器質性精神障害
   脳自体の器質的異常によって生じる精神障害。痴呆性疾患がこれにあたる
Alzheimer病
Alzheimer's disease
(AD)
【疫学】最も頻度の高い痴呆性疾患で、全痴呆性疾患の約70%を占める
多くは孤発例。10%前後は家族内発症(家族性Alzheimer病とよばれる)
ε4のアポリポ蛋白をもつ患者に好発する
【症状】初期…記銘障害(エピソード記憶の完全脱落、物取られ妄想etc.)、見当識障害、抑うつ症状、人格変化etc.
中期…上記症状の悪化、失語、失行、失認、保続、多幸、多彩な行動・心理症状etc.
末期…要介護、意思疎通困難、常時失禁、弄便、異食、寝たきり状態etc.
   ※仮性痴呆を示すうつ病とは逆に、夕方以後に増悪することが多く、夜間せん妄も時に認められる
【検査】痴呆評価尺度…遅延再生課題↓↓、保続etc.
画像診断…CT・MRIにて大脳の全般的萎縮とSylvius裂・脳室の拡大、SPECT・PETにて血流・代謝の低下(頭頂・側頭葉で初発、後に前頭葉に拡大)
髄液検査…タウ蛋白↑、βアミロイド(Aβ)↓
【病理】老人斑…難溶性のAβが中心に沈着してできた鍍銀染色で明瞭に染まる異常構造物
神経原性変化(NFT)…タウ蛋白の過剰リン酸化に伴う微小管の不安定化による神経細胞の脱落
・神経細胞の高度の脱落…大脳皮質、海馬、コリン作動性神経などでみられる
【治療】根本的治療法なし。痴呆対応型共同生活介護(グループホーム)や薬物による対症療法(抗AChE薬である塩酸ドネペジルの投与)
脳血管性痴呆
cerebral vascular
dementia
【疫学】Alzheimer病と並んで頻度の高い痴呆の原因疾患
【原因】・一発の大きな脳出血or脳梗塞で一挙に痴呆に至る場合…遷延性の意識障害を伴うことが多い
・多発梗塞性痴呆(MID)…神経細胞の脱落は前頭葉の皮質下、基底核に好発
・Binswanger型脳症…びまん性に大脳白質が侵される
【症状】前駆症状…脳卒中やTIA発作の既往etc.
初期…局所神経症状、意欲の低下、抑うつ、健忘、まだら痴呆(ある事象の判断力は衰えるが、別の事象の判断力は正常)、感情不安定、感情失禁(突然何の脈絡もなく泣いたり、笑ったりする)、夜間せん妄、仮性球麻痺による誤嚥etc.      ※失行・失認・失語、反響言語などの症状は少ない
進行期…階段状に増悪していく。人格は末期まで保たれ、病識もある
【検査】画像診断…多発梗塞性痴呆では、CTにて多発性の低吸収域、MRIのT2強調画像にて多発性の高信号域。Binswanger型脳症では、CTにて白質のびまん性低吸収域、MRIのT2強調画像にて白質のびまん性高信号域
【鑑別】
 Alzheimer型痴呆脳血管性痴呆
発症様式徐々に発症急性発症or脳卒中の発症と時間的関連をもって発症
経過進行性悪化動揺性階段状悪化
痴呆の性質全般性痴呆まだら痴呆
病識早期になくなる末期まで残る
人格早期より崩壊する比較的よく保たれる
随伴症状神経学的局所症候(−)
徘徊、多動、濫集傾向を伴いやすい
神経学的局所徴候(+)
感情失禁を伴いやすい
CT・MRI脳萎縮、脳室拡大器質性血管病変
SPECT両側性(特に頭頂葉・側頭葉)の血流低下斑状の血流低下
脳波全般的徐波化びまん性α波
前頭側頭型痴呆
fronto-temporal
dementia
(FTD)
【概念】前頭葉および側頭葉の前方部分が萎縮し、特異な精神症状をきたす疾患群
【分類】
Pick病
概念…前頭葉or側頭葉が限局性萎縮(葉性萎縮)をきたし、特異な精神症状をきたす疾患
症状…前頭葉型は人格荒廃で初発し、次第に欲動的脱制止、考え無精、滞続言語などを呈するようになる。側頭葉型は失語症(感覚失語)で初発し、進行すると人格変化を伴うようになる
検査…CT・MRIにて前頭葉or側頭葉の萎縮、SPECTにて萎縮部位の血流低下
病理…Pick細胞(タウ蛋白の過剰リン酸化により、細胞質内に嗜銀性の球型封入体が形成された細胞)
前頭葉変性症(FLD)
概念…前頭葉および側頭葉前方部分の萎縮+黒質変性により、特異な精神症状をきたす疾患
症状…前頭葉型Pick病とほぼ同様の症状+進行時のパーキンソニズム
病理…Pick細胞(−)、老人斑(−)、神経原性変化(−)
運動ニューロン型
症状…前頭葉型Pick病とほぼ同じ症状+進行時のALS様の運動ニューロン症状
びまん性Lewy小体病
diffuse Lewy
body disease
(DLBD)
【概念】脳幹から大脳皮質にかけてびまん性にLewy小体(αシヌクレインを主成分とするエオジン好性の神経細胞内封入体)を有し、痴呆とパーキンソニズムをきたす疾患
【疫学】わが国では、Alzheimer病、脳血管性痴呆に次いで3番目に多い痴呆性疾患
【分類】・通常型…老年期に痴呆症状を発症し、比較的早期にパーキンソニズムが出現
・純粋型…初老期にパーキンソニズムを発症し、経過ともに痴呆症状が出現
【症状】Alzheimer病類似の痴呆症状(ただし、生々しい幻視の反復、動揺性の認知障害、抗精神病薬に対する感受性の著しい高さという3点で異なる)+パーキンソニズム
【検査】画像診断…Alzheimer病ほどの脳萎縮はみられず、診断的価値は低い
【病理】びまん性に分布するLewy小体の他、通常型ではAlzheimer病類似の病理所見(老人斑、神経原性変化)がみられる
進行性核上性麻痺
progressive
supranuclear
palsy(PSP)
【概念】パーキンソニズム、眼球運動障害、仮性球麻痺、痴呆などを呈する非遺伝性疾患
【原因】脳幹の神経核にある神経細胞の脱落、神経原性変化
【症状】パーキンソニズム…初老期〜老年期の初発症状。L-DOPA抵抗性
眼球運動障害…後頸筋の筋固縮による下方注視麻痺が中心。姿勢異常(極端な後屈姿勢)を伴う
仮性球麻痺…嚥下困難、構音障害etc.
皮質下痴呆…獲得した知識の操作能力の低下があり、物忘れと思考過程の緩慢化が特徴的
人格変化…意欲の減退、感情変化(易怒性、多幸etc.)etc.
   ⇒これらの症状は数年の経過で増悪し、やがて寝たきりとなって死亡する
【検査】画像診断…CT・MRIにて中脳・橋・延髄の高度な萎縮
【病理】神経細胞・グリア細胞に神経原性変化
皮質基底核変性症
corticobasal
degeneration
(CBD)
【概念】大脳皮質と基底核に著明な萎縮を認める非遺伝性の疾患
【症状】初老期〜老年期に、失語・失行・失認+皮質性感覚障害(alien hand etc.)+L-DOPA抵抗性のパーキンソニズム+痴呆を発症。進行性の経過をたどり、数年で寝たきりになって死亡する
【病理】神経原性変化(−)、ballooned neuron(+)
Huntington病
【概念】舞踏病と痴呆を特徴とする神経変性疾患。AD遺伝性のtriplet repeat病である
【疫学】30〜50歳くらいが好発年齢
【症状】舞踏病で初発し、進行とともにPSP同様の皮質下痴呆人格変化が現れる。緩徐進行性で、最終的には無言無動状態となり、寝たきりとなって死亡する
【検査】画像診断…線状体(特に尾状葉)の著明な萎縮、側脳室前角の対称性拡大(butterfly appearance)
Creutzfeldt-Jakob病
(CJD)
【概念】プリオン蛋白(PrP)の変性により、痴呆とミオクローヌスを中心とする神経症状を呈する疾患
【疫学】大半が孤発例(50〜80歳に発症)。一部、感染例や遺伝例もある
【症状】記銘障害、痴呆、人格変化、異常行動(運動失調、ミオクローヌス、錐体路徴候、錐体外路徴候etc.)などを呈する。急速に進行し、数ヶ月以内に無言無動状態に陥り、発症から平均1年半で死亡する
【検査】脳波…周期性同期性放電(PSD)
【病理】海綿状脳症(脳がスポンジ状に変性)
エイズ痴呆症候群
AIDS dementia
complex(ADC)
【概念】HIV感染症のAIDS期およびAIDS関連症候群期(ACR期)に、皮質下痴呆を中心とする中枢神経症が生じた状態。まれではあるが、無症候期にも起こることがある
【疫学】頻度は20〜70%
【原因】HIV感染が直接の原因
【症状】初期…記銘障害、無気力、集中力低下etc.
中期…思考過程・言語の緩慢化、認知障害、運動障害etc.
末期…無言無動状態、意思疎通困難、対麻痺、失禁、寝たきり状態etc.
【検査】MRI…T2強調画像にて白質を中心とするびまん性の高信号域
【病理】特に大脳白質から深部灰白質にかけて、多核白血球・リンパ球・Mφなどが浸潤し、神経細胞の破壊とグリア細胞の増殖がみられる
【治療】通常のHIV感染症と同じ(逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬などの多剤併用療法)
進行麻痺
general palsy
【概念】梅毒の起炎菌であるTreponema pallidumによって起こる脳炎。第4期梅毒に分類される
【症状】初期…人格変化(無気力、抑制欠如etc.)、記銘障害、知能低下etc.
進行期…麻痺性発作(痙攣、卒中様症状etc.)、精神症状の進行、Argyll Robertson瞳孔、言語蹉跌(つまずきことば)etc.
症状性精神病(一般身体疾患による精神障害)
   脳以外の身体疾患に伴って、二次的に脳が侵され、精神症状を呈するに至った病態。精神症状は多くの場合、基礎疾患の軽快に伴って回復する可逆性の変化であり、共通症状として急性期の意識障害(意識混濁、意識変容)と症状が固定するまでの通過症候群(自発性の低下、抑うつ症状、過敏性情動性衰弱状態、Korsakoff症候群)が認められ、この共通症状のことを外因反応型とよぶ
 精神症状
高熱を伴う全身感染症せん妄が中心
内分泌
疾患
甲状腺機能亢進症被刺激性の亢進、不安、焦燥感、感情の不安定化、躁症状、抑うつ症状etc.
甲状腺機能低下症意欲の低下、無関心、思考過程の緩慢化、感情の平坦化
Cushing症候群意欲低下、抑うつ症状が中心
副腎皮質機能低下症意欲低下、抑うつ症状が中心
代謝性
疾患
低血糖不安、焦燥感、意識混濁、せん妄、痙攣発作etc.
肝不全肝性脳症(意識混濁、せん妄etc.)
尿毒症意識混濁、せん妄etc.
ペラグラ疲労感、刺激性、不安、抑うつ、モリア、せん妄、痴呆、幻覚症、緊張病様状態etc.
膠原病SLE etc.軽度の躁状態orうつ状態、幻覚妄想etc.
産後マタニティブルー(軽度の抑うつ状態)、産後うつ病(遷延化した重度の抑うつ状態)
ICU環境下ICU精神病(せん妄が好発)。治療は、家族との面会、向精神薬の投与、一般病棟への転床、明かりの調節(夜には少し照明を落とす)、基礎疾患の治療etc.
薬剤性ステロイドの長期大量投与ステロイド精神病(多弁、上機嫌などの軽躁状態が中心)
てんかん
【概念】さまざまな原因に基づく慢性の脳疾患で、神経細胞の過剰な放電に由来する反復性の発作(てんかん発作)を特徴とする
【疫学】頻度は0.4%。その80%が20歳以前に発症する
【分類】
てんかん発作の国際分類(1981年)
T.部分発作
   A.単純部分発作
      ・運動症状を伴う発作
      ・感覚症状を伴う発作
      ・自律神経症状を伴う発作      
      ・精神症状を伴う発作
   B.複雑部分発作
   C.二次性全般化発作
U.全般発作
   A.欠神発作
   B.ミオクロニー発作
   C.間代発作
   D.強直発作
   E.強直間代発作
   F.脱力発作(失立発作)
てんかん症候群の国際分類(1989年)
1.部分てんかん(局所関連性てんかん)
   1)特発性
      ・中心側頭葉に棘波をもつ良性小児てんかん      
      ・後頭部に突発波をもつ小児てんかん
      ・原発性読書てんかん
   2)症候性
   3)潜因性
2.全般てんかん
   1)特発性
      ・良性家族性新生児痙攣
      ・良性新生児痙攣
      ・小児欠神てんかん(ピクノレプシー)
      ・若年欠神てんかん
      ・若年ミオクロニーてんかん
      ・覚醒時大発作てんかん
   2)潜因性or症候性
      ・West症候群
      ・Lennox-Gestaut症候群
      ・ミオクロニー失立発作てんかん
      ・ミオクロニー欠神てんかん
   3)症候性
      ・早期ミオクロニー脳症
      ・サプレッションバーストを伴う早期乳児
        てんかん性脳症
3.部分てんかんか全般てんかんか決定でき
    ないてんかん
4.特殊症候群
【症状】
 概念症状脳波



単純部分発作
(SPS)
発作時に意識障害を伴わない部分発作痙攣、異常感覚、自律神経症状、感情発作、認知発作、言語障害発作、記憶障害発作etc.発作時に焦点に対応した棘波・鋭波
複雑部分発作
(CPS)
発作時に意識障害を伴う部分発作2分前後の意識障害・自動症が起こり、発作後に健忘を残す。前兆を伴うこともある発作時に側頭葉(or前頭葉)に棘波・鋭波
二次性
全般化発作
(SGS)
焦点からの過剰放電が大脳皮質全般に広がり、全身性の強直間代発作に至った状態感覚症状を伴う発作などを先行症状として、数分後に全身性の強直間代発作が出現 






欠神発作
(小発作)
absence
脳波所見などから定型欠神発作と非定型欠神発作に分類される。5〜8歳の女児に好発会話中・食事中などに突然の意識消失発作。持続時間10秒前後。深呼吸・過呼吸により誘発される欠神発作の脳波(全般性3Hz棘徐波複合)発作時にびまん性の3Hzの棘徐波複合。定型欠神発作では左右対称で規則的、非定型欠神発作では不規則で左右非対称
ミオクロニー
発作
 両側同期性で、通常単発性のミオクローヌスが起こる。意識障害(−)発作時に全般性の多棘徐波複合
強直間代発作
(大発作)
右記の強直間代発作の強直相or間代相のみを特徴とする発作はそれぞれ強直発作、間代発作とよばれる突然の意識消失の後、15〜30秒程度の強直相(全身性の強直性痙攣、初期叫声)→30〜90秒ほどの間代相(ミオクローヌスの反復)→終末睡眠orもうろう状態と経過強直相では漸増律動、間代相ではさまざまな波形の棘徐波複合
脱力発作
(失立発作)
全身の姿勢保持筋の突然の緊張低下が原因突然の転倒、意識障害(+)発作時に全般性の多棘徐波複合
てんかん発作重積状態…30分以上にわたる発作の持続。原因は多岐にわたるが、抗てんかん薬の勝手な中断が最多。治療としてはまずジアゼパムの静注を行い、再発予防の意味で抗てんかん薬の血中濃度測定をあわせて行う。俗に言われる「舌を噛まないように割り箸やハンカチを噛ませる」方法は、かえって口腔内損傷や窒息のリスクとなるため、行われない
【検査】脳波検査の反復が重要。また、光刺激や過呼吸、睡眠などでの誘発も必要
【治療】薬物療法…単剤投与が原則。各抗てんかん薬の適応等はこちら
手術療法…難治性てんかんに対して、側頭葉切除術、選択的扁桃体海馬切除術、脳梁離断術、軟膜下皮質多切術etc.

主なてんかん症候群



















中心側頭部に
棘波をもつ
良性小児てんかん
(BCECT)
【概念】中心溝(Roland溝)とSylvius裂が交わる部分の周辺領域に焦点を有する特発性部分てんかんで、Rolandてんかんともよばれる
【疫学】特発性部分てんかんの大部分を占め、かなり頻度の高い疾患である。好発年齢は5〜8歳で、男児に多い。高率に家族歴が認められる
【症状】単純部分発作が主症状で、顔面・舌を中心とした異常感覚・強直発作を伴い、しばしば全般化する。特に入眠期や目覚める直前に多く起こる
【検査】発作時…中心側頭部から始まり、周囲に広がる棘波or鋭波
発作間欠時…中心側頭部の棘波or鋭波(Roland放電)
【治療】無治療で経過観察を行う場合もある。薬物療法としてはカルバマゼピンorバルプロ酸
【予後】身体発育障害や知能障害を伴わず、発作も思春期以降は消失する
後頭部に突発波を
もつ小児てんかん
【疫学】比較的まれな疾患で、小児期(平均6歳)に発症
【症状】視覚症状…初発症状。一過性盲(黒内障)が最多で、他には閃光、幻視など。頭痛や嘔吐を伴うこともある
てんかん発作…視覚症状のみの場合もあれば、複雑部分発作、二次性全般化発作に至ることもある
【検査】発作時…後頭部に棘波・鋭波・徐波などの異常脳波の突発
【治療】カルバマゼピンorバルプロ酸




側頭葉てんかん
【概念】側頭葉内に焦点をもったてんかんの総称
【疫学】症候性部分てんかんの半数近くを占める。好発年齢は5〜10歳くらいで、しばしば家族歴が認められる
【症状】複雑部分発作が中心。しばしば前兆として単純部分発作の症状(異常感覚etc.)がみられる。時に二次性全般化を起こし、全身の強直間代痙攣を呈する
【検査】発作間欠時…側頭部に棘波・鋭波
発作時…側頭部に律動性群発波etc.
画像診断…MRI・CTにて海馬の萎縮、占拠性病変etc.
【治療】カルバマゼピンがfirst choiceだが、外科治療もよい適応となる
【予後】思春期頃にはいったん軽快することもあるが、その後は難治性になることが多く、抗てんかん薬にも抵抗する
前頭葉てんかん
【概念】前頭葉に焦点をもったてんかんの総称
【症状】単純部分発作(運動症状中心で、急速に全般化)or複雑部分発作
【予後】抗てんかん薬に抵抗し、難治性のことが多い




























小児欠神てんかん
(ピクノレプシー)
【疫学】6歳頃に好発。女児に多い。濃厚な家族的集積傾向あり
【症状】定型欠神発作で始まり、発作は頻発する。発症後数年以上経過すると、約40%の確率で強直間代発作が、数%の確率でミオクロニー発作がみられる
【検査】定型欠神発作時…3Hzの棘徐波複合(過呼吸により誘発、光過敏性あり)
発作間欠時…原則として正常
【治療】バルプロ酸orエトスクシミド
【予後】薬剤に対する反応性が良好で、予後良好
若年欠神てんかん
(JAE)
【疫学】10〜12歳頃に好発。性差特になし。濃厚な家族的集積傾向あり
【症状】定型欠神発作で始まるが、発作頻度は少ない。80%以上の確率で強直間代発作が、約20%の確率でミオクロニー発作がみられる
【検査】定型欠神発作時…3Hzの棘徐波複合(過呼吸により誘発)
【治療】バルプロ酸
【予後】薬剤に対する反応性が良好で、予後良好
若年ミオクロニー
てんかん(JME)
【疫学】12〜18歳頃に好発。性差特になし。濃厚な家族的集積傾向あり
【症状】中核症状はミオクロニー発作で、覚醒直後に好発。ほぼ全例で強直間代発作が、約30%の確率で欠神発作がみられる
【検査】ミオクロニー発作時…全般性に4〜6Hzの多棘徐波複合(約30%は光過敏性あり)
【治療】バルプロ酸
【予後】薬剤に対する反応性が良好で、予後良好。ただし、服薬は一生涯継続しなければいけない可能性が高い
覚醒時大発作
てんかん(GME)
【疫学】10〜20歳頃に好発。性差特になし。濃厚な家族的集積傾向あり
【症状】中核症状は強直間代発作で、覚醒後2時間以内に起こる確率が圧倒的に高い。約50%に欠神発作が、約30%にミオクロニー発作がみられる
【検査】発作時…強直相の漸増律動、間代相の徐波の混在(約20%は光刺激・過呼吸により誘発)
【治療】バルプロ酸orフェニトイン
【予後】予後はまずまず






早期ミオクロニー
脳症
【疫学】生後3ヶ月までに発症。しばしば家族的集積傾向
【症状】ミオクロニー発作
【検査】発作間欠時…suppression-burst(平坦波と、高振幅の棘波・鋭波・徐波の群発とが一定の周期で交代性に出現)
【予後】予後はきわめて不良で、ほとんどの抗てんかん薬が無効。半数以上が乳児期に死亡し、生存例も重度の精神遅滞を残す
サプレッション・
バーストを伴う
早期乳児てんかん
性脳症(EIEE)
【概念】大田原症候群ともよばれる
【疫学】新生児期(ほとんどが生後10日以内)に発症
【症状】きわめて短い強直発作(強直攣縮)+大きな合併奇形(脳形成異常etc.)
【検査】発作間欠時…suppression-burst(生後数ヶ月に消失)
【予後】予後はきわめて不良で、ほとんどの抗てんかん薬が無効。約30%は乳児期に死亡し、生存例の多くはWest症候群に移行し、さらにLennox-Gastaut症候群に移行することもある。全例に重度の精神遅滞を残す
West症候群(WS)
【概念】"潜因性または症候性全般てんかん"の一種。約90%は基礎疾患をもつ症候性West症候群の脳波(hypsarrhythmia)
【疫学】乳児期(特に生後4〜7ヶ月頃)に発症
【症状】強直攣縮(点頭痙攣とよばれ、シリーズ形成性が認められる)+精神発達遅滞(発作前から認められる)
【検査】発作間欠時…hypsarrhythmia(高振幅の棘波と徐波がそれぞれ独立して、お互いに全く無秩序に出現)
強直痙攣時…非同期化(hypsarrhythmia波形が低振幅化)
【予後】死亡率は5%以下。約90%では精神遅滞が残り、多くは重度。2〜3歳を過ぎる頃から、Lennox-Gestaut症候群に移行する
【治療】発症早期のACTH投与、Vit. B6の大量経口投与、クロナゼパムの投与、バルプロ酸の投与
Lennox-Gastaut
症候群(LGS)
【概念】"潜因性または症候性全般てんかん"の一種。約80%は症候性であり、約60%はWest症候群からの移行例Lennox-Gestaut症候群の脳波(びまん性遅棘徐波複合)
【疫学】2〜8歳に好発
【症状】強直攣縮が最多だが、他には脱力発作、ミオクロニー発作、非定型欠神発作など。非痙攣性発作重積をきたしやすく、意識障害が遷延することもある
【検査】発作間欠時…びまん性遅棘徐波複合
強直攣縮時…漸増律動etc.
【予後】生命予後は良好だが、多くは精神遅滞を残す
【治療】バルプロ酸を中心に、必要に応じてクロナゼパムの投与、ACTHの投与etc.
物質関連障害
   薬物使用によって生じる精神障害の総称
依存形成性薬物の特徴
 精神依存身体依存 耐    性 


アルコール++++++
アヘン類+++++++++
バルビツール酸系化合物++++++
ベンゾジアゼピン誘導体−〜+−〜+


コカイン+++
アンフェタミン+++++
大麻
幻覚薬
有機溶剤




























急性
アルコール中毒
【分類】
単純酩酊
概念…いわゆる"酔っ払い"
分類…ほろ酔い状態の発揚期(20〜50mg/dl)、かなりできあがった状態の酩酊期(50〜100mg/dl)、完全にできあがった状態の泥酔期(200mg/dl以上)、呼吸麻痺・循環不全をきたす昏睡期(400mg/dl以上)に分類される(カッコ内は血中アルコール濃度)
異常酩酊
分類…複雑酩酊(いわゆる"酒乱")
         病的酩酊(飲酒によって急激に意識変容をきたし、言動は了解不能。多くの場合、基礎疾患を有する)
【予後】死因としては呼吸抑制が最多
アルコール
依存症
【症状】精神・身体症状…まず精神依存が生じ、アルコールに対する強い渇望、薬物探索行動がみられるようになる。その後、耐性形成、身体依存が生じてくる
早期離脱症状…最終飲酒後数時間から出現。不安、焦燥感、アルコール振戦、自律神経症状(交感神経の興奮過剰)、痙攣発作、一過性の幻覚etc.
後期離脱症状…最終飲酒後2〜3日で出現。振戦せん妄(アルコール離脱せん妄)をきたす
【診断】CAGE質問表を用いた問診が最も高いスクリーニング検査。その他、γ-GTPや腹部エコーなどもスクリーニング目的で行われる
CAGE質問表…「自分の酒量を減らさなければいけないと感じたことがありますか?(Cut down)」「周囲の人に自分の飲酒について批判されて困ったことがありますか?(Annoyed by criticism)」「自分の飲酒についてよくないと感じたり、罪悪感をもったことがありますか?(Guilty feeling)」「朝酒や迎え酒を飲んだことがありますか?(Eye-opener)」の4項目からなる
【治療】精神療法…個人的精神療法や集団精神療法による断酒
抗酒薬療法…アルデヒド脱水素酵素阻害薬(シアナミドetc.)の投与














振戦せん妄
【原因】ほとんどはアルコール依存症の後期離脱症状として出現する
【症状】振戦、自律神経症状、意識変容(作業せん妄)、錯覚、幻覚(小動物や小人などの情景的な幻視が中心)、幻触、不隠状態(特に夜間に著明)、Liepmann現象(被暗示性の亢進)
【治療】ベンゾジアゼピン誘導体による置換漸減法+チアミンを含む総合ビタミン剤の点滴によるWernicke脳症の予防
【予後】生命予後は良好だが、一部はWernicke脳症やKorsakoff症候群に移行する
Wernicke
脳症
【原因】チアミン(Vit. B1)欠乏が直接の原因。ほとんどがアルコール依存者に生じる
【症状】意識障害(急速進行性)+眼球運動障害(眼振、共同注視麻痺etc.)+失調性歩行(小脳病変の合併による)
【検査】MRIのT2強調画像にて病巣に一致した高信号域
【治療】緊急に大量のチアミンの点滴静注
【予後】本症の約半数は回復するが、残りはKorsakoff症候群に移行する
Korsakoff
症候群
【原因】チアミン欠乏が直接の原因。アルコール依存者に生じることが多い
【症状】前向健忘逆向健忘見当識障害作話自己の病態に関する洞察欠如
【予後】精神的な予後は不良
アルコール
幻覚症
【概念】アルコール依存者に急性に発症する幻覚
【症状】幻聴中心の幻覚、意識障害(−)、見当識障害(−)
【予後】比較的良好
アルコール
性痴呆症
【概念】長期に及ぶ飲酒によって生じる慢性能基質障害
【症状】知能低下、感情鈍麻、人格変化etc.
アルコール
性嫉妬妄想
【概念】アルコール依存者にみられる二次妄想(単純で、体系化することは少ない)
アヘン類による障害
【概念】天然アルカロイドのモルヒネコデイン、および半合成アルカロイドのヘロインにより起こる精神障害。これらは麻薬として厳しく規制されている
【特徴】精神依存・身体依存・耐性形成傾向の何れもが極めて強い(ただし、癌性疼痛などにモルヒネを使用した場合には、依存形成傾向は生じない)
【症状】精神症状…一部の人で陶酔状態に陥る。連用により、耐性形成、精神依存、身体依存が進んでいく
身体症状…呼吸抑制、便秘、縮瞳、低栄養状態、るいそう、皮膚乾燥etc.
離脱症状…自律神経の嵐(過度の興奮症状:激しい苦悶感、不安感、散瞳、下痢、激しい嘔吐、発汗・流涙過多、痙攣etc.)
【治療】日本では即時離断法による断薬が中心(欧米ではメサドン療法が主流)
バルビツール酸系
化合物による障害
【概念】バルビツール酸系化合物のほとんどは向精神薬として規制の対象となっている
【症状】精神症状…鎮静催眠、意欲の減退etc.
身体症状…小脳抑制による構音障害、眼振etc.      ※瞳孔の大きさ・対光反射は正常
離脱症状…痙攣発作、せん妄etc.
【治療】胃洗浄、活性炭の胃内注入、大量輸液、アルカリ利尿etc.
ベンゾジアゼピン
類による障害
【概念】ベンゾジアゼピン類のほとんどは向精神薬として規制の対象となっている
【特徴】精神依存・耐性形成はみられないが、常用量でも知らないうちに身体依存が形成される(常用量依存
【症状】精神症状…抗不安、鎮静催眠、アルコール併用時の精神変容
身体症状…筋弛緩
離脱症状…自律神経症状、反跳性不眠、不安
【治療】血漿蛋白と結合して分子量が大きくなるため、血液透析は無効
コカインによる障害
【概念】麻薬として厳しく規制されている
【特徴】精神依存が強い
【症状】精神症状…陶酔感、自分が超人になったような気分
薬効消失時の症状…不安、焦燥、幻覚etc.
アンフェタミン類
による障害
【概念】覚せい剤として規制されているアンフェタミンメタンフェタミンによる精神障害
【特徴】精神依存が強く、耐性形成も速やかに起こる
【症状】
精神症状…少量摂取で気分爽快、疲労感消失、知覚過敏、幻覚、場面状況的な妄想etc.
長期間継続摂取時には、幻覚妄想を中心とした精神病症状がみられることがある(覚せい剤精神病)。統合失調症に類似の症状を呈するが、幻覚妄想が場面状況的であり、対人接触は比較的良好であるなどの点で異なる
薬効消失時の症状…脱力感、疲労感、抑うつ状態etc.
中毒症状…脳出血、脳浮腫、肺水腫(←著明な高血圧、血管透過性↑による)
【予後】長期継続摂取後に、長期間断薬しても、少量摂取で逆耐性現象が起こったり、精神的ストレスなどでフラッシュバック現象が起こったりする。急性中毒の死因としては肺水腫が多い
大麻による障害
【概念】マリファナハシッシュによる精神障害。大麻として厳しく規制されている
【症状】精神症状…一過性の酩酊状態(知覚過敏、気分高揚、自分が超人になったような感覚etc.)、長期連用により社会適応能力の低下(無動機症候群)
幻覚薬による障害
【概念】LSDなどによる精神障害。麻薬向精神薬原料として厳しく規制されている
【症状】精神症状…幻覚、時間感覚の変容、恍惚状態etc.
有機溶剤による
障害
【概念】シンナーなどによる精神障害。毒物劇物として規制の対象になっている
【症状】精神症状…酩酊状態、長期連用による無気力etc.
アスピリン中毒
【症状】中枢刺激作用…悪心・嘔吐、発熱、過呼吸耳鳴り、めまい、難聴、意識障害、痙攣etc.
高エネルギーリン酸結合阻害…ケトン体(+)、代謝性アシドーシスetc.
アレルギー症状…蕁麻疹、喉頭浮腫、脈管神経性浮腫、喘息様症状、発汗etc.
出血傾向…皮膚の点状出血、吐血、新生児出血症、消化管出血etc.
その他の臓器障害…肝障害、腎障害、非心原性の肺浮腫etc.
【検査】メトHb血症
【治療】胃洗浄、催吐、交換輸血、血液透析、活性炭による吸着etc.

薬剤性精神障害
 精神症状
レセルピン抑うつ、向精神病作用、錐体外路症状、水中毒、悪性症候群etc.
IFNせん妄・昏睡などの意識障害、脳波異常、痙攣、抑うつ・躁状態、幻覚妄想状態etc.
サイロキシン不安状態、焦燥状態、せん妄・錯乱などの意識障害、幻覚etc.
サイクロセリン中枢神経刺激作用、感情の刺激亢進、不安焦燥の増感etc.
レボドパせん妄、ジスキネジア、胃腸障害、(服薬中断時の)悪性症候群etc.
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