肺炎 pneumonia
細菌性肺炎
【分類】
基礎疾患のない健常人に起こる市中肺炎と易感染性宿主に起こる二次性肺炎(院内肺炎)
形態学的分類…大葉性肺炎と気管支肺炎
【症状】
全身症状(発熱、悪寒・戦慄etc.)、呼吸器症状(咳嗽、喀痰、胸痛、呼吸困難etc.)
他覚的所見…声音伝導↑、打診上濁音、気管支呼吸音↑、crackle聴取
【検査】
血液検査⇒WBC↑(特にNeutro.)、ESR↑、CRP↑
呼吸機能⇒重症例では%VC・FEV1.0%↓、PaO2
胸部Xp⇒浸潤陰影、気管支透亮像
抗原検査…肺炎球菌・インフルエンザ菌・レジオネラが起炎菌の場合には、胸水中・髄液中・尿中などから抗原検出が可能      ※血清抗体価は上昇するまで約1週間かかるため、早期診断には無効である
【各論】
起炎菌疫学・特徴分類治療










肺炎球菌市中肺炎の中で最多であるが、二次性肺炎も高頻度で起こす。敗血症を起こしやすい(血液培養が診断に有用)。鉄錆色の喀痰が特徴的大葉性
肺炎
PCG、第二世代セフェムが第1選択
PRSPにはカルバペネム系
黄色ブドウ球菌市中肺炎の代表的菌種(乳児に好発)であるが、MRSAはむしろ二次性肺炎の起炎菌として重要。強毒菌で、組織破壊性が強く、肺化膿症膿胸の最大の起炎菌である気管支
肺炎
MSSAにはメチシリン、第1世代セフェム
MRSAにはバンコマイシン、アルベカシン、ミノサイクリンetc.
放線菌口腔内常在菌で、誤嚥による二次性肺炎をきたしやすい。喀痰中のドルーゼが特徴的気管支
肺炎
PCG
ノカルジア二次性肺炎をきたしやすい。肺結核に類似の症状を呈するさまざまサルファ剤
ミノサイクリン















インフルエンザ桿菌鼻咽頭の常在菌で、二次性肺炎の起炎菌として重要だが、肺炎球菌に次ぐ市中肺炎の原因ともなる気管支
肺炎
第3世代セフェム
クレブシエラ
肺炎桿菌
口腔内の常在菌で、二次性肺炎の起炎菌。特に意識障害者の嚥下性肺炎の起炎菌として重要。大量飲酒やペニシリンの過剰投与は本症の誘発因子。劇症化しやすく、菌血症に至りやすい。粘稠で糸を引く痰が特徴的大葉性
肺炎
第3世代セフェム
アミノグリコシド系
緑膿菌水際に生息する弱毒菌で、二次性肺炎が多い気管支
肺炎
カルベニシリン
スルベニシリン
ピペラシリンetc.
嫌気性菌
(バクテロイデスetc.)
二次性肺炎の起炎菌だが、特に意識障害者の嚥下性肺炎の起炎菌として重要。組織破壊性が強く、しばしば肺化膿症膿胸に至る。分泌物の肥溜め様の腐敗臭が特徴的気管支
肺炎
第3世代セフェム
※アミノグリコシド系は一切無効
レジオネラ塵埃感染する細胞内寄生菌。細胞性免疫の低下している患者に市中肺炎or二次性肺炎を引き起こす。非常に進行が早く、みるみるうちに呼吸不全に陥り、致命率が高い疾患である大葉性
肺炎
マクロライド系
リファンピシン
モラキセラ口腔内常在菌で、二次性肺炎の起炎菌として頻度が高いが、市中肺炎の原因の第3位を占める気管支
肺炎
第3世代セフェム
カルバペネム
ニューキノロン
ウイルス性肺炎
【疫学】細菌性肺炎よりはるかに多い急性細気管支炎の胸部Xp(肺野透過性の亢進)
【原因】学童期以降…インフルエンザウイルスが多い
乳幼児期…パラインフルエンザウイルスの他、RSウイルスetc.
その他、日和見感染を起こすウイルスとして、麻疹ウイルス(巨細胞性肺炎)、CMV etc.
【病態】
間質性肺炎のパターンで、一般的に細菌性肺炎よりも軽症。しかし、細菌性肺炎を続発した場合には、時に致命的となる
生後6ヶ月以下の乳幼児がRSウイルスに感染した場合には、急性細気管支炎をきたす。本症は冬季にしばしば流行するもので、感冒症状に引き続いて呼気性呼吸困難を呈し、肺は過膨脹となる。治療は対症療法のみで、O2吸入やネブライザーによる加湿吸入、補液などが行われる
   ※急性細気管支炎に対して中枢性鎮咳薬、抗ヒスタミン薬は禁忌
【検査】血液検査⇒WBC→、CRP↑
喀痰検査⇒細菌・真菌等が認められない




















カンジダ肺炎
【原因】口腔内に常在するカンジダの誤嚥orカンジダ血症からの血行性播種
【特徴】易感染性宿主に内因性感染として生じる
【症状】気管支肺炎の症状
【検査】喀痰中から大量のカンジダor血清中からマンナン抗原
【治療】イミダゾール系、トリアゾール系
肺アスペル
ギローマ
【原因】肺結核後遺症として肺内に空洞を持っている患者が、塵埃などを経気道的に吸引することにより感染肺アスペルギローマの胸部Xp(空洞・透亮像を伴った菌球、浸潤陰影)
【症状】長期間無症状だが、最終的には喀血、呼吸困難を呈する
※気胸の合併は少ない
【検査】
胸部Xp⇒fungus ball
TBLB…Grocott染色にて確定診断
【治療】まずはアムホテリシンBの病巣気管支注入。これで効果がみられなければ外科的切除術



 
侵襲性
アスペルギルス
肺炎
【疫学】易感染性宿主に生じる
【症状】発熱、咳嗽、呼吸困難etc.の症状を呈し、速やかに死に至る
【検査】胸部Xp⇒間質性陰影、次第に融合
【治療】アムホテリシンBの静注。予後はきわめて不良
クリプトコッカス
肺炎
【原因】ハトの糞に汚染された土壌などの含まれた塵埃を経気道吸収することにより感染
クリプトコッカス肺炎の胸部Xp(孤立性結節影)
クリプトコッカス肺炎のGrocott染色とPAS染色(黒褐色or赤紫色の菌体)
【疫学】男性に多い
【分類】
 続発性肺クリプトコッカス症原発性クリプトコッカス症
概念易感染性宿主に起こったもの基礎疾患がないもの
頻度約80%約20%
症状気管支肺炎と同様ほとんどない
胸部Xp気管支肺炎と同様空洞形成を伴う孤立性の腫瘤状陰影
【症状】合併症…髄膜炎
【病理】肺門リンパ節腫脹がみられる。HE染色では肉芽腫形成、Grocott染色では黒褐色の菌体、PAS染色では赤紫色の菌体がみられる
【治療】イミダゾール系、トリアゾール系が主流。アムホテリシンBも使用される
【予後】
続発性の場合は、きわめて不良

 
ムコール肺炎
【原因】易感染性宿主が空気中で塵埃に付着しているムコール菌を経気道的に吸入することにより感染
【症状】気管支肺炎の症状・胸Xp所見を呈するが、みるみるうちに呼吸困難を呈する。予後はきわめて不良
ニューモ
シスチス・
カリニ肺炎
【概念】易感染性宿主(特にAIDS患者)に対して二次性肺炎を引き起こすカリニ肺炎のGrocott染色(原虫嚢子)
【症状】亜急性〜慢性の経過で発症。易疲労感・食欲低下・発熱などの不定症状で初発、次第に乾性咳呼吸困難を呈する。合併症として気胸が重要
【検査】
血液検査⇒拡散障害が中心で、比較的早期からPaO2(O2投与にて改善しない)、A-aDO2↑。ESR→、CRP→、β-Dグルカン↑、KL-6↑
胸部Xp⇒間質性パターン、(進行すると)スリガラス状
経気管支肺生検⇒黒い原虫嚢子      ※培養は現在のところ不可能
【治療】ST合剤の内服、イセチオン酸ペンタミジンの投与(超音波ネブライザーによる吸入)










マイコプラズマ
肺炎
【疫学】異型肺炎の大半を占める。市中肺炎として健常人に発症し、好発年齢は学童期
【原因】飛沫感染するが、感染力は弱く、濃厚密接な接触が必要。家族内や集団での流行がしばしばみられる
【症状】
間質性肺炎のパターンで、頑固な咳嗽(乾性咳)、発熱、比較的徐脈などを呈する
   ※多量の喀痰、胸水を認めるのはまれ
合併症…肝機能障害、溶血性貧血、Guillain-Barre´症候群、Stevens-Johnson症候群etc.
【検査】
血液検査⇒WBC→、ESR↑、CRP↑、寒冷凝集素(+)
胸部Xp⇒両側性に肺門より広がるスリガラス状の間質性陰影or気管支透亮像を伴う固質化(下肺野優位)
【治療】マクロライド系テトラサイクリン系(ミノサイクリンetc.)
クラミジア肺炎
オウム病
C. psittaci によるクラミジア肺炎。鳥類との人畜共通感染症で、鳥類の糞を介した塵埃感染が主な感染経路。症状としては、突然の高熱、頑固な咳嗽、筋肉痛、関節痛など。病変の中心は間質で、異型肺炎をきたし、血液検査ではWBCの増加はあまり認められない。胸Xpでもマイコプラズマ肺炎と同様の所見が得られる。治療には、テトラサイクリン系が第1選択
C. trachomatis による肺炎
産道感染によって新生児に肺炎を起こす。治療にはマクロライド系を用いる
C. pneumoniae による肺炎
飛沫感染により経気道感染し、クラミジア肺炎を引き起こすが、ほとんどが感冒症状のみ。治療にはテトラサイクリン系orマクロライド系
   ※嚥下性肺炎の起炎菌…嫌気性菌、グラム陰性桿菌、カンジダetc.
その他の感染性肺疾患
肺化膿症
pulmonary
suppuration
【概念】細菌感染によって肺に壊死を伴う膿瘍が形成された病態肺化膿症の胸部Xp(ニボー形成)
【原因】大半は細菌性肺炎に続発し、起炎菌としては黄色ブドウ球菌クレブシエラ・緑膿菌・嫌気性菌など、組織破壊性の強い菌でしばしばみられる。一部は菌血症に続発する
【症状】ほぼ細菌性肺炎と同じ
【検査】胸部Xp⇒病巣中心部に空洞形成、ニボー形成
【治療】抗生剤(主にセフェム系、アミノグリコシド系)投与の他、気管支鏡などを用いたドレナージ術、空洞切開術などが行われる
 


 
膿胸
pyothorax
【概念】胸腔内に膿性の胸水が貯留した病態(化膿性胸膜炎ともよばれる)膿胸の胸部Xp(大量の胸水、縦隔の偏位)
【原因】ほとんどは肺内の感染が胸膜に波及するために起こり、起炎菌としては黄色ブドウ球菌嫌気性菌などが多いが、結核も原因となりうる
【症状】ほぼ細菌性肺炎と同じ。しかし、声音伝導↓、肺胞呼吸音↓、気管支呼吸音↓で、一側胸郭の扁平化がみられることもある
   ※小児の急性膿胸では、緊張性膿気胸となることが多い
【検査】胸部Xp⇒滲出性胸水貯留(しばしば大量)
【治療】抗生剤投与+胸腔ドレナージが第1選択。慢性膿胸では肺剥皮術、気管支瘻合併時は筋肉弁充填術などが行われることもある
肺結核
pulmonary
tuberculosis
【原因】結核菌Mycobacterium tuberculosisの飛沫感染      ※肺結核の結核菌は耐性菌であることは少ない(特に若年者)
【症状】
初期変化群…下葉に好発する初感染巣+所属リンパ節腫脹のみ
初感染結核…頸部リンパ節腫脹、胸膜炎、膿胸、髄膜炎、腎結核、骨結核、副腎結核、関節結核、粟粒結核(高熱、悪寒、頭痛などを呈する)、肺門リンパ節の腫脹、管内性散布、喉頭結核etc.
既感染発病…数年〜数十年後に、後上部中心の感染巣、胸膜炎、管内性散布etc.
【検査】
胸部Xp⇒初感染巣の場合は、下肺野に好発する比較的均一の淡い陰影で、片側性の所属リンパ節腫脹、無気肺、石灰沈着などを伴う。粟粒結核の場合は、かなり進行してから粟粒陰影が認められるようになる。既感染発病の場合は、肺後上部に好発する辺縁不鮮明の不整形の陰影・空洞陰影・結節陰影・娘病巣などを呈する
血液検査⇒ほとんどの場合、WBC→(粟粒結核ではCRP↑、ESR↑、WBC↑↑)
ツ反⇒原則として陽性。ただし、感染後間もない場合、アネルギー(ウイルス感染、サルコイドーシス、悪性リンパ腫、粟粒結核、ステロイド・免疫抑制薬投与中etc.)では陰性となる
結核菌検査…塗抹標本に対してZiehl-Neelsen染色(⇒Gaffky号数を定める)、小川培地による培養検査(3週間必要)、核酸検査
胸水検査⇒滲出性、混濁、比重↑、LDH↑、細胞成分↑、線維素↑、蛋白質↑、Rivalta反応(+)、リンパ球優位の細胞増加、糖↓、ADA活性↑
粟粒結核の検査…肝生検、骨髄生検、経気管支肺生検、眼底検査(⇒脈絡膜に結節)
【治療】INH+RFP+SM(or EB)+PZAの4剤併用療法、INH+RFP+SM(or EB)の3剤併用療法、INH+RFPの2剤併用療法
非定型抗酸菌症
atypical
myobacteriosis
(AM)
【原因】非定型抗酸菌。うち70%以上がMAC(Mycobacterium avium-intracellulare
【疫学】易感染性宿主・慢性肺疾患の有病者に起こる場合がほとんど。男女比は2:1
【症状】二次性肺炎として起こる
【検査】胸部Xp⇒肺結核と同様の所見
【治療】有効な化学療法がない。外科療法を行うことがある
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送