分娩の定義
   分娩とは、胎児およびその付属物を母体外に排出し、妊娠を終了する過程をいう。分娩には娩出経路によって、陣痛や腹圧からなる娩出力により、産道を通して娩出する経腟的分娩と、帝王切開術による経腹壁的分娩とがある。妊娠満22週以後の分娩をもって1回の分娩と数え、それ未満の週数では分娩に含めない。通常、認められる出血量は200ml以下
分娩の3要素




陣痛
【概念】不随意に周期的に反復して起こる子宮洞筋の収縮であり、陣痛発作と陣痛間欠とをくり返す
【種類】・妊娠陣痛…妊娠中にとらえられる軽い不規則な子宮収縮(Braxton Hicks収縮)で、通常痛みは伴わない。妊娠末期には、時にその強さと頻度を増して規則的になることもあり、前陣痛とよばれる
・分娩陣痛…分娩開始から分娩終了までの陣痛。不連続で反復性・周期性・有痛性の子宮収縮であり、その持続時間は約60秒
・後産(期)陣痛…胎児娩出後いったん軽くなった陣痛が、胎盤や卵膜などの後産を娩出させるために再び再来したもの
・後陣痛…後産娩出後からの陣痛。産褥初期の止血に寄与するものである
【計測】胎児心拍数モニターを同時に記録する外側陣痛計が主に用いられる
腹圧
【概念】腹壁諸筋、横隔膜筋、骨盤底諸筋などの収縮による腹腔内圧の上昇。本来は随意筋であるが、児娩出直前にはそれが不可能となり、陣痛発作に伴い不随意的になる






軟産道
【構成】・子宮下部(子宮峡部)…上端は収縮輪を形成し、下端は産科的内子宮口となる
・子宮頸管…軟産道の中で最も抵抗が大きい。妊娠末期の頸管の熟化(軟化)、開大、展退は正常分娩が進行するための必須条件
・腟…軟産道の中で最も伸展性がある
・骨盤底筋群…浅会陰横筋、坐骨海綿体筋、球海綿体筋、外肛門括約筋、肛門挙筋などからなる
・外陰部およびその周囲の軟部組織…通常、会陰切開が行われる
骨産道
【構成】
左右の寛骨(腸骨・恥骨・坐骨)と、仙骨、尾骨から構成される骨盤腔(小骨盤内腔)により骨産道は形成される。なお、骨盤腔は、骨盤入口面、骨盤濶面、骨盤峡面、骨盤出口面の4面と、骨盤入口部、骨盤濶部、骨盤峡部、骨盤出口部の4腔間に区分される
・骨盤入口面…小骨盤と大骨盤の境界である骨盤分界線に一致する面。横楕円形の場合が多い
・解剖学的真結合線…岬角の中央から恥骨結合上縁の中央までの距離。平均11cm
・産科真結合線…岬角の中央と恥骨結合後面との最短距離。10.5〜12.5cmが正常で、児頭骨盤不均衡の診断に重要
・骨盤濶面…骨盤腔の最も広い部分。ここで通過障害をおこすことは通常ない
・骨盤峡面…骨盤腔内で最も狭い
・骨盤出口面
【児頭】恥骨結合の下1/2が触知可能⇒児頭は固定(児頭最大通過面が骨盤入口を越えて小骨盤腔内に嵌入した状態)
恥骨結合の下1/3が触知可能⇒児頭は骨盤濶部
坐骨棘が触知不能⇒児頭は骨盤峡部




胎児
【胎勢】胎児の姿勢を示すもので、屈曲位と反屈位がある。反屈位はその程度により頭頂位、前頭位、額位、顔位に分けられる
【胎位】胎児の長軸と母体の長軸との位置関係を示すもので、縦位、横位、斜位がある。縦位はさらに頭位と骨盤位とに分けられる
【胎向】縦位では児背、横位では児頭が母体側のどの方向にあるかを示す。第1胎向は母体の左側を、第2胎向は母体の右側を意味する
【児頭】正期産児の児頭の諸計測値は、大泉門直径2cm、前後径11cm、小横径8cm、大横径9cm、小斜径9cm、大斜径13cm、前後径周囲34cm、小斜径周囲32cm、大斜径周囲36cm。母体の産道を通過できるように、児頭には応形機能があるが、先進部の皮下組織は強い産道抵抗により産瘤を時に形成する
胎児付属物
【概念】胎盤、卵膜、臍帯、羊膜
分娩機転
児頭の
産道通過
機転
第1回旋(屈曲)      第1回旋の異常=胎勢回旋の異常(前頭位、額位、顔位)
児頭が骨盤入口部に進入する時、児頭は両耳結合線を軸とする横軸回旋をして強い前屈位をとる(後頭位)。この第1回旋により、先進部は小泉門となり、小斜径で産道に接するようになる
第2回旋(内回旋)      第2回旋の異常=胎向回旋の異常(先進部の後方回旋、低在横定位、高在縦定位etc.)
児頭は先進する小泉門が常に母体前方に向かうように、胎児長軸を軸とする縦軸回旋をしながら下降する(前方後頭位)。分娩所要時間のうち、この過程に最も時間を要する
第3回旋(伸展)
児頭後頭部が恥骨結合下を通過して、後部が恥骨下縁に接すると、そこを支点として頭部が反屈状に横軸回旋する。この運動によって、児頭は前頭、顔面、オトガイ部の順に会陰を滑って娩出される。第1回旋の逆の動きである
第4回旋(外回旋)
児頭娩出に引き続き、肩甲の下降が起こり、それに伴って児の顔面が母体大腿内側を向く縦軸回旋をする。第2回旋の逆の動きである
児頭回旋
正常分娩の経過
   分娩所要時間は、初産婦で30時間未満、経産婦では15時間未満が正常とされる。平均では、初産婦が12〜15.5時間、経産婦が5〜8時間
 概念・期間陣痛その他の徴候
前駆期本格的な陣痛発来の準備期間で、分娩開始の切迫していることを示す徴候が存在する期間をいう。だいたい分娩開始前3〜4週間以内とされる
前陣痛(偽陣痛)
妊娠陣痛の一種であり、不規則で、頻度も1時間にせいぜい2〜3回程度で、子宮口開大のような有効性はない。分娩の準備状態と考えられ、子宮頸管の軟化、展退すなわち成熟をきたす作用がある。偽陣痛はほとんどが無痛性で、前陣痛は有痛性の場合もある
・子宮頸管の成熟
・産徴(分娩開始の頃、血性粘液性帯下の排出をみる)
・子宮筋のオキシトシン感受性亢進
・子宮底の下降or前方突出による胃部圧迫感の減少
・胎動の減弱
・膣分泌物の増加
・頻尿
・腰痛・下腹部痛etc.
分娩第1期
(開口期)
分娩開始から、子宮口が全開大するまでの期間。平均で初産婦12時間、経産婦7時間
開口期陣痛
陣痛周期10分or陣痛頻度が1時間あたり6回以上
・胎胞の形成⇒子宮頸管の成熟
・破水(分娩第1期末期に起こることが多い)
・胎児の下降(末期にはstation 0〜+1の位置)
latent phase頸管開大度≦2.5cm
  active phase…頸管開大度≧2.5cm
分娩第2期
(娩出期)
子宮頸管全開大から、胎児が産道を下降して娩出を完了するまでの期間。平均で初産婦1〜2時間、経産婦30分〜1時間
娩出陣痛
発作1分、間欠2〜3分。子宮内圧は陣痛のみで50mmHg以上となる
・胎児の下降と娩出
   (排臨・発露の状態から、2〜3回の陣痛により児頭
     は娩出される)
※一時休息は禁忌
分娩第3期
(後産期)
胎児娩出から、胎盤・卵膜の排出が完了するまでの期間。これをもって分娩終了となる。平均10〜15分
後産陣痛
胎盤の剥離・娩出時に起こる子宮収縮。経産婦でより強い
・胎盤剥離徴候
Schro¨der徴候(子宮底が上昇して右傾)
Ahlfeld徴候(臍帯が徐々に下降)
Ku¨stner徴候(恥骨上を押すと臍帯が下垂)
Strassmann徴候(子宮底を軽く叩いても打撃音なし)
・胎盤娩出
・分娩第3期出血(平均約200ml。500ml以上は異常)

Friedman曲線

子宮頸管成熟度の採点法(Bishopスコア)
 点数
0123
子宮口開大度(cm)01〜23〜45〜
展退度(%)0〜3040〜5060〜7080〜
児頭下降度(cm)−3−2−1〜0+1〜
子宮頸管の硬度   硬い     中等度  軟らかい            
子宮口の位置後方中央前方 
(13点満点で9点以上が子宮頸管成熟判定される)
※児頭下降度は、De Leeのstation方式により表記される。すなわち、
   両坐骨棘を結ぶ線を基準とし、これからの児頭の先進部の位置をcm
   単位で表現したもの
      
De Leeのstation方式
児頭下降度児頭の位置児頭の状態
Sp −3〜−4cm骨盤入口部軽度に固定
Sp −1〜−2cm骨盤入口部〜
骨盤濶部上腔
固定〜嵌入
Sp ±0cm骨盤濶部中在
Sp +3cm骨盤峡部低在
Sp +5cm骨盤出口部排臨〜発露
※排臨…陣痛発作時にのみ胎児先進部が見える状態
発露…胎児先進部が絶えず見える状態              
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送