脳幹
網様体(reticular formation)
   網様体は注意や覚醒・睡眠パターンの形成に重要な役割を果たす神経線維と細胞の集合体で、延髄から中脳にかけての被蓋に位置する。延髄では中心管の錐体路(皮質脊髄路)の後面を走っているが、橋に入ると第4脳室壁のすぐそばを、中脳では大脳脚のすぐ後ろを通る。
   網様体は、大脳皮質・視床・辺縁系・視床下部・脳神経核・脳幹神経核・脊髄と連絡がある。網様体は統合中枢であり、呼吸・心血管機能・筋緊張・意識レベル・感覚刺激に対する適切な運動反応などに関与する。特に、上行路と網様体は連絡が密であり、感覚入力の処理が網様体の重要な機能である。
   網様体は、被蓋正中に位置する1つの縫線核、正中からわずかに離れた位置にある1対の内側柱と1対の外側柱の3種の神経細胞柱よりなる。
網様体の連絡経路
脳神経(cranial nerve)
   脳神経は12対あり、第I・II脳神経は大脳とつながるが、他の脳神経は脳幹とつながる。神経の型はGSE(一般体性遠心性)・SVE(特殊内臓遠心性)・GVE(一般内臓遠心性)・SSA(特殊体性求心性)・GSA(一般体性求心性)・SVA(特殊内臓求心性)・GVA(一般内臓求心性)の7つに分けられる。
   7つの神経の型の配置は一般に右の図のようになっている。脊髄では後角にあった求心性線維の神経核が外側部に、前角にあった遠心性線維の神経核がその内側部にある。
   また、神経核の位置を背側から見ると、下の図のようになっている。やはり運動核は正中近くに、知覚核は外側部に位置する。
脳神経核の配置
脳幹における脳神経核
   12対ある脳神経それぞれの神経核や機能をまとめると、以下の表のようになる。
脳神経のまとめ
 脳神経神経核支配筋ないし分布領域

I嗅神経SSA嗅球嗅覚を伝える
II視神経SSA視床外側膝状核視覚を伝える

III動眼神経GSE動眼神経核(主核)上直筋・下直筋・内側直筋・下斜筋・上眼瞼挙筋を支配
GVEEdinger-Westphal核副交感神経で、眼球の瞳孔括約筋・毛様体の平滑筋を支配(対光反射に関連)
IV滑車神経GSE滑車神経核上斜筋を支配
V三叉神経SVE三叉神経運動核咀嚼筋etc.を支配
GSA三叉神経主知覚核頭部・顔面の皮膚、結膜、鼻腔・口腔の粘膜など頭頸部における識別性触覚を伝える
三叉神経中脳路核頭部(特に咀嚼筋・顎関節・歯・歯肉)の深部感覚を伝える
三叉神経脊髄路核頭部の痛覚・温度覚などを伝える
VI外転神経GSE外転神経核外側直筋を支配
VII顔面神経SVE顔面神経核顔面表情筋(頬筋を含む)を支配
GVE上唾液核副交感神経で、舌下腺・顎下腺、涙腺、口腔・鼻腔の小腺に分布
SVA孤束核舌の前2/3・口腔底・口蓋の味覚を伝える
VIII内耳神経SSA前庭神経核頭の空間位置と動き(平衡覚)を伝える
蝸牛神経核聴覚を伝える

IX舌咽神経SVE疑核茎突咽頭筋を支配(嚥下を助ける)
GVE下唾液核副交感神経で、耳下腺に分布
GVA舌咽神経背側核胸部・腹部の内臓からの感覚、頸動脈小体の化学受容器からの情報を伝える
SVA孤束核舌の後1/3・咽頭の味覚、頸動脈洞の圧受容器からの情報を伝える
X迷走神経SVE疑核咽頭収縮筋群、内咽頭(発声)筋群、気管・気管支・心臓などの不随意筋、肝臓、膵臓を支配
GVE迷走神経背側核副交感神経で、胸部・腹部の内臓の平滑筋・腺に分布
GVA胸部・腹部の内臓からの感覚、大動脈弓・大動脈小体からの情報を伝える
SVA孤束核喉頭の味覚を伝える
XI副神経SVE疑核軟口蓋・咽頭・喉頭の筋を支配
副神経脊髄核胸鎖乳突筋・僧帽筋を支配
XII舌下神経GSE舌下神経核舌の形・位置を変える筋群(口蓋舌筋以外)を支配
眼球運動
   外眼筋の運動にあずかる動眼神経核・滑車神経核・外転神経核は中脳の上丘から線維(内側縦束)を受けている。内側縦束には視覚系以外にも聴覚系・触覚系・前庭系などからの線維連絡があり、視覚刺激だけでなく、聴覚刺激や皮膚刺激、平衡覚に応じた反射的な眼球運動を行うことができるようになっている。また、内側縦束はこれら3神経核の間の連絡も行っており、眼球のきわめて正確かつ微妙な協調運動を可能にしている。
三叉神経の機能
   三叉神経は顔面の感覚神経であり、咀嚼筋も支配する。顔面の温痛覚・触覚、側頭下顎関節・咀嚼筋からの固有感覚を伝える。顔面の温痛覚は三叉神経脊髄路核、顔面の触覚は三叉神経主感覚核、側頭下顎関節・咀嚼筋からの固有感覚は三叉神経中脳路核が司る。三叉神経核から視床・小脳・脳幹網様体で線維連絡があり、咀嚼などに関与する。
   咀嚼は随意運動と反射運動を含む複雑な運動で、頬・舌・下顎・舌骨を協調的に動かす必要がある。咀嚼は顔面の運動野の前方に位置する運動前野が制御する。脳幹では咀嚼は上三叉神経運動核が制御している。
上三叉神経運動核による咀嚼の制御
   三叉神経は、下表にあげるようにいくつかの反射に関与する。
三叉神経の関連するおもな反射
開顎反射歯が咬合すると咬筋前部の伸張求心性線維が興奮し、上三叉神経運動核が中枢となって、開顎反射がおこる
閉顎反射食物が口腔粘膜に接触すると、口を閉じる
下顎反射おとがい部を下方へ叩くと、単シナプス反射により咬筋が収縮する
角膜反射角膜に触れると、顔面神経を介して眼瞼を反射的に閉じる
くしゃみ反射鼻粘膜刺激によって、呼吸筋の不随意痙攣性収縮がおこる
複数の神経が出ている脳神経核
   複数の神経が出ている脳神経核には、求心性(SVA)の孤束核と遠心性(SVE)の疑核がある。
   孤束核は、延髄の背部を通って縦に伸びる細い細胞柱で、菱形窩の床の下で、境界溝のすぐ外側に位置する。孤束を介して迷走・舌咽・顔面神経からの求心性線維を受けている。この核の下2/3は、咽頭・喉頭・腸・気道・心臓・大血管からのインパルスを処理しており、網様体に至る線維を出して、呼吸・循環・嘔吐などの反射的調節にあずかる。また、核の上1/3は、味蕾からのインパルスを受けており、味覚核として知られている。
   疑核は、延髄の腹外側部にある、非常に細長い運動神経細胞柱である。この遠心性線維は、舌咽・迷走・副神経を経て、鰓弓に由来する内臓性横紋筋(咽頭・喉頭・食堂上部の横紋筋)を支配し、嚥下や発声にあずかる。疑核は下方で脊髄の前角と連なり、C5の高さにまで達する。このような疑核につながる頸髄前角からおこる線維は副神経の脊髄根となる。
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