小児期・青年期の精神障害
精神遅滞
mental retardation
【概念】知能の発育が障害されたために平均より明らかに低いレベル(知能指数70未満)にとどまり、社会的な適応困難を呈するもの
【原因】
遺伝的要因が大きいもの
・遺伝子疾患…先天性代謝異常症、神経皮膚症候群、脳奇形、ミトコンドリア脳症、Rett障害etc.
・染色体異常症…Down症などのトリソミー、脆弱X染色体症候群、Prader-Willi症候群、猫鳴き症候群etc.
環境的要因が大きいもの
・胎芽期…TORCH症候群などの感染症、胎児性アルコール症候群、妊娠に伴う合併症etc.
・周産期…低出生体重児、低酸素性脳障害、頭蓋内出血、低血糖、重症黄疸、新生児痙攣etc.
・出生後…頭部外傷、脳炎・髄膜炎、低酸素症、毒性物質の摂取、痙攣重積状態、不良な養育環境etc.
原因がはっきりしないもの
生理的精神遅滞(ただ単に正規分布する知能指数の低いグループに属しているだけ)が大半
コミュニケーション障害
communication disorders
【概念】言語や音韻に関する機能が適切に発達しない病態
【疫学】男児に多い
【症状】
表出性言語障害
話す能力が劣り、語彙や文法が実年齢のレベルよりもはるかに低い。非言語的知的能力はおよそ年齢相応で、他人とコミュニケーションをしたいという欲求をもつ
受容-表出混在性言語障害
聞く能力も話す能力も劣る状態
音韻障害
いつまでも赤ちゃん言葉をしゃべる子どものことで、子音の誤りや省略が顕著
【治療】できるだけ早期からの言語療法
学習障害
learning disorders
【概念】特定の学習能力がその患児の年齢や知能レベル、教育レベルから期待されるものより著しく低い状態
【症状】
読字障害
読む能力が劣る子どもで、男児に多い。しばしば他の学習障害、ときにはコミュニケーション障害を合併
書字表出障害
字を書く能力が劣る子ども。しばしば他の学習障害、ときにはコミュニケーション障害を合併
算数障害
足し算や引き算のできない子どもで、男児に多い。しばしば他の学習障害、ときにはコミュニケーション障害を合併
【治療】小学校入学後のできるだけ早い時期からの教育的アプローチが必要
運動能力障害
motor skills disorder
【症状】
発達性協調性運動障害
運動障害が顕著で、世間的には不器用な子どもとしてみられる。典型例では幼児期に「手に持った物をよく落とす」「歩く時に自分の足を踏んづけたり、他人によくぶつかる」などの症状を訴える。言語機能は正常に発達
【治療】早期からの教育的アプローチが必要






























自閉性障害
(小児自閉症)
austic disorder
【概念】3歳までに発症し、対人的相互反応における質的な障害(社会性障害)、意思伝達の質的な障害限定された反復的で常同的な興味や活動の3点によって特徴づけられる病態
【疫学】頻度は約1000人に1人。男女比は4:1
【症状】
対人的相互反応における質的な障害
自発性の欠如、視線を合わさない、他者の感情を理解しない、人見知りしない、分離不安(−)etc.
意思伝達の質的な障害
話し言葉の発達の遅れ、独特の言語(反響言語、代名詞反転etc.)、身ぶり・手ぶりの欠如、会話への発展不能etc.
限定された反復的で常同的な興味や活動
興味の限定、ワンパターンの行動、儀式的な振る舞い、奇妙な運動の反復、非玩具への異常な関心etc.
附随する症状
多動…幼児期前半に高頻度でみられるが、学童期になると改善
・運動発達の異常…発達性協調性運動障害同様の不器用さが認められる
・著しい偏食
・感覚刺激に対する異常反応
てんかんの合併…20〜30%にみられる。強直間代発作が多い
・精神遅滞…約70%で認められる
【検査】脳波検査…突発性の異常波形
画像診断…脳室拡大、小脳虫部・脳回の形成不全など非特異的な所見がみられる
【治療】できるだけ早期から行動療法、遊戯療法などを中心とした教育的アプローチが必要
【予後】社会的な予後・知的予後は不良で、成長して自活できるケースは数%程度。ただし、原則として悪化はしない
Rett障害
【疫学】女児にしかみられない
【症状】生後5ヶ月までは身体的にも精神的にも正常に発達。生後5ヶ月を過ぎた頃から、それまでに獲得した合目的的な手の運動機能が失われ、患児は手を揉むような動作や手を洗うような動作を常同的に続ける。言語発達は全くみられず、その他、咀嚼運動障害、協調運動障害、体幹失調、痙攣発作、呼吸の乱れ、小頭症などをきたす
【予後】生命予後はそれほど悪くないが、重度の精神遅滞と運動障害を残す
小児期崩壊性障害
childhood
disintegrative disorder
【概念】生後2〜3年間は正常な発達を遂げた後、それまで獲得した知能・社会的機能・言語的機能を比較的急速に喪失する病態。Heller病ともよばれる
【疫学】男児に多い
【症状】生後2〜3年間は精神的にも身体的にも正常に発達。3〜4歳頃に、比較的急速に、強い不安を呈して落ち着きがなくなり、排尿・排便などの自己管理能力が失われ、運動能力も低下する。やがて、自閉性障害と同様の症状が出現
【予後】多くは中等度の精神遅滞を残す
Asperger障害
【概念】対人的相互反応における質的な障害と限定された反復的で常同的な興味や活動という2点では自閉性障害とは共通するものの、言語発達の大きな遅れを伴わない病態
【症状】
自閉性障害と共通の症状…対人的相互反応における質的な障害、限定された反復的で常同的な興味や活動。その他、多動、不器用、偏食がち、感覚の過敏性etc.
自閉性障害と異なる症状…言語発達の大きな遅れがみられない(同級生に対する敬語、独特の言い回しの反復などはみられる)
【治療】教育的アプローチ(特定の場面での適切な行動パターンを学習させる)






















注意欠陥/多動性障害
attention deficit/
hyperactivity disorder
(ADHD)
【概念】発達的に不適切な程度の注意の欠陥、衝動性、および過活動によって、家庭、学校、および対人関係状況で顕在化する小児・思春期の障害で、7歳未満に発症する
※家庭や学校といった限定された単独の場所でなく、複数の場所で症状がみられることを広汎性という
【疫学】3歳頃までに発症する場合がほとんど。男児に多い
【原因】周産期における脳機能障害、遺伝的背景etc.
【症状】不注意症状…注意散漫、注意の持続困難、義務の遂行困難etc.
多動性-衝動性症状…落ち着かない、情動不安定、反抗、危険を顧みない行動etc.
・附随する症状…不器用、知能発達異常(−)、社会性障害(−)
【検査】微細神経学的徴候(舞踏病様の不随意運動etc.)
【予後】思春期にある程度軽快する一群と、改善傾向の認められない一群(行為障害から反社会性人格障害に発展することもある)とがある
【治療】教育的アプローチ、薬物療法(メチルフェニデート
反抗挑戦性障害
oppositional defiant
disorder(ODD)
【概念】拒絶的・反抗的・挑戦的な行動パターンが6ヶ月以上持続する病態
【疫学】10歳以下の男児に多い
【症状】社会的・学習的な機能の著しい障害、かんしゃく、大人との口論、大人の要求・規則への積極的反抗、他人の挑発、失敗の責任転嫁etc.
ただし、他人の権利や社会的規範を侵害するような反社会的な行動はみられない
【治療】個人的精神療法(認知行動療法etc.)、家族に対するカウンセリング
【予後】予後はさまざまだが、経過とともに症状が改善するグループがかなりある。しかし、中には行為障害に移行するグループがある
行為障害
conduct disorder
(CD)
【概念】他人の権利や社会的規範を侵害する行動パターンが6ヶ月以上持続する病態
【疫学】男児に多い。家庭環境に問題があるケースが多い
【症状】人や動物に対する攻撃性、所有物の破壊、嘘をつくこと、窃盗、家出や怠学などの重大な規則違反
【治療】個人的精神療法、認知行動療法、生活環境の整備etc.
【予後】予後はさまざま。反社会性人格障害への移行や物質関連障害の併発がみられるケースもある













分離不安障害
separation anxiety
disorder
【概念】愛着のある人物(特に母親)から離れた時or離れそうになった時に起こる分離不安が過剰なために、後述の症状を呈し、社会的・学業的障害をきたす病態
【疫学】7〜8歳くらいに多い。性差なし。心配性で、服従傾向が強く、家庭で甘やかされて育った子に多い
【症状】分離が予想される場面での激しい苦痛や身体症状(頭痛、腹痛、嘔吐etc.)、分離に対する過剰な心配、独りで家にいることや独りで寝ることに対する恐怖、分離を主題とした悪夢、不登校etc.
【治療】個人的精神療法+家族療法
選択性緘黙
selective mutism
【概念】言語能力や知能がほぼ正常な子どもが、特定の場面でのみ言語による他者との交流を拒み、沈黙する病態
【疫学】4〜5歳頃に好発。対人緊張のもともと強い子どもに起こりやすい
【症状】家庭ではしゃべるが、学校では押し黙るというパターン(内弁慶外地蔵)が一般的
【治療】非言語的精神療法(箱庭療法、絵画療法etc.)+家族療法。難治例に対しては、オペラント条件づけなどの行動療法も行われる
【予後】比較的良好で、数週間から数ヶ月で軽快することが多い
幼児期or小児期早期
の反応性愛着障害
reactive attachment
disorder of infancy
or early childhood
【概念】きわめて不適切に養育されたために、情緒障害が起こり、特に愛着行動を中心とする対人関係が障害された病態
【症状】栄養失調、愛情遮断性低身長症、自発活動の低下、無表情etc.
【治療】できるだけ早期の家庭への介入
チック障害
tic disorders
【概念】チック=不随意的、突発的、急速に反復して起こる常同的な運動or発声
チック障害=チックが18歳未満で発症し、4週間以上持続する病態
【疫学】男児に多い
【分類】
チックの分類
・単純性運動性チック…瞬く、口を歪める、鼻をクンクンさせる、首を振る、肩をピクピクさせるetc.
・複雑性運動性チック…物の臭いを嗅ぐような動作、自分を叩く、飛び跳ねる、躯幹をねじるetc.
・単純性音声チック…咳払いをする、吠える、鼻をクンクンさせる、奇声をあげるetc.
・複雑性音声チック…汚言、状況に沿わない単語の連用、他人の言った単語の反復etc.
チック障害の分類
一過性
チック
障害
概念…運動性チックand/or音声チックが1日中頻繁に生じるが、1年以上は続かない病態
疫学…4〜5歳に好発。児童の10〜20%に生じると言われる
原因…大半は心因性で、ストレスが誘因
予後…良好で、多くは自然消失。一部はトゥレット障害に移行
治療…特別な治療は不要。チックを無視することが重要
慢性運動性
or音声
チック障害
概念…運動性チックor音声チックのどちらかが1日中頻繁に生じ、1年以上持続する病態(運動性チックのみのケースが大半)
疫学…家族的集積傾向がある。学童期に好発
予後…思春期までに軽快する場合が多い
トゥレット
障害
概念…多彩な運動性チックand1つ以上の音声チックが1日中頻繁に生じ、1年以上持続する病態。Gilles de la Tourette症候群ともよばれる
疫学…家族的集積傾向がある。時にADHDや強迫性障害を合併
症状…運動性チックで初発し、数年遅れて音声チックが出現する場合が多い。音声チックは経過とともにしばしば汚言を伴うようになり、人前に出ることをはばかり、時には抑うつ状態に陥る
検査…非特異的な脳波異常が大半のケースでみられる
治療…ハロペリドールを中心とした薬物療法
予後…きわめて難治性
幼児期or小児期早期
の哺育・摂食障害
feeding and eating
disorders of infancy
and early childhood
【種類】


概念…栄養にならない物質を食べ続ける病態
原因…親からの愛情の欠如
疫学…1〜2歳の幼児に好発
予後…多くの場合には精神的な発達とともに消失





概念…正常な活動が著しく阻害されるor医学的治療を要するような身体的自傷を引き起こす恐れのある常同運動を特徴とする病態
原因…一部は心因性(愛情の欠如が原因)。発達過程の歪みとして精神遅滞や広汎性発達障害に伴うことが多い。その他、Lesch-Nyhan症候群など代謝異常が関与するものもある
症状…常同運動(頭突き、出血などを伴う爪噛みetc.)
治療…支持的精神療法、原因疾患に対する治療、固い物を周囲に置かない、早めの創傷治癒etc.


疫学…しばしば幼稚園の入園や小学校の入学を契機に発症する
症状…いわゆる"どもり"。心理的な緊張により増悪
治療…ゆっくり話すように指導、難治性の場合には早期の言語療法
予後…大半は成長とともに軽快
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