血圧異常
高血圧
hypertension
【定義】複数回測定された血圧で、収縮期圧≧140mmHg or 拡張期圧≧90mmHg
※正常血圧は、収縮期血圧<130mmHg、拡張期血圧<85mmHg
【分類】
二次性高血圧
概念高血圧の原因疾患が明らかになっているもの
原因
疾患
腎性…腎実質性高血圧(最多)、腎血管性高血圧、Liddle症候群etc.
内分泌性…Cushing症候群、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、甲状腺機能亢進症、末端肥大症etc.
心血管性…大動脈解離、大動脈炎症候群、大動脈縮窄症、AR etc.
薬剤性…甘草(グリチルリチン)、経口避妊薬、
特徴甲状腺機能亢進症、AR⇒収縮期血圧のみ↑(脈圧↑)
大動脈縮窄症、大動脈解離⇒上肢での血圧>下肢での血圧
大動脈解離、大動脈炎症候群⇒四肢で測定した血圧が不一致
本態性高血圧
概念二次性高血圧以外のすべて。高血圧の95%以上を占める
原因遺伝的要因(30〜70%)+環境要因(食塩の過剰摂取、肥満、アルコールの多飲etc.)
【症状】
高血圧のみでは無症状。高血圧の持続により、脳・心・腎などの臓器障害が起こる
高血圧緊急症…血圧の急激な上昇により、脳・心・腎などに急速に障害を引き起こし、生命に危険をもたらす状態
【治療】
治療法の種類
ライフスタイルの改善…食塩制限、減量、適切なカロリー制限、運動療法、アルコール摂取の適量化、禁煙etc.
薬物療法…サイアザイド系利尿薬、β-blocker、α-blocker、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、中枢系降圧薬etc.
治療法の選択
・正常高値(130〜139/85〜89mmHg)のグループ⇒ライフスタイルの改善を指導
・軽症(140〜159/90〜99mmHg)のグループ⇒まずライフスタイルの改善。1年間で効果がなければ薬物療法
・比較的重症(160/100mmHg以上)のグループ⇒直ちに薬物療法を開始
・DM合併時⇒正常高値であっても直ちに薬物療法を開始。ACE阻害薬Ca拮抗薬、α-blockerが第1選択
・高齢者⇒早めに薬物療法を開始し、ゆっくり降圧する。血圧の動揺が大きく、白衣高血圧が多いのも高齢者の特色
・妊婦⇒α-メチルドパが第1選択だが、Ca拮抗薬やβ-blockerが用いられることもある
・強皮症腎クリーゼ(高血圧緊急症の1つ)⇒ACE阻害薬
・腎不全時⇒ACE阻害薬、Ca拮抗薬、ループ利尿薬は使用可能
降圧目標
原則として140/90mmHg未満。DM合併時は130/85mmHg未満(特に重視されるのは収縮期血圧)
・脳出血⇒発症後の平均血圧の20%以内の降圧にとどめる
・高血圧緊急症⇒最初の2時間以内で25%以上の降圧は行わず、次の数時間で160/100mmHg程度にもっていく
低血圧
hypotension
【分類】
二次性低血圧
原因疾患…下痢、嘔吐、利尿薬の過剰投与、Addison病、Shy-Drager症候群、家族性アミロイドポリニューロパチー、糖尿病性ニューロパチーetc.
起立性調節障害(OD)
概念…起立することによって立ちくらみやめまいをきたす自律神経失調の一種
疫学…小学校高学年から中学校の児童に好発
原因…圧受容体の機能不全
症状…起立時の立ちくらみ・めまい、悪心、起床困難、不登校、食欲不振、頭痛、易疲労感etc.
検査…起立負荷試験(⇒収縮期血圧↓、脈拍数↑、ECG変化)
治療…身体の鍛錬、規則正しい生活(早寝etc.)、弾性ストッキング・腹帯の着用、適度な運動、昇圧薬(アマジニウムetc.)、自律神経調整薬(トフィソパム・γオリザノールetc.)

降圧薬
 作用使用法禁忌・副作用etc.
サイアザイド系
利尿薬
遠位尿細管初区域のNa-Cl共輸送系の阻害高血圧に対する第1選択薬
副作用…低K血症、高尿酸血症高血糖、高脂血症、血栓症・塞栓症etc.
禁忌…急性腎不全時、高Ca血症、妊婦
β-blocker心臓のβ1受容体遮断(⇒心拍出量↓)、傍糸球体細胞のβ1受容体遮断(⇒レニン分泌↓⇒全血管抵抗↓)高血圧に対する第1選択薬
副作用…不眠、倦怠感、抑うつetc.
      (⇒高齢者には使いにくい)
禁忌…急性心不全、気管支喘息、閉塞性動脈疾患
危険…冠攣縮性狭心症、徐脈性不整脈
要注意…DM(低血糖をマスク)、高脂血症(TG分解)
α-blockerα1受容体遮断(⇒血管拡張)、高脂血症・インスリン抵抗性の改善作用β-blockerが使用できない症例に有効副作用…起立性低血圧によるめまい、動悸、失神etc.
Ca拮抗薬
(主にジヒドロ
ピリジン系)
動脈の血管平滑筋弛緩作用わが国で最もよく用いられている副作用…血管拡張に伴う頭痛、グループフルーツ摂取による著明な低血圧、まれに肝機能障害
ACE阻害薬アンギオテンシンUの合成阻害(⇒血管拡張)、心臓のリモデリング抑制作用慢性心不全、DM腎症に対する第1選択薬
副作用…空咳、催奇形性etc.
禁忌…後負荷の解除が不都合な病態(大動脈縮窄症、HOCM、心タンポナーデetc.)、腎機能低下、妊婦





α-メチルドパ中枢のα2受容体刺激(⇒血圧↓)妊娠中の降圧薬として広く使われてきたが、近年は使用頻度が減少している
副作用…眠気、倦怠感、抑うつ、免疫性溶血性貧血、肝機能悪化
禁忌…急性肝炎、慢性肝炎
クロニジン使用頻度は減少してきている副作用…眠気、倦怠感、幻覚、突然の休薬によるリバウンド現象(血圧の急上昇)
トリメタファン自律神経節遮断(⇒主に末梢動脈を拡張)緊急に降圧が必要な場合に点滴静注 
ヒドララジン血管平滑筋細胞を弛緩(主に動脈を拡張)腎機能低下時に用いられていたが、近年はほとんど使われない副作用…反射性の頻脈、虚血性心疾患、急性心不全、薬剤誘発性ループスetc.
グアネチジン末梢の交感神経終末でのノルアドレナリンの貯蔵枯渇近年はほとんど用いられない副作用…過度の降圧
レセルピン副作用…抑うつ
動脈疾患
大動脈瘤
aortic aneurysm
【概念】大動脈が限局性に50%以上拡張した状態
【分類】
 概念形態
真性大動脈瘤内膜・中膜・外膜の3層構造を保ったまま拡張したもの多くは紡錘状
仮性大動脈瘤大動脈壁が破れ、周囲に流出した血液が血腫を作り、これを結合組織や周辺臓器が覆いかぶさるようにしてできあがったものほとんどが嚢状
解離性大動脈瘤内膜に亀裂が生じ、壁内に流入した血液によって中膜が広範囲に2層に解離したもの 
【原因】粥状硬化…大動脈瘤の大半を占め、中高年の男性、腹部大動脈に好発
   ※腹部大動脈瘤の90%以上は、腎動脈分岐部以下の腹部大動脈に発生する
炎症…感染性心内膜炎の続発症、不適切な心カテ操作、梅毒、大動脈炎症候群、血管Behcet病などが原因
Marfan症候群…上行大動脈瘤or大動脈解離に、大動脈弁輪拡張(annulo-aortic ectasia)によるARを合併
外傷(非穿通性外傷)…交通事故、墜落事故などが原因。病理学的には仮性大動脈瘤となる
【症状】
破裂前…原則として無症状だが、腹部大動脈瘤では無痛性の拍動性腫瘤の触知を自覚することもある。その他、圧迫症状として、胸部大動脈瘤の場合は上大静脈症候群・嗄声・呼吸困難・嚥下困難、腹部大動脈瘤の場合は腹痛・腰痛などが生じることがある
破裂後…激しい疼痛、出血性ショックなどをきたし、予後不良
【検査】超音波検査、動脈造影
【治療】外科手術(瘤切除+人工血管置換術)…適応は圧迫症状出現時、直径≧6cm(腹部の場合)、直径≧5cm(胸部の場合)etc.      ※胸部下行大動脈手術の合併症として、前脊髄動脈症候群が重要
大動脈解離
dissection of
the aorta
【概念】大動脈の内膜に亀裂が生じ、壁内に流入した血液によって中膜が広範囲に2層に解離した状態。動脈瘤を形成するとは限らないので、解離性大動脈瘤より大動脈解離という名称の方が好まれる
【病態】Marfan症候群HTなどの基礎疾患⇒中膜の嚢胞性壊死⇒内膜の亀裂⇒entry、偽腔、reentryの形成
【分類】
DeBakey分類
T型entryが上行大動脈にあり、解離が腹部大動脈にまで及ぶ
U型entryが上行大動脈にあり、解離が上行大動脈に限局
Va型entryが下行大動脈にあり、解離が胸部大動脈に限局
Vb型entryが下行大動脈にあり、解離が腹部大動脈にまで及ぶ
Stanford分類
A型上行大動脈に解離がある
   (⇒できる限り早期に人工血管置換術を行う)
B型上行大動脈に解離がない
   (⇒とりあえず保存的治療を行う)
大動脈解離の分類
【症状】
突然の激しい疼痛(胸痛、背痛etc.)、顔面蒼白、血圧↑(大量出血時、心タンポナーデ合併時には↓)etc.
解離が心嚢内や大動脈起始部に及んだ場合⇒心タンポナーデAR、ARによる急性左心不全症状
血管分岐部を圧迫した場合⇒Valsalva洞の圧迫症状(急性心筋梗塞)、鎖骨下動脈の圧迫症状(上肢の血圧の左右差、典型的には右上肢の脈拍欠損)、総頸動脈の圧迫症状(意識障害、片麻痺etc.)、肋間動脈の圧迫症状(Horner症候群、嗄声、上大静脈症候群、前脊髄動脈症候群etc.)、腸間膜動脈の圧迫症状(腹痛、麻痺性イレウスetc.)、腎動脈の圧迫症状(腎血管性高血圧)、総腸骨動脈の圧迫症状(下肢の血圧低下、しびれ、冷感、疼痛etc.)
【聴診】血管雑音(−)、時にHTによる収縮期雑音、時にARによる心雑音
【検査】血液検査⇒WBC↑、ESR↑、CRP↑、心筋逸脱酵素→
胸部Xp⇒上部縦隔陰影の著明な拡大
心エコー⇒A型であればintimal flap、時に心タンポナーデ
胸腹部CT⇒大動脈の拡張、造影にて偽腔やintimal flapが分かる
大動脈造影…術前検査として行われる
ECG⇒特異的な所見なし。心筋梗塞との鑑別に重要
【治療】
初期治療…モルヒネによる除痛、速やかな降圧(トリメタファン、Ca拮抗薬、硝酸薬etc.)、β-blockerの投与
手術療法(人工血管置換術)…A型は緊急手術の適応。B型に対してはまず保存的治療が行われるが、血管狭窄症状を呈するケース、疼痛が持続するケース、大動脈瘤の直径≧5cmのケースなどでは手術適応となる
   ※ARを伴うものではBentall手術
大動脈炎症候群
(高安動脈炎)
aortitis syndrome
【概念】大動脈とその気管分岐動脈に非特異的炎症が起こり、その結果生じた血管内腔の狭窄に基づく一連の症状を呈する疾患。肺動脈にも狭窄が起こるが、臨床症状を呈することはほとんどない
【疫学】若年女性に好発。東洋人に多い
【症状】
血管狭窄症状…腕頭動脈・鎖骨下動脈の狭窄症状(脈なし病1)、総頸動脈の狭窄症状(めまい、頭痛、頸動脈洞の被刺激性亢進2、網膜の虚血etc.)、下行大動脈の狭窄症状(異型大動脈縮窄症3、続発性アルドステロン症etc.)、腎動脈の狭窄症状(腎血管性高血圧)、大動脈起始部の狭窄症状(心筋梗塞、AR etc.)
   ※1 脈なし病…橈骨動脈の拍動が触知できない。上肢のしびれ・冷感などを呈する
   ※2 頸動脈洞の被刺激性亢進…首を上に向けたり、頸動脈洞を圧迫したりすると、失神しやすくなる
   ※3 異型大動脈縮窄症…大動脈縮窄症と同様の所見(上肢の血圧>下肢の血圧)を呈する病態
その他の症状…動脈瘤、全身症状(発熱、倦怠感、易疲労感etc.)
【聴診】血管雑音(+)
【検査】血液検査⇒ESR↑、CRP↑、γ-グロブリン↑、時に抗大動脈抗体(+)
胸部Xp⇒大動脈の石灰化、AR合併時には心陰影の拡大
大動脈造影⇒大動脈やその分岐血管の狭窄像、不整像      ※活動期における大動脈造影は禁忌
眼底検査⇒軟性白斑、花冠状吻合(動静脈吻合)、網膜剥離etc.
【治療】活動期のステロイド投与が中心。その他、必要に応じて降圧療法、抗血小板療法(アスピリンetc.)、経皮的血管形成術などを行う
急性動脈閉塞症
acute arterial
occlusion
【概念】突然四肢の主幹動脈が閉塞した状態で、一刻を争う緊急疾患である
【原因】塞栓症…ほとんどが心原性で、Af・MS・左房粘液腫・IE・人工弁置換後などの基礎疾患をもつ場合が多い
血栓症…動脈硬化に、脱水・低血圧・多血症などの血栓誘発因子が加わることによって発症する場合が多い
【症状】5つのP(疼痛、脈拍消失、蒼白、知覚異常、運動麻痺)が突然出現
阻血状態が長期化すると、溢血斑・水疱の形成、皮膚・筋肉の壊死、筋拘縮などを呈する
【治療】
発症後6〜8時間のgolden time内で、筋肉の壊死がない場合⇒ヘパリン静注(二次血栓形成を予防)+塞栓・血栓摘除術(Fogartyカテーテルを使用)。さらに、血栓症の場合には必要に応じてバイパス術を追加
筋肉の壊死がある場合or golden time以降⇒患肢の切断が必要(筋腎障害性代謝異常症候群予防のため)
※筋腎障害性代謝異常症候群(MNMS)…多量の筋肉が壊死した場合には、ミオグロビン・CK・LDH・GOT・K+・乳酸などが患肢に蓄積する。その後、血行が再開すると、高ミオグロビン血症・高K血症・乳酸アシドーシスを生じ、一挙に急性腎不全や心停止を引き起こす
慢性動脈閉塞症
chronic arterial
occlusion
【分類】
 閉塞性動脈硬化症(ASO)閉塞性血栓性血管炎(TAO;Buerger病)
概念四肢の主幹動脈(特に膝から上の下肢の太い動脈)に粥状硬化が生じ、その内腔が徐々に狭窄or閉塞するために、末梢組織の虚血症状を呈する疾患原因不明に、四肢遠位部の小動脈に肉芽腫性の炎症が生じ、その内腔が血栓によって閉塞するために、末梢組織の虚血症状を呈する疾患伴走する静脈にも同様の病変を伴う
疫学50歳以上の男性に好発(中でも動脈硬化性疾患を合併している場合が多い)20〜40歳の喫煙男性に好発
症状5つのP(疼痛、脈拍消失、蒼白、知覚異常、運動麻痺)が段階的に出現
Fontaine分類により重症度分類がなされる
   T度(冷感・しびれ)      U度(間欠的跛行
   V度(安静時疼痛)       W度(潰瘍・壊死)
(上下肢の)指趾末端に難治性の潰瘍
静脈に血栓性静脈炎⇒自然に消失するが、部位を変えて再発するため、遊走性血栓性静脈炎とよばれる
検査下肢血圧測定⇒上下肢血圧比<0.9
カラーDopplerエコー⇒血流速度↓
サーモグラフィ⇒阻血部位の輻射熱低下
血管造影⇒血管の途絶像、周囲の開存血管の動脈硬化像(壁の不整)、側副血行路
TAOの血管造影(cork screw sign)血管造影⇒血管の途絶像(先細り閉塞する場合が多い)、樹根状〜クモ足状の細い側副血行路、cork screw sign
これらの所見は前腕or下腿に限局し  
てみられ、肘や膝を超えることはない!!
治療病変が限局している場合⇒バルーンカテーテルを用いた経皮的血管形成術(PTA)
病変が広範囲に及んでいる場合⇒バイパス手術(人工血管や自家静脈グラフトを使用)
一般療法…禁煙指導、患肢の保温、清潔保持
薬物療法…PG製剤・抗血小板薬を使用
手術療法…腰部交感神経切除術
病変が小血管にあるため、PTAや   
バイパス手術を行うことができない!!
Leriche症候群…腹部大動脈末端部に限局したASO。両側腸骨動脈の閉塞による末梢組織の虚血症状として、下肢の脈拍欠損・蒼白、間欠的跛行、インポテンツなどをきたす
静脈疾患
静脈血栓症
venous thrombosis
血栓性静脈炎
thrombophlebitis
【概念】静脈血栓症=静脈内に血栓を生じ、その結果として炎症を起こした病態
血栓性静脈炎=静脈内に炎症を起こし、その結果として血栓を生じた病態      ※臨床上は鑑別不可能
【分類】表在性血栓性静脈炎…表在静脈に起こった場合
深部静脈血栓症(DVT)…深部静脈に起こった場合
【原因】血流のうっ滞…長期臥床、手術後、産褥期etc.
血管内皮の損傷…カテーテル留置、頻回の静脈注射etc.
血液凝固性の亢進…脱水、熱傷、ショック、多血症、抗リン脂質抗体陽性etc.
その他…閉塞性血栓性血管炎(TAO)に伴う遊走性血栓性静脈炎etc.
【疫学】下腿血栓性静脈炎は、表在型が多く、肺塞栓を起こすことは少ない
【症状】
表在性血栓性静脈炎⇒直線状の発赤、浮腫、虚脱しない皮下の有痛性の硬い索状物
深部静脈血栓症⇒患肢の浮腫性腫脹・緊満痛、表在静脈の怒張が突然出現。その他、有痛性白股症1、有痛性青股症2、Homans徴候(足関節背屈時に起こる腓腹筋の運動痛)、Lowenberg徴候(加圧により起こる腓腹筋の圧痛)を伴う他、慢性化すると、患肢の常時腫脹・倦怠感・運動制限、静脈瘤、潰瘍、肺塞栓症などもみられる
1 有痛性白股症…表在静脈の怒張+二次性の細動脈痙攣により、皮膚は蒼白となる
2 有痛性青股症…表在静脈の血行閉塞により、うっ血のためにチアノーゼをきたす。さらに進行すると、患肢は壊死する
【検査】静脈造影⇒閉塞した静脈陰影+拡張した側副血行路、静脈圧測定による重症度判定
カラーDopplerエコー⇒血行動態を把握できる
【治療】
表在性血栓性静脈炎⇒自然軽快するため、患部の冷却で十分。疼痛が強い場合にはNSAIDsの投与
深部静脈血栓症⇒急性期には安静、下肢挙上、弾性ストッキングの着用、血栓溶解薬(ウロキナーゼetc.)・抗凝固薬(ヘパリンetc.)の投与など。慢性期には臥床時の下肢挙上、立位での弾性ストッキングの着用を行う。ただし、有痛性青股症に対しては、早期にカテーテルを用いて血栓摘除術が必要
静脈瘤
varicosity
【概念】静脈弁の機能不全のため重力によって静脈血が逆流・停滞し、表在静脈が部分的に拡張・蛇行した状態
【分類】一次性静脈瘤…表在静脈や穿通枝の弁機能不全に起因するもの。下肢の表在静脈に好発し、性差は立位作業の多い女性に偏っている。30〜40歳代に好発
二次性静脈瘤…深部静脈血栓症・血栓性静脈炎・外部からの圧迫などに起因するもの
【症状】立位における下肢皮下静脈の怒張・迂曲
患肢の疲労感・重圧感・疼痛・知覚異常・掻痒感、慢性化すると皮膚炎・色素沈着・湿疹・潰瘍etc.
【検査】
Trendelenburg検査
患者を仰臥させ下肢を挙上、下肢の静脈血を駆出した後、大伏在静脈の大腿静脈流入部を圧迫しそのまま起立させ、静脈怒張が起こるかどうかをみる
   ・30秒以内に静脈瘤形成⇒表在静脈と深部静脈の間を結ぶ穿通枝の弁異常
   ・圧迫解除後に静脈瘤形成⇒表在静脈の弁異常(=saphenoid type)
Perthes検査
立位で静脈瘤を膨らませたまま、大伏在静脈の大腿静脈への流入部よりやや末梢部を緊縛し、膝関節の屈伸運動を行わせた際の、静脈瘤の大きさの変化をみる
   ・静脈瘤が拡大⇒深部静脈の弁不全or閉塞
   ・静脈瘤が消失⇒深部静脈が開存しており、穿通枝の弁も正常
【治療】
一般療法…長時間の立位の回避、臥床中の下肢挙上、弾性ストッキングの着用、清潔保持
大小の伏在静脈が侵されるタイプ(saphenoid type)では、ストリッピング手術(伏在静脈を高位結紮した上で、完全に抜去)、硬化療法(伏在静脈を高位結紮した上で、硬化薬を注入)などの治療法も行われる
上大静脈症候群
superior vena
caval syndrome
【概念】上大静脈の狭窄or閉塞により、頭部・頸部・上肢からの静脈還流が障害される病態
【原因】肺癌(最多)、悪性リンパ腫、悪性縦隔腫瘍、良性縦隔腫瘍、静脈炎・血栓症、慢性線維性縦隔炎、縦隔気腫、収縮性心内膜炎、サルコイドーシス、鎖骨骨髄縁、Behcet病、自然気胸、大動脈瘤etc.
【症状】顔面・頸部・上肢の腫脹・浮腫、うっ血、側副血行路(奇静脈が重要)の発達、チアノーゼが主症状。その他には、頭重感、めまい、頭痛、意識障害、眼球突出、視力障害、脳脊髄圧↑、呼吸困難、cough syncope(咳に伴う失神)etc.
【検査】静脈圧測定、静脈造影
【治療】外科治療による原疾患の除去+静脈再建術(バイパスを作製)
リンパ管疾患
急性リンパ管炎
acute lymphangitis
【原因】四肢末梢の創傷・化膿創
【症状】細菌侵入部付近の皮膚の発赤・腫脹・疼痛、発熱、悪寒etc.
リンパ浮腫
lymphedema
【概念】蛋白を豊富に含んだリンパが組織間に恒常的に貯留している状態
【分類】原発性リンパ浮腫…原因不明であり、女性の下肢に好発する
続発性リンパ浮腫…悪性腫瘍手術後、悪性腫瘍のリンパ節転移などによって起こる
【症状】
患肢の腫脹(四肢末端に初発→徐々に中枢側に進展)・重量感、皮膚の肥厚・硬結・蒼白化
   ※皮膚に圧痕は残らず、一般に運動制限・疼痛・色の変化・うっ血・潰瘍などは認めない
進行すると、腫脹と皮膚のくびれをきたし、茶色みがかって象皮症の状態となる
合併症…感染(蜂窩織炎)、脈管肉腫(乳癌根治手術後に上肢に発生するStewart-Treves症候群etc.)
【治療】保存的治療…患肢の挙上・衛生管理、マッサージ、弾性ストッキングの着用、運動療法、窮屈な衣類は避ける
手術的治療…リンパ誘導法浮腫組織切除法
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