1. ショウジョウバエにおけるホメオチック変異について例を挙げて説明し、それに関わる遺伝子の構造について記述できる。

   ホメオチック変異が起こると体の他の部分にふさわしい組織構造が体の別の部分に発生する。例えばAntennapediaの優性変異体は胸部で発現するAntennapedia遺伝子に変異が起こり、頭部で発現するようになったため、触角が脚の構造に変わってしまっている。一方bithoraxという変異では平均棍という小さい付属器官の場所に一対の翅ができる。
   これらの変異に関わるホメオチック遺伝子はbithorax複合遺伝子とAntennapedia複合遺伝子という2つの遺伝子集団に属している。前者は腹部と胸部の体節の違いを制御し、後者は胸部と頭部の体節の違いを制御する。各ホメオチック遺伝子は特異的な作用領域があり、その境界ははっきりと擬体節間で区別される。これらが欠けると擬体節間の区別がなくなるので、ホメオチック遺伝子は擬体節間の違いを決めることがわかる。
ホメオチック遺伝子
   染色体上において複合遺伝子それぞれの中でのホメオチック遺伝子の順番とそれが発現する空間的位置関係とは対応している。大部分の遺伝子は1個の擬体節において強く発現し、その近くの擬体節では弱く発現する。しかし最終的に発現領域が重なる後の遺伝子が発現して、前の遺伝子の発現を抑制、結果的に一部の体節のみでの発現となる。
   ホメオチック遺伝子の発現はギャップ遺伝子やペアルール遺伝子に影響される。例えばabdAとAbdBの発現はギャップタンパクのハンチバックとクリュッペルに抑制されていなければ、頭や胸でも発現する。また、Ubx遺伝子はある程度の濃度のハンチバックタンパクに活性化される。
   このようにしてホメオチック遺伝子の転写パターンができ、それが維持されるので、それぞれのホメオチックタンパクは位置情報のメモリーチップとして働く。




2. 1で説明したショウジョウバエでの原理が、哺乳動物でも共通に用いられていることについて具体的な実験例をもとに説明する。

   ホメオチック遺伝子のホメオドメインは進化の過程で高度に保存されているので、ショウジョウバエのホメオチック遺伝子と相同性のある遺伝子を他の動物で探すのは比較的容易である。
   こうした遺伝子は例えばマウスでは別々の染色体に4つあって、それぞれHoxA、HoxB、HoxC、HoxDとよばれている。遺伝子を解析するとこれらはそれぞれ1つずつが昆虫のHOM複合遺伝子(すなわちAntennapedia複合遺伝子とbithorax複合遺伝子をあわせたもの)に対応しており、これら4個の複合遺伝子は原型となる1個の複合遺伝子の重複により生じたものと考えられる。実際、Hox遺伝子はハエに導入しても機能を示す。
   これらの発現方法をin situハイブリダイゼーションで調べると、特に神経管において頭部から尾部へ順に並んで発現されており、ショウジョウバエの場合と同じである。鰓弓はまさしく擬体節と対応している。




3. 生物における分節性について例を挙げて説明できる。

ショウジョウバエの例
   母体より入ってくるマターナル遺伝子の転写産物であるmRNAの濃度勾配が生じることにより、体軸が決定が始まる。これはこの産物のタンパク質が濃度により様々な遺伝子をONにしたりOFFにしたりして調節するからである。
   こうした卵極性遺伝子産物の濃度勾配にしたがって一連の体節ができる過程には多数の分節遺伝子が関わっている。この分節遺伝子は母親由来のmRNAではなく自分のゲノムを使うようになってから作用する、接合体効果遺伝子である。
   この分節遺伝子はギャップ遺伝子、ペアルール遺伝子、セグメントポラリティー遺伝子の3つに分類される。
   卵極性遺伝子産物が全体的な位置シグナルとなって、特定の領域で特定のギャップ遺伝子を発現させる。このギャップ遺伝子は本来存在する体節の周りにも第2段階の位置シグナルとして働き、大まかな局所的発生パターンの調節を行う。この作用でペアルール遺伝子が働き、体節2個を単位とした周期性を示しつつより細かいパターンを調節する。こうしたペアルール遺伝子の作用の幅は細胞4個分であり、こうした種々のペアルール遺伝子が少しずつずれながら並ぶことで胞胚をより細かく細胞1個分の幅まで設定することができる。そしてこの幅の範囲でセグメントポラリティー遺伝子が発現する。これは各擬体節の基本的分割の標識となり、擬体節内部の細かいパターン形成と発生に役立つ。
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