ポルフィリン症 porphyria |
【概念】 | ポルフィリン代謝経路(ヘム合成経路)の代謝異常⇒赤芽球or肝における中間代謝物の蓄積 |
【分類】 | - 赤芽球性ポルフィリン症
- 異常が赤芽球で生じたもの。先天性赤芽球性ポルフィリン症(CEP)、赤芽球性プロトポルフィリン症(EPP)に分けられる
- 肝性ポルフィリン症
- 異常が肝で生じたもの。急性間欠性ポルフィリン症(AIP)※1、多様性ポルフィリン症(VP)、遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)、晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)※2に分けられる
- ※1 急性間欠性ポルフィリン症(AIP)…急性ポルフィリン症の中で最多。AD遺伝で、20〜40歳代の女性に好発。PBGデアミナーゼの異常が原因で、ALA・PBGの蓄積がみられる
※2 晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)…ポルフィリン症の中で最多。AD遺伝性のものと、大量飲酒による肝障害、エストロゲン治療、透析などに続発して起こるものとがある
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【症状】 | 光線過敏症…水疱、痂皮、瘢痕形成、色素沈着、多毛など。AIPとHCP以外でみられる 溶血性貧血…赤芽球性ポルフィリン症でみられる 急性神経症状…脱力、四肢麻痺、球麻痺、しびれ感、精神症状など。AIP・VP・HCPでみられる AIPの症状…腹部症状(腹痛、嘔吐、便秘etc.)、交感神経刺激症状(発汗、頻脈、高血圧、排尿困難etc.) |
【検査】 | AIPの検査⇒急性発作時には赤ブドウ酒色の尿、内分泌系の異常。非発作時にはWatson-Schwartz反応陽性(尿中PBGを検出) |
【治療】 | AIPの治療⇒発作時にはブドウ糖の投与、ヘムの投与、輸液、電解質異常の是正、抗精神病薬の投与など。非発作時には発作の誘因(バルビタールなどの薬物、直射日光etc.)の除去が重要 PCTの治療⇒瀉血療法、鉄キレート剤の投与、禁酒、遮光etc. |
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ヘモクロマトーシス hemochromatosis |
【概念】 | ヘモジデリンの過剰⇒網内系へのヘモジデリンの蓄積(ヘモジデローシス)⇒さらなる進行⇒過剰なヘモジデリンの組織への沈着(ヘモクロマトーシス) |
【分類】 | - 原発性ヘモクロマトーシス
- AR遺伝。中年の男性に好発。腸管からの鉄吸収の異常亢進がみられる
- 続発性ヘモクロマトーシス
- 鉄芽球性貧血、鉄の過剰投与(大量輸血、鉄剤の静注)による
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【症状】 | 肝硬変…緩徐進行性で、高率に肝細胞癌に移行する 皮膚色素沈着…皮膚に沈着したヘモジデリンがメラニンを巻き込み、青銅色の色素沈着がみられる 糖尿病…膵島B細胞へのヘモジデリンの沈着による。ほとんどがインスリン依存状態となる その他…心症状(心筋症、うっ血性心不全、不整脈etc.)、性腺機能障害、甲状腺機能低下症、下垂体機能障害、消化管への鉄の沈着(⇒食欲不振、体重減少etc.)etc. ※腎臓障害は認めにくい |
【検査】 | 鉄代謝…血清鉄↑↑、フェリチン↑、トランスフェリン→、UIBC↓↓、トランスフェリン飽和度↑↑、デスフェラール試験にて大量の鉄分排泄 糖尿病…血糖値↑、CPR↓ 肝の画像診断…単純CTにてびまん性の高吸収域、腹部エコーにて高エコー、MRIにてT1・T2とも低信号 |
【治療】 | 瀉血療法、デスフェラールの投与 |
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Menkes病 |
【概念】 | 銅のトランスポーター異常(XR遺伝)⇒銅の腸管からの吸収不全⇒血清銅↓、セルロプラスミン↓ ⇒銅酵素の活性↓⇒銅の利用不全 |
【症状】 | 乳児期に、毛髪異常(縮れ毛)、中枢神経症状(精神遅滞、筋力低下、痙攣etc.)、易感染傾向 |
【治療】 | 銅の経口投与 |
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Wilson病
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【概念】 | 銅のトランスポーター異常(AR遺伝)⇒銅の胆汁排泄不全⇒銅の肝での蓄積⇒肝細胞障害 ⇒末梢組織への銅の蓄積 ⇒銅のセルロプラスミンへの受け渡し不全⇒血清セルロプラスミン↓ |
【疫学】 | 小児・若年期発症が多い(ただし、6歳以下はまれ) |
【症状】 | 肝機能障害…幼児期〜小児期に発症するケースの初発症状のほとんどを占める 中枢神経症状…錐体外路症状(ジストニア、振戦、固縮etc.)、運動失調、構音障害、歩行障害、知能障害など。若年成人発症例の初発症状となる場合が多い Kayser-Fleischer角膜輪…銅の角膜Descemet膜への沈着による 腎障害(特に近位尿細管)…続発性Fanconi症候群によるアミノ酸尿や尿細管性アシドーシス その他…溶血性貧血、内分泌障害、骨粗鬆症 |
【検査】 | 血清銅↓、セルロプラスミン↓、非セルロプラスミン結合銅↑、尿中銅排泄↑ |
【治療】 | D-ペニシラミン※orトリエンチンの投与、低銅食 ※D-ペニシラミンの副作用…膜性腎症、骨髄抑制による汎血球減少、重症筋無力症etc. |
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遺伝性ムコ多糖症 hereditary mucopoly- saccharidosis (MPS) |
【概念】 | プロテオグリカンの主成分であるムコ多糖を分解するリソゾーム内の諸酵素の異常⇒ムコ多糖の組織への蓄積 |
【分類】 |
| 欠損酵素 | 蓄積する物質 | 遺伝形式 | 臨床症状 |
Hurler病 | αイドゥロニダーゼ | デルマタン硫酸 ヘパラン硫酸 | AR遺伝 | 生後数ヶ月頃から、ガーゴイリズムとよばれる特徴的な顔貌(鞍鼻、厚い口唇etc.)、角膜混濁、骨変形、関節の運動制限、肝脾腫、巨舌、水頭症、巨脳症、精神発育遅滞etc. |
Hunter病 | イドゥロン酸スルファターゼ | XR遺伝 | Hurler症候群に類似するが、軽症(角膜混濁はみられない) |
Sanfilippo病 | ヘパラン硫酸分解酵素 | ヘパラン硫酸 | AR遺伝 | 2〜3歳頃から、急激に精神発育遅滞をきたす。骨変化はあまり目立たない |
Morquio病 | N-アセチルガラクトサミン-6硫酸スルファターゼ | ケラタン硫酸 コンドロイチン硫酸 | AR遺伝 | 乳幼児期に、胸腰椎の後弯・側弯、胸骨突出、鳩胸、短胴性低身長、X脚、知能正常etc. |
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【検査】 | 尿検査⇒デルマタン硫酸↑、ヘパラン硫酸↑、ケラト硫酸↑、トルイジンブルー反応(+) 骨Xp⇒椎体の変形、後弯・側弯etc. |
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Marfan症候群 |
【原因】 | 細胞と細胞の接着に関与する細胞外マトリックスの異常(AD遺伝) |
【症状】 | 骨格系の異常…やせ型で長身の体型、長い四肢、くも状指、高口蓋、脊椎の側彎・後彎、漏斗胸、鳩胸etc. 眼科的異常…水晶体亜脱臼、強度近視etc. 心血管系異常…嚢胞性中膜壊死、大動脈解離、AR、大動脈弁輪部拡張症、僧帽弁逸脱etc. その他…自然気胸、無気肺、横隔膜ヘルニア、鼠径ヘルニア、知能正常etc. |
【治療】 | 根本的治療法はなく、対症療法中心 |
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Ehlers-Danlos 症候群 |
【原因】 | コラーゲンやフィブロネクチンなどの細胞外マトリックスの生合成過程の異常 |
【症状】 | 皮膚・関節の過伸展、毛細血管の脆弱性による出血傾向 |
【治療】 | 根本的治療法はなく、対症療法中心 |
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