平成10年度 G2a微生物学のうちウイルス学分試験問題 12/18/98 |
以下の全ての問題につき、別紙解答用紙に問題番号と解答を記入すること 解答用紙が不足の場合は、裏面を用いること。(問題用紙は持ち帰ってよい) |
1) | 構造・形態上の一般的な特徴は何か。 |
2) | どのような機能をになっているか。 |
1) | 麻疹ウイルスが感染した気管支上皮細胞にはどのような変化が起こるか。 |
2) | その変化は患者のその後の経過にどのような影響を与えるか。 |
3) | 麻疹ウイルスは患者のリンパ組織にどのような変化を起こすか。 |
4) | その結果は患者のその後にどのような影響を与えるか。 |
1) | 主要な3つの感染経路 | 2) | レセプター | 3) | 遺伝子 | 4) | 原因となる疾患 |
5) | 我が国におけるおおよその患者数 |
解答と研究 |
その他の生物がDNAとRNAを共に核酸として細胞内で機能させているのとは異なり、ウイルスはDNAまたはRNAのどちらか一方しか持っていない。その中でも、1本鎖の核酸を持つウイルスと2本鎖の核酸を持つウイルスがある(必ずしも2本鎖=DNA、1本鎖=RNAではない)。RNAには配列がmRNAと同じ(+)鎖と、mRNAに相補的な(-)鎖がある。
→p.369<参考:ウイルスのゲノム形式の表し方>
ウイルスはまずゲノムがDNAかRNAかによってDNAウイルスとRNAウイルスに大別される。さらにDNAあるいはRNAが2本鎖double-stranded(ds)か、1本鎖single-stranded(ss)か、逆転写酵素(RT)を用いる複製過程が有るか無いか、ゲノムのセンスがプラス(+)鎖(mRNA)かマイナス(-)鎖(mRNAと相補的)かによって分類される。それを書き表して分類すると以下のように群別される。
dsDNAウイルス、ssDNAウイルス、dsDNA(RT)ウイルス、dsRNAウイルス、ss(-)RNAウイルス、ss(+)RNAウイルス、ss(+)RNA(RT)ウイルス →p.374
インフルエンザウイルスのようなゲノムが分節になっているウイルスでは、ゲノムは分節ごとに別々に複製され、各分節が一組ずつ集合してウイルス粒子が形成される。そのため、異なる2種類のウイルスが同時に感染した場合は、別々に複製されている分節が相互に入れ替わって、遺伝的にさらに異なるウイルスが生成されることがある。これにより、今までとまったく異なる新たな抗原性を持ったウイルスが生じる。これを抗原不連続変異といい、ヒト側に感染防御能が無いために世界的大流行が起こりうる。
→p.436<参考:抗原連続変異>
インフルエンザウイルスHA分子には5箇所に互いに異なる抗原決定基がある。このHAゲノムRNAは、複製時に点突然変異point mutationを起こしやすい。一個のヌクレオチドの置換によりそれに対応するアミノ酸置換が起こり、抗原決定基が変化するためHA分子全体としての抗原性に一部ずれが生じる。A型、B型のインフルエンザウイルスに見られ、これにより小流行が起こる。
→p.437
RNAは一般に一本鎖であることもあってDNAよりも不安定な物質である。また、DNAポリメラーゼに備わっている校正機能がRNAポリメラーゼにはないため、変異が起こったときに復元も困難である。そのため、RNAウイルスのほうがDNAウイルスよりも変異頻度が高い。
→p.371
遺伝子を取り囲むタンパク殻をカプシドという。遺伝子とカプシドをあわせてヌクレオカプシドという。さらにウイルスによってはカプシドを取り囲んでエンベロープが存在する。また、パラミクソウイルスにはカプシドとエンベロープの間にMタンパク、ヘルペスウイルスにはテグメントが存在する。
→p.367
カプシドはカプソマーというさらに小さいタンパクの集合体からできている。カプシドは対称的な形態をしている。それには2種類あり、正20面体構造などの立方対称性と、核酸に密接に絡み合っているらせん対称性のものがある。
→p.367
遺伝子を取り囲み、保護する。また、エンベロープを持たないウイルスの場合は最外殻タンパクとなり、ウイルスの抗原性(抗原が免疫応答を誘起する能力)や標的細胞のウイルスレセプターの認識部位となる。
麻疹ウイルスは気道感染し、まず気管支上皮細胞などで増殖する。感染細胞は他の細胞と融合することで多核巨細胞を作る。これにはウイルスのF(fusion)タンパクとHNタンパクが関与している。
→p.444
カタル症状として鼻水、くしゃみ、せきなどが出る。
→p.444
ウイルスは上皮などで増殖したあと、その所属リンパ節で増殖する。リンパ球組織でも細胞融合を起こし多核巨細胞を作る。またリンパ球などの血液細胞によりウイルス血症を起こし、全身のリンパ球組織に伝播する。それでまたウイルス血症となり、全身の組織に感染が広がる。
→p.444
リンパ組織でウイルスが増殖すると、リンパ球などの血液細胞によりウイルス血症を起こし、ウイルスが全身のリンパ組織に伝播する。それでまたウイルス血症となり、全身の組織に感染が広がり、症状が悪化する。
また、免疫能が低下し、合併症が起こりやすくなる。中耳炎、肺炎、咽頭炎などが一般的。重症の出血性麻疹や、ウイルスが中枢神経系で増殖して麻疹後脳炎などが起こることもある。
→p.444
α−ヘルペスウイルスβ−ヘルペスウイルス
- 単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1;herpes simplex virus type 1)
口唇ヘルペス、口内炎、角膜炎、ヘルペス脳炎、性器ヘルペス、新生児ヘルペス- 単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2;herpes simplex virus type 2)
性器ヘルペス、新生児ヘルペス、ヘルペス?疽、臀部ヘルペス
*性器ヘルペスは、従来は2型によるものがほとんどを占めたが、最近では1型によるものが約半数を占める。- 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV;varicella-zoster virus)
水痘、帯状疱疹γ−ヘルペスウイルス
- ヒトサイトメガロウイルス(HCMV;human cytmegalovirus)
先天性巨細胞封入体症、輸血後CMV単核症、移植後間質性肺炎<参考:ヘルペスウイルスについて>
- エプシュタイン・バー(EB)ウイルス(EBV;Epstein-Barr virus)
伝染性単核症、Burkittリンパ腫、上咽頭ガン→p.476, 480
ヘルペスウイルスとして分類されるウイルスは現在90種類以上知られており、様々な動物に固有のヘルペスウイルスが存在する。そしてその特徴も様々である。人に感染するのは上記の5種に加え、ヘルペスウイルス6型、7型、8型という最近発見されたウイルスの計8種がある。
自然宿主に潜伏感染latent infectionし、一度感染した個体には生涯にわたって存在するという特徴をもつ。その際、α−ヘルペスウイルスは主に神経細胞に潜伏し、何かの刺激で再活性化され、遠心性の軸索流に乗って回帰発症する。
直径120〜200nmのほぼ球状で正20面体のカプシドを有する。その内側にDNAを含むコア、外側にエンベロープを持ち、そしてエンベロープとカプシドの間にはテグメントと呼ばれる構造を有する。エンベロープの表面の突起様構造は細胞への吸着、侵入に関与し、また、抗体や捕体から逃れる役割を持つ。
ゲノム構造はdsDNAである。
→p.476〜480
大まかにたどると、
となる。
吸着・侵入→脱殻→ウイルスのもつ1本鎖RNAが2本鎖DNAへ逆転写される→細胞の染色体DNAに組み込まれる(プロウイルス)→転写、翻訳→ウイルスRNA、タンパクの集合→出芽
まずレトロウイルスのエンベロープに適合するレセプターに結合する(吸着)と、エンベロープと細胞膜が融合し、細胞内に侵入する。その後細胞質でカプシドタンパクが部分的に取り除かれ、RNAと分かれる(脱殻)。それからウイルスが持ち込んだ逆転写酵素によりウイルスRNAがDNAに転写され、2本鎖にされて環状DNAになる。これが核内で細胞の染色体DNAに組み込まれ、プロウイルスと呼ばれる。ウイルスゲノムの組み込みや次の転写・発現には、LTR(long terminal repeat;遺伝子の両端の繰り返し配列)が関与している。プロウイルスDNAのLTRに囲まれた部分が転写されてmRNAとなり、これがリボソームで翻訳されウイルス構造タンパクが合成される。同時にウイルスゲノムRNAも合成される。これらが集合してウイルス粒子へと組み立てられて、それが細胞膜から出芽する。
→p.450
A)HTLV−1(human T-lymphotropic virus type-1)
1) 母乳、性交(主に男性→女性)、血液(生きた血球成分が含まれる場合にしか感染は起こらない) 2) T細胞上のCD4分子 3) レトロウイルスの遺伝子には gag、pol、env がある。gag にはウイルス構造タンパクMA、CA、NCがコードされている。pol には逆転写酵素、ウイルスプロテアーゼ、インテグラーゼがコードされている。env にはエンベロープ膜タンパクがコードされている。HTLVは、さらに env と3’-LTRの間にpXとよばれる塩基配列をもち、自己の遺伝子発現の調節に関するTax、Rex、p21などをコードしている。 4) 成人T細胞白血病(ATL;adult T cell leuchemia) 5) HTLV-1キャリアは約100万人、ATLの年間発症数は約1000名
B)HIV(human immunodeficiency virus)
1) 血液、性交、母乳 2) T細胞上のCD4分子 3) 遺伝子は gag、pol、env のほかに tat、rev などがある。gag にはウイルス構造タンパクMA、CA、NCがコードされている。pol には逆転写酵素、ウイルスプロテアーゼ、インテグラーゼがコードされている。env にはエンベロープ膜タンパクがコードされている。tat は転写の開始と延長反応を促進する。rev はウイルスmRNAのうちスプライシングされていないものを安定化し、ウイルス構造タンパクをコードするmRNAの細胞質に移送させる作用がある。 4) AIDS 5) 累積1万人くらい(?)←誰か知っていたら教えて →p.455〜457
<肝炎ウイルスにはA〜E型があるが、ガンを起こすのはB型、C型である。>
- B型肝炎ウイルス(HBV;hepatetis B virus)
ヘパドゥナウイルス科に属し、dsDNAをゲノムに持つ、肝炎ウイルスでは唯一のDNAウイルスである。エンベロープを有する球状粒子(Dane粒子)である。患者血清中には他に小型球状粒子、管状粒子といった遺伝子を含まない遊離ウイルス抗原がある。エンベロープにはHBs抗原があり、エンベロープ内部にはHBc抗原、HBe抗原がある。感染経路は血液、出生時における母親から新生児への垂直感染、院内感染、性行為などがある。
正常な免疫能を持った成人に感染した場合、非持続性感染(急性B型肝炎)を起こす。これは数ヶ月の潜伏期のあと、肝機能障害が起こる。通常2〜4ヶ月で治癒するが劇症化することもある。
免疫能が十分でない乳幼児や患者に感染した場合は持続感染を起こす。当初は自覚症状のない無症候キャリアであるが、発症すると慢性肝炎となる。10%ほどの割合で長期感染の後肝硬変に移行し、やがて原発性肝がんとなる。
予防は垂直感染の防止などで行われる。ワクチンもある。治療はインターフェロンが用いられる。
→p.497〜500- C型肝炎ウイルス(HCV)
今のところフラビウイルスに属している(独立して分類される可能性あり)。ss(-)RNAウイルスである。1989年に、主な輸血後非A非B型肝炎の病原ウイルスとして発見された。エンベロープを有する直径55〜65nmの球状粒子。
感染経路は血液。これまでは輸血によるものが多かったが、現在はスクリーニングされている。垂直感染や性行為による感染も起こりうるが、感染能は低い。
感染後1〜3ヶ月間の潜伏期を経て肝炎を発症するが、A型、B型に比べて症状は軽い。ただし免疫能が正常でも慢性肝炎になりやすく、10〜20年を経て肝硬変に進展、その後原発性肝がんとなる。予防法としての免疫グロブリン製剤やワクチンは今のところ無い。治療はインターフェロンの長期投与が行われるが、効果の無い症例が多い。
→p.500〜503
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