口腔 oral cavity |
【機能】 | 消化管の出発点。歯による機械的消化と唾液腺による化学的消化が行われる。嚥下運動の第1相(口腔・咽頭相)で、舌によって食物は咽頭に押し込まれる |
|
咽頭 pharynx |
【機能】 | 嚥下運動の第2相(咽頭・食道相)で、喉頭が前上方に挙上され、食物はスムーズに食道に入っていく |
|
食道 esophagus |
【構造】 | 成人で長さは25〜30cm。生理的狭窄部が、第1狭窄部(食道入口部)、第2狭窄部(大動脈弓と左主気管支の交叉部)、第3狭窄部(横隔膜貫入部)の3ヶ所ある |
【機能】 | 嚥下運動の第3相(食道相)で、蠕動運動により食物が胃に運ばれていく。消化吸収機能はない |
【組織】 | 粘膜(重層扁平上皮)、筋層、線維膜の3層構造 |
【血行】 | 動脈系…上部食道は下甲状腺動脈(←鎖骨下動脈)、中部食道は食道動脈(←大動脈)、下部食道は左胃動脈 静脈系…上部食道は下甲状腺静脈、中部食道は奇静脈・半奇静脈、下部食道は左胃静脈 ※奇静脈・半奇静脈、左胃静脈は多くの吻合をもっており、静脈叢を形成している |
|
胃 stomach |
【構造】 | 噴門cardia…食道との境目。噴門の左側で上方に盛り上がっている部分を胃底fundus ventriculiという 胃体corpus ventriculi…大彎と小彎。小彎の下1/3における折れ曲がりの部分を胃切痕(胃角)とよぶ 幽門pylorus…十二指腸との境目 |
【機能】 | 消化機能 |
【組織】 | 粘膜…粘膜襞の表面は単層円柱上皮細胞(表層粘液細胞)で覆われる。胃体部の胃小窩には、主細胞(ペプシノーゲン、レニンを分泌)、壁細胞(塩酸、内因子を分泌)、副細胞(粘液を分泌)が存在し、胃底腺を形成している。幽門部の胃小窩にも腺組織が発達し、粘液を分泌している。また、G細胞(ガストリンを血管内に分泌)、D細胞(ソマトスタチンを血管内に分泌)、ECL細胞(ヒスタミンを分泌)もところどころにみられる 筋層…内斜、中輪、外縦の3層構造 ※幽門括約筋は中輪筋の発達したもの 漿膜…大彎側で大網に、小彎側で小網に移行する |
【血行】 | 動脈系…幽門側小彎側は右胃動脈(←総肝動脈←腹腔動脈)、幽門側大彎側は右胃大網動脈(←胃十二指腸動脈←総肝動脈←腹腔動脈)、噴門側小彎側は左胃動脈(←腹腔動脈)、噴門側大彎側は左胃大網動脈・短胃動脈(←脾動脈←腹腔動脈) 静脈系…動脈とほぼ伴走→最終的には門脈に注ぐ |
【神経】 | 副交感神経…迷走神経支配。胃の運動と分泌を促進 交感神経…下部胸髄神経(T5〜T9)支配。胃の運動と分泌を抑制 |
|
小
腸 | 十二指腸 duodenum |
【構造】 | 球部、下行脚、水平脚、上行脚よりなる 球部を除いて後腹壁に付着し、前面のみ腹膜に覆われており(腸間膜をもたず)、自由に動くことができない 下行脚のTreitz靭帯付近にはVater乳頭と副乳頭(小十二指腸乳頭)があり、総胆管・主膵管・副膵管が開口している 上行脚の最後は急激に折れ曲がり、十二指腸空腸曲とよばれる。ここから横隔膜に向かってTreitz筋が出ている |
【組織】 | - 粘膜、筋層、漿膜の3層構造
- 粘膜…単層円柱上皮細胞(吸収上皮細胞)で覆われ、絨毛と絨毛の間の陰窩には十二指腸液を分泌する十二指腸腺(Brunner腺)が存在する
|
【血行】 | 動脈系…Vater乳頭より口側は上膵十二指腸動脈(←総肝動脈←腹腔動脈)、Vater乳頭より肛門側は下膵十二指腸動脈(←上腸間膜動脈) ※膵頭部と共通の血行支配 静脈系…動脈とほぼ伴走→最終的には門脈に注ぐ |
|
空腸 jejunum |
【構造】 | 小腸の口側の約40%。腸間膜に包まれ、かなり自由に動くことができる |
【機能】 | 吸収の主役。食物はAuerbach神経叢支配の蠕動と分節運動により運搬される |
【組織】 | - 粘膜、筋層、漿膜の3層構造
- 粘膜…単層円柱上皮細胞(吸収上皮細胞)で覆われる。輪状ヒダ上には無数の絨毛があり、さらにその上には無数の微絨毛が存在する。絨毛と絨毛の間の陰窩には腸液を分泌する小腸腺(Lieberku¨hn腺)が開口する。粘膜のところどころには孤立リンパ小節が形成され、さらにこれらが20〜30個集まった集合リンパ小節(Peyer板)もところどころにみられる
|
【血行】 | 動脈系…上腸間膜動脈 静脈系…上腸間膜静脈→門脈 |
【神経】 | 交感神経…下部胸髄神経・腰髄神経支配 副交感神経…迷走神経支配 |
|
回腸 ileum |
【構造】 | 小腸の肛門側の約60%。腸間膜に包まれ、かなり自由に動くことができる |
【機能】 | 吸収の準主役。食物はAuerbach神経叢支配の蠕動と分節運動により運搬される |
【組織】 | 空腸と同様 |
【血行】 | 空腸と同様 |
【神経】 | 空腸と同様 |
|
大
腸 | 盲腸 cecum |
【構造】 | 原則として腸間膜に包まれており、移動性がある。回盲部の下方には虫垂がある |
【血行】 | 空腸と同様 |
【神経】 | 空腸と同様 |
|
結腸 colon |
【構造】 | 上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸よりなる。横行結腸とS状結腸のみが腸間膜をもち、比較的自由に動くことができる |
【機能】 | 水分・Na+の吸収 |
【組織】 | - 粘膜、筋層、漿膜の3層構造
- 筋層…内縦、中輪、外縦の3層構造。外縦筋は一部集束して結腸ヒモ(大網ヒモ、間膜ヒモ、自由ヒモ)を形成している。これら3本のヒモにより、結腸隆起(ハウストラ)が形成される
|
【血行】 | 動脈系…脾彎曲より口側は上腸間膜動脈、脾彎曲より肛門側は下腸間膜動脈 静脈系…動脈とほぼ伴走→門脈に注ぎ込む |
【神経】 | 交感神経…下部胸髄神経・腰髄神経支配 副交感神経…脾彎曲より口側は迷走神経支配、脾彎曲より肛門側は仙髄由来の神経支配 |
|
直腸 rectum |
【構造】 | 上部直腸のみが腸間膜に覆われる。中部直腸では前面のみ腹膜で覆われ、下部直腸では腹膜を欠く |
【血行】 | 動脈系…上部直腸は上直腸動脈(←下腸間膜動脈)、中部・下部直腸は中・下直腸動脈(←内腸骨動脈) 静脈系…上部直腸は上直腸静脈(→下腸間膜静脈→門脈)、中部・下部直腸は中・下直腸静脈(→内腸骨静脈→下大静脈) ※これら3本の静脈は密な吻合を作り、直腸静脈叢を形成する |
【神経】 | 交感神経…腰髄神経支配 副交感神経…仙髄由来の神経支配 |
|
肛門 anus |
【構造】 | 腸管の終末端 |
【筋肉】 |
| 筋の種類 | 排便時の動き | 作用 |
内肛門括約筋 | 平滑筋 | 弛緩 | 排便を促進 |
外肛門括約筋 | 横紋筋 |
肛門 挙筋 | 恥骨直腸筋 |
恥骨尾骨筋 | 収縮 | 腹圧を上昇させる |
腸骨尾骨筋 |
|
【動脈】 | 下腸間膜動脈→上直腸動脈→痔核動脈(3°、7°、11°) 総腸骨動脈→内腸骨動脈→中・下直腸動脈(⇒肛門括約筋・皮下組織) |
【静脈】 | 内痔静脈叢┬→上直腸静脈―→下腸間膜静脈→門脈 └→中直腸静脈┐ 外痔静脈叢―→下直腸静脈┴→内腸骨静脈→下大静脈 |
【神経】 | 歯状線より口側…S2〜4より出る骨盤神経支配(副交感神経)、痛覚なし 歯状線より肛門側…S5より出る陰部神経→会陰神経支配(脊髄神経)、痛覚あり |
|