損傷の種類 | 具体例 |
塩基の損傷 | TやCなどのピリミジンはラジカルと反応すると、2重結合がとれてHやOHの付加したものや過酸化物ができる |
Tのメチル基をOH・ラジカルが攻撃すると、CH2OHの形になる |
Cが脱アミノ化によりUに変化する(これは放射線にさらされなくても自然におこる現象である) |
AやGなどのプリンでもHやOHの付加がおこる |
GのC(8)位のOH化により8-ヒドロキシグアニンが形成され、細胞死や突然変異の原因となっている(8-ヒドロキシアデニンも細胞内でたくさん形成される) →1995年度本試4. |
塩基の遊離と塩基をもたないデオキシ糖の部位 | 鎖が切れずに、塩基または糖の損傷のために塩基がDNA鎖から遊離することによって、塩基の抜けた部位(AP部位という)が生じると、DNA複製が阻害され、場合によっては突然変異の原因となる(なお、AP部位はアルカリ処理で容易に切断される) |
DNA切断(単鎖切断または2重鎖切断)に伴って塩基の遊離がおこる場合もある |
鎖切断 | 放射線による糖鎖(まれに塩基)の損傷によって、DNA2重らせんの内の一方に鎖切断がおこる単鎖切断ないしは、両方に切断がおこる2本鎖切断が形成される |
架橋 crosslink | 両方のDNA鎖の塩基にラジカルが生じた場合、塩基間に共有結合が形成され、両鎖が架橋される(DNA鎖間架橋という) |
片方の鎖の異なる場所どうしで共有結合がおこる場合もあり、DNA鎖内架橋という |
核タンパク質のアミノ酸とDNAの塩基との間に共有結合が形成される場合、DNA-タンパク間架橋という |
2量体形成と紫外線によるDNA損傷 | 紫外線(エネルギーが低いため、通常では電離をおこさない)照射を行うと、DNAの塩基分子の励起がおこり、ピリミジンがDNA上で並んで存在する場合、互いの間に共有結合が形成されて、2量体が作られる(その大部分はシクロブタン型とよばれるものであるが、非シクロブタン型とよばれるものも形成される場合があり、両者とも細胞死や突然変異の原因となっている) |
紫外線照射によって電離放射線と同様にCやTの2重結合がとれて、HやOHが付加する場合もある(数は少ない) |