原発性糸球体腎炎
糸球体腎炎総論
概念メサンギウム細胞と基質の増殖を伴う病態
病理学
用語
メサンギウムの増殖…1つのメサンギウム領域にメサンギウム細胞が4個以上orメサンギウム基質の広さが2倍以上
毛細血管内皮細胞の増殖…1つの毛細血管内に内皮細胞が2個以上
巣状とびまん性…標本中の糸球体のうち病変がみられるものが、80%未満の場合が前者、80%以上の場合が後者
分節性と全節性…病変が1個の糸球体の全体に存在する場合が前者、一部分に存在する場合が後者
原因
V型アレルギーが主(免疫複合体が沈着⇒障害を受けた糸球体の修復機転として細胞増殖が起こる)
抗原が抗体より多い場合⇒免疫複合体は分子量が小さく、基底膜の外側に沈着しやすい
抗体が抗原より多い場合⇒免疫複合体は分子量が大きく、メサンギウムや血管内皮細胞に沈着しやすい
一部はU型アレルギー(急速進行性糸球体腎炎の抗GBM抗体型)

原発性糸球体腎炎のまとめ
 急性糸球体腎炎
(AGN)
急速進行性糸球体腎炎(RPGN)IgA腎症膜性増殖性糸球体腎炎
(MPGN)
抗GBM
抗体型
免疫
複合型
pauci-
immune型




血   尿(全例に顕微鏡的血尿)++(全例)(約80%が持続的顕微鏡血尿)
蛋白尿(ほぼ全例、少量)(全例、時にネフローゼ症候群)±++(ネフローゼ症候群)
疫   学3〜12歳の男児に多い成人に多いわが国で最多比較的若年(5〜30歳)に多い
典型例
の特徴
先行感染の1〜3週間後血尿高血圧浮腫(主に顔面)の三徴が出現血尿・蛋白尿・貧血・乏尿・浮腫・高血圧などが急激に出現。抗GBM抗体型では血痰、喀血もみられる学童期〜青年期にchance hematuriaで発見される。上気道炎の数日後に肉眼的血尿を呈することもある検尿で指摘されるケースが多い。ステロイド抵抗性の蛋白尿+血尿を呈する
経   過急性急性慢性慢性
検   査ASO↑、ASK↑、一過性低補体血症正球性正色素性貧血貧血、血清補体価↓貧血、肺の拡散障害・拘束性障害血清IgA→〜↑、血清補体価→非選択的蛋白尿、持続的低補体血症
病      因A群β溶連菌感染後に免疫複合体が腎糸球体に沈着Goodpasture症候群AGN、IgA腎症、ループス腎炎etc.P-ANCAによる好中球の攻撃未知の抗原に対するIgAの過剰産生のために、免疫複合体が糸球体に沈着不明。一部免疫複合体の関与も認められる。診断に際しては、SLE、HCV感染症、クリオグロブリン血症、Scho¨nlein-Henoch紫斑病の除外が必要






光   顕急性糸球体腎炎のH-E染色(内皮細胞とメサンギウム細胞の増殖)・内皮細胞とメサンギウム細胞の増殖(富核)
・多核白血球の浸潤
・毛細血管内腔の狭小化
急速進行性糸球体腎炎のPAS染色(半月体形成)半月体形成(係蹄壁の外側の細胞の増殖)
・末期には糸球体硬化像
IgA腎症のPAS染色(メサンギウム細胞の増生、メサンギウム基質の増生・肥厚)・メサンギウム細胞の増生、メサンギウム基質の増生・肥厚
・線維化、小さな半月体形成
膜性増殖性糸球体腎炎のPAS染色(メサンギウム細胞の増殖と基質の増加、係蹄壁の肥厚)・メサンギウム細胞と基質の増加、係蹄の分葉構造
膜性増殖性糸球体腎炎のPAM染色(分葉形成、メサンギウム増殖、二重膜形成)・基底膜の肥厚、二重輪郭
蛍光
抗体法
・係蹄壁に沿って、IgGとC3が顆粒状に沈着・係蹄壁に沿って、IgGが線状に沈着・係蹄壁に沿って、IgGとC3が顆粒状に沈着染色されない・メサンギウム領域を中心に、IgAとC3が顆粒状に沈着・係蹄・メサンギウム領域にIgG・IgM・C3などが顆粒状に沈着
電   顕・基底膜上皮下にhump・フィブリンの半月体への沈着・メサンギウムにdeposit・基底膜上皮下or内皮下にdense deposit
治      療安静、保温、食事療法(食塩↓蛋白↓、カロリー↑)、水分量のコントロール、(浮腫に対して)ループ利尿薬、(高血圧に対して)降圧薬、ペニシリン系抗生剤etc.発症初期にカクテル療法(ステロイドパルス療法+免疫抑制薬+抗凝固薬+抗血小板薬)。その他、血漿交換も行われる
※抗線溶薬は禁忌
過度の運動の回避、NaCl制限、ACE阻害薬の他、予後不良と考えられるケースでは抗血小板薬、ステロイドの投与も行われるステロイド抵抗性であるが、カクテル療法が行われる
予      後数ヶ月で治癒することが多い(治癒率は小児で90%以上、成人で50〜80%)症状が急激に増悪し、数週間〜数ヶ月で末期腎不全に至る(最も予後不良)約70%は予後良好だが、残りの約30%は進行性で最終的に末期腎不全に至る。高血圧と蛋白尿の程度、発症年齢が予後規定因子となる比較的進行性で、10〜15年後には約半数が末期腎不全に陥る(予後不良)
 急性糸球体腎炎
(AGN)
抗GBM
抗体型
免疫
複合型
pauci-
immune型
IgA腎症膜性増殖性糸球体腎炎
(MPGN)
急速進行性糸球体腎炎(RPGN)

遺伝性糸球体腎炎
Alport症候群
【原因】糸球体基底膜の主成分であるW型コラーゲンの異常(多くはXR遺伝)⇒進行性の糸球体腎炎
【症状】顕微鏡的血尿で発見される。次第に腎機能が低下し、男性患者の多くは20〜30歳で末期腎不全に陥る
合併症…感音性難聴(約40%。10歳頃から高音部中心に起こる)、眼症状(約15%。白内障、円錐角膜etc.)
【病理】光顕⇒初期は正常。中期にはメサンギウム増殖、泡沫細胞。末期には糸球体の硬化・萎縮
電顕⇒糸球体基底膜が数層に分裂し、互いに絡み合って網目状にみえる
【治療】治療法なし
良性家族性血尿
(菲薄基底膜症候群)
【概念】家族性に血尿をきたす疾患。多くはAD遺伝形式
【症状】無症候性血尿が主症状。蛋白尿はほとんどなく、腎機能も終生正常範囲
【病理】電顕⇒糸球体基底膜のびまん性菲薄化
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