腎硬化症 nephrosclerosis |
【概念】 | 高血圧の持続によって腎の細動脈(小葉間動脈や輸入細動脈)に硬化性病変が生じた病態 |
【分類】 |
| 良性腎硬化症 | 悪性腎硬化症 |
概念 | 中等度以下の高血圧が持続したために、 細動脈に硬化性病変が生じた病態 | 悪性高血圧(全身の臓器障害が急速に進行する高血圧の一群)に際してみられる腎病変 |
病理 | 細動脈の内膜の線維性肥厚、硝子様物質の沈着、内腔の狭窄 | 細動脈の壊死性血管炎、血管内血栓、細動脈の平滑筋の過形成、血管内腔の著明な狭窄 |
症状・ 検査 | 腎機能は原則として正常 | 続発性アルドステロン症、蛋白尿※、時に血尿、腎機能異常、尿沈渣(⇒硝子円柱、白血球円柱、赤血球円柱etc.) ※尿蛋白は少量で、ネフローゼ症候群に至ることはない |
治療 | 適切な降圧治療 | 適切な降圧治療 |
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腎血管性高血圧 renovascular hypertension |
【概念】 | 腎動脈orその分枝の狭窄⇒腎動脈圧↓⇒続発性アルドステロン症⇒高血圧 | |
【疫学】 | 二次性高血圧の中では最多だが、高血圧全体では数%以下 |
【原因】 | - 粥状動脈硬化、大動脈炎症候群、解離性大動脈瘤、線維筋性異形成※
- ※線維筋性異形成…原因不明に、動脈壁の膠原線維・平滑筋線維が増殖し、内腔を狭窄する病態。腎動脈の遠位2/3に好発。全年齢層に生じる
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【症状】 | 高血圧(年齢に似つかわしくない場合、急速に進行した場合にはまず疑う)、上腹部の血管雑音 |
【検査】 | - 続発性アルドステロン症の所見
PRA↑、血漿アルドステロン値↑、高Na血症、低K血症、カプトプリル内服試験(⇒PRA↑↑)、腎静脈カテーテル(⇒患側ではPRA↑↑、健側ではPRA↓)
- 画像診断
- IVP(迅速連続腎盂造影)⇒患側腎の萎縮、患側腎の腎盂排泄遅延、患側の腎盂・上部尿管の刻み目模様
動脈造影(腹部大動脈造影or選択的腎動脈造影)⇒線維筋性異形成では、腎動脈の遠位2/3に数珠様所見
- レノグラム…スクリーニング検査としてしばしば利用される
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【治療】 | 経皮的血管形成術(PTA)が第1選択。他に、外科的血行再建術(PTAが奏効しないケース)、薬物療法(ACE阻害薬が第1選択) |
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腎梗塞 renal infarction |
【原因】 | 心房細動や感染性心内膜炎などの基礎疾患による塞栓症が原因として多い |
【症状】 | 突然の腹痛・腰痛、乏尿、蛋白尿、顕微鏡的血尿、高血圧(←続発性アルドステロン症) |
【検査】 | 血液検査⇒LDH↑、AST↑、ALP↑etc. |
【治療】 | 梗塞巣が小さい場合⇒保存的治療(血栓溶解薬・抗凝固薬の投与) 梗塞巣が大きい場合⇒外科的に塞栓除去術 |
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腎静脈血栓 renal vein thrombosis |
【原因】 | 小児の場合…下痢や嘔吐などの急激な脱水症状が原因 成人の場合…凝固能を亢進させる基礎疾患をもっていることが多く、その代表はネフローゼ症候群(膜性腎症etc.) |
【症状】 | 徐々に詰まっていった場合⇒側副血行路の発達により、ほとんど無症状 詰まり方が著明な場合、急激に詰まった場合⇒腎の腫脹、激しい疼痛、血尿、蛋白尿、乏尿 |
【検査】 | KUB・腹部エコー⇒患側腎の腫大 IVP⇒患側腎の造影(−) |
【治療】 | 原則として保存的治療(血栓溶解薬・抗凝固薬の投与)。血栓が大きい場合には血栓除去術を行うこともある |
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