細胞構造
神経伝達物質(neurotransmitter)
   シナプス間で興奮の伝達を行う神経伝達物質にはたくさんの種類がある。シナプス後部にEPSPを生じさせる興奮性(下表中では赤で塗っている)のものと、シナプス後部にIPSPを生じさせる抑制性(下表中では青で塗っている)のものとに分けられる。
おもな神経伝達物質
神経伝達物質受容体分布作用




グルタミン酸イオンチャネル内蔵型
 (NMDA受容体・
   非NMDA受容体)、
代謝生成産物性
大脳皮質・小脳からの遠心性神経線維の大部分NMDA受容体では、細胞内にCa2+の流入がおこり、細胞内の代謝系の調節が行われる
GABA
(γアミノ酪酸)
GABAA
GABAB
GABAC
小脳、大脳新皮質、脊髄の介在ニューロン、線状体黒質神経線維Cl-チャネルやGタンパクを介して、神経細胞の興奮を抑制
5-HTの分泌を抑制することにより、下垂体前葉からのACTH分泌を抑制
下垂体前葉からのプロラクチン分泌を抑制
グリシングリシン受容体脊髄運動ニューロンの抑制性線維を構成し、負のフィードバックを行う





ノルエピネルフィン
(NE)
α1(シナプス後部)
α2(シナプス前部)
β1(心臓)
β2(その他)
脳幹の青斑核・外側被蓋核→視床・小脳・嗅皮質・大脳新皮質認知、覚醒、注意、動機、自律神経、内分泌などに関与
エピネルフィン脳幹に局在:背側被蓋・腹側被蓋→視床下部・脊髄の中間外側細胞柱自律神経や内分泌に関与
ドーパミン(DA)D1〜D5中脳辺縁系経路(中脳の腹側被蓋部→扁桃体・帯状回・嗅結節・中隔核)気分変化や認知機能に関与
灰白隆起漏斗路(視床下部の弓状核→正中隆起)下垂体前葉からのプロラクチン分泌を抑制
黒質線状体路(黒質→線状体)細かい運動を制御
セロトニン(5-HT)5-HT1(抑制性)
5-HT2(興奮性)
中脳の縫線核→小脳・大脳新皮質・視床・大脳辺縁系覚醒時には高く、睡眠時には低いというペースメーカー活動を有する
橋の縫線核→延髄・脊髄運動ニューロンの興奮性を制御、パターン化された運動に関与
松果体などCNS外にも存在メラトニンの前駆物質
アセチルコリン
(ACh)
ニコチン性AChR神経筋接合部Na+チャネルを開放→EPPを発生→筋肉を収縮させる
自律神経節Na+チャネルを開放→節前線維から節後線維へ活動電位を伝達
ムスカリン性AChR
(M1〜M5
中隔核→海馬、Broca対角帯→脚間核、基底核→大脳新皮質、線状体、脳幹被蓋→視床下部・視床細かい運動の制御など
副交感神経と効果器の接合部毛様体や腸の平滑筋を収縮
   神経伝達物質は、上の表にあげたものの他にもアスパラギン酸・ヒスタミン・P物質・エンケファリンなどたくさんある。
伸張反射(stretch reflex)
   脊髄の単シナプス反射では、筋紡錘の伸張によって伸張受容器に刺激が入ると、求心性の感覚Ia線維が興奮する。求心性の感覚Ia線維は脊髄前角でα運動ニューロンとシナプスを形成しており、α運動ニューロンにEPSPを生じさせる(神経伝達物質はグルタミン酸)。すると、α運動ニューロンは興奮し、感覚Ia線維が来た筋肉を収縮させるのである。
   相反神経支配がある場合では、ある筋肉の収縮と、その拮抗筋の弛緩が同時に起こるようになっている。これには、GABAやグリシンを神経伝達物質とする抑制性の介在ニューロンの存在が大きな役割を果たしている。
   実際、膝蓋腱を叩いた場合、大腿四頭筋の筋紡錘が伸張し、伸張受容器が刺激されて、大腿四頭筋の感覚Ia線維が興奮する。これは脊髄前角で大腿四頭筋を支配するα運動ニューロンを興奮させるとともに、抑制性介在ニューロンを介して拮抗筋である大腿二頭筋を支配するα運動ニューロンを抑制するように働くのである。
シナプス性統合(synaptic integration)
   求心神経に十分短い一定の時間間隔で反復刺激を与えると、シナプス後電位(EPSPあるいはIPSP)が加算されて大きくなるという現象が起こる。このことを時間的加重という。また、1個のニューロンに収束する複数の求心神経を刺激すると、それぞれの求心神経の刺激によって生じるシナプス後電位が加算されるという現象が起こる。このことを空間的加重という。
   たとえ1つ1つの刺激が小さくとも、反復刺激をしたり、複数の求心神経を刺激したりすると、上記の加重が起こって大きなEPSPとなり、それが閾値に達すればインパルスを発生するようになる。
時間的・空間的加重
   また、1つのニューロンプールに2本の求心神経 a, b の入力があるとして、2本の求心神経を独立に刺激した場合に発火するニューロンの合計数 F(a)+F(b) と、2本を同時に刺激した場合に発火するニューロンの数 F(a+b) との間の関係について考える。2本の求心神経の入力に重なりがない場合は数値は等しくなるが、重なりがあれば等しくならない。
   ある程度の強い刺激を同時に与えると、すべてのニューロンの発火が起こるが、重なりあっている分だけ F(a+b) の方が F(a)+F(b) よりも小さくなる。このような現象のことを閉塞という。しかし、刺激を弱くしていくと、2本をそれぞれ独立した場合には閾値に達しないために発火しなかったニューロンの中で、空間的加重によって発火するニューロンが出てきて、先ほどとは逆に F(a+b) の方が F(a)+F(b) よりも大きくなる。このような現象のことを促通という。
シナプス可塑性(synaptic plasticity)
   シナプス可塑性とは、シナプスがその性質を変える能力のことであり、その機序には@長期増強、A発芽、B長期抑圧の3つがある。シナプスの性質の変化は、短期間のこともあれば、長期間のこともある。また、シナプス前におこることもあれば、シナプス後におこることもある。
   @の長期増強とは、特定のシナプスに非常にすばやい反復神経刺激(テタヌス刺激)を与えた際などにみられるシナプス伝達の増加をいう。この場合、長期増強の持続時間は非常に短いが、細胞内の状況の変化(細胞内のイオン濃度の変化や代謝)を伴ったり、シナプスの数が増加したりする場合には、長期増強はより長期間にわたって持続する。
   たとえば、AMPA受容体の活性化により神経細胞が脱分極すると、NMDA受容体チャネルを通してCa2+の細胞内流入がおこる。そのため、1時間くらい増強が持続するNMDA受容体依存長期増強がおこる。
   また、代謝生成産物性グルタミン酸(mGlu)受容体は、数週間〜数か月間持続するシナプスの変化を起こしうる。さらに、mGlu受容体は2次メッセンジャーの合成促進を通して、タンパク合成をおこすことによっても、より長期にわたる増強を獲得することができ、短期の記憶や学習だけでなく、長期記憶にも関与するものと考えられている。
   続くAの発芽とは、損傷を受けるなどして消失してしまった神経連絡を補うために、近傍の非損傷神経線維から新しい軸索が伸びてくる現象のことである。こうして新しいシナプス結合が作られ、神経障害は回復される。しかし、発芽は必ずしも神経損傷に伴っておこる現象ではなく、学習による新しい神経回路網の新生にも関与しているものと考えられている。
   最後Bの長期抑圧は主に小脳のPurkinje細胞でおこる現象である。Purkinje細胞に登上線維と苔状線維からの入力が同時に加わると、Purkinje細胞に対するシナプスの伝達効率が長期間にわたって下がるという現象がおこる。このような現象のことを長期抑圧とよぶが、これによりPurkinje細胞からの出力は制御を受けることになり、運動の練習効果の発現に大きく寄与するとされる。
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