Cushing症候群
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【概念】 | 慢性の糖質コルチコイド(コルチゾール)過剰症に起因する疾患の総称 |
【分類】 | - ACTH分泌亢進型
- 下垂体腺腫(Cushing病)※や異所性ACTH症候群(肺小細胞癌、膵癌、胸腺腫、甲状腺癌、気管支癌、副腎髄質癌、卵巣癌、カルチノイドetc.)による
※Cushing病における下垂体腺腫はmicroadenomaであるため、視交叉圧迫症状はみられない
- ACTH分泌抑制型
- 副腎腫瘍(副腎腺腫or副腎癌)による
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【疫学】 | 20~30歳代の女性に好発(男女比1:3)。下垂体腺腫と副腎腺腫の両者がともに約50%を占める |
【症状】 | 外観の異常(中心性肥満、満月様顔貌、顔面紅潮、buffalo hump、伸展性皮膚線条、皮膚の赤紫色化、男性化、多毛、ざ瘡の多発、皮下出血、浮腫etc.)、筋力低下、低回転型の骨粗鬆症、尿路結石(←高Ca尿症による)、耐糖能異常、易感染傾向、月経異常、高血圧、精神症状(精神的不安定、不眠、多幸、集中力低下、うつ状態etc.)etc.
※ACTH分泌亢進型では、色素沈着をきたす(異所性ACTH症候群でより著明) ※異所性ACTH症候群では、肥満ではなくむしろるいそうをきたす ※ACTH分泌亢進型および副腎癌では、副腎アンドロゲン過剰分泌に伴う男性化徴候がみられる |
【検査】 | 血液検査⇒Neutro.↑、Eosino.↓、Baso.↓、Lympho.↓、血糖値↑、Chol↑、Na↑、K↓、アルカローシス、尿中Ca↑ ホルモン検査⇒コルチゾール↑(日内変動消失)、尿中17-OHCS↑、ACTH↑or↓、尿中17-KS↑or↓(副腎腺腫・過形成で↓、癌で↑) 負荷試験…以下の負荷試験で、血中コルチゾール値、尿中17-OHCS排泄量、血中ACTH値などを測定
| デキサメサゾン負荷試験 | メチラポン試験 | ACTH負荷試験 | CRH負荷試験 |
正常 | 2mgで抑制(+) | 増加 | 増加 | 増加 |
Cushing病 | 2mgでは抑制(-) 8mgで抑制(+) | 大量投与で増加 | 過剰に反応 | 過剰に反応 |
異所性ACTH症候群 | 8mgでも抑制(-) | 大量投与 でも不変 | さまざま | 無反応 |
副腎腫瘍 | 無反応 |
※デキサメサゾン負荷試験=ACTH抑制試験、メチラポン(メトピロン)試験=ACTH刺激試験
画像診断…腹部CT・MRI、副腎皮質シンチ(131I-アドステロール)、下垂体CT・MRI
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【治療】 | 下垂体腺腫⇒Hardy法、薬物療法(ブロモクリプチン、オクトレオチドetc.) 異所性ACTH症候群⇒腫瘍摘出or化学療法 副腎腫瘍⇒腫瘍側の副腎摘出。摘出後は、副腎皮質ホルモンの補充が一定期間必要※体型は治療により回復する ※Nelson症候群…Cushing症候群での副腎摘出後の合併症の1つ。術前から存在していた下垂体腫瘍が術後に急速に腫大し、色素沈着・第Ⅲ脳神経損傷・トルコ鞍部拡大をきたす |
【予後】 | 不良。抑うつに伴う自殺が死因として少なくない |
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アルドステロン症 aldosteronism |
【概念】 | アルドステロンの分泌が異常に亢進した病態の総称 |
【分類】 | - 原発性アルドステロン症(Conn症候群)
- 副腎原発の病変によるもので、20~30歳代の女性に好発する。うち約87%が一側性の腺腫(狭義の原発性アルドステロン症)、約13%が両側性の過形成(特発性アルドステロン症)、他には頻度は少ないが副腎癌、糖質コルチコイド反応性アルドステロン症が原因となることもある
- 続発性アルドステロン症
- 大半はRA系の亢進に起因する。原因疾患としては、うっ血性心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群、Bartter症候群、特発性浮腫、下痢、利尿薬の乱用、腎動脈狭窄症、悪性高血圧、褐色細胞腫、甲状腺機能亢進症、レニン産生腫瘍、エストロゲン製剤の連用など。まれなものとして、偽性低アルドステロン症Ⅰ型※etc.
※偽性低アルドステロン症Ⅰ型…アミロライド感受性Naチャネル異常が原因。症状はアルドステロン不足様の症状だが、アルドステロン分泌は亢進している
- 偽性高アルドステロン症
- 原発性アルドステロン症同様、高血圧、低K血症、血漿レニン活性低下を示すが、アルドステロン分泌は低下しているという病態。原疾患には、Liddle症候群、漢方薬(甘草)やグリチルリチン製剤の内服etc.
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【症状】 | 高血圧(比較的軽度)、低K血症による症状(多尿、易疲労感、筋力低下、周期性四肢麻痺、耐糖能↓etc.)、代謝性アルカローシスによるイオン化Caの不足に基づくテタニーなどが起こる |
【検査】 | 電解質…尿中K↑、血清K↓、耐糖能↓、代謝性アルカローシス、血清Na↑(軽度) ホルモン…尿中アルドステロン↑、血漿レニン活性↓or↑、尿中17-OHCS→、血漿ACTH→ 負荷試験(原発性の場合)…立位フロセミド試験(レニン分泌刺激試験)、カプトプリル負荷試験(アルドステロン分泌抑制試験)にて無反応 画像診断(原発性の場合)…腹部CT、副腎皮質シンチ(131I-アドステロール)、副腎静脈造影 心電図⇒低K血症によるU波 |
【治療】 | 副腎腺腫⇒患側副腎摘出術 副腎過形成⇒スピロノラクトンによる内科的治療がfirst choice。抵抗性の場合は、副腎亜全摘術etc. 続発性⇒基礎疾患の治療の他、対症療法としてスピロノラクトンの投与 |
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副腎皮質機能低下症 |
【概念】 | 副腎皮質ホルモンが不足した病態 |
【分類】 | - 慢性原発性副腎皮質機能低下症(Addison病)
- 慢性の経過で副腎皮質が侵されたために、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、副腎アンドロゲンが不足した病態。結核が本症の基礎疾患として知られており、多くの例で副腎結核の存在を示唆する両側副腎の石灰化が認められる。自己免疫学的機序の関連が示唆されており、他の自己免疫疾患(橋本病※etc.)の合併がみられる ※Schmidt症候群=橋本病+Addison病
- 慢性続発性副腎皮質機能低下症
- CRH or ACTHの分泌が低下したために、副腎皮質ホルモンの分泌が低下した病態で、視床下部or下垂体前葉の病変、ステロイド剤の長期投与などが原因となる。副腎皮質は廃用性萎縮をきたしている
- 急性原発性副腎皮質機能低下症(副腎クリーゼ)
- 急激に副腎皮質の機能が損なわれた病態。原因としては、両側の副腎出血、長期のステロイド剤投与後の突然の中断など。症状は、一般的な副腎皮質機能低下症状の他、ショック、発熱、脱水、乏尿etc.
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【症状】 | 糖質コルチコイド不足⇒体重↓、食欲不振、易疲労感、精神症状(無気力etc.)、低血糖、水中毒、筋力↓ 鉱質コルチコイド不足⇒低血圧、悪心・嘔吐、意識レベル↓、下痢 副腎アンドロゲン不足⇒女性では恥毛・腋毛の脱落、月経不順、早期閉経※原発性では、ACTH過剰による口腔粘膜・皮膚への色素沈着 |
【検査】 | 血液⇒WBC↓、Lympho.↑、Eosino.↑、貧血、Na↓、K↑、アシドーシス、副腎クリーゼではCa↑ ホルモン⇒血中コルチゾール・アルドステロン・DHEA↓、尿中17-OHCS・17-KS↓、PRA↑、ACTH↑↑or↓ 負荷試験…ACTH負荷試験(⇒原発性では無反応、続発性では連続負荷で反応)、CRH負荷試験 画像診断…腹部CT(⇒原発性のうち、結核性では両側副腎の石灰化・腫大、特発性では副腎の萎縮)、下垂体CT |
【治療】 | 副腎皮質ホルモンの補充療法(ヒドロコルチゾンなどを使用)を行う。副腎クリーゼは救急疾患であり、ヒドロコルチゾンの静注、NaClとブドウ糖を含んだ適切な輸液、基礎疾患対策を速やかに進めなければならない |
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先天性副腎皮質過形成 congenital adrenal hyperplasia(CAH) |
【原因】 | AR遺伝のものが多い |
【病態】 | 鉱質コルチコイド・糖質コルチコイドの欠乏、副腎アンドロゲンの過剰、ACTHの過剰分泌が基本病態 |
【分類】 |
酵素障害部位 | 高血圧 | Na喪失 高K血症 | 外性器 | 検査 |
男性 | 女性 |
3βOH-デヒドロゲ ナーゼ(3β-HSD) | - | + | 男性仮性 半陰陽 | 陰核肥大 | 血中DHEA(3β-ヒドロオキシステロイド)↑ |
17α-ヒドロキシラーゼ (17α-OHlase) | + | (低K血症) | 性腺機能 低下 | 血中DOC(11デオキシコルチコステロン)↑ |
21-ヒドロキシラーゼ (21-OHlase) | - | +(~-) | 性早熟 | 女性仮性 半陰陽 | 尿中17-KS↑、尿中プレグナントリオール↑、血中17α-ヒドロキシプロゲステロン↑ |
11β-ヒドロキシラーゼ (11β-OHlase) | + | - | 尿中17-KS↑、尿中17-OHCS↑ |
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【検査】 | マススクリーニング…17-OHプロゲステロン↑ |
【治療】 | 副腎皮質ホルモンの補充、塩類喪失型では食塩補給、女児に対する外性器形成術(尿生殖洞切開術、陰核形成術)etc. |
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