気胸 pneumothorax |
【概念】 | 肺胸膜と壁側胸膜の間に空気が入ってしまった病態 |
【分類】 | 自然気胸(特発性と続発性に分けられる)、外傷性気胸、医原性気胸に分類される ※緊張性気胸…チェックバルブ現象がみられる気胸のこと。患側胸腔は陽圧となり、縦隔の健側偏位や急性心不全を引き起こす |
【原因】 |
| 原因 | 疫学 |
特発性 自然気胸 | ほとんどがブレブの破裂 | 痩せた体型の若年男性に好発。喫煙者に特に起こりやすい |
続発性 自然気胸 | COPD、肺癌、肺結核、宮崎肺吸虫症、膠原病、月経随伴性気胸(胸膜に生じた子宮内膜症病変)、Marfan症候群、気管支断裂etc. | 中高年に好発 |
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【症状】 | 自覚症状…突然の胸痛、呼吸困難、乾性咳嗽などが起こる。静脈還流が阻害されると、心拍出量↓、頻脈、血圧↓、頸静脈怒張などもみられる 他覚的所見…チアノーゼ、声音伝導↓、打診にて鼓音、聴診にて肺胞呼吸音↓。緊張性気胸では、打診にて心濁音界の健側移動 |
【検査】 | 胸部Xp⇒肺の萎縮(末梢に向かって凸型の孤状陰影)、胸腔内空気像(肺紋理の消失)。緊張性気胸では縦隔の健側偏位 |
【治療】 | 軽度の肺の虚脱⇒安静、経過観察 中等度の肺の虚脱⇒穿刺脱気療法をまず行う。症状改善がみられなければ、持続的胸腔ドレナージ 重度の肺の虚脱⇒持続的胸腔ドレナージ(挿入位置は側胸部(中腋窩線上)の第2肋間or第3肋間) ※緊張性気胸に対する人工呼吸は禁忌 ※緊張性気胸では緊急手術(胸腔穿刺orドレナージ)が必要 |
【予後】 | しばしば再発する。再発を繰り返す例では、肺の部分切除術や縫縮術、胸膜癒着術などが行われる |
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良性胸膜中皮腫 benign mesothelioma |
【概念】 | 胸膜の中皮細胞を発生母地とする限局性の良性腫瘍 |
【症状】 | 原則として無症状。時には、胸痛、乾性咳嗽、呼吸困難などを起こすことがある。その他、肺性肥大性骨関節症や低血糖を伴うことがある |
【検査】 | 胸部Xp⇒胸壁に接した境界鮮明な腫瘤像、extrapleural sign(辺縁が明瞭でスムーズ、腫瘤の付け根がなだらかな孤を描く) |
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悪性胸膜中皮腫 malignant mesothelioma |
【概念】 | 胸膜の中皮細胞を発生母地とする悪性腫瘍 |
【原因】 | 石綿暴露と関連性が深い |
【病理】 | 大量の粘液分泌、胸膜の結節状の肥厚、胸水貯留(滲出性で、しばしば大量、ヒアルロン酸に富む) |
【症状】 | 胸痛、呼吸困難etc. 他覚的所見…大量の胸水の存在のため、肺肝境界上昇、胸膜摩擦音(−)etc. |
【検査】 | 胸部Xp⇒胸膜肥厚、大量の胸水貯留etc. 胸部CT⇒胸腔を這うように広がった腫瘍像 胸水⇒しばしば血性、滲出性(蛋白↑、LDH↑、Rivalta反応(+)etc.)、ヒアルロン酸値↑ |
【治療】 | 有効な抗癌剤がなく、治療は外科的摘出しかない |
【予後】 | 初診時に進行しているケースが多く、確定診断後の平均生存期間は数ヶ月 |
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