横隔膜・腹膜・腹壁疾患
食道裂孔ヘルニア
hiatal hernia
【概念】胃の一部が食道裂孔を突き抜けて縦隔内に飛び出してしまった状態
【疫学】高齢者、妊婦、肥満者に多い
【原因】横隔膜の萎縮による食道裂孔の弛緩、腹圧の常なる上昇
【分類】滑脱型(最多)、傍食道型、混合型の3つに分類される
【症状】食道ヘルニアのみでは無症状。慢性の消化管出血に伴う貧血を呈することはある
合併症…逆流性食道炎/食道潰瘍(特に滑脱型、混合型)、瘢痕性食道狭窄、胆石、大腸憩室
   ※Saintの三徴=食道裂孔ヘルニア+胆石+大腸憩室
【検査】上部消化管造影検査⇒胃の一部が縦隔内に飛び出た所見
内視鏡検査⇒滑脱型では食道胃接合部よりも肛門側に嚢状の胃粘膜、逆流性食道炎/食道潰瘍の合併;傍食道型では噴門の脇に奇妙な開口部
【治療】腹圧を上昇させる動作の回避、減量、食後の横臥の回避、就寝時Fowler体位などの保存療法を行う。必要に応じて、薬物療法(H2受容体拮抗薬、PPI、消化管運動改善薬etc.)を行う。内科的治療が無効の場合は、食道裂孔縫縮術やNissen手術などの外科的治療を行うこともある      ※抗コリン薬は禁忌
Bochdalek孔ヘルニア
(胸腹裂孔ヘルニア)
【概念】ヘルニア内容は結腸・小腸Bochdalek孔ヘルニアの胸腹部Xp
【原因】胎児期の胸腹裂孔の閉鎖不全
【疫学】先天性横隔膜ヘルニアの約90%。大部分はヘルニア嚢をもたない仮性ヘルニアで、左側に好発
【症状】自覚症状…新生児期に強いチアノーゼを伴う呼吸困難を呈する
他覚的所見…患側胸部聴診にて呼吸音の減弱とグル音の聴取、心音の健側偏位
合併症…腸回転異常、胎児循環遺残症候群(患側肺が未成熟のため、人工呼吸により気胸をきたしやすい)
【検査】胸部Xp⇒心縦隔陰影の健側偏位、胸腔内消化管ガス像、患側横隔膜陰影の消失
【治療】原則的に緊急手術(脱出臓器の還納+ヘルニア門の閉鎖)の適応
【予後】生後早期の発症例ほど予後不良
 
Morgagni孔ヘルニア
(胸骨後ヘルニア)
【概念】胸骨後の右側に生じる真性ヘルニア(ヘルニア嚢を有する)。ヘルニア内容は大網or横行結腸で、無症状のことが多い
外傷性
横隔膜ヘルニア
【疫学】好発部位は、横隔膜弓隆部、左後半部。仮性ヘルニアが多い
【原因】外傷、炎症(横隔膜下膿瘍etc.)etc.      ※分娩時の損傷は含まれない
【症状】受傷直後から、呼吸困難、チアノーゼ、嘔吐etc.
横隔膜弛緩症
【原因】横隔膜筋層の先天的発育不全が多い。後天性のものとしては、分娩外傷・手術による横隔神経麻痺etc.横隔膜弛緩症の胸腹部Xp(横隔膜の挙上、心陰影の圧排)
【疫学】左側に多い。性差なし
【症状】呼吸障害(労作時の息切れetc.)、腸管の位置異常(胃捻転etc.)による消化管の通過障害
【検査】胸部Xp⇒患側横隔膜の挙上、横隔膜の呼吸性移動(−)
【治療】重層縫縮



 
鼠径ヘルニア
bubonocele
【概念】鼠径靱帯上方で鼠径部に脱出するヘルニア
【分類】
 外鼠径ヘルニア内鼠径ヘルニア
年齢小児に好発中年に好発
性差男児に好発男性に多い
頻度鼠径ヘルニアの大部分を占める鼠径ヘルニアの1%程度
部位内鼠径輪(外鼠径窩)より鼠径管を通って外鼠径輪から陰嚢へ出る鼠径三角(内鼠径窩)より外鼠径輪を通って陰嚢へ出る
原因先天性の腹膜鞘状突起の開存etc.腹壁の脆弱性
症状・鼠径部ヘルニア腫瘤
・立位・腹圧で増大
乳児期に嵌頓が多い
・鼠径部の半球状腫瘤
・嵌頓はまれ
診断・透光性のない還納性腫瘤
・下腹壁動静脈の外側
silk sign(ヘルニア嚢は絹のすべる感じ)
・下腹壁動静脈の内側
治療
小児
ヘルニア嚢の高位結紮を行う(Potts法、Lucas-Championnie`re法)。通常精索は転位させず、鼠径管補強も行われない
成人
鼠径管の修復・補強を行う(Bassini法、Mc Vay法)
Bassini法、Mc Vay法、Iliopubic tract法
大腿ヘルニア
【概念】大腿管を通って、鼠径靱帯か大腿三角部に出てくるヘルニア。ヘルニア内容は小腸・大網などが多い
【疫学】中年以降の女性(経産婦)に多い。鼠径ヘルニアに比べてまれ。80%が片側性で、右側に好発
【症状】腫瘤触知(鼠径靱帯の下、大腿動静脈の内側
合併症…嵌頓を起こしやすく、腸管壊死をきたしやすい
【治療】診断後速やかに根治手術(鼠径法、Mc Vay法)
臍帯ヘルニア
【原因】胎生期の臍周辺の腹壁の発育異常、生理的ヘルニアの還納障害臍帯ヘルニア
【症状】臍部の腫瘤(羊膜と腹膜でできたヘルニア嚢を有する)
合併症…心奇形、横隔膜ヘルニア、鎖肛、食道閉鎖etc.
【治療】内科的治療…感染防止(イソジン液、3色素などの塗布)
外科的治療…4〜5cm以下なら一期的閉鎖。4〜5cm以上なら二期的閉鎖(Gross法、Ladd法)

 
腹壁破裂
【原因】腹壁欠損腹壁破裂
【症状】傍臍部の腸管の体外露出(ヘルニア嚢はない)、臍帯は正常
合併症…腸回転異常、体温下降etc.
【治療】
臍帯ヘルニアと同様
 
 
 
臍ヘルニア
【概念】いわゆる"出ベソ"臍ヘルニア
【疫学】臍帯脱落後2〜3週間に好発。成人に起こることもある
【原因】臍部の腹壁の抵抗性の減弱
【症状】臍輪部の腫瘤(皮膚と腹壁がヘルニア嚢となる)、小児では嵌頓はまれ
【予後】小児の場合は、自然治癒傾向が強い(生後6ヶ月以内に90%が治癒)
【治療】
嵌頓を起こした場合or2歳以降でもヘルニア門の縮小傾向がない場合、ヘルニア嚢切除+ヘルニア門閉鎖

腹壁ヘルニア
 疫学位置症状治療

ヘルニア
小児、中年以降の女性に好発臍部嵌頓はまれ小児では自然治癒傾向が強いが、成人では原則手術
側腹壁
ヘルニア
 腹直筋鞘の外縁の近くで、下腹壁動静脈の上方に位置  
閉鎖孔
ヘルニア
高齢女性に好発大腿内側で大腿窩の内下方に位置大部分が嵌頓状態。半数に閉鎖神経圧迫症状あり 
内鼠径
ヘルニア
腹壁抵抗の減弱した高齢男性に好発腹直筋縁に沿い、下腹壁動静脈の内方に位置しばしば両側性腹壁の補強が主体。腹横筋・筋膜をCooper靭帯に縫縮するMcVay法や、腹横筋膜を鼠径靱帯に縫縮するBassini法etc.
外鼠径
ヘルニア
乳幼児期に好発。男児に多い鼠径部から陰嚢内に伸びる精索の肥厚 
大腿
ヘルニア
広骨盤で組織の抵抗が弱い中年以降の経産婦に好発大腿動静脈の内側に位置する大腿管を通じて脱出。鼠径靱帯直下に位置通常片側性で、ヘルニア門が狭いので嵌頓しやすく、腸壁壊死を来しやすい手術のみで、ヘルニア嚢の処理と後壁の補強の2つからなる。後壁の補強としてよく使われるのは、上記のBassini法とMcVay法の2つである
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