原虫総論
原虫の構造原生動物の一種。単細胞構造で、最も原始的な真核動物
原虫の疫学輸入感染症の増加と日和見感染症の増加が日本では問題となってきている
原虫感染症
アメーバ感染症
amebiasis
【原因】アメーバamoeba類…偽足を出して動く微生物。水中、土壌中、動物の消化管内などさまざまな場所に広く分布アメーバの内視鏡写真、便の顕微鏡写真、生検組織写真
【分類】種類は多数あるが、ヒトに病原性を有するのは赤痢アメーバEntamoeba histolyticaのみ。E. histolyticaと形態が全く同じにもかかわらず、非病原性のE. disparがあり、臨床上鑑別が重要となる
【疫学】ほぼ世界中に分布するが、熱帯・亜熱帯地方に特に多い。わが国では、輸入感染症の増加と国内感染例の増加(特に男性同性愛者、精神薄弱者に多い)により、1990年前後から増加傾向
【感染】
糞口感染症の一種で、食物に付着した本菌の嚢子を経口摂取することによって感染。嚢子は小腸内で栄養型になり、大腸内で細胞分裂を繰り返して増殖し、大腸粘膜の上皮細胞内に侵入。栄養型は通常はそのまま糞便中に排泄されるが、一部嚢子となって排泄され、その嚢子がまた新たな感染源となる
【症状】
腸管
アメーバ症
潜伏期間はさまざま(短くて1〜2週間、長いと数年)。きわめて緩徐に、腹痛(特に右下腹部痛)、下痢、粘血便(イチゴゼリー状)、しぶり腹などで発症。全身状態はほぼ良好
アメーバ性
肝膿瘍
門脈経由で肝に至り、膿瘍を形成。亜急性発症の場合が多く、数週間の経過で、右季肋部痛、発熱、肝腫大などをきたす
【検査】検便(糞便の直接鏡検)⇒感染極期に栄養型、回復期に嚢子型
大腸内視鏡検査⇒発赤、タコイボ状のびらん、潰瘍etc.
血液検査⇒抗アメーバ抗体(+)
アメーバ性肝膿瘍の検査…CT・エコーにて単発性の肝膿瘍、穿刺にてチョコレート様・アンチョビーペースト様の赤褐色の液体、肝機能はほぼ正常
【治療】メトロニダゾールが第1選択。肝膿瘍に対しては外科的ドレナージも行われる
マラリア
malaria
【原因】マラリア原虫…ハマダラカが媒介し、終宿主である。ヒトの体内では無性生殖し、蚊の体内では有性生殖する。蚊の唾液腺内でスポロゾイトとして保有されている
【疫学】世界人口の約40%がマラリア浸淫地に居住し、毎年3億人の新規患者と300万人の死者が出ている。わが国では、ほとんど全部が輸入感染症で、近年海外渡航の増加に伴い増加傾向にある。一方、鎌状赤血球症、G6PD欠損症などの血管疾患の患者は、マラリアに罹患しにくい
【分類】ヒトに病原性を有するのは、三日熱マラリア四日熱マラリア熱帯熱マラリア卵型マラリアの4種類
【感染】蚊がヒトを刺すと、スポロゾイドは血中に入り、数分以内に肝臓に至る。そこで1〜2週間かけて増殖し、メロゾイト(組織型)となる。やがて、メロゾイトは血中に入り、1分以内に赤血球に侵入する(赤血球型)。赤球内で盛んに分裂を繰り返し、48時間ないし72時間で成熟する。成熟したメロゾイトは赤血球を破壊し、別の赤血球に侵入する。その際に、発熱発作が起こり、この臨床経過の中で貧血、肝脾腫を呈するようになる。メロゾイトの一部は分裂を繰り返すことを中止し、雌雄の生殖母体となる。生殖母体はヒトが再び蚊に刺されることによって、蚊の体内に戻り、接合子となって、蚊の体内で再び有性生殖を始める
終生免疫は成立しない。感染予防法の4類感染症
【症状】
1〜2週間程度の潜伏期を経て、全身倦怠感、頭痛、関節痛などの前駆症状の後に、発熱発作(40℃以上まで上昇し、悪寒・戦慄を伴い、数時間持続。発作の周期は、四日熱マラリアのみ72時間で、他は48時間)、溶血性貧血肝脾腫の三徴候を呈する
合併症…熱帯熱マラリアでは脳性マラリア(1/3の確率)・黒水熱(重度の溶血により起こる致命率の高い病態)、四日熱マラリアではネフローゼ症候群(特に膜性増殖性糸球体腎炎)
マラリアの赤血球塗沫標本(マラリア原虫)
【検査】末梢血塗抹標本のMay-Giemsa染色⇒マラリア原虫
血液検査⇒RBC↓、Hb↓、WBC→、Plt↓etc.
【治療】急性期はクロロキンが第1選択。クロロキン耐性熱帯熱マラリアに対しては、ファンシダール、スルファドキシン、ピリメサミン、メフロキン、ハロファントリン、アルテミシンなどが使用される。脳性マラリアなどの一刻を争う事態にはキニーネの静注が行われる。また、三日熱マラリアと卵型マラリアの場合にみられる休眠型に対してはプリマキンが有効
【予防】夜間の外出の回避、肌の露出の回避、虫除けスプレー、予防内服etc.
【再発】休眠型をとる三日熱マラリア・卵型マラリアではしばしば再発が問題となる
トキソプラズマ症
toxoplasmosis
【原因】Toxoplasma gondiiネコ(終宿主)とヒト・ブタ・ヒツジ・ニワトリなど(中間宿主)との共通感染症
【感染】感染経路としては、ネコの糞中に排泄された本菌のオーシストの経口摂取、ブタの筋肉中に含まれている嚢子の経口摂取、垂直感染(子宮内感染)の3つ。ヒトの体内に入った菌は腸管内で栄養型となり、分裂増殖を繰り返し、血流に入って、全身臓器に散布され、強烈に細胞に侵入する。しかし、正常の免疫能があれば、一時的なリンパ節腫脹をきたす程度で、ほとんどが不顕性感染に終わる
【症状】
後天性
トキソプラズマ症
原因…compromised hostへの本菌の感染
症状…脳症(頭痛、発熱、痙攣、運動失調、意識レベル低下etc.)、発疹、リンパ節腫脹、網脈絡膜炎etc.
先天性
トキソプラズマ症
原因…妊娠中期以降における妊婦の初感染で、胎児の抵抗力が弱い場合にのみ発症
症状…生下時の水頭症、小眼球症、網脈絡膜炎、脳内石灰沈着、肝脾腫、リンパ節腫脹、精神発育遅延etc.
【検査】抗トキソプラズマ抗体価↑、Sabin-Feldman色素試験(+)、脳症の場合はCTにてリング状の陰影
【治療】ピリメサミン・スルファジアジンが第1選択。その他、ファンシダール、クリンダマイシンも有効
クリプトスポリジウム症
cryptosporidiosis
【原因】クリプトスポリジウムCryptosporidium parvum…哺乳類・鳥類・爬虫類・魚類などの腸管内に広く分布。塩素消毒やオゾン処理に対して強い抵抗性を有する
【疫学】旅行者下痢症のかなりの部分を占める
【感染】糞口感染により、ヒトの腸管内に入った本菌は、粘膜上皮細胞の微絨毛に侵入し、ここで盛んに増殖し、下痢を引き起こす。感染症法の5類感染症
【症状】免疫能が正常の場合⇒腹痛を伴った水様性下痢で発症。発熱はなく、1〜2週間で自然治癒
compromised hostの場合⇒1日数lに及ぶ下痢が延々と続き、しばしば致命的となる
【治療】脱水などに対する対症療法のみ
ランブル鞭毛虫症
(ジアルジア症)
【原因】ランブル鞭毛虫Giardis intestinalis…動物鞭毛虫綱に属する
【疫学】HIV感染者などのcompromised hostに好発
【感染】ランブル鞭毛虫の嚢子の経口摂取で感染する。栄養型虫体が十二指腸・小腸上部・胆道系に寄生する
【症状】下痢(一過性の場合が多いが、時に長期にわたる水様性下痢or脂肪性下痢)、胆道感染、腹部不快感、腹部膨満感、腹痛、排ガス亢進、悪心・嘔吐etc.
【治療】メトロニダゾールの内服が有効
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