から、同側の内側膝状体と下丘に遠心性線維連絡がある。下丘から、両側の上オリーブ・蝸牛神経核に遠心性線維が連絡し、上オリーブから有毛細胞に遠心性線維が出ている。
平衡覚
   前庭器官は、内耳の迷路の部分である。前庭器官は頭部の動きを感じる固有感覚器官で、外耳とは関係しない。前庭器官は、半規管・球形嚢・卵形嚢からなる。
   半規管は、互いに直交する後半規管・前半規管・外側半規管の3つの部分からなる。それぞれの半規管は内リンパ液で満たされており、膨大部稜がある。膨大部稜には有毛細胞があり、その周囲で内リンパ液が動かされると有毛細胞が興奮する。半規管は頭部の回転運動に反応する。
   球形嚢および卵形嚢にも有毛細胞は存在する。斑は板状の構造をしており、有毛細胞と支持細胞からなる感覚上皮をもつ。球形嚢にも卵形嚢にも線条があり、そこには耳石が多い。球形嚢と卵形嚢は耳石器官とよばれ、頭部の傾きや頭部の線状加速に反応する。
   前庭器官の有毛細胞には、I型とII型がある。I型有毛細胞は太い求心性線維をもち、II型有毛細胞は細い求心性線維をもつ。
   前庭器官の1次ニューロンの細胞体は、内耳道に位置する前庭神経節(Scarpa神経節)にある。前庭神経節のニューロンは双極細胞で、片方の軸索は前庭器官の有毛細胞に連絡し、もう片方の軸索は前庭神経核にシナプス結合する。前庭神経節は上・下に分けることができ、上前庭神経節は前半規管・外側半規管・卵形嚢と連絡し、下前庭神経節は後半規管・球形嚢と連絡する。
   前庭神経核は、対側の前庭神経核、両側の動眼・滑車・外転神経核(→前庭眼球反射に関与)、両側の視床後腹側核、同側の前庭小脳(片葉小節葉・虫部外側)、脊髄(前庭脊髄路を形成)などに2次ニューロンを出している。また、視床後腹側核からは位置体性感覚野や後部頭頂葉皮質に線維連絡がある。
視覚
   網膜は、外側から色素上皮、内節・外節層、外顆粒層、外網状層、内顆粒層、内網状層、神経節細胞層の7層からなっている。
網膜の層と細胞
   網膜の光受容器には、杆状体と錐状体の2種類がある。両者とも、光色素(オプシンからなる)の光電効果によって、光を電気信号に変換している。
   杆状体は微弱な光に対する感受性をもち、暗視力に重要な役割を果たしている。すなわち、杆状体は、視覚識別が不可能な暗所において、物体があるということを認知する際に機能しているのである。その外節にはロドプシンとよばれるタンパクが結合しており、これが光刺激によって化学変化を起こすことによって、杆状体は過分極する。ロドプシンは暗所で再生され、次の光刺激に備える。
   一方、錐状体は明視力にとって重要である。錐状体にはS・M・Lの3種類がある。S錐状体は波長の短い青色の光を吸収し、M錐状体は波長が中位の緑色の光を吸収し、L錐状体は波長の長い赤色の光を吸収する。これら錐状体は光刺激の強さに応じて、種々の程度に過分極をおこす。
   杆状体のシナプス終末には杆状体双極細胞が結合している。杆状体双極細胞はいくつかの杆状体から同時に情報を受けており、光刺激による杆状体の過分極により、脱分極をおこして興奮する。杆状体双極細胞が興奮すると、神経節細胞を興奮させ、そのインパルスが視索を通って脳に伝わる。
   一方、錐状体双極細胞には陥入双極細胞と平坦双極細胞という2種類がある。杆状体の場合と異なり、1つの錐状体双極細胞は1つの錐状体とシナプス結合している。陥入双極細胞は、光刺激によって、脱分極をおこして興奮し、オン中心の受容野(受容野の中心に光刺激がきた時に興奮する)を示す。一方の平坦双極細胞は、光刺激によって、過分極をおこして抑制され、オフ中心の受容野(受容野の周辺部に光刺激がきた時に興奮する)を示す。
   網膜には、光受容器(杆状体・錐状体)と双極細胞・神経節細胞の他に、水平細胞・アマクリン細胞などの介在ニューロンが存在する。水平細胞は多数の光受容器から線維連絡を受けており、錐状体に直接シナプス結合する。錐状体に光刺激が入ると、水平細胞に興奮が伝わり、水平細胞がその周囲の錐状体を抑制する。このような機構を側方抑制といい、受容野の輪郭を鮮明にする働きをもっている。一方のアマクリン細胞は多数の神経節細胞にシナプス結合しており、神経節細胞の一過性の反応を抑制する働きをしている。
網膜の神経線維連絡
   神経節細胞には、大きなM細胞と小さなP細胞の2型がある。M細胞は明るさのコントラストと対象の動きに関与し、P細胞は色覚と対象の形に関与する。神経節細胞の約80%はP細胞である。
   神経節細胞にも、双極細胞と同様に、オン中心の受容野をもつ細胞とオフ中心の受容野をもつ細胞がある。これらの数はほぼ同数で、1つの光受容器がオン中心受容野をもつ神経節細胞とオフ中心受容野をもつ神経節細胞の両方に連絡する。
   視野は、側頭視野と鼻側視野に分けられる。側頭視野の物体は鼻側網膜に像を形成し、その情報は視交叉で交叉して、反対側の外側膝状体に伝わる。鼻側視野の物体は側頭網膜に像を形成し、その情報は視交叉で交叉せずに、同側の外側膝状体に伝わる。外側膝状体から、視放線を通って視覚野に連絡する。網膜から視交叉までを視神経、視交叉から外側膝状体までを視索という。視索の神経線維の大部分は外側膝状体に行くが、一部の線維は視交叉上核・視蓋前核・上丘などに連絡する。視交叉上核は日周期に関与する。視蓋前核は、動眼神経のEdinger-Westphal核に線維を出しており、対光反射に関係する。上丘は視覚反射に関与する。
視索を通る視覚経路
   外側膝状体は6層構造をなしている。第1・4・6層は反対側の眼からの情報を、第2・3・5層は同側の眼からの情報を処理する。第1・2層は大細胞性であり、M細胞からの線維を受けて、上丘などの皮質下の部位と大脳皮質に線維を送る。第3・4・5・6層は小細胞性で、P細胞からの線維を受けて、大脳皮質に線維を送る。
視覚入力の中枢経路
   一次視覚野は、外側膝状体から線維を受け、反対側の視野と関連する。一次視覚野は、後頭葉の鳥距溝の上下に位置し、Brodmannの17野である。一次視覚野の前方には有線外野(18野)があり、その前方に19野がある。17・18・19野とも、視覚に関係している。視覚情報は頭頂葉に伝わり、“どこにあるか”が認識され、また視覚情報は側頭葉に伝わり、“何であるか”が認識される。
   視覚野の細胞は、受容野により単純細胞と複雑細胞に分けられる。単純細胞は線状の物に反応するが、それぞれの細胞で反応しやすい線分の向きが決まっている。一方、複雑細胞は特定の方向や特定の長さの物に反応する性質をもっている。単純細胞も複雑細胞も、視覚野において柱状に配置されている。
   同じ配置の光に反応する細胞は1つの配置柱を形成する。1つの配置柱の中には、数百個の単純細胞と複雑細胞が入っており、すぐ隣には約10°傾きの違う配置の光に反応する配置柱が並んでいる。また、右眼からの情報を受ける神経細胞と左眼からの情報を受ける神経細胞はそれぞれ配置柱を形成しながら、交互に並んでいる。
   視覚野には、線分の傾きに反応する配置柱以外に、色に反応する色覚柱、両眼の視差に反応する視差柱などもある。このように視覚野は、物体の幾何学的な特徴、色彩、立体的な特徴をとらえるにあたって重要な役割を果たしている。
まとめ
 嗅覚視覚聴覚平衡覚味覚
感覚
受容器
嗅線毛杆状体
錐状体
Corti器官の内・外有毛細胞半規管・球形嚢・卵形嚢の有毛細胞味蕾
神経連絡嗅糸

嗅球

嗅索
双極細胞

神経節細胞

視神経

視索
らせん神経節

蝸牛神経

上オリーブ

下丘
前庭神経節

前庭神経
第VII・IX・X脳神経と一緒に走行→孤束核
中継核なし外側膝状体内側膝状体前庭神経核視床VPM核
橋の傍腕核
中枢嗅皮質(前嗅核・梨状皮質・嗅結節・扁桃体・外側嗅内皮質など)後頭葉の一次視覚野・二次視覚野上側頭回の一次聴覚野・二次聴覚野なし島皮質の味覚野
その他の
出力
海馬
視床下部
視交叉上核
視蓋前核
上丘
動眼・滑車・外転神経核、視床後腹側核、前庭小脳、脊髄食欲中枢などのある視床下部
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