1. 異なるグループの細胞接着因子を少なくとも4種類以上挙げ、その構造と機能を説明できる。

カドヘリン カドヘリン
   脊椎動物の組織でのCa2+依存性のCAM(細胞間接着分子)の1種である。最初に発見された3種のカドヘリンは見つけた場所からE-カドヘリン(上皮細胞)、N-カドヘリン(神経、筋肉など)、P-カドヘリン(胎盤、表皮)というように名前が付けられ、その後もたくさんの新種が見つかっている。
   構造は、1回膜貫通型膜糖タンパクで、約700程度のアミノ酸残基からなる。そのポリペプチドは細胞外部分が大きく分けて5つのドメインに折りたたまれており、各々100アミノ酸残基からなる。このうち4つが相同でその中の3つにCa2+結合部位がある。Ca2+が存在しないとカドヘリンの構造は大きく変わり、ただちに酵素によって分解されてしまう。
   細胞質側のC末端が少なくとも3種類あるカテニンと呼ばれる細胞内付着タンパクによってアクチン細胞骨格と相互作用している。
   カドヘリンにいくつかの種類があることは、同種のカドヘリン同士が結合する性質(同種親和性機構)を用いた結合相手の選別に役立っている。すなわち、同種のカドヘリンを持つ細胞が同種の組織を成す細胞であり、それによって組織の形成を支えている。

セレクチン セレクチン
   セレクチンもCa2+依存性のCAMの一種である。N末端を細胞外に、C末端を細胞内に持つ膜貫通タンパクであり、細胞外部分はN末端よりアミノ酸約120残基のC型レクチン・ドメイン(C型とは結合にCa2+が要ることを示す)、アミノ酸約30残基のEGF(表皮成長因子)様ドメイン、アミノ酸約60残基からなる配列の反復ドメインのあわせて3つのドメインから構成され、膜貫通部、細胞内ドメインが続く。C型レクチン・ドメインが細胞表面のオリゴ糖配列と結合する。この結合様式は異種親和性細胞間接着の1例である。
   レクチン・ドメインと特定のオリゴ糖との結合は比較的弱いので、2者の会合とそれに続く解離は速やかに行われる。白血球や血小板、内皮細胞の表面には各種セレクチンが発現していて、この性質を利用して、血液内で起こる細胞間の1時的な接着に広く関わっている。

N-CAM(神経細胞接着分子)
   Ca2+非依存性であり、免疫グロブリンスーパーファミリーに属するCAMで、神経細胞を含む各種の細胞で発現している。細胞外に大きなポリペプチド鎖部分を持ち、それは折りたたまれて、免疫グロブリン様の5つのドメインをもつ。ほとんどのN-CAMはいろいろな大きさの細胞内ドメインを持つ1回膜貫通型タンパクである。
   同種親和性結合によって、神経回路網の形成や筋の発生などに重要な機能を果たす。神経細胞の突起の伸長を誘導するガイダンス分子としての機能を果たす。

インテグリン インテグリン
   非共有的に結合した膜貫通型糖タンパクサブユニット2つ(αとβ)からなり、どちらもマトリックス(基質)タンパクの結合に寄与している。α、β鎖共になん種類もあり、その組み合わせによって多様性が生じる。細胞内ドメインは付着タンパクであるタリンとαアクチニンを介して細胞骨格と結合し、細胞外ドメインはマトリックスタンパクと結合する。アルファ鎖には3、4個の2価陽イオン結合ドメインがあり、リガンドへの結合は細胞外にある2価陽イオン(Ca2+またはMg2+)に依存する。
   インテグリンは細胞骨格と細胞外マトリックスの間の相互作用を仲介する膜貫通リンカー(まとめ役)である。ほとんどのインテグリンはアクチンフィラメント(細胞骨格を成す)の束に結合している。典型的なインテグリンはマトリックスのリガンドに結合した後、β鎖の細胞質側尾部でタリンとαアクチニンに結合する。インテグリンを介して細胞外マトリックスと細胞骨格とが互いに影響しあう。




2. 接着分子の異常で引き起こされる病気について少なくとも4種類以上あげることができる。

@白血球不全症という常染色体劣性遺伝病では、感染部位で白血球を血管内皮の内張りに固く付着させたり貫通させたりするβ2インテグリンに欠陥があるために、白血球走化能や細胞障害性リンパ球機能が低下して、度重なる細菌感染、傷の回復の遅れなどがもたらされる。

Aグランツマン血小板無力症(ほとんどの場合常染色体劣性遺伝)では、血液凝固の際血小板と相互作用するフィブリノーゲンなど数種のマトリックスタンパクと結合するβ3インテグリンが遺伝的に欠損することにより、出血が止まりにくくなる。

B先天性接合部型表皮水泡症において、インテグリンのβ4鎖の細胞内ドメインに異常が見られる。

C先天性水頭症などの神経疾患において、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞接着分子L1の機能に異常が生じたことによる神経管の形成異常にともない、脳形成不全が起こるために脳室拡大、知能発達障害、歩行障害などの症状を呈し、重篤な場合1歳未満で死亡する。

D活動性慢性関節リウマチの滑膜(関節腔の内面にそって存在する結合組織で、骨の関節軟骨の部分を除く全内面を覆っている)細胞や炎症性腸疾患の病変部において、CD44という細胞接着分子の発現が著しく増強されており、それによる細胞内への刺激が他の接着分子などを介して炎症の遷延化を起こしている。




3. Gastrulation過程での細胞接着分子の機能を説明できる。

   原腸形成(Gastrulation)における胚の組織の運動は、細胞の化学的性質に伴って起こる。細胞表面に提示する細胞接着分子の組み合わせが変わると、それまでの接着をやめて新しいところに接着する。
   例えば、カドヘリンは細胞と細胞を接着させて同種のカドヘリンを表面に持つ細胞同士を集合させる。原腸形成の進行にともなう細胞の集合パターンの変化といろいろなカドヘリンの発現パターンの変化は密接な関係にある。また、周辺の細胞との接着性を失って単独で細胞の隙間をぬって胚の内部を進む細胞の運動には細胞−マトリックス相互作用が重要で、インテグリンがその相互作用の仲介をする。これによって生じる移動の結果、脊椎動物の成体の大半の組織には、初期胚の広範囲にわたる様々な部分に由来する細胞が混合して含まれることになる。
   両生類の発生過程において、細胞外マトリックスの1つのフィブロネクチンは中胚葉の細胞移動の道筋として働いていて、これと細胞を結びつけるのがαvβ1という種類のインテグリンである。フィブロネクチンかフィブロネクチン受容体として働くインテグリンのβ1サブユニットに対する抗体を注入すると中胚葉の移動はとまる。受精後、インテグリンのαvサブユニットが割球の細胞膜から失われる。しかし、原腸形成の直前からその発現が移動する中胚葉の表面で起こり始め、そして、フィブロネクチン受容体の合成が起こり、中胚葉は移動する。
   鳥類の原腸形成において、E-カドヘリンは、scatter factorが隣接する細胞の受容体チロシンキナーゼに結合し、βカテニンをリン酸化することによって、細胞膜に結合でき、機能できるようになる。この機能をできるE-カドヘリンがなければ、上皮は本来の位置を離れ、細胞は間葉のみになってしまう。
   哺乳類の原腸形成において、中胚葉と内胚葉が原始線条を通って移動する際、原外胚葉は細胞同士を結びつけていたE-カドヘリンの発現を止め、そのことによって細胞は個々の細胞として移動できるようになる。
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