【原因】 | マラリア原虫…ハマダラカが媒介し、終宿主である。ヒトの体内では無性生殖し、蚊の体内では有性生殖する。蚊の唾液腺内でスポロゾイトとして保有されている |
【疫学】 | 世界人口の約40%がマラリア浸淫地に居住し、毎年3億人の新規患者と300万人の死者が出ている。わが国では、ほとんど全部が輸入感染症で、近年海外渡航の増加に伴い増加傾向にある。一方、鎌状赤血球症、G6PD欠損症などの血管疾患の患者は、マラリアに罹患しにくい |
【分類】 | ヒトに病原性を有するのは、三日熱マラリア、四日熱マラリア、熱帯熱マラリア、卵型マラリアの4種類 |
【感染】 | 蚊がヒトを刺すと、スポロゾイドは血中に入り、数分以内に肝臓に至る。そこで1〜2週間かけて増殖し、メロゾイト(組織型)となる。やがて、メロゾイトは血中に入り、1分以内に赤血球に侵入する(赤血球型)。赤球内で盛んに分裂を繰り返し、48時間ないし72時間で成熟する。成熟したメロゾイトは赤血球を破壊し、別の赤血球に侵入する。その際に、発熱発作が起こり、この臨床経過の中で貧血、肝脾腫を呈するようになる。メロゾイトの一部は分裂を繰り返すことを中止し、雌雄の生殖母体となる。生殖母体はヒトが再び蚊に刺されることによって、蚊の体内に戻り、接合子となって、蚊の体内で再び有性生殖を始める 終生免疫は成立しない。感染予防法の4類感染症 |
【症状】 | 1〜2週間程度の潜伏期を経て、全身倦怠感、頭痛、関節痛などの前駆症状の後に、発熱発作(40℃以上まで上昇し、悪寒・戦慄を伴い、数時間持続。発作の周期は、四日熱マラリアのみ72時間で、他は48時間)、溶血性貧血、肝脾腫の三徴候を呈する 合併症…熱帯熱マラリアでは脳性マラリア(1/3の確率)・黒水熱(重度の溶血により起こる致命率の高い病態)、四日熱マラリアではネフローゼ症候群(特に膜性増殖性糸球体腎炎) | |
【検査】 | 末梢血塗抹標本のMay-Giemsa染色⇒マラリア原虫 血液検査⇒RBC↓、Hb↓、WBC→、Plt↓etc. |
【治療】 | 急性期はクロロキンが第1選択。クロロキン耐性熱帯熱マラリアに対しては、ファンシダール、スルファドキシン、ピリメサミン、メフロキン、ハロファントリン、アルテミシンなどが使用される。脳性マラリアなどの一刻を争う事態にはキニーネの静注が行われる。また、三日熱マラリアと卵型マラリアの場合にみられる休眠型に対してはプリマキンが有効 |
【予防】 | 夜間の外出の回避、肌の露出の回避、虫除けスプレー、予防内服etc. |
【再発】 | 休眠型をとる三日熱マラリア・卵型マラリアではしばしば再発が問題となる |