次の表を見て以下の設問に答えよ。
細菌種好気的培養嫌気的培養増殖の程度
A好気>嫌気
B不可 
C不可 
D好気=嫌気
(1)A〜Dの各菌の酸素に対する対応の違いを表す呼び名(総称)をそれぞれ何というか。また各群に該当する菌名で知っているものを1つずつを学名(和名,ラテン名いずれでも正確ならよい)で記せ。
(2)BとCの菌はエネルギー代謝にどのような違いが見られるか。
(3)AとDの好気、嫌気条件での増殖の違いはどのようなことで説明できると考えられるか。


(1)
   A:通性嫌気性菌 (例)大腸菌 Escherichia coli
   B:(偏性)好気性菌 (例)百日咳菌 Bordetella pertussis
   C:偏性嫌気性菌 (例)破傷風菌 Clostridium tetani
   D:通性嫌気性菌〔耐気性菌〕 (例)肺炎レンサ球菌 Streptococcus pneumoniae


(2)
   好気性菌は好気呼吸系をもつが嫌気呼吸系や発酵系をもたないため、無酸素条件下では基質を酸化してエネルギーを得ることができず、生存できない。一方、偏性嫌気性菌ではカタラーゼやSOD(superoxide dismutase)をもたないため、有酸素条件下で生じるラジカルによって傷害を受け死滅する。


(3)
   Aは嫌気呼吸系と好気呼吸系の両方をもつ。一方、Dは嫌気呼吸系をもつが好気呼吸系をもたない。そのため、酸素条件下でAは好気呼吸によって基質を効率よく酸化し大きなエネルギーをATPとして得ることができるが、Dは酸素条件下でも効率の悪い嫌気呼吸しか行えず、したがって産生するATP量も少ない。Dのような通性嫌気性菌を特に耐気性菌とよぶ。




補足 細菌の代謝
   細菌のエネルギー産生には3つの経路がある。
         T 好気呼吸 aerobic respiration
         U 無気(嫌気)呼吸 anaerobic respiration
         V 発酵 fermentation
   これら3つの経路は最終的な電子受容体が何であるかによって区別される。
好気呼吸   1分子のグルコースを解糖系によって2分子のピルビン酸に変換(同時に2分子のNADH+H+と正味2分子のATPが生じる)した後、クエン酸回路(TCA回路、Krebs回路)によって8分子のNADH+H+と2分子のFADH2を生じる。この経路によって生じた還元当量は細胞膜のチトクローム系に送られ、そこで酸素が最終的電子受容体として働く。細胞膜内外のプロトン濃度勾配にしたがって細胞膜を透過する際ATPaseを活性化し、ATPに移される。結果として正味38分子のATPが産生される。真核生物では解糖系で生じたNADH+H+がミトコンドリア膜を通過する際に2ATPを消費するため36ATPとなる。

   ※ 一部の偏性好気性菌には以下のような経路も存在する。
ペントース-リン酸回路   グルコース6-リン酸から直接フルクトース5-リン酸に進まず回り道をする回路。その間にできるNADPHはエネルギー産生や脂肪酸合成に使われ、フルクトース5-リン酸とグリセルアルデヒド3-リン酸は解糖系に戻り、ペントースは核酸合成に用いられる。
エントナー・ドゥドロフ経路   エタノールを産生する経路


嫌気呼吸   嫌気呼吸とはチトクローム系が異なり、酸素ではなく、硫酸塩・硝酸塩・炭酸塩のような無気分子を電子受容体として用いる。好気呼吸よりは効率は悪い。電子受容体として硝酸塩を用いるものには大腸菌 Escherichia coli、クレブシエラ菌 Klebsiella、緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa、ガス壊疸菌 Clostridium perfringens、エンテロバクター Enterobacter、黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus などがある。
   ※ 大腸菌では嫌気呼吸で産生されるATPは好気呼吸で産生されるATPの半分程度である。

発酵   最も効率が悪い。グルコースはピルビン酸に変換され、そのとき生じたNADHによって今度は乳酸・ギ酸・プロピオン酸といった有機酸に還元される。これらの有機酸が最終的電子受容体として働くのである。

細菌の代謝
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