労働衛生行政と労働衛生関係法規
労働衛生の行政機構
厚生労働省
【組織】労働衛生に関することを行うのは、労働基準局
都道府県労働局
【概念】各都道府県に1ヶ所ずつある
【業務】労災保険に関する事務を行う
労働基準監督署
【概念】労働基準行政の第一線機関。全国に347ヶ所ある
【業務】労働時間・賃金・労災の防止・健康診断などに関する監督・指導の他、業務上疾病の認定を行う
地域産業保健
センター
【概念】労働基準監督署単位に郡市区医師会に委託して実施されているもの
【業務】産業医のいない小規模事業場を対象に、健康相談・個別訪問産業保健指導等を実施
都道府県産業
保健推進センター
【概念】労働福祉事業団が医師会の協力を受け都道府県単位で設けるもの
【業務】産業医等に対する専門的相談、産業保健情報の提供、地域産業保健センターの統括などを行っている

労働基準法
第1〜12条   総則
   労働基準→人たるに値する生活を営むための必要性を満たすもの(最低基準)。国籍、信条、社会的身分などによる差別の禁止etc.
第32条   労働時間
   休憩時間を除き1日8時間、1週40時間以内(ただし、1ヶ月以内のある一定期間を平均し、1週間あたり40時間以内ならば、特定日or前述時間を越えても可)
第34条   休憩
   労働時間6〜8時間→45分以上必要      8時間以上→1時間以上必要
第35条   休日
   毎週1回以上   4週間を通じて4回以上
第36条   時間外および休日の労働
   労使協定で可。ただし有害業務は1日2時間以内
第39条   年次有給休暇
   1年間8割以上出勤した者に対して10日。2年目以降1日加算で年20日を越えなくてもよい
第56〜64条   年少労働者条項
   満15歳未満→使用禁止(例外は労働基準監督署長の許可が必要)
   満18歳未満→休日労働・深夜業・坑内労働は禁止、有害業務・重量物取扱業務は制限
第64条の2〜68条   女性労働者の条項
   坑内労働の禁止
   妊産婦危険有害業務の就業制限、産前産後・育児休暇、生理休暇
   ・産前6週間→請求により休業   ※妊娠中→軽微な業務へ配置転換
   ・産後8週間→就労禁止(産後6週間を経過しており、医師が支障がないと認めた場合は差し支えない)
   ・生理日の就労が著しく困難な女性、生理に有害な業務に従事する女性→請求により生理日の就労禁止
   ・乳児をもつ女性→1日2回各30分以上を請求
第75条   療養補償
   業務上の負傷・疾病に対する療養費の負担→業務上の疾病
第76条   休業補償
   業務上の負傷・疾病で療養のため休業→使用者は平均賃金の6割を支払う
第77条   障害補償
   業務上の負傷・疾病での身体障害→使用者は障害程度に応じ補償金を支払う
第97〜105条   監督機関
   労働基準監督官(司法警察官の職務を行う)

労働安全衛生法
第1条   目的
   @労働災害防止基準の確立、A責任体制の明確化、B自主的活動の促進
      ⇒災害防止の総合的計画的対策の推進⇒@労働者の安全、A健康の確保、B快適な作業環境の形成
第10条   総括安全衛生管理者
〔業務〕 (衛生管理者を指揮し以下を統括管理する)
@危険、健康障害の防止   A安全、衛生教育   B健康診断、健康の保持増進   C労働災害の原因調査、再発防止   Dその他労働災害を防止する業務
※総括安全衛生管理者…その事業場で事業実施を統括管理する者(工場長、支店長etc.)をあてる
第12条   衛生管理者
〔選定の基準〕 常時50人以上の労働者を使用する事業場
〔事業所の規模と衛生管理者数〕
@50〜200人→1人   A201人〜500人→2人   B501人〜1000人→3人   C1001人〜2000人→4人   D2001〜3000人→5人   3001人以上→6人
※常時1000人を超える労働者を使用する事業場では、専任の衛生管理者が必要
〔衛生管理者の資格〕 都道府県労働局長免許を受けた者(医師・歯科医師・労働衛生コンサルタントなどは免許不要)
〔職務〕 第10条のうち衛生に係わる技術的業務の管理、週1回以上の職場巡視→健康障害防止措置
第13条   産業医
   事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、医師のうちから産業医を選任し、労働者の健康管理等を行わせなければならない
第55条   製造・輸入禁止となっている物質
   β-ナフチルアミン、ベンジジン、4-アミノジフェニル、4-ニトロジフェニル、ビスエーテル、ベンゼンを5%以上含むゴムのり、黄リン
※ポリ塩化ビフェニル(PCB)は特定化学物質の1つで、法律で製造・輸入が許可制となっている
第66条   一般健康診断特殊健康診断
   事業者は医師に結果について意見を聞く必要がある
   事業者は所見の有無にかかわらず健康診断の結果を労働者に通知する
第67条   健康管理手帳
   都道府県労働局長は、癌その他重度の健康障害を生ずる恐れのある業務で、厚生労働省令で定める要件に該当する者に対し、離職の際or離職後に健康手帳を交付する
第68条   病者の就業禁止
   産業医の助言のもと、事業者が行う
第71条の2   快適職場環境の形成
   業務者は事業場における安全衛生の水準の向上を図るため継続的・計画的に快適な職場環境を形成するように努めなければならない
産業医と労働安全衛生管理
産業医
要件@産業医の職務を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であって厚生労働大臣が定めるものを修了した者
A労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
B『学校教育法』による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授or助教授or講師(常勤者に限る)の職にあるorあった者
Cその他、厚生労働大臣が定める者
選任基準50人以上の事業所→1人以上(嘱託でも可)
1000人以上(有害業務の場合は500人以上)の事業所→1人以上(専任)
3000人以上の事業所→2人以上(専任)
職務@健康診断の実施とその結果に基づく措置
A作業環境の管理・改善      ※環境測定の直接の実施義務はない
B作業の管理
C上記@〜Bの他、健康管理に関すること      ※業務上疾病の認定は労働基準監督署が行う
D健康教育・健康相談・その他の健康の保持増進に関わること
E衛生教育
F健康障害の原因調査、再発防止      産業医には、@〜Fの勧告・指導・助言をしうる権限が付与されている
義務@少なくとも月1回の職場巡視(⇒有害性を認めた時には、必要な措置を実施しなければならない)
A衛生委員会の構成メンバーでなければならない(衛生委員会の設置は事業者の義務)
権限事業者に対して、労働者の健康管理等について必要な勧告を行うことができる

労働衛生の3管理

































【内容】代替、使用形態・条件・生産行程の変更、設備・装置の負荷、遠隔操作、自動化、密閉局所排気、全体換気、建物の構造
【目的】有害要因の発生の抑制、隔離、除去⇒適正な作業環境の確保、労働者の健康確保
【指標】作業環境測定により得られた環境気中濃度
【基準】
管理濃度…行政上、作業環境を管理する目的で設定された基準
cf)許容濃度…この数値以下ならほとんどの労働者に悪影響がみられないという当該物質の空気中の濃度
作業時間荷重平均値濃度とその持続時間の積の和を、1日の作業時間で除した値⇒慢性中毒対策に適している
最大許容濃度健康障害の危険のある物質が瞬時でもこの濃度以上になってはならない上限値⇒急性中毒対策に適している
短時間暴露限界値刺激作用や麻酔作用のある物質に対して、1回15分以内、1時間以上の間隔で1日4回以内の条件下での限界値
【評価】作業環境測定の結果によって、作業環境の状態を3つの管理区分に分けている
   ・第1管理区分…作業環境管理は適切
   ・第2管理区分…作業環境管理になお改善の余地がある
   ・第3管理区分…作業環境管理が不適切



【内容】作業場所、作業方法、作業姿勢、暴露時間、呼吸保護具、教育
【目的】作業の適正化⇒作業に伴う有害要因の発生を防止
【対象】特に有害エネルギー関連の作業(振動、高圧)、手指作業(キーパンチャー、引金工具etc.)に対する作業管理は重要
【指標】暴露濃度、生物学的指標
【基準】暴露限界









【内容】
健康診断とその事後措置、生活指導、休養、治療、適正配置。健康相談・健康教育
※健康診断の種類





雇入時の健診常時使用する労働者を雇入れる時に実施
定期健診常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回
特定業務従事
者の健診
特定業務とは、暑熱、寒冷、有害放射線、粉じん、異常気圧、振動、重量物、騒音、坑内、深夜、有害物、有害ガス、粉じん、病原体汚染etc.
海外派遣労働
者の健診
労働者を海外へ6ヶ月以上派遣しようとする時(派遣前)と、海外へ6ヶ月以上派遣した労働者が帰国した時(派遣後)の2回実施
結核健診雇入時健診や定期健診等で結核の発病の恐れがあると診断された労働者が対象
給食従事者の検便事業に附属する食堂or炊事場における給食の業務に従事する労働者が対象(雇入時、配置替え時)
特殊健康診断雇入時・配置転換時・6ヶ月以内ごとに1回実施される。実施が義務づけられている業務としては、粉じん作業、高圧室内業務および潜水業務、放射線業務、特定化学物質等の製造・取扱い業務、鉛業務、四アルキル鉛業務、特定の有機溶剤業務
【目的】疾病や障害の予防
【指標】暴露濃度、生物学的指標、健康診断結果
【基準】生物学的曝露指標
THP
【概念】トータルヘルスプロモーションプランの略で、心身両面にわたる健康保持増進措置を行う
【内容】運動指導、保健指導、栄養指導、心理相談
労働災害
概念労働者の就業に係る建造物・設備・原材料・ガス・蒸気・粉じん等or作業行動その他業務に起因して労働者が負傷し、疾病にかかり、または死亡すること。このうち、事業主の責任で療養費や休業補償を行うべき疾病は業務上疾病とよばれる(法律用語)
認定労働基準監督署長が行う
現状と
動向
労働災害の発生状況
被災者数…約60万人。減少傾向。業種別では、製造業建設業の順に多く、この2つで約半数。小規模事業場で7割以上が発生
死亡者数…1658人。減少傾向。業種別では、建設業、製造業の順に多く、この2つで半数以上
度数率…減少傾向。業務別では、一般貨物自動車運送業、港湾運送業、建設業の順に多い
   ※度数率=(労働災害による死傷者数)/(延べ実労働時間)×100万
業務上疾病の発生状況
発生件数…約7500件。減少傾向。疾患別では、負傷に起因する疾病(8割以上が災害性腰痛)、じん肺の順に多い
疾病千人率…総数では0.1‰。横ばい傾向。業種別では、鉱業、貨物取扱業が高い
年齢調整死亡率…男性ではサービス職従事者、農林漁業作業者で高く、女性では保安職業従事者、管理的職業従事者で高い

労働者災害補償保険法
第1条   目的
   労働者の福祉の増進
   業務・通勤による負傷、疾病、障害、死亡→迅速公正な保護をするための保険給付、社会復帰の促進、労働者・遺族の援護
第2条   労働者災害補償保険
   労働者災害補償保険→政府が管掌      ※保険者は国、保険加入者は企業(企業が保険料を負担)
   内容→業務災害・通勤災害に対する保険給付、労働福祉事業
第3条   適用事業及び適用除外
   適用事業→労働者を1人でも使用するすべての事業は強制適用
   適用除外→@国の直営事業、A労働基準法第8条に該当しない官公署、B船員保険法による被保険者
第7条   保険給付の種類
   業務災害→業務上の負傷、疾病、障害、死亡
   通勤災害→通勤による負傷、疾病、障害、死亡
第12条の8   業務災害の保険給付の種類と事由
@療養補償   A休業補償   B障害補償   C遺族補償   D葬祭料   E傷病補償年金   F介護補償給付
     ⇒保険給付は労働基準法に規定する災害補償事由が生じた場合に行う
第21条   通勤災害の保険給付
@療養補償   A休業補償   B障害補償   C遺族補償   D葬祭料   E傷病補償年金   F介護補償給付
第23条   労働福祉事業
   アフターケア制度
第29条   労働福祉事業の種類
@療養に関する施設、リハビリテーション施設等の社会復帰を促進する事業
A被災労働者の療養生活の援護、介護の援護、遺族の就学援助等を行う事業
B業務災害の防止に関する活動に対する援助、健康診断施設設置等の安全及び衛生確保のための事業
C賃金支払いの確保、労働条件の確保を図るための事業
職業性疾病
粉じんによる障害(じん肺)
定義無機粉じんを吸入することによって肺に生じた線維増殖性変化(by『じん肺法』)
※有機粉じんによる肺疾患(綿糸肺、農夫肺、砂糖キビ肺、コルク肺、鳩飼育病)は、線維増殖性変化でないため、じん肺法には含まれない
原因遊離ケイ酸(⇒典型的珪肺)、ケイ酸化合物(⇒石綿肺(アスベスト肺)、滑石肺、ろう石肺)、アルミニウムとその化合物(⇒アルミニウム肺、アルミナ肺、ボーキサイト肺)、鉄とその化合物(⇒鉄肺、溶接工肺(酸化鉄肺)、硫化鉱肺)、ベリリウムとその化合物(⇒ベリリウム肺)、炭素(⇒黒鉛肺、炭素肺、活性炭素肺、炭坑夫肺)、チタン、スズ、アンチモン、セメント
健診対象者…現在と過去において粉じん作業に従事した者全員
じん肺健診…就業時、定期、定期外、離職時の4種(事業者の責任で実施)
健診の内容…粉じん作業の職歴の調査、自覚症状・他覚的所見の有無、胸部全域のX線検査(直接撮影)etc.
   ※事業者→健診結果の記録とX線フィルムを7年間保存
管理区分…X線所見肺機能検査により、労働基準局が管理1〜4に区分
   ⇒管理4に区分された者は療養。管理2・3に区分された者には健康管理手帳の交付(国による定期健診を退職後も無料で受けられる)
疾患
無機粉じんによる肺疾患
珪肺
【職場】鉱山、陶磁器製造、採石、石切業、鋳物業、トンネル工事
【要因】5μm以下の遊離ケイ酸の粉塵を吸入することによる
【症状】
自覚症状…初発症状は曝露から10〜20年後の呼吸困難(←合併した肺気腫や気管支炎によるものが多い)
合併症…肺性心、結核etc.
【検査】胸部Xp⇒中肺野から両側性に珪肺結節の粒状陰影、リンパ節の線維化・周囲の卵殻状石灰化像
呼吸生理⇒閉塞性換気障害、拘束性換気障害
石綿肺
(アスベスト肺)
【職場】ボイラー・建築関係、耐火・断熱・断縁性素材製造工場、自動車工場、石綿鉱山、石綿製品工場、ビルの解体作業
【要因】長さ5〜100μmの繊維状の石綿粉じんを吸入することによる
【症状】
自覚症状…比較的早期に呼吸困難が出現
他覚的所見…ばち指、聴診にて肺基底部に持続性の捻髪音
合併症…胸膜炎、無気肺、気管支拡張、肺癌、悪性中皮腫(胸膜・腹膜)
【検査】胸部Xp⇒初期には下肺野に不整形の線状陰影、進行するとスリガラス状陰影。他に、胸水貯留、胸膜肥厚
喀痰検査⇒アスベスト小体
【対策】予防以外にない
有機粉じんによる肺疾患
農夫肺
(サイロ病)
【要因】干草粉じんなどの吸入による
【症状】
急性型…曝露の4〜8時間後に、寒気、咳嗽、発熱、頭痛、呼吸困難etc.
慢性型…次第に呼吸困難が進行し、曝露が継続すれば肺線維症に至る
合併症…肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支拡張症、続発性気胸、原発性肺癌
【治療】ステロイド投与

職業性腫瘍
膀胱癌β-ナフチルアミンベンジジン、4-アミノジフェニル、4-ニトロジフェニル(以上は製造・輸入禁止物質)、オーラミン、マゼンダ
皮膚癌ヒ素、タール類(すす、ピッチ)、パラフィン、アスファルト、鉱物油、紫外線、電離放射線
白血病ベンゼン、電離放射線
肺癌タール類、ヒ素クロムニッケル(精錬過程)、ビス(クロロメチル)エーテル、ベンゾトリクロライド、石綿(アスベスト)、電離放射線、コークス・発生ガス、イペリット(マスタードガス)、珪酸、鉄、ベリリウム、コールタール
中皮腫石綿
肝血管肉腫塩化ビニルモノマー

その他の職業性疾病








頸肩腕症候群
(頸肩腕障害)
【概念】上肢を同一肢位に保持・反復使用する作業により、神経・筋疲労を生ずる結果起きる機能的・器質的障害
【職種】打鍵作業(キーパンチ、タイプ)、組立、事務作業、電話交換、保育
【要因】作業条件(作業姿勢、作業負荷量)、作業環境(温度、照明etc.)、個人的因子、心理的因子
【症状】頸肩腕手指の痛み・こり・だるさの症状、自律神経失調が主。他に中枢神経症状、精神心理的異常症状(睡眠障害、書痙、痙性斜頸、ヒステリー症状)
【予防】作業条件規制、定期健康診断・健康管理
職業性腰痛
【概念】職業起因性の腰痛という自覚症状を有する状態
【分類】災害性腰痛…重量物作業等により突発的に発症する腰痛
非災害性腰痛…腰部に負担のかかる作業等により徐々に発症する腰痛
【職種】重症心身障害者施設の保母、港湾荷役、長距離運転、看護師、介護労働者etc.
【疫学】業務上疾病の約6割を占める
【症状】椎間板ヘルニア・脊椎分離症・脊椎辷り症・腰椎変形症・腰部骨折などに起因する腰部疼痛
【予防】労働負担軽減、予防体操、腹腰背筋強化運動、適格者の職場配置
VDT作業に伴う
健康障害
【職場】コンピュータやワードプロセッサーなどのOA機器を使用する職場
【症状】視覚への負担(ドライアイ)、筋骨格系への負担、精神神経疲労(テクノストレス、テクノ依存)
【予防】作業環境管理(適度な照明・採光etc.)、作業管理(注視時間の短縮、椅子や机の高さの個々人による調節etc.)、健康管理(作業前後の軽い運動、定期的な視機能検査etc.)、労働衛生教育
酸欠症
【概念】酸素欠乏の空気(酸素濃度<18%)を吸入することにより生ずる症状が認められる状態(by『酸素欠乏症等防止規則』)
【職場】潜函・シールド工法など圧気工法による地下建設工事、果実・野菜・穀物の貯蔵されている地下倉庫・サイロ・むろ、下水槽・下水道のマンホール・船倉など有機物の腐敗・発酵しているところ、石炭庫・乾性油・魚油を貯蔵する密閉室内
   ※酸素欠乏危険場所においては、硫化水素が発生しやすい
【症状】
ベンダーソンの分類
酸素濃度症状
16〜12%脈拍↑、呼吸数↑、精神集中に要努力、細かな筋肉作業のミス、記憶力低下、頭痛、嘔吐、耳鳴
14〜9%判断力↓、興奮状態(←高CO2血症との大きな違い)、精神不安定、見当識障害、刺傷に無感覚、酩酊状態、体温↑、チアノーゼ
10〜6%瞬時に意識不明、中枢神経障害、痙攣、チェーンストークス呼吸、チアノーゼ
10〜6%の持続
orそれ以下
昏睡⇒呼吸緩徐⇒呼吸停止⇒6〜8分後に心停止
【予防】十分な換気、酸素濃度測定、保護具の装着、監視人の配置、教育(by『酸素欠乏症等防止規則』)
熱中症
【概念】高温多湿の環境下で運動や作業を行う時にみられる全身性の温熱障害
【原因】体内の蓄熱量↑↑>放熱
【分類】
 熱痙攣熱虚脱熱射病
病態筋肉の痙攣2次的循環機能障害温熱中枢機能障害
高温多湿環境下で大量発汗後の水分摂取⇒低張性脱水⇒痙攣体温上昇⇒血管拡張
多量の汗⇒循環血液量↓
うつ熱状態⇒温度中枢機能の破綻⇒体温↑↑
発症比較的突然の痙攣にて発症自律神経症状(脱力、嘔気、めまいetc.)にて発症高温曝露後に比較的突然発症(運動後に多い)
皮膚暖かく、湿潤、蒼白暖かく、湿潤、蒼白熱く、乾燥、紅潮
体温正常平熱以上41℃以上に著明に上昇
症状頻脈、血圧→〜↓
作業に用いた随意筋群の有痛性痙攣
頻脈、血圧↓
立ちくらみ様症状
めまい、頭痛、意識障害嘔気
初期には頻脈、血圧↑、心係数↑
進行すると、ショック
めまい痙攣→昏睡
多臓器不全、DIC
治療食塩、水、スポーツドリンクの経口投与
生食静注
体温降下療法
   (直腸温が38.3℃前後になるまで)
集中強化療法(緊急の救命措置)
輸液療法
予後他に比べ軽症熱射病に比して良好致命率は20〜50%
【予防】遮蔽物・冷房設備・シャワー等の設置、温度計・湿度計の設置、休止・休憩時間の確保、適正な服装、適切な水分・ミネラルの補給etc.
気圧による障害
【症状】
高気圧障害
スクイーズ
(締め付け障害)
耳のスクイーズ
耳痛が起こる。その他、耳管狭窄があると鼓膜損傷の恐れがある
鼻のスクイーズ
鼻腔と副鼻腔が何らかの原因で断たれたまま加圧すると、疼きが起こることがある
歯のスクイーズ
虫歯が痛む
窒素酔い体内への窒素の吸収・溶解の促進により、窒素の麻酔作用が生じる。判断力・記憶力の低下、精神活動の低下、動作緩慢、意識消失などが起こる
酸素中毒急性型…高気圧下での純酸素or高分圧の酸素を吸入した場合。眠気、口唇のピクつき、全身痙攣などが起こる
慢性型…低分圧で純酸素を吸入した場合。呼吸器の炎症性変化が起こる
炭酸ガス中毒
その他のガス中毒
大気圧下では無害でも高気圧かでは有害となるものがある
減圧中の身体障害
肺の過膨脹・肺破裂⇒空気塞栓、気胸、縦隔気腫
減圧症(潜函病)
概念…急激な減圧を行った後(ほとんどが2時間以内)に生じる身体障害
病態…高圧により血液中に溶け込んだN2が急激な減圧により気泡化して、それが小血管内で塞栓となる
急性症状…ベンズ(四肢の大関節・筋肉の激しい鈍痛)皮膚ベンズ(四肢・躯幹部の掻痒感・発疹)、チョークス(息切れ、胸がつまった感じ、重症ではショック状態)、脳卒中様症状、Me´nie`re症候群、症候性精神病etc.
慢性症状(不適当な減圧の反復)…骨の無菌性壊死(大腿骨・上腕骨骨頭部)、偽関節形成(運動痛、運動障害)
   ※中枢神経障害の頻度は一般に少ない
健診…雇入時、配置替え時、就業後、6ヶ月以内ごとに特殊健診(by『高気圧作業安全衛生規則』)
治療…再圧タンク・再加圧室を使用した高圧酸素療法
予防…高圧下の滞在時間・回数の規制、階段減圧法、不適格者の排除
航空中耳炎
耳管狭窄がある場合、航空機降下時の気圧変動に応じて中耳気圧が相対的陰圧になり、さらに耳管の閉鎖を生じるために起こる中耳炎。降下中の頻回の嚥下動作は有効な予防法である
高山病
概念…2500m以上の高所に急速に移動した場合にみられ、酸素分圧の低下による低酸素血症が本態である
分類…良性高山病(重要臓器の障害がないもの)、悪性高山病(重要臓器の障害があるもの)
症状…重症例では肺小動脈の収縮から肺高血圧を起こし、ひいては肺水腫を引き起こす
治療…低地への移送、酸素吸入
その他の気圧による障害
・航空減圧症…5400m以上、1/2気圧以下で発生する
・骨Ca低下…無重力環境で起こる

産業中毒
金属中毒
無機鉛
金属鉛
【職種】バッテリー製造、クリスタルガラス製造、七宝焼、塩化ビニル加工etc.
【経路】経気道が主、他に経口ヘム合成経路の無機鉛による障害
【機序】ポルフィリン合成酵素活性が低下し、ヘム合成障害をきたす
【症状】貧血…小球性低色素性貧血(鉛蒼白)
消化器症状…食欲減退、便秘、下痢、腰部疝痛(鉛疝痛)、歯肉の鉛縁
神経症状(運動系優位)…筋肉痛、筋力低下、橈骨神経麻痺(伸筋麻痺)、鉛脳症(嘔吐、傾眠、痙攣、昏睡etc.)、知能低下
腎障害…慢性腎炎(←高濃度or長時間曝露による)
【検査】血液検査⇒血中Pb濃度↑赤血球中ALA-D活性↓、Hb↓、血液比重↓、網赤血球↑、赤血球寿命↓、赤血球遊離プロトポルフィリン↑、好塩基斑点赤血球出現
尿検査⇒尿中Pb濃度↑、尿中ALA↑尿中コプロポルフィリン↑
末梢神経伝導速度測定⇒速度↓
【治療】CaNa2-EDTAの筋注・静注、BALの筋注、D-ペニシラミンの経口投与
※BAL(british anti-lewisite)…重金属(Pb、As、Hg)のキレート剤
【予防】『鉛中毒予防規則』に基づく換気設備等の労働衛生管理、6ヶ月ごとに1回の特殊健診
有機鉛
(アルキル鉛)
【経路】経気道、経皮
【症状】数日の潜伏期の後、精神症状(不安、興奮、不眠、妄想、幻覚、せん妄、痙攣etc.)
【検査】尿中Pb↑、赤血球中ALA-D活性↓
【予防】『四アルキル鉛中毒予防規則』に基づく衛生管理、3ヶ月ごとに1回の特殊健診。現在、国内では製造されていない
【治療】対症療法が主
【予後】重度の精神症状をきたすと予後が悪いが、回復例では後遺症は少ない
カドミウム
【職種】合金製造、メッキ、アルカリ電池製造etc.
【経路】経気道、経口(イタイイタイ病は経口摂取によったが、職業性曝露ではフュームの吸入のみ)
【機序】標的臓器は腎臓で、近位尿細管上皮に蓄積
【症状】
急性症状…吸入の4〜48時間後に、インフルエンザ様症状→肺水腫→間質性増殖性肺炎をきたし、死亡する。その他、金属熱もみられ、後遺症としては肺線維症がある
慢性症状…慢性気管支炎→肺気腫腎障害(近位尿細管の再吸収障害(Fanconi症候群)⇒低分子蛋白尿、腎性糖尿、アミノ酸尿、代謝性アシドーシスetc.)、多発性骨折(腎性骨軟化症)、歯牙のCd輪
【検査】尿検査⇒低分子蛋白の検出(β2-MG、レチノール結合蛋白、メタロチオネイン)、尿糖(+)、尿中Cd↑、尿細管P再吸収率(%TRP)↓
肺機能検査⇒慢性中毒では閉塞性換気障害
骨Xp⇒骨軟化症の変化
【治療】キレート剤。慢性中毒には対症療法。呼吸器症状には抗生物質・ステロイドの投与
金属水銀
【職種】水銀体温計製造業、水銀計器製造業
【経路】経気道
【機序】一部はHg2+に酸化されて近位尿細管上皮を傷害。残りはHgのまま血液-脳関門を通貨
【症状】
急性症状…急性肺炎(間質性肺炎)、重症では肺水腫
慢性症状…企図振戦、精神過敏症(水銀精神経過敏症)、口内炎・歯肉炎、消化器症状
【検査】血中・尿中Hg↑
【治療】BAL、D-ペニシラミン
無機水銀
【経路】経口、経気道
【原因】農業用消毒剤の塩化第二水銀(昇汞)などの自殺や誤飲によるものが多い
【症状】消化器粘膜の腐食作用、急性腎不全(乏尿、多尿、頻尿)
【検査】血液・尿検査⇒血中・尿中Hg↑、尿蛋白↑
細隙灯顕微鏡検査⇒長期曝露時には水晶体前嚢・瞳孔に色素沈着(アトキンソン反射)
有機水銀
(アルキル水銀)
【経路】経皮、経口、経気道(水俣病は生物濃縮された魚介類の経口摂取によって起こった)
【機序】血液-脳関門を通過し、神経細胞内のミトコンドリアなどの-SH基と結合し、中枢神経症状を発現
【症状】Hunter-Russell症候群四肢末梢・口腔の知覚異常求心性視野狭窄小脳性失調、構音障害、聴力障害(難聴))
【検査】血中Hg↑、毛髪中Hg↑
硝酸銀
【症状】腐食作用があり、胃穿孔をきたすことがある
【治療】NaClによる胃洗浄(⇒無毒のAgClとして沈殿させ、これを洗い流す)
クロム
【職種】メッキ工場、クロム酸製造、ステンレス製造、革なめし作業etc.
【経路】経口、経気道、経皮
【症状】
急性症状…皮膚症状(手根・爪根部の無痛性皮膚潰瘍、クロムアレルギーによる皮膚炎)
慢性症状…呼吸器・粘膜刺激症状(鼻中隔潰瘍・鼻中隔穿孔、鼻炎、嗅覚障害、気管支炎、肺炎、肺気腫)
晩発症状…呼吸器癌
【検査】尿中Cr↑、パッチテスト
マンガン
【職種】特殊鋼製造、電池工業etc.
【経路】経気道(粉じん)
【機序】大脳基底核に蓄積して変性をきたす
【症状】Parkinson症候群(四肢振戦、小書症、突進症、歩行障害、仮面様顔貌(マンガン顔貌))、マンガン肺炎(難治性肺炎)
【検査】血中Mn↑(尿中への排泄は少ない)
ヒ素
【職種】銅精錬(鉱石の焙焼工程)、鉱山、顔料・農薬・殺鼠剤の製造業、先端電子産業
【経路】経口、経気道が主。まれに経皮
【機序】SH系酵素の阻害。三酸化ヒ素(亜ヒ酸)が最も毒性が強い
【症状】皮膚症状…接触皮膚炎、ヒ素疹(ざ瘡様発疹)、Mees線(爪の白線)、ヒ素角化症、ヒ素黒皮症、Bowen病
呼吸器症状…鼻中隔穿孔、肺癌、胸痛、慢性気管支炎症状、ニンニク臭の呼気
神経症状…末梢神経障害(感覚優位型)、多発性神経炎、精神錯乱
その他…溶血・再生不良性貧血、消化器症状(やせ、激しい腹痛、粘血便etc.)、肝脾腫、肝血管肉腫
【検査】尿中As↑、血中As↑、毛髪中As↑、ヘモグロビン・ミオグロビン尿etc.
【治療】BAL・D-ペニシラミンの筋注、呼吸障害には酸素吸入、胃洗浄、輸血、MgSO4投与、活性炭による吸着
ベリリウム
【職種】宇宙航空材料、原子炉材、原子工業製品
【経路】経気道、経皮、経口
【機序】酵素類(特にALP)の阻害、細胞増殖と核酸複製の阻害、免疫学的メカニズム
【症状】
急性症状…接触皮膚炎、皮膚潰瘍、結膜炎、角膜潰瘍、気管支炎、肺炎、肺水腫etc.
慢性症状…ベリリウム肺(肺の肉芽腫性病変⇒肺線維症)、皮下肉芽、肺性心etc.
【検査】胸部Xp⇒間質性肺炎像
亜鉛
【職種】真ちゅう管の熔断etc.
【経路】経気道(多量の酸化物の金属フュームの吸入)
【機序】アレルギ―性機序
【症状】吸入後2〜8時間の潜伏期の後に発熱(金属熱)をはじめとするインフルエンザ様症状(黒い痰と咳嗽)を呈するが、12〜24時間で倦怠感を残して解熱。その他、一過性糖尿や体重減少などのDM様症状をきたすことがある
   ※金属熱は、種々の金属の酸化物のフュームの吸入によって起こるが、亜鉛で最もよく起こる
【検査】WBC↑etc.
ニッケル
カルボニル
【経路】経気道
【症状】
急性症状…気道障害、肺気腫、中枢刺激作用
慢性症状…肺癌上気道癌
【検査】尿中Ni↑
タリウム
【経路】経口、経気道、経皮
【症状】皮膚乾燥、爪の白線、脱毛、呼気のニンニク臭、消化器症状、脳症、腎障害
【検査】尿中Tl↑、便中Tl↑

有害ガス中毒
一酸化炭素
【発生源】都市ガス中毒(都市ガス配管業務etc.)、不完全燃焼、自動車排気ガス(地下駐車場業務etc.)、炭鉱爆発事故
【機   序】O2に比べてHbとの親和性が200〜300倍も高く、著しい組織の低酸素症を生ずる。特に淡蒼球と大脳白質の壊死が著しい
【症   状】急性症状…CO-Hb濃度>5%で、視力障害や高度な判断力の低下が始まる。チアノーゼ(−)で、皮膚は潮紅
血中CO-Hb濃度作用
10%強い筋肉労働で呼吸促迫
20%軽作業で呼吸促迫、軽い前頭部痛
30%顕著な頭痛、視力低下、易疲労性、易刺激性、軽い意識混濁
40〜50%頭痛、顕著な意識混濁、虚脱、失神
60〜70%意識消失、長く続くと呼吸停止
80%急速に死亡
80%以上即死
後遺症…錐体外路症状(Parkinson症候群)、小脳失調、失行症・失認症、失外套症候群、神経衰弱、健忘症、人格変化、Korsakoff症候群      ※症状は曝露の1〜5週間後に初めて出現することもある
慢性症状…中枢性視力障害(視野狭窄、色覚障害、中心暗点)、心筋障害(狭心症
【検   査】血中CO-Hb濃度↑、呼気中CO↑、PaCO2→〜↓、代謝性アシドーシス(←嫌気性代謝の亢進)、パルスオキシメーター正常
【治   療】急性症状⇒高流量酸素吸入(O2+数%CO2の吸入)、人工呼吸、重症例では脳浮腫に対するマンニトール投与
慢性症状⇒高圧酸素療法
シアン化水素
(青酸)
【発生源】殺虫・殺鼠の目的での船舶・倉庫の燻蒸、火災時のアクリルやウレタンなどの燃焼
【経   路】経気道(最多)、経皮(⇒防毒マスクは無効
【機   序】Fe3+と強い親和性をもち、チトクローム酸化酵素のFe3+と結合し、その機能を阻害する。そのため、組織は酸素を利用できなくなり、壊死に陥る(化学的窒息)。COの共存下で毒性は増強する
【症   状】
急性症状…喘鳴、皮膚の紅潮、静脈の怒張、全身痙攣→死亡
慢性症状…掻痒性皮疹、鼻炎、神経症状(頭痛、振戦、失神)      ※チアノーゼ(−)
【検   査】血中シアン↑、尿中チオシアン↑、アーモンド様臭気、PvO2
【治   療】100%O2亜硝酸アミルの吸入、亜硝酸Na・チオ硫酸Naの静注
硫化水素
【職種】パルプ・セロファンの製造、レーヨン工業、汚水槽の清掃作業、その他の酸素欠乏危険場所etc.
【機序】チトクローム酸化酵素を阻害
【症状】
急性症状…低濃度の場合には粘膜刺激作用(ガス眼(角膜に水疱)、嗅覚麻痺etc.)、高濃度の場合には呼吸器症状(肺水腫、呼吸不全)
亜急性症状…角膜混濁・潰瘍
フッ化水素
【発生源】ガラス彫刻、メッキ、アルミニウム精錬、金属洗浄などホタル石から燐酸を作る過程で発生
【機   序】酸としての刺激作用
【症   状】
急性症状…皮膚・粘膜に対する強い刺激作用(皮膚火傷etc.)、気管支肺炎、遅発性肺水腫
慢性症状…歯牙異常(斑状歯)、骨の過剰増殖、骨硬化症
【検   査】血中F2↑、尿中F2
二酸化硫黄
(亜硫酸ガス)
【発生源】硫酸工業、漂白、製紙etc.
【機   序】水に溶けて亜硫酸or硫酸ミストとなり、酸による粘膜刺激症状をきたす
【症   状】
急性症状…粘膜刺激症状が主、呼吸器障害(大量吸入により肺水腫)
慢性症状…歯牙酸蝕症、閉塞性肺疾患(慢性気管支炎気管支喘息etc.)、結膜炎etc.
二酸化窒素
【発生源】硝酸製造工程、化学合成のニトロ化、金属の表面処理(酸洗い)、サイロ、高温燃焼している内燃機関で発生
【経   路】経気道⇒気管支・肺を刺激、血液に溶けてメトHbとなる
【機   序】水に溶けて硝酸となり酸による粘膜刺激症状をきたす。難溶性なので呼吸器深部に到達しやすい
【症   状】
急性症状…眼・鼻・上気道刺激症状、高濃度で遅発性肺水腫(数時間の潜伏期)
慢性症状…歯牙酸蝕症、胃腸障害、慢性気管支炎、肺気腫
ホスゲン
(カルボニルクロライド)
【発生源】揮発性塩化水素が炎や加熱金属面に接触した時に発生。四塩化炭素消火剤による消火作業時に起こりやすい
【機   序】水溶性が低く、粘膜刺激作用が弱いため肺の深部に吸収され、加水分解されてCO2とHClになり、毒性を発揮
【症   状】遅発性肺水腫(数分〜数時間後に急激な症状が出現)
塩素
【発生源】化学工業原料、漂白剤
【症   状】肺水腫、歯牙酸蝕症
アルシン(ヒ化水素)
【症状】溶血性貧血
アンモニア
【発生源】化学工業原料、冷蔵庫用冷媒
【症   状】溶血性貧血、呼吸困難、肺水腫

有機溶剤中毒
ベンゼン
(ベンゾール)
【発生源】合成樹脂、合成ゴム、TNT火薬、染料・医薬品原料、ガソリン
【経   路】経気道が主。経皮もある
【機   序】体内でフェノールとなり毒性を生じる
【症   状】
急性症状…高濃度曝露で麻酔作用と中枢神経系の抑制(5〜10分で呼吸麻痺)⇒死亡
慢性症状…骨髄低形成に伴う造血機能障害(⇒再生不良性貧血、ベンゾール紫斑病)、白血病染色体異常
【検   査】尿検査⇒尿中フェノール↑
血液検査⇒汎血球減少(RBC↓、Plt↓、WBC↓の順)
【予   防】『特定化学物質等障害予防規則』の対象
トルエン
【発生源】溶剤、接着剤、塗装(シンナーに含まれる)
【経   路】経気道、経皮
【機   序】シナプスでの刺激の伝達を抑制⇒中枢神経系に対する毒性を発揮。長期的には脱髄性病変が出現
【症   状】
急性症状…麻酔作用による中枢神経抑制、肝障害
慢性症状…不定愁訴(頭痛、めまい、倦怠感、月経不順etc.)、依存性
【検   査】尿検査⇒尿中馬尿酸↑
脳波検査⇒慢性中毒では異常(+)
【予   防】シンナーの乱用は『毒物及び劇物取締法』により規定
キシレン
【発生源】溶剤、医薬品原料、インク、塗装
【経   路】経気道、経皮
【機   序】トルエンと同様
【症   状】急性症状…上気道刺激、麻酔作用による中枢抑制
【検   査】尿検査⇒尿中メチル馬尿酸↑
メタノール
【発生源】ホルムアルデヒドの製造、塗装、ニス、印刷用インク、染料
【経   路】経気道、経皮
【機   序】メタノールは酸化されてホルムアルデヒドとなり、さらにギ酸になる。このギ酸が視神経に強い毒性を発揮
【症   状】
急性症状…代謝性アシドーシス、眼症状(視力障害、瞳孔の散大・固定、対光反射消失、眼瞼下垂etc.)
慢性障害…眼の障害、めまい、視神経炎、皮膚炎、表層角膜炎
【検   査】血液・尿検査⇒尿中メタノール↑、血清pH↓、HCO3-
【治   療】催吐or胃洗浄、エチルアルコールの持続的投与(⇒ADHを飽和させ、メタノールの代謝を阻害する)
四塩化炭素
【発生源】脱脂溶剤、昔の消火剤
【経   路】経気道、経皮経口
【症   状】
急性症状…肝障害(肝不全、黄疸 )、急性腎不全(←近位尿細管の変性壊死による)、麻酔作用、頭痛、悪心、めまい感、呼吸困難
慢性症状…肝障害(肝硬変、肝癌)
【病   理】肝の中心性壊死、出血、脂肪変性
【検   査】血清・尿・呼気中のCCl4
二硫化炭素
【職場】ビスコースレーヨン工場、セロファン製造
【経路】経気道の他、経皮・経口もある
【症状】
急性症状…水疱性皮膚炎、角結膜炎(紡績工前眼炎)、麻酔作用による中枢抑制
慢性症状…中枢神経障害(せん妄・抑うつなどの精神障害、Parkinson症候群)、末梢神経障害(多発性神経炎(腓骨・脛骨神経に好発)、視神経障害)
続発症…若年性動脈硬化症、眼の二硫化炭素網膜症(網膜微細動脈瘤)、DM、胃腸障害(萎縮性胃炎)
【検査】眼底検査
ノルマルヘキサン
【職場】油脂工場(抽出用溶剤)、ポリエチレンラミネート工場、接着剤・インク・塗料工場
【経路】経気道
【症状】慢性症状…多発性神経炎(よろめき歩く)、知覚鈍麻→筋力低下→筋萎縮(末端から求心性に進行)
【検査】尿中2,5-ヘキサンジオン↑
トリクロルエチレン
(トリクレン)
【発生源】金属部品の脱グリース洗浄剤、皮革洗剤
【経   路】経気道の他、経口もある
【症   状】
急性症状…麻酔作用による中枢神経抑制(三叉神経麻痺)、複視、心筋麻痺
慢性症状…多発性神経炎(特に下肢)、中枢刺激症状、肝障害、腎機能障害
【検   査】尿中トリクロル酢酸↑尿中総三塩化物↑
テトラクロルエチレン
(パークレン)
【発生源】ドライクリーニング
【症   状】トリクロルエチレンとほぼ同じだが、毒性はトリクロルエチレンより低いと考えられている

有機化学物質中毒
ニトログリコール
【職場】ダイナマイト製造工場
【経路】経気道、経皮
【機序】血管拡張作用と代償性血管収縮による。曝露により耐性ができると血管拡張作用は軽減するが、曝露中断時に冠動脈の攣縮が起き狭心症様発作をきたす
【症状】
急性症状…末梢血管拡張による頑固な頭痛、貧血、起立性低血圧、胸内苦悶、手足のしびれ
慢性症状…狭心症様発作(曝露から離れた休日の翌朝に多い)、メトHb血症、肝障害
【検査】血圧(⇒脈圧↓)、指先容積脈波検査、血中ニトログリコール↑
イソシアネート
(トルエンジ
イソシアネート)
【発生源】ウレタン樹脂(発泡樹脂)の原料
【経   路】経気道、経皮
【機   序】気道に対する直接の刺激作用+過敏性反応
【症   状】気管支喘息様発作、肺炎、肺気腫、感作性皮膚炎、粘膜・気道刺激
【検   査】肺換気機能検査(⇒肺活量↓、1秒率↓)
芳香族アミノ・
ニトロ化合物
【職場】染料原料・火薬・薬品工場
【経路】経皮、経気道、経口
【機序】メトHb血症をきたすグループ…Hbに含まれるFe2+をFe3+酸化し、酸素運搬能力を失わせる
膀胱癌をきたすグループ…尿中に排泄された代謝産物が、膀胱内で強力な発癌物質に変化することによる
【症状】慢性症状…メトHb血症、溶血性貧血、アレルギー性接触皮膚炎、膀胱癌、肝障害(急性黄色肝萎縮)
【検査】赤血球中のハインツ小体の検査、尿中パラアミノフェノール検査
塩化ビニル
モノマー
【発生源】プラスチックの原料
【経   路】経気道
【機   序】モノマー自体がアミノ酸と結合して障害を起こす他、その代謝産物であるエポキシドによって肝血管肉腫が発生する
【症   状】慢性症状…Raynaud現象、強皮症様皮膚病変(硬化と硬結)、指端骨溶解症、門脈圧亢進症等の肝・脾症候群、肝血管肉腫etc.
【検   査】肝機能異常、Plt↓、腹部エコー、肝シンチ
臭化メチル
【発生源】輸入木材・果実などの検疫用燻蒸殺虫剤として汎用
【機   序】細胞内で発生した代謝産物が-SH基のメチル化剤として作用
【症   状】中枢神経刺激症状、精神障害、視力障害、運動失調、言語障害、遅発性肺水腫
【予   防】『特定化学物質中毒予防規則』により、燻蒸作業にかかわる衛生管理の措置の規定に従う
ポリ塩化
ビフェニル
(PCB)
【発生源】かつて絶縁油として使用されていた
【経   路】経気道、経皮、経口
【症   状】塩素ざ瘡、黒皮症、肝障害
【検   査】皮下脂肪の有機塩素

農薬中毒
パラコート
【農薬名】除草剤として用いられるダラモキソンetc.
【原   因】誤飲や自殺目的による服薬が多い
【機   序】皮膚粘膜直接刺激作用を有する他、光合成阻害剤で生体内で酸素分子と反応して過酸化物を生成し、発生したO-により細胞膜の脂質を変性させる
【症   状】服薬直後…激しい中枢性嘔吐口腔内のびらん・潰瘍食道穿孔
2〜3日後…肝・腎障害(乏尿、蛋白尿、血尿、黄疸)
3〜14日後…呼吸器症状(肺水腫→肺線維症(間質性肺炎)→呼吸不全)      ※瞳孔異常は起こさない
【検   査】尿中パラコート定性反応(+)、A-aDO2↓、PaO2
【治   療】胃洗浄・腸洗浄、強制利尿(補液+利尿薬投与)血液透析・血液灌流、薬剤投与(ステロイド、ビタミンC・E)、PEEPによる呼吸管理etc.      ※O2投与は禁忌
【予   後】毒性が強く、予後はきわめて不良(致命率は60〜90%)。死因は主に肺線維症
有機リン
【農薬名】殺虫剤として用いられるパラチオン、ダイアノジン、DDVP etc.
【機   序】肝で酸化され毒性の強い代謝物となり、ChE活性を抑制し、AChのムスカリン様作用とニコチン様作用を起こす
【症   状】中枢神経系症状…頭痛、不安、振戦、痙攣、意識障害
ムスカリン様作用…縮瞳、徐脈、低血圧、気管支分泌物↑肺水腫、流涎、流涙、発汗
ニコチン様作用…脱力、筋線維束攣縮、呼吸筋麻痺
【検   査】血清ChE↓
【治   療】胃洗浄、アトロピンPAM投与
カーバメイト剤
【農薬名】殺虫剤・除草剤として用いられるネオバール、ランネートetc.
【機   序】ChEを阻害し、AChが蓄積する
【症   状】有機リン系よりも症状発現は早く、症状が軽い
【検   査】血清ChE↓
【治   療】アトロピン投与      ※PAMは禁忌
有機塩素剤
【農薬名】主に殺虫剤として使用されるDDT、BHC etc.
【機   序】きわめて難溶性で、脂溶性に富み、体内蓄積を起こす
【症   状】中枢神経刺激作用(痙攣、錯乱)散瞳
【検   査】皮下脂肪に有機塩素化合物
【治   療】鎮痙剤(バルビタール、ジアゼパム、クロルプロマジン)投与
抗菌剤
【農薬名】ブラストサイジンS etc.
【機   序】皮膚・結膜直接刺激
【症   状】皮膚粘膜障害、結膜炎、視力障害(角膜混濁)、肺炎
フルオロ酢酸
【農薬名】殺鼠剤のフラトールetc.
【機   序】TCA回路の阻害
【症   状】てんかん型痙攣、心室細動
【治   療】抗不整脈剤・鎮痙剤の投与
殺虫剤・
防虫剤
【症   状】蚊取り線香、電気蚊取りマット⇒哺乳類に対しては安全で、通常の量の誤食では無害
ナフタレン・樟脳(衣類の防虫に使用される)⇒小児での中毒量は0.5〜1g
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