心筋炎 myocarditis |
【概念】 | 心筋の炎症性疾患 |
【原因】 | ウイルス感染(特にB群コクサッキーウイルス。他にはHCV etc.)によるものがほとんど |
【症状】 | 上気道感染の約1週間後から、動悸、息切れ、急性心膜炎合併による胸痛、不整脈(PVC、房室ブロックetc.)などをきたす。時に急性心不全に至る |
【検査】 | 胸部Xp⇒心拡大 ECG⇒さまざまな変化がみられる(low voltage、ST-T変化、房室ブロックなどの不整脈etc.) 心エコー⇒さまざまな異常所見(壁運動の低下、心室中隔の奇異性運動etc.) 血液検査⇒CK↑、AST↑、LDH↑、ESR↑、CRP↑、WBC↑etc. |
【治療】 | 不整脈、急性心不全に対する対症療法のみ |
【予後】 | 急性期を脱すれば予後良好で、自然に軽快する。一部の症例では炎症が慢性化し、DCMの一部を構成 |
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心
筋
症 | 拡張型心筋症 dilated cardiomyopathy (DCM) |
【概念】 | 心室が広がりすぎたためにその収縮能が障害された疾患 |
【原因】 | 多くは非遺伝性で、心筋炎の慢性化が代表的な原因 |
【症状】 | 左心不全症状が初発症状で、進行すれば右心不全症状が加わる。約30%で何らかの不整脈を合併 |
【聴診】 | V音が必発、W音も高確率で聴取される |
【検査】 | 胸部Xp⇒著しい心拡大、肺野透過性↓、典型的にはXp上で蝶形陰影 心カテ⇒左室拡張末期圧↑、肺動脈楔入圧↑、駆出率↓ Mモード心エコー⇒左室内腔の拡大、心室中隔・左室後壁の運動低下 |
【予後】 | 概して不良。5生は約50%、10生は約30%。死因の第1位は心不全 |
【治療】 | 利尿薬、ACE阻害薬、ジギタリス、β-blockerなどによる対症療法が中心。その他、心臓移植が有効 |
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肥大型心筋症 hypertrophic cardiomyopathy (HCM) |
【概念】 | 心室筋が異常に肥大したために広がりにくくなった疾患 | |
【分類】 | 閉塞性肥大型心筋症(HOCM)…上部の心室中隔壁の肥厚が著明な場合。左室流出路狭窄※をきたす ※左室流出路狭窄は、心筋収縮力の増加(運動、期外収縮、ジギタリス投与etc.)、前負荷の減少(立位、Valsalva手技etc.)、後負荷の減少(ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬投与etc.)により増強する 非閉塞性肥大型心筋症(HNCM)…下部〜心尖部近くの中隔壁の肥厚が著明な場合 |
【原因】 | 約半数はAD遺伝形式の遺伝病(サルコメア病)。残りの約半数については原因不明 |
【症状】 | 学童の定期健診で発見。20〜30歳代で動悸、息切れ、胸痛、めまい、失神、狭心痛などを訴える。また、さまざまな不整脈を合併することがあり、時にWPW症候群を合併 |
【聴診】 | V音とW音が聴取され、奔馬調律となる。HOCMではさらに収縮期駆出性雑音が聴取される |
【検査】 | 心エコー⇒左室の非対称性の求心性肥大、非対称性の心室中隔肥厚(ASH) HOCMでは、収縮期の僧帽弁前尖の前方運動(SAM)、収縮中期大動脈弁半閉鎖 心カテ⇒左室拡張末期圧↑、駆出率→、左室内腔の変形HOCMでは、狭窄部位の前後での圧較差、Brockenbrough現象(代償性期外収縮時に大動脈圧↓) ECG⇒非対称性の左室肥大、ST-T異常(V5・V6でstrain pattern) 胸部Xp⇒左第4弓の突出 頸動脈波⇒HOCMでは急峻で2峰性(spike and dome pulse) |
【病理】 | 心筋細胞の肥大、変形、錯綜配列 |
【予後】 | 5生が90%以上、10生が約80%で、予後はDCMに比べてはるかに良好であるが、年間数%の確率で突然死を起こす。また、本症の一部は15〜20年の経過で拡張相に移行し、予後不良となることもある |
【治療】 | β-blocker、Ca拮抗薬(特にベラパミル)による内科的治療の他、左室流出路心筋の切開や肥厚心筋の部分切除、ペースメーカー植え込みなどの外科治療が行われることもある ※ジギタリス、利尿薬は禁忌 |
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拘束型心筋症 restructive cardiomyopathy (RCM) |
【概念】 | 心室壁が硬化したために心室の拡張障害をきたした疾患 |
【疫学】 | わが国ではまれ |
【症状】 | 心不全に基づく症状がみられる |
【検査】 | 右室圧曲線でdip and plateau |
【治療】 | 心不全の対症療法のみ |
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不整脈源性右室心筋症 arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy (ARVC) |
【概念】 | 右室自由壁の心筋細胞が脱落変性し、次々と脂肪or線維組織に置換されていく疾患(AD遺伝) |
【症状】 | 右室起源のPVC・VTを呈し、動悸、めまい、失神を訴えるが、右心不全症状を呈することはまれ |
【検査】 | ECG⇒不完全右脚ブロック、陰性T波、ε波 |
【治療】 | β-blockerやCa拮抗薬などの抗不整脈薬が中心 |
【予後】 | 薬物治療が奏効すれば予後は比較的良好。しかし、毎年2〜3%の確率で突然死を起こす |
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特定心筋症 specific cardiomyopathy |
【概念】 | 原因や関連の明らかな心筋疾患 |
【原因】 | Friedrich失調症、Duchenne型筋ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィー、ダウノルビシン中毒、脚気、ヘモクロマトーシス、アミロイドーシス、U型糖原病、甲状腺機能低下症、サルコイドーシス、RA、進行性全身性硬化症、慢性アルコール中毒etc. |
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