Ca代謝の異常症
副甲状腺機能亢進症 hyperparathyroidism |
【概念】 | PTHの分泌が亢進している状態 |
【分類】 | - 原発性副甲状腺機能亢進症
概念 | 副甲状腺の腺腫(80%)or過形成(15%)or癌(5%)※⇒PTHの無秩序分泌 ※腺腫・癌は1腺のみ、過形成は4腺全部 |
疫学 | 男女比は1:2で、40〜50歳代に好発。一部はMENの一症状として現れる |
分類 | 骨型(骨症状が主体)、腎型(腎泌尿器症状が主体)、化学型(無症状) |
症状 | 骨症状…線維性骨炎、骨嚢胞、病的骨折 高Ca血症に起因する症状…多尿、尿路結石(特に腎結石)、消化器症状(悪心・嘔吐、消化性潰瘍、便秘etc.)、神経症状(集中力の低下、抑うつ、意識障害etc.)、皮膚の掻痒感、帯状角膜症etc. その他…高度の副甲状腺機能亢進症ではEPO反応性↓による貧血 |
検査 | 血液検査⇒血中PTH↑、Ca↑、P↓、HCO3-↓(代謝性アシドーシス)、Cl↑、ALP↑ 尿検査⇒Ca↑、cAMP↑、P↑ 骨Xp⇒骨膜下骨吸収、歯槽溝線の消失、骨嚢胞(透亮像)、腰椎側面像におけるラガー・ジャージ様縞模様、頭蓋骨側面像におけるスリガラス状の脱灰所見やpunched out lesion/salt and pepper like appearance 副甲状腺の画像診断…頸部CT(⇒甲状腺に接した異常な腫瘤陰影)、頸部エコー(⇒甲状腺後面の低エコー域)、201Tl・99mTc-MIBIシンチ(⇒hot) |
治療 | 外科手術…唯一の根治療法。術後にはCaの補充とVit. Dの投与が不可欠 高Ca血症に対する治療…大量の点滴静注、ループ利尿薬・ビスホスホネート・カルシトニンなどの投与 ※ステロイドは無効 |
- 続発性副甲状腺機能亢進症
概念 | 低Ca血症or高P血症の持続⇒副甲状腺の過形成⇒PTHの過剰分泌 |
原因 | 慢性腎不全が最多で、骨軟化症がこれに次ぐ。その他、胃切除後にもCaやビタミンDの吸収障害に伴って発症することもある |
症状 | 腎性骨異栄養症(線維性骨炎+骨軟化症)、異所性石灰化(関節周囲、皮膚、動脈、結膜etc.)※ ※骨軟化症に起因するものでは異所性石灰化はみられない |
検査 | 血液検査⇒Ca↓、P↑or↓(慢性腎不全では↑、骨軟化症では↓) |
治療 | 慢性腎不全の場合⇒P摂取制限、P吸着剤の投与、大量の活性型Vit. Dのパルス療法、Ca製剤の投与、副甲状腺に対するPEIT療法・外科手術etc. 骨軟化症の場合⇒活性型Vit. Dなどの投与 |
- 家族性低Ca尿性高Ca血症(FHH)、新生児重度副甲状腺機能亢進症(NSHPT)
| 家族性低Ca尿性高Ca血症(FHH) | 新生児重度副甲状腺機能亢進症(NSHPT) |
原因 | 3q21にあるCa感知受容体(Casr)遺伝子の変異…FHHの場合はヘテロ、NSHPTの場合はホモ |
症状 | 多くは無症状 | 意識障害、骨の脱灰・骨折 |
検査 | 血清Ca↑、血清P↓、PTH↑、尿中Ca↓ | 血清Ca↑↑、血清P↓↓、PTH↑↑ |
治療 | 治療不要 | 早期の副甲状腺摘出が必要 |
予後 | 良好 | 治療を早期に行わなければ不良 |
|
|
副甲状腺機能低下症 hypoparathyroidism |
【概念】 | PTHの作用が不足した病態 |
【分類】 | - PTH欠乏性副甲状腺機能低下症 PTHの分泌が不十分
| 特発性副甲状腺機能低下症 | 続発性副甲状腺機能低下症 |
原因 | PTH遺伝子(11p15)の異常、自己免疫※、低Mg血症、先天性の形成不全(DiGeorge症候群etc.)etc. | 甲状腺癌や食道癌などの頸部手術に際しての副甲状腺損傷 |
頻度 | 少ない | 多い |
症状 | 低Ca血症による症状…テタニー、落ち着きがない、知能障害etc. 高P血症による症状…異所性石灰化(基底核と水晶体に好発するため、錐体外路症状や白内障を伴いやすい。その他、歯牙の異常や羞明(表在性角膜炎)などをきたす) |
検査 | 血液検査⇒Ca↓、P↑、PTH↓、代謝性アルカローシス 尿検査⇒cAMP↓、P↓、Ca→〜↑ 画像診断…頭部CT(⇒大脳基底核の石灰化) |
治療 | 活性型Vit. Dの投与(⇒腸管からのCa吸収を促進)が原則。大量のCa投与を行うと、高Ca尿症による尿路結石や急性腎不全が起こることがあるので、通常は行われない |
※HAM症候群=特発性副甲状腺機能低下症+Addison病+カンジダ症(モリニア症)
- 偽性副甲状腺機能低下症(PHP) PTH/PTHrP受容体の異常
| Ta型 | Tb型 | Tc型 | U型 |
概念 | AD遺伝のことが多く、Gs蛋白構造の異常が原因と考えられている | 機序不明 | 機序不明 | 極めてまれ。cAMP産生後のシグナル伝達の異常が原因と考えられている |
症状 | - 低Ca血症・高P血症による症状
- テタニー、落ち着きがない、痙攣発作(10歳頃)、知能障害、異所性石灰化(錐体外路症状、白内障を引き起こしやすい)etc.
- オールブライト遺伝性骨異栄養症(AHO)※
- Ta・Tc型のみ。低身長、第4・5指短縮、肥満、円形顔貌etc.
※AHO体型を認めるものの、Ca値やPTHの異常を認めない病態を偽性偽性副甲状腺機能低下症という
|
検査 | 血液検査⇒Ca↓、P↑、PTH↑↑ 尿検査⇒cAMP↓、P↓、Ca→〜↑ Ellsworth-Howard試験(PTH注射後の尿中cAMP・P排泄量を測定)⇒Ta・Tb・Tc型では尿中cAMP↓・P↓、U型では尿中cAMP↑・P↓ 画像診断…頭部CT(⇒大脳基底核の石灰化) |
治療 | 活性型Vit. Dの終生継続投与 |
|
|
悪性腫瘍に伴う 高Ca血症(MAH) |
【原因】 | 悪性腫瘍(肺癌、肝細胞癌、乳癌、悪性リンパ腫、骨髄腫、ATL etc.)による骨融解、PTHrP産生 |
【症状】 | 急性or亜急性に多尿、悪心・嘔吐、食欲不振、消化性潰瘍に伴う腹痛、集中力低下、傾眠傾向、意識障害などをきたす。骨吸収促進による線維性骨炎も起こるが、神経症状や消化器症状が前景に立つため目立たない |
【検査】 | 血液検査⇒Ca↑、P↓、PTHrP↑、PTH↓、HCO3-↑(代謝性アルカローシス)、Cl↓、活性型Vit. D↓ 尿検査⇒Ca↑ |
【治療】 | 大量の生理食塩水の点滴静注、ループ利尿薬・ビスホスホネート・カルシトニンの投与、ステロイドの投与etc. |
|