用語の定義
新生児期 neonatal period出生時より28日未満。その中で生後1週間以内を早期新生児期とよぶ
周産期 perinatal period妊娠後期(28週以降)と早期新生児期を合わせた期間
巨大児 giant baby出生体重≧4000gの児。分娩外傷や仮死の頻度が高いハイリスク児
低出生体重児 low birth weight infant出生体重<2500gの児
極低出生体重児 very low birth weight infant出生体重<1500gの児
超低出生体重児 extremely low birth weight infant出生体重<1000gの児
早産児 preterm infant在胎週数<37週で出生した児
正期産児 term infant37週≦在胎週数<42週で出生した児
過期産児 postterm infant42週≦在胎週数で出生した児
不当軽量児 light-for-dates infant出生体重が在胎週数に比して小さい児
相当重量児 appropriate-for-dates infant出生体重が在胎週数相応である児
不当重量児 heavy-for-dates infant出生体重が在胎週数に比して大きい児
未熟児 premature infant胎外生活に適応するのに十分な成熟度に達していない未熟徴候を備えた児
dysmature infant皮膚が乾燥し、ひび割れ、しわが多く、全体にやせているなどの胎盤機能不全症候群の臨床所見を伴う胎内栄養不全型の子宮内発育遅延児
主要な新生児の身体所見



中毒疹充実性の丘疹とそれを囲む紅斑。成熟児に多くみられる正常所見で、通常は生後1ヶ月ほどで消失する
中心性紅斑身体の中心に沿ってみられる紅斑。うなじにみられるUnnaの母斑、上眼瞼のsalmon patch、額部の火炎斑nevus flammeusなどがこれにあたる。毛細血管の拡張によるもので、ほぼすべての新生児に多かれ少なかれみられる。1〜2年で自然消退する
道化師様色調変化
(harlequin color change)
まるで定規で引いたように身体の中心線を境に、皮膚の色が一方は紅色、一方は蒼白に変化する現象。きわめて一時的な現象で、通常は数分以内に消失し病的な意味はない
苺状血管腫出生時には点状出血ほどであったものが、次第に皮膚の上に盛り上がり、数ヶ月で再び消退する良性の血管腫



縫合線の化骨早期頭蓋骨癒合症が疑われる
産瘤産道を通るときの外力による先進部にみられる皮下組織の浮腫で、骨縫合線を超えて広がり得る。先進部の恥骨側に生じる。出生時に最も著明で、生後2〜3日で自然に消退する
頭血腫骨と骨膜下の間の出血で、骨縫合線を越えない。波動を触れる。治療を要せず3ヶ月頃までに自然吸収される
帽状腱膜下出血頭部に加わる縦方向の張力によって、最ももろい部分である帽状腱膜下の結合組織が断裂し静脈出血をきたしたもので、骨縫合線を超える。主に吸引分娩に合併して生じる。大出血となりうるので、経過観察が必要
小泉門の閉鎖正常な所見であり、逆に閉鎖不全があれば甲状腺機能低下症などが疑われる
※大泉門は出生時2.5cmほどで、1歳半までに閉鎖する
眼球結膜出血正常な分娩でも認められる。生後1ヶ月で自然消退する
白内障先天性風疹症候群など全身疾患に伴うことがあり、慎重な対応が必要
眼脂多くは生理的な鼻涙管の狭窄によるもので、病的意義はない
上皮真珠腫歯肉・硬口蓋結合線に沿ってみられる白色の小さな腫瘤。上皮の迷入によるもので、通常2〜3ヶ月で自然消退する

鎖骨骨折分娩傷害として時々認められるが、特別な治療は必要なく、1〜2ヶ月で治癒する
先天性斜頸出生時すでに胸鎖乳突筋が索状物として触れ治療を要する
※筋性斜頸は、出生時には認められず、生後2〜3週間後に胸鎖乳突筋上に腫瘤として触れる


乳房肥大男児・女児問わず、母体由来のエストロゲンの作用により生後数日からみられる生理的現象。さらに乳汁分泌(魔乳)がみられることもある
多呼吸新生児の多呼吸の定義は、1分間に60回以上
頻脈正常でも120〜140/分前後である。逆に100/分を切るような場合が異常
U音の亢進正常でもみられる
心雑音生理的な動脈管開存症や肺動脈狭窄症のために、多くの新生児で一時的に聴取しうる。くり返し聴診しながら経過をみていくことが重要

肝・脾触知正常所見である
臍ヘルニア特に治療を要せず、数ヶ月でほとんど自然治癒する


停留精巣男児で精巣内容を触れない場合でも、特に片側性の場合は病的と言えず、そのまま経過を追う
陰嚢水腫特別な治療を要せず、ほとんどが自然治癒する
鼠径ヘルニア男女とも比較的頻度が高い疾患である。多くの場合、外科的治療が必要
処女膜ポリープ腟外に粘膜が突出している。母親由来のエストロゲンの作用による正常所見
性器出血新生児月経ともいう。母親由来のエストロゲンの作用による正常所見

Moro反射出るのが正常。消失は、児の状態が悪いか、母体への麻酔薬などの影響が考えられ、片側のみの消失は上腕神経叢麻痺を疑う。逆に過剰に出る場合は、低Ca血症などによる易刺激性と判断する

Apgarスコア
 皮膚の色(Appearance)心拍数(Pulse)反射(Grimace)筋緊張(Activity)呼吸(Respiration)
2点全身ピンク100以上泣く/咳嗽・嘔吐反射四肢を活発に動かす強く泣く/規則的な呼吸
1点体幹ピンク、四肢チアノーゼ100以下顔をしかめるいくらか四肢を曲げる弱い泣き声/不規則な浅い呼吸
0点皮膚蒼白or暗紫色ない反応しないだらんとしているない
10〜8点:正常、7〜4点:仮死T度、3〜0点:仮死U度
新生児疾患
適応不全症候群
maladaptation syndrome
【概念】子宮内環境から子宮外環境への適応の過程が、スムーズにいかないために起こる異常の総称
  ・呼吸器系の適応不全…一過性多呼吸無呼吸発作RDSetc.
  ・循環器系の適応不全…新生児持続性肺高血圧症動脈管開存症壊死性腸炎etc.
  ・代謝系の適応不全…低血糖、低体温、低Ca血症、高ビリルビン血症etc.




































呼吸窮迫症候群
respiratory distress
syndrome(RDS)
【概念】肺の未熟性を伴う肺サーファクタント(レシチン・スフィンゴミエリン)不足が原因となって、肺胞の拡張不全が起こり、低酸素症・換気不全をきたす症候群。肺血流の減少と肺胞上皮の障害による血液成分透過性の亢進がさらに肺サーファクタント活性を阻害し、肺硝子膜を形成する。妊娠32週以前の出産で起こりやすい
※肺サーファクタントの産生は20週頃から始まり、28週頃には産生量が増加するが、羊水L/S比≧2.0となるのは35週以降
【症状】多呼吸、陥没呼吸、チアノーゼ、呻吟など。出生直後からみられるが、進行性無気肺のために生後数時間頃に症状がより著明となる呼吸促迫症候群の胸部Xp(スリガラス様陰影)
【検査】胸部Xp…網状顆粒状陰影、気管支透亮像、スリガラス状陰影
血ガス…PaCO2↑、PaO2↓、混在性アシドーシス
マイクロバブルテスト…胃液<10/mm3
【治療】持続陽圧呼吸(CPAP)で肺胞の虚脱を予防+サーファクタントの補充
一過性多呼吸
transient tachypnea
of newborn(TTN)
【概念】出生時に起こる肺水の吸収過程の遅延による一時的な呼吸障害。新生児の呼吸障害の中では最も頻度が高い
【疫学】帝王切開術で出生した児に好発
【病態】間質に水分が貯留するため、1回換気量が減少し多呼吸となる
【症状】出生直後からの多呼吸が主症状で、時に呻吟を伴う。チアノーゼ、陥没呼吸は明らかでない
【検査】胸部Xp…肺野全体の過膨脹、肺門部のうっ滞像、軽度の心拡大
血ガス…ほぼ正常
【治療】特に治療は必要ない。48〜72時間前後の経過で自然に軽快する
胎便吸引症候群
meconiumu aspiration
syndrome(MAS)
【概念】胎便の吸引によって引き起こされる肺病変。胎児が低酸素症に陥ると、胎便が子宮内に排出され、羊水が胎便で汚染される。低酸素症時に同時に起こるあえぎ呼吸が原因のこともあるが、出生時の第1呼吸で上気道にある胎便が気道内に吸引されることによって起こる場合がほとんどである
【疫学】成熟児、特に過期産児、IUGR児に多く、未熟児には少ない
【病態】粘稠で刺激性の強い胎便によって、気道の狭窄と化学的炎症が起こるため、無気肺、肺気腫、気胸、気縦隔などを呈する
【症状】出生時より著明な呼吸障害を示す
【検査】胸部Xp…無気肺と肺気腫の混在、荒い索状・斑状陰影
血ガス…PaO2↓、PaCO2
【予防】羊水混濁のある症例に対して、出生時の第1呼吸前に気管内吸引を行う
【治療】気管内洗浄、O2投与、人工換気
気胸・気縦隔
pneumothorax
pneumomediastinum
【疫学】無症候性の自然気胸は正常新生児の1%前後。陽圧呼吸で蘇生した児や、人工換気を受けている児に発生頻度が高い
【症状】人工換気中or蘇生を受けて呼吸状態の安定していた児が急激に呼吸・循環不全を呈する。気縦隔では心音が聴取しづらくなる
【検査】胸部Xpが最も有効
【治療】100%O2投与による窒素洗い出しを行う。重症例では胸腔穿刺+持続ドレナージ
無呼吸発作
apnea attack
【概念】20秒以上の呼吸停止orそれ以下でもチアノーゼや徐脈を伴う呼吸停止
【原因】呼吸中枢の未熟性、低血糖、低Ca血症、低Na血症、敗血症、頭蓋内出血、RDS、先天性心疾患etc.
   ※クレチン症では起こりにくい
【治療】原疾患の治療。原疾患がなければ、皮膚の刺激、O2投与、呼吸中枢刺激薬の投与、経鼻的持続陽圧呼吸法、人工換気などを行う
新生児慢性肺疾患
chronic lung disease
of newborn
【概念】酸素投与を必要とするような呼吸窮迫症状が新生児期に始まり、日齢28を超えて続くもの
【分類】厚生省研究班による分類が本邦では使用されている
気管支肺異形成(BPD)…重症RDSの急性期を脱した後にみられる慢性肺疾患。酸素の毒性や人工換気に伴う圧障害が原因と考えられている。T型・U型にあたる
Wilson-Mikity症候群(WMS)…比較的良好な経過であった1500g未満の未熟児に、生後2〜3日頃から次第に呼吸器症状と胸部Xp上特徴的な所見がみられるような疾患。臍帯血のIgMが高値で、胎内感染による肺の損傷が空気呼吸開始によって表面化したものと考えられている。病理学的には無気肺と肺気腫の混在がみられる。V型・V'型にあたるWilson-Mikity症候群の胸部Xp(レース様陰影、間質陰影の増強)
【症状】呼吸器症状の他、右心不全、喘息様発作、感染などを合併しやすい
【検査】胸部Xp⇒多胞性or柵状orレース様の不均一な陰影
【治療】可能な限り低い酸素、低い換気圧で呼吸管理を行い、水分制限しながら栄養状態を保つ









新生児持続性肺高血圧症
persistent pulmonary
hypertension of the
newborn(PPHN)
【概念】出生後の循環適応不全症候群で、肺高血圧が続くため、動脈管と卵円孔を介する右→左シャントによるチアノーゼが続く疾患
【疫学】仮死で出生した児、IUGR児、多血症の児などで頻度が高い
【病態】肺動脈血管の筋層の肥厚や、その感受性の亢進が素因としてあり、仮死や呼吸障害による低酸素血症やアシドーシスが引き金となって肺血管抵抗を高めPPHNとなる。いったんPPHNになると、悪循環に陥ってしまう
【症状】チアノーゼが全身に認められるが、動脈管開存のためチアノーゼは下肢に強い傾向がある(differential cyanosis)。高濃度酸素を投与しても、PaO2は上昇しない
【治療】O2投与、アシドーシスの補正、肺血管拡張薬(トラゾリン、PGE2)の投与、hyperventilation療法など。最重症例にはNO投与や体外循環式膜型人工肺の使用が行われることもある
未熟性動脈管開存症
patent ductus arteriosus
(PDA) due to prematurity
【概念】生理的に閉鎖するはずの動脈管が、出生後も閉鎖せずに左→右シャントによる肺血流量増加や心不全をきたす疾患。未熟性がその最大の要因
【症状】出生時には大きな異常はみられず、生後1週〜1ヶ月ほどで心不全症状が現れる。持続性雑音が聴取されるのも1ヶ月以降である
【検査】胸部Xp…心拡大、肺血流量↑
血ガス…PaCO2
【治療】抗心不全療法(水制限、利尿薬投与)+動脈管を閉鎖させるための治療(インドメタシン投与。重症例では外科的結紮術)








新生児特発性黄疸
idiopathic jaundice
of the newborn
【概念】病的原因なしに、出生後の適応生理の一端として出現する黄疸
【原因】生理的多血、腸肝循環の亢進、肝の未熟性etc.
【症状】通常生後2〜3日より可視的黄疸(通常7〜8mg/dl以上)が出現し、日齢5〜7日でピークに達し、以後漸減し2週間以上遷延しない
【検査】経皮的ビリルビン濃度計でスクリーニング。一定レベル以上になった症例に対しては採血による血清ビリルビン値の測定を行う
【治療】血清ビリルビン値と日齢、出生体重により決まっている。血清ビリルビン値が20mg/dl以上の場合には交換輸血の適応となる。血清ビリルビン値が10mg/dl以上の場合には光線療法の適応となる場合が多い
病的黄疸
【分類】
高間接ビリルビン血症
・ビリルビン産生の亢進…血液型不適合(⇒早発黄疸として発症)、遺伝性溶血性疾患、多血症、血管外出血(帽状腱膜下出血etc.)、母体血嚥下(仮性メレナ)etc.
・腸肝循環の亢進…イレウスetc.
・肝における抱合能の低下…未熟児、甲状腺機能低下症、先天性異常(Crigler-Najjar症候群、Gilbert症候群)、薬物、母乳etc.
高直接ビリルビン血症
・肝機能の異常…新生児肝炎、先天性胆汁排泄障害(Dubin-Johnson症候群、Rotor症候群、Alagille症候群)、ガラクトース血症、感染症(敗血症etc.)etc.
・胆道系の異常…先天性胆道閉鎖症、先天性胆道拡張症etc.
【症状】高間接ビリルビン血症は黄色、高直接ビリルビン血症は緑色を伴った皮膚となる。核黄疸に至ると、哺乳力低下、不活発、筋緊張低下、落陽現象、後弓反張、アテトーゼ型脳性麻痺などをきたす
【治療】原疾患の治療+高ビリルビン血症に対する対症療法(光線療法、交換輸血)







TORCH complex
【概念】Toxoplasma、Treponema pallidum、others(水痘、コクサッキーウイルスetc.)、rubella virus、cytomegalovirus、herpes simplexによる先天性感染症。子宮内発育遅延、中枢神経系の異常(水頭症、小頭症、知能障害)、眼底変化(網脈絡膜炎)、骨変化(骨膜炎、骨端・軟骨炎)、肝脾腫、皮疹などを呈する
【症状】・トキソプラズマ…網脈絡膜炎、水頭症、脳石灰沈着、精神運動障害、痙攣etc.
・梅毒…発疹、肝脾腫、長管骨端炎・骨膜炎、Parrot麻痺(四肢の仮性麻痺)etc.
・風疹…白内障、小眼球症、難聴、心奇形、知能障害、血小板減少、溶血性貧血、肝炎、肺炎etc.
・CMV感染症…脳室周囲Ca沈着、肝脾腫、血小板減少、網脈絡膜炎、視神経萎縮、痙性麻痺etc.
・HSV感染症…肝脾腫、末梢循環不全、出血傾向、けいれんetc.
経羊水感染ほとんどが破水後の上行性感染であり、羊水感染のリスクは破水から分娩までの時間に比例する。原因菌としては大腸菌、クレブシエラ、β溶連菌など腟内常在菌が主
経産道感染β溶連菌、淋菌(⇒新生児眼炎を起こす)、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、HBウイルス、カンジダ、クラミジア(⇒封入体性結膜炎、間質性肺炎を起こす)、マイコプラズマなど
新生児敗血症・髄膜炎
neonatal sepsis and
meningitis
【疫学】新生児では敗血症の約1/3に髄膜炎が合併
【原因】感染のルートとしては、気道・腸管などの粘膜からと点滴やカテーテル部位からが主。生後数日以内に発症する場合は、母体からの垂直感染が考えられ、大腸菌、β溶連菌、リステリアなどが主である。それ以降は新生児室内での水平感染が考えられ、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、腸球菌などが多い
【症状】バイタルサインの低下、体温調節不全(高温or低温)、黄疸、哺乳力低下、嘔吐、出血斑、無呼吸or多呼吸etc.
【治療】診断が確立していなくても感染が疑われた時点で抗生剤の投与を開始する
























先天性食道閉鎖症
congenital esophageal
atresia
【分類】
Grossの分類
 上部食道下部食道
A型盲端盲端
B型気管と交通盲端
C型(最多)盲端気管と交通
D型気管と交通気管と交通
E型食道は連続しているが、気管と交通がある
【症状】C型では、口腔内の泡沫状の唾液、誤嚥性肺炎、呼吸困難など。心大血管、消化器系、泌尿器系などにさまざまな奇形を合併することが多い
【検査】胸部Xp…C型では、胃内空気貯留像、coil-up sign
【治療】外科治療
新生児胃破裂
【疫学】生後数日にみられやすい(それまでは元気に哺乳していた)新生児胃破裂の胸腹部Xp(両側横隔膜下のガス貯留)
【原因】人工ミルクとガスによる胃内圧亢進
【症状】突然の嘔吐、呼吸困難、腹部膨満etc.
【検査】腹部Xp⇒saddle bag sign、foot ball sign






 
肥厚性幽門狭窄症
hypertrophic pyloric
stenosis
【疫学】発生頻度は日本で出生1000に対して1弱と、乳幼児期の消化器疾患の中では多い。第1子に多く、また男児に多い
【症状】生後2〜3週目から無胆汁性の噴水状嘔吐をきたす。嘔吐は回数、量とも次第に増加していく。嘔吐が続くと、脱水、体重増加不良or減少が認められる。右上腹部にオリーブ様腫瘤を触知する
【検査】エコー、X線造影
【治療】粘膜外幽門筋切開術(Ramstedt法)が通常行われる
先天性十二指腸閉鎖症
congenital duodenal
atresia
【疫学】下行脚に多く発生する
【原因】膜様の閉鎖が多いが、しばしば輪状膵を伴う
【症状】生後数時間後から頑固な嘔吐、上腹部に限局した腹部膨満などがみられる。他の奇形を合併することが多い。またDown症候群の合併が約1/3の症例にみられる
【検査】腹部Xp…double bubble sign
鎖肛
atresia ani
【概念】総排泄口が直腸と膀胱に分化し肛門が形成される過程で、何らかの異常が起こり肛門が開口しない場合or開口位置が異常の場合をいう。膀胱や子宮に瘻を作ることが多い
【疫学】最も頻度の高い消化管奇形(1/5000人)
【分類】倒立位撮影にて、肛門挙筋群との位置関係から、高位型、中間位型、低位型に分類される
【症状】視診にて肛門が見当たらない。約半数の例に、他の消化器や泌尿生殖器の奇形を合併する
【検査】倒立位Xp(⇒高位・中間位・低位の病型診断を行う)、瘻孔造影etc.
   ※出生前診断は不可能
腸回転異常
malrotation of intestine
【概念】胎生9〜10週頃、臍帯内の腸管が回転しつつ腹腔内に戻る過程が正常に行われず発生する異常
【症状】出生時に異常はみられず、初回排便も正常であった児が、授乳開始に伴い胆汁様嘔吐を認めイレウス症状を呈する。腸重積をきたしやすいことはない
【検査】注腸造影(⇒回盲部の位置異常)、腹部Xp(⇒拡張ガス像)etc.
Hirschsprung病
【概念】腸管壁内のAuerbachおよびMeissner神経節細胞の先天性欠損により、腸管の蠕動運動ができたいために起こる疾患Hirschsprung病の注腸造影(caliber change)
【疫学】男児に多い。低出生体重児に多いということはない
【症状】全体の80%を占める直腸S状結腸型では、胎便排泄遅延、嘔吐、腹部膨満、排便障害で発症し、後に腐敗臭を伴う下痢となる
【検査】注腸造影⇒口側の拡張部と肛門側の狭窄部(caliber change)、造影剤の排泄の著明な遅延
直腸肛門内圧測定⇒直腸肛門反射の欠如
【治療】壊死性腸炎・穿孔などを予防するために、まず人工肛門を造設し、3〜6ヶ月時に根治術(無神経節腸管を切除し、正常部を肛門につなぐ手術)を行う
壊死性腸炎
necrotizing enterocolitis
(NEC)
【概念】小腸(特に回盲部)に腸管壁の壊死性変化が起こる疾患で、極低出生体重児に多くみられる。腸管穿孔を起こしやすく、全身状態も重篤で敗血症を合併し予後不良である
【原因】虚血性変化、感染(特にClostridium )、経腸管栄養の3つが誘因
【症状】元気がない、残乳が多くなる、腹部膨満などの初期症状に引き続き、胆汁性嘔吐、下痢、末梢循環不全と、敗血症性ショックと同様の症状となる
【検査】腹部Xp…イレウス所見、腸管壁気腫像、門脈内ガス像、(腸管穿孔時には)腹腔内遊離ガス像
血液…CRP↑、血小板↓、白血球↑or↓、血培でグラム陰性菌(+)
【治療】経腸管栄養を中止し、胃内持続吸引、輸液、強力な抗生剤投与などを行う。腸管穿孔例は手術適応となる
臍帯ヘルニア
omphalocele
【概念】腸管の腹腔内還納不全により、腹壁中央部に皮膚・筋の欠損部が存在し、そこから半透明なヘルニア嚢(羊膜と腹膜)に覆われた腹腔内臓器が脱出したもの
【分類】臍上位型、臍部型、臍下部型に分けられる
【症状】感染、低体温、脱水など。染色体異常、心奇形、膀胱奇形などを合併する場合が多く、精査が必要である
【治療】緊急手術が必要
腹壁破裂
gastroschisis
【概念】臍帯と離れてヘルニア嚢はなく腸管が直接腹腔外に出るもの。腹壁形成不全による
【症状】感染、低体温、脱水など。染色体異常、心奇形、膀胱奇形などを合併する場合が多く、精査が必要である
【治療】緊急手術が必要








新生児出血性疾患
hemorrhagic disease of
newborn
【概念】新生児早期にみられるビタミンK依存性凝固因子(第U、Z、\、]因子)の一時的な欠乏による出血性疾患。消化管出血として発症する症例が多いことから、新生児メレナとよばれる。一方、生後2〜3ヶ月目の母乳栄養児にみられる特発性乳児ビタミンK欠乏症の大半は頭蓋内出血で発症する
【症状】生後1〜5日間順調であった児が、血便、吐血で発症する。多くの場合、出血以外の症状はなく、全身状態は比較的良好である
【検査】Apt試験…出血が児の場合は本症(出血が母体由来の場合は仮性メレナ)
血液…PT↑、ヘパプラスチンテスト↓、PIVKA(+)
【治療】ビタミンK投与で治療可能。大量出血時には輸液が必要なこともある
多血症
polycythemia
【概念】赤血球量が正常を大幅に超えた状態で、過粘稠度症候群を呈する
【原因】輸血(医原性の過剰輸血、双胎間輸血、母体胎児間輸血、胎盤胎児間輸血)、造血機能の亢進(子宮内発育遅延児、真性多血症)
【症状】赤ら顔の多血様顔貌、過粘稠度症候群の症状(血栓、心不全、呼吸不全、低血糖、新生児持続性肺高血圧症etc.)etc.
【検査】Hb≧22g/100ml、Ht≧65%
【治療】1/2プラスマネートで部分交換輸血
貧血
anemia
【原因】失血(双胎間輸血、胎児母体間輸血、胎児胎盤間輸血)、出血、造血機能の低下(未熟性貧血、Diamond-Blackfan症候群)、溶血(溶血性貧血、DIC)
   ※新生児溶血性貧血の原因疾患として、ABO式血液型不適合が2/3を占める









低血糖
hypoglycemia
【概念】生後72時間以内では低出生体重児で20mg/dl以下、成熟児で30mg/dl以下、72時間以降では40mg/dl頤下の値が2度以上記録された場合or一度の低血糖値であっても臨床症状を伴う場合と定義されている。新生児に高頻度にみられる異常の1つ
【原因】
高インスリン血症に伴うもの
母体糖尿病児(IDM)、胎児赤芽球症、交換輸血後のリバウンドなど。一般に治療に抵抗性で、基礎疾患のみならず低血糖そのものにより障害を残す危険がある
血糖貯蔵・提供の不足
IUGR児、未熟児etc.
糖の使用の増大によるもの
低体温etc.
【症状】低血糖性けいれん、易刺激性、チアノーゼ、不活発、異常な泣き声、無呼吸、嗜眠、振戦etc.
※成人でみられる自律神経症状(強い空腹感、冷汗、心悸亢進、脱力感、蒼白、頭痛etc.)は認めにくい
【治療】グルコース投与
低カルシウム血症
hypocalcemia
【概念】血清Ca値≦7mg/dl。低出生体重児、仮死児、IDM児、RDS児などのハイリスク児の生後1〜2日目にみられることが多い
【原因】上皮小体機能の発達不良、カルシトニンの過剰分泌、リンの細胞内から外への流出、牛乳哺乳による高P血症(生後1週以降にみられることが多い)etc.
【症状】易刺激性、振戦、痙攣etc.
【治療】カルチコールの静注+Caの点滴静注。通常の治療法で反応しない場合には、Mg欠乏性低Ca血症および一過性上皮小体機能低下症を考えなければならない
晩発型代謝性アシドーシス
late metabolic acidosis
【病態】未熟児は腎の未熟性により、近位尿細管での重炭酸塩の再吸収能が低いため、アシドーシスになりやすい
【症状】順調だった児にミルクが増えるに従い、無呼吸発作、体重増加不良、元気がない、など敗血症に類似した症状が出現する
【治療】炭酸水素ナトリウムで補正












寒冷障害
cold injury
【原因】新生児の体温調節可動域の狭さが原因。特に児の状態が悪い場合や未熟児に起こりやすい
【症状】哺乳力低下、元気がない、嗜眠傾向、四肢冷感、チアノーゼ、顔面紅潮、皮膚硬化症、無呼吸、徐脈傾向etc.
【検査】低血糖、代謝性アシドーシス、BUN↑、直腸温↓
【治療】水・電解質バランス、血圧、呼吸、出血傾向などを管理しながら、環境温を皮膚温より1.5℃高く保ちつつゆっくりと加温する
新生児皮膚硬化症
sclerema neonatorum
【概念】敗血症・循環不全・壊死性腸炎などの重篤な疾患に罹患した未熟児(まれに成熟児)にみられる皮膚が板状に硬化するきわめて予後不良な疾患
【原因】末梢循環不全による皮下脂肪の変性
【症状】皮膚をつかむこともできず、押してもくぼまない硬さが特徴的。四肢より発症し、体幹に広がる
【治療】基礎疾患の治療と体温・血圧・末梢循環の保持が重要。根本的治療法はない
未熟児網膜症
retinopathy of prematurity
(ROP)
【概念】未熟な網膜にみられる非炎症性の血管病変で、未熟児の視力障害の原因となる
【病態】早産児は十分に網膜血管が発達せず、網膜周辺に無血管領域を残している。出生後、網膜血管が順調に発育せず異常な新生血管が発生し、出血さらに瘢痕となると、網膜剥離を引き起こし視力障害をきたす。高酸素血症も要因の1つである
【治療】重症例には光凝固、冷凍凝固
乳幼児突然死症候群
sudden infant death
syndromes(SIDS)
【概念】それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予想できず、しかも死亡状況および剖検によってもその原因が不詳である乳児に突然の死をもたらした症候群
【疫学】先進国においては、新生児期を除いた乳児死亡の第1位となっている。わが国では出生4000に対して約1人。男子にやや多く、ほとんど睡眠時に発生する。寒い季節の発症が多い。80%は生後6ヶ月までに発生し、2〜4ヶ月にピークがある
【原因】うつぶせ寝、両親の喫煙、母乳以外での栄養などとの関連性が指摘されている
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