細菌総論
細菌の構造原核生物。植物で、細胞壁(ペプチドグリカンが主成分)を有する。グラム陰性菌の場合には、細胞壁の外側に外膜を有し、一部菌種ではさらにその外側に莢膜を有する。核は長い1本の糸状で、核膜がない。ミトコンドリアをもたず、リボソームの沈降恒数は50sと30s(真核生物では60sと40s)
抗生物質














β









ペニシリン系
【作用点】細胞壁の主要構成成分であるペプチドグリカンの架橋作業の最終段階を阻害
【薬   剤】ペニシリンG(PCG)…βラクタマーゼを産生しないG陽性球菌(レンサ球菌、肺炎球菌、梅毒etc.)にのみ有効
メチシリン(DMPPC)…βラクタマーゼに強いが、G陰性菌には無効
アンピシリン(ABPC)…G陰性菌にも有効だが、βラクタマーゼに弱い
   ※βラクタマーゼ阻害薬(クルブラン酸、スルバクタムetc.)との合剤の形で使われることが多い
カルベニシリン(CBPC)、スルベニシリン(SBPC)、ピペラシリン(PIPC)…緑膿菌に対しても有効
【副作用】アレルギー反応(発熱、発疹、間質性腎炎、胆汁うっ滞性肝機能障害、アナフィラキシー・ショックetc.)
セフェム系
【作用点】細胞壁の主要構成成分であるペプチドグリカンの架橋作業の最終段階を阻害
【薬   剤】第一世代…G陽性菌の他、一部のG陰性菌にも有効(セラチア、バクテロイデス、緑膿菌などには無効)
第二世代…第一世代より広い抗菌スペクトル(セラチア、バクテロイデス、緑膿菌などには無効)
第三世代…緑膿菌に対しても有効(黄色ブドウ球菌に対する抗菌力が劣る)
第四世代…黄色ブドウ球菌にも強い抗菌力を有する(耐性菌の出現を抑えるため、使用は最小限度)
【副作用】アレルギー反応(間質性腎炎、胆汁うっ滞性肝機能障害、アナフィラキシー・ショックetc.)、ビタミンK欠乏による出血傾向
その他の
βラクタム系
【作用点】細胞壁の主要構成成分であるペプチドグリカンの架橋作業の最終段階を阻害
【薬   剤】カルバペネム系…最も広い抗菌スペクトルをもち、抗菌力も強力(MRSA、一部の緑膿菌には無効)
モノバクタム系…抗菌力は強力だが、G陰性菌にのみ有効
ホスホマイシン
(FOM)
【作用点】細胞壁の主要構成成分であるペプチドグリカンの架橋作業の初期の段階を阻害
【適   応】抗菌スペクトルが広い
【副作用】ほとんどない
【問題点】耐性菌ができやすい
グルコペプチド系
【作用点】細菌の細胞壁合成の最終段階を阻害
【薬   剤】バンコマイシン(VCM)
【適   応】スペクトルはG陽性菌のみ。適応はMRSA偽膜性腸炎骨髄移植時の消化管内殺菌のみ
※同じMRSA感染でも、皮膚のみの病変にはバンコマイシンの適応はない
【副作用】red neck症候群(短時間で静注すると、顔面・上肢・頸部などに紅斑性充血と掻痒感を生じる)、腎毒性






ニューキノロン系
(NQ系)
【作用点】DNAジャイレースを阻害
【適   応】抗菌スペクトルが幅広く、抗菌力も抜群(MRSAには無効)
【禁   忌】小児、妊婦、一部のNSAIDとの併用(⇒痙攣を誘発)
リファンピシン
(RFP)
【作用点】RNAポリメラーゼを阻害(⇒mRNAの転写を阻害)
【適   応】結核の他、レジオネラ肺炎にも有効
【特   徴】肝排泄型で腎不全例でも常用量で使用可能
【副作用】消化器症状、血小板減少症、感冒様症状


















アミノグリコシド系
(アミノ配糖体系)
【作用点】30sのリボソームに不可逆的に結合して、mRNAの翻訳を阻害(殺菌的に作用)
【薬   剤】結核作用を主とするもの…カナマイシン(KM)、ストレプトマイシン(SM)etc.
緑膿菌以外のG陰性桿菌に有効なもの…フラジオマイシン(FRM)etc.
緑膿菌にも抗菌作用のあるもの…ゲンタマイシン(GM)、アミカシン(AMK)、トブラマイシン(TOB)etc.
MRSA薬…アルベカシン(ABK)のみ
【適   応】スペクトルは広いが、偏性嫌気性菌には一切無効で、レンサ球菌・腸球菌にもほとんど効かない
【併   用】βラクタム系との併用により、相乗効果が得られる
【特   徴】髄液移行性がないので、髄膜炎には無効
【注   意】GFRの変動しやすい妊婦への使用は注意が必要
【副作用】第[脳神経障害(難聴、平衡機能障害)、腎障害(急性尿細管壊死)
テトラサイクリン系
【作用点】30sリボソームに結合して、蛋白の合成を阻害(静菌作用)
【薬   剤】ドキササイクリン、ミノサイクリン
【適   応】スペクトルは広いが、抗菌作用はあまり強くなく、適応はクラミジアリケッチアマイコプラズマコレラなどに限られる
【併   用】βラクタム系との併用により、効果減弱
【副作用】骨や歯牙の発育不全(⇒妊婦・乳幼児への投与は好ましくない)、歯牙の黄染、皮膚色素沈着
クロラム
フェニコール系
【作用点】50sリボソームに結合して、蛋白の合成を阻害(静菌作用)
【適   応】耐性菌が多く、有効な菌種は限られる。本剤が第1選択薬となるのは、腸チフスパラチフスのみ
【副作用】骨髄抑制作用(典型的には再生不良性貧血)、gray baby症候群(⇒妊婦・乳幼児への投与は好ましくない)
マクロライド系
【作用点】50sリボソームに結合して、ペプチド鎖の延長を阻害(多くは静菌作用)
【薬   剤】エリスロマイシン(EM)、クラリスロマイシン(CAM)、ロキスロマイシン(RXM)、スピラマイシン(SPM)
【適   応】抗菌スペクトルは、G陽性菌、マイコプラズマ、リケッチア、クラミジア、トレポネーマが中心で、G陰性桿菌ではレジオネラや百日咳を除いて効果なし。第1選択薬として用いられるのは、マイコプラズマ肺炎レジオネラ肺炎百日咳の他、びまん性汎細気管支炎気管支拡張症(少量持続投与が行われる)など。また、βラクタム系にアレルギーのある患者にも好んで用いられる
【特   徴】気道・白血球内への移行性がよい。低毒性で、比較的安全に使える
【副作用】軽度の消化器症状、肝障害
リンコサミド
マイシン系
【作用点】50sリボソームに結合して、蛋白合成を阻害
【薬   剤】リンコマイシン(LM)、クリンダマイシン(CLDM)
【適   応】特に嫌気性菌に対する抗菌力が強く、バクテロイデスなどの治療薬として用いられるが、耐性菌が多く、使用頻度は減少傾向
【副作用】下痢、偽膜性腸炎
細胞質膜障害薬
【薬   剤】ポリペプチド系(ポリミキシンB、コリスチン、テイコプラニンetc.)
【剤   形】外用薬(内服すると、腎障害・中枢神経障害などの副作用が出やすい)
葉酸合成阻害薬
(ST合剤)
【薬   剤】スルファメトキサゾール(SMX)とトリメトプリム(TMP)の合剤
【適   応】スペクトルは本来広かったが、耐性菌が多い。第1選択薬として用いられるのはカリニ肺炎のみ
【副作用】骨髄抑制、消化器症状、アレルギー反応、黄疸増強
【禁   忌】妊婦、乳幼児
グラム陽性球菌感染症




























































ブドウ球菌感染症
staphylococcal
infection
【原因】ブドウ球菌Staphylococcus…鏡検にてブドウの房状を呈する。カタラーゼ産生性
【分類】
黄色ブドウ球菌S. aureus…コアグラーゼ産生性。鼻腔・腸管の常在菌だが、創から侵入して化膿巣を作る
※MRSA…ペニシリン結合蛋白の変化が耐性の原因。病原性・毒力自体はMSSAに比べて弱いが、toxic shock syndrome toxin-1(TSST-1)やエンテロトキシンを産生する株が多く、これが予後に大きくかかわっている。緑色調の水溶性下痢便が特徴的
表皮ブドウ球菌S. epidermidis…コアグラーゼ非産生性。皮膚・鼻腔・口腔・尿道粘膜などの常在菌
【症状】
黄色ブドウ球菌感染症の症状






食中毒概念…耐熱性のエンテロトキシンによる毒素型の食中毒
症状…摂取後3〜4時間に比較的軽い腹痛・下痢、嘔吐などをきたす(発熱はみられず、粘血便の頻度は少ない)
ブドウ球菌性
熱傷様皮膚
症候群

(SSSS)
概念…表皮剥奪毒素によって起こる中毒性皮疹
疫学…3歳以下の乳幼児にみられる
症状…突然、眼囲・口囲にびらんが出現し、頸部・腋窩・陰股などに猩紅熱様の紅斑が出現。摩擦痛、軽度咽頭発赤、微熱、落屑などを伴う
検査…Nikolsky現象(+)
伝染性膿痂疹概念…表皮剥奪毒素によって起こる中毒性皮疹。いわゆる"とびひ"
疫学…年長児にみられる
症状…破れやすい弛緩性水疱→びらん→周辺拡大
中毒性ショック
症候群
原因…toxic shock syndrome toxin-1(TSS-1)による高サイトカイン血症
症状…軽症の場合には、頭痛、発熱、嘔吐、下痢、低血圧など。重症の場合にはショックやDIC







毛嚢炎概念…毛穴を中心とした限局性の化膿巣。いわゆる"おでき"
せつ概念…毛嚢炎が膿瘍を形成したもので、炎症は皮下組織にまで広がり、皮膚面から波動が触知される
よう概念…隣接した複数のせつが融合して鶏卵大くらいに育ったもの
ひょう疽概念…指趾に生じた急性化膿性炎症。独特の痛みを伴う
蜂巣炎概念…皮下の疎結合織に生じた化膿巣
肺炎特徴…特に肺化膿症を起こしやすい
急性心内膜炎特徴…健常人にも発症し、急速に進行して重篤な症状を呈し、予後不良
骨髄炎疫学…骨成長期の小児・学童に好発。長管骨の骨幹端に好発。骨髄炎の80%以上が本菌による
表皮ブドウ球菌感染症の症状
compromised hostに日和見感染をきたす。カテーテル感染、敗血症、亜急性心内膜炎、尿路感染症、腹膜炎etc.
【治療】黄色ブドウ球菌感染症⇒MSSAに対してはメチシリン、MRSAに対してはバンコマイシンorアルベカシン
レンサ球菌感染症
streptococcal
infection
【原因】レンサ球菌Streptococcus…鏡検にて菌が鎖のようにつながっている。カタラーゼ非産生性
【分類】α群レンサ球菌(緑色レンサ球菌)…不完全に溶血するもの。臨床上ほとんど問題を起こさない
β群レンサ球菌(溶血レンサ球菌、略して溶連菌)…完全に溶血するもの
γ群レンサ球菌…全く溶血しないもの。臨床上ほとんど問題を起こさない
さらに、Lancefieldの血清学的分類でA群からV群まで分けられ、計28種類
β


A群レンサ
球菌
しばしば健常人の咽頭・鼻腔・消化管などにわずかに常在するが、菌量がある程度以上になると、さまざまな臨床症状をきたすようになる。細胞壁中のM蛋白などが菌の病原性に深く関係しており、M蛋白型によって分類される。菌が産生する外毒素としては、赤血球膜に結合して孔を開ける溶血毒素(SLO)、プラスミンを活性化させるストレプトキナーゼ(SK)、ヒアルロン酸を分解するヒアルロニダーゼ(HUD)、発熱と皮疹を起こす発熱毒(SPE)などがある
B群レンサ
球菌(GBS)
咽頭・腸管・腟内の常在菌。臨床上問題となるものの多くは腟内の細菌叢による垂直感染である
【症状】
A群レンサ球菌感染症の症状




上気道炎疫学…咽頭扁桃炎の起炎菌の中で最多
症状…咽頭痛、発熱、咽頭発赤、扁桃腫大、灰白色分泌物、頸部リンパ節腫脹、中耳炎、副鼻腔炎etc.
合併症…肺炎、膿胸、胸膜炎etc.
猩紅熱疫学…小児の疾患
症状…発熱・嘔吐・咽頭痛などで急激に発症し、1〜2日後に全身に鮮やかな鮮紅色の発疹をきたす。発疹は口の周囲には少なく口囲蒼白がみられる他、イチゴ舌も認められる。発疹は約1週間で落屑し始め、治癒に向かう
丹毒概念…本菌による炎症が真皮にまで及び、蜂窩織炎を起こしたもの
劇症型A群
レンサ球菌
感染症
原因…スーパー抗原による高サイトカイン血症
症状…敗血症からショック症状を呈し、深部軟部組織壊疽を伴い、しばしば致命的となる(人喰いバクテリアともよばれ、黄色ブドウ球菌による中毒性ショック症候群に類似)
後遺症リウマチ熱急性糸球体腎炎が知られているが、両疾患とも激減してきている
B群レンサ球菌感染症の症状
典型的には、生後数時間以内に発症し、敗血症(低体温、無呼吸発作、出血斑etc.)、肺炎、髄膜炎が起こる。死亡率は約20%で、発育障害などの後遺症を残す確率が高い
【検査】A群レンサ球菌感染症⇒ASO↑、ASK↑、Schultz-Charlton疹消退現象etc.
【治療】A群レンサ球菌感染症⇒PCGが有効。他には、セフェム系、マクロライド系etc.
B群レンサ球菌感染症⇒ペニシリン系が中心
肺炎球菌感染症
pneumococcal
infection
【原因】肺炎球菌Pneumococcus…α群レンサ球菌の一種で、カタラーゼ非産生性。病巣中では双球状を呈するが、培地上では連鎖状を呈する。鼻咽腔粘膜の常在菌
【症状】
肺炎概念…かつては大葉性肺炎の代表であったが、現在ではほとんどが軽症〜中等度の気管支肺炎の形態をとる
疫学…多くはcompromised hostに発症するが、市中肺炎の起炎菌としては最多
髄膜炎疫学…年長児や成人に好発
【検査】CRP↑etc.肺炎球菌のGram染色(Gram陽性の双球菌)
【治療】PCG、セフェム系が第1選択。PRSPに対してはカルバペネム系
【予防】compromised hostに対して肺炎球菌23価ワクチン接種

 
腸球菌感染症
enterococcal
infection
【原因】腸球菌Enterococcus…レンサ球菌に類似し、カタラーゼ非産生性。腸管内・上気道・皮膚・女性の外陰部の常在菌。近年、バンコマイシンに対する耐性化が進んできている
【症状】もっぱらcompromised hostに、内因性感染症としての尿路感染症、胆道感染症、敗血症、亜急性心内膜炎などを引き起こす
【治療】耐性菌でなければペニシリン系(アンピシリン)が有効。バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)に対してはほとんどの抗生物質が無効      ※セフェム系、アミノ配糖体は無効
グラム陽性桿菌感染症









ジフテリア
diphtheria
【原因】ジフテリア菌Corynebacterium diphtheriae…好気性or通性嫌気性菌で、鏡検にて棍棒状の形態を呈する
【疫学】毎年1人程度の発生が報告されている
【感染】ほとんどが飛沫感染し、強力な外毒素を産生する毒素型感染症。感染症法の2類感染症
【症状】
咽喉頭症状咽頭における灰白色の偽膜の形成(剥離により出血)、粘膜組織の壊死、著明な咽頭痛、嚥下痛、発熱などをきたす。喉頭ジフテリアに至ると、犬吠様の咳嗽(真性クループ)、吸気性呼吸困難、窒息などをきたす
外毒素による
症状
心臓症状…心筋障害、伝導障害などをきたす
末梢神経症状(多発性神経炎)…軟口蓋麻痺、外眼筋麻痺、呼吸筋麻痺、下肢の弛緩性麻痺などをきたす
【検査】Schick試験(+)、Lo¨ffler培地による分離
【予防】DPTワクチン(トキソイドが用いられる)
【治療】抗毒素血清の可及的速やかな投与、ペニシリン系・マクロライド系抗生物質の投与
リステリア
感染症
listeriosis
【原因】リステリア菌Listeria monocytogenes…微好気性菌。細胞内寄生菌。哺乳類の常在菌で、家畜やペットから移る人畜共通感染症の1つ
【症状】
新生児の場合…多くが垂直感染。子宮内感染により、流・早産、敗血症、多発性肉芽腫が、産道感染により髄膜炎が起こる。いずれも予後不良
compromised hostの場合…日和見感染症をきたす(特に細胞性免疫が低下した患者に好発)
【治療】アンピシリン中心に、必要に応じてアミノグリコシド系を併用













炭疽
anthrax
【原因】炭疽菌Bacillus anthracis
【感染】人畜共通感染症の1つ。ウシなどの感染動物やその獣皮・毛などに接触したヒトにも感染する。感染症法の4類感染症で、生物兵器としての使用が危惧されている
【疫学】牧畜業者、羊皮取扱業者、獣医などに好発
【症状】
皮膚炭疽…小さな傷口から芽胞が侵入し、発芽して皮膚潰瘍を作り、産生する毒素によって黒いかさぶたが生じる。重篤な場合には、発熱、リンパ節腫脹、敗血症をきたし、死に至る
肺炭疽…経気道的に吸入された芽胞が縦隔リンパ節に発芽して、毒素を産生し、著しい呼吸困難を呈し、数日以内に死亡する
【治療】ペニシリン系、マクロライド系、テトラサイクリン系が有効だが、毒素を産生する前に投与しないと効果が小さい
セレウス菌
感染症
【原因】セレウス菌…食中毒の起炎菌
【症状】
嘔吐型食中毒…米飯類が原因食品。典型的な毒素型食中毒(毒素は耐熱性)。1〜5時間の潜伏期の後、嘔吐を中心とする症状を訴える
下痢型食中毒…肉類、バニラソース、プリンなどが原因食品(芽胞が耐熱性のため、加熱食品も原因となりうる)。中間型食中毒に相当(芽胞付きの食物を摂取し、これが腸管内で発芽・増殖し、毒素産生する)。8〜16時間の潜伏期の後、水様性下痢をきたす
【治療】無治療で数日以内に軽快する軽症例がほとんど
グラム陰性球菌感染症
















淋病
gonorrhoea
【原因】淋菌Neisseria gonorrhoeae…双球菌
【疫学】世界的に普遍的に存在する疾患で、若年層の増加率が高い。わが国では性器クラミジア感染症に次いで多く、わが国でも増加傾向にある
【感染】性行為感染
【症状】
男性の場合…数日間の潜伏期の後に尿道炎を起こす。まず尿道不快感で発症し、やがて排尿痛と外尿道口からの排膿をきたす
女性の場合…子宮頸管炎を起こすが、症状が軽く、膿性膣分泌物の増加がみられる程度。放置すると、骨盤腹膜炎、付属器炎などを続発して不妊の原因となることもある
新生児の場合…妊婦が本菌に感染していると、産道感染により新生児膿漏眼を起こす
【予防】妊婦が本菌に感染している場合、予防的に新生児全員に抗生物質の点眼
【治療】βラクタマーゼ阻害薬と合剤にしたペニシリン系、セフェム系、ニューキノロン系などが中心
流行性脳脊髄膜炎
epidemic
cerebrospinal
meningitis
【原因】髄膜炎菌Neisseria meningitis…双球菌
【感染】飛沫感染。健康保菌者が約10%にみられる
【症状】
髄膜炎疫学…成人の細菌性髄膜炎の起炎菌の第2位(肺炎球菌に次ぐ)
症状…口唇ヘルペスをはじめ出血斑がよくみられる
敗血症症状…DICの合併、両側副腎出血による急性副腎皮質不全の合併(Waterhouse-Friedrichsen症候群)
【治療】ペニシリン系が第1選択
グラム陰性桿菌感染症
大腸菌感染症
Escherichia coli
infection
【原因】大腸菌Escherichia coli…線毛と鞭毛をもち、運動性を有する。腸管内の常在菌。O抗原とH抗原により数百種類に分類される
【症状】
腸管感染症
病原性大腸菌の感染により、下痢などの消化器症状を起こす
毒素原性大腸菌
(ETEC)
原因…易熱性のエンテロトキシン(LT)が病原性に関与
疫学…旅行者下痢症の主たる原因であり、輸入腸管感染症の中で最多
症状…米のとぎ汁様の下痢(コレラに類似するが、軽症)
組織侵入性大腸菌
(EIEC)
感染…腸管粘膜に侵入して、そこで増殖
症状…粘血便(赤痢菌と同様)
腸管出血性大腸菌
(EHEC)
病原菌…O157・H7によるものが大部分。きわめて少数の菌数で発症し、容易に集団発生や二次感染をきたすため、感染症法で3類感染症として位置づけられている
感染…汚染された水や食品からの経口感染、感染者からの接触感染
原因…志賀赤痢菌の作る毒素に類似するベロ毒素(VT)が病原性に関与
症状…2〜3日の潜伏期の後、血便と激しい腹痛をきたす(出血性大腸炎)
合併症…急性腎不全、溶血性貧血、中枢神経症状(これらは特に小児に好発し、溶血性尿毒症症候群(HUS)とよばれる)
治療…初期には抗菌薬(ホスホマイシンetc.)の投与を行う
腸管付着性大腸菌
(EAEC)
感染…大腸粘膜上皮細胞で増殖するとともに大腸粘膜の刷子縁を破壊
分類…腸管病原性大腸菌(EPEC)、腸管凝集付着性大腸菌(EAggEC)、腸管局所付着性大腸菌(LAEC)etc.
疫学…発展途上国において乳幼児に集団発生する下痢症の起炎菌として重要
症状…下痢
その他の症状
尿路感染症膀胱炎、腎盂腎炎etc.
胆道感染症多くは胆石などの胆道系の基礎疾患を有する
呼吸器感染症肺炎などを起こす。多くは基礎疾患を有する者に二次性肺炎として発症する
敗血症エンドトキシン・ショックやMOFをもたらす
髄膜炎生後3ヶ月以内の新生児・乳児の髄膜炎の起炎菌として、GBSと並ぶ代表格
【治療】腸管感染症⇒脱水の是正、中等度以上では抗生物質の投与
腸管外感染症⇒抗生物質の投与(ニューキノロン系、第三世代セフェム)
細菌性赤痢
bacillary dysentery
【原因】赤痢菌Shigella…通性嫌気性菌。非運動性。自然宿主は主にヒト
【分類】A群(S. dysentery)、B群(S. flexneri)、C群(S. boydii)、D群(S. sonnei)の4群に大別
強烈なVero毒素を産生するA群の頻度は激減し、軽症型のB群・D群が増加してきている(D群が約8割)
【感染】糞口感染。大腸粘膜細胞に侵入し、そこで増殖死、小膿瘍を形成する。感染症法で2類感染症とされており、東南アジアからの輸入例が近年増加傾向。毎年1000人前後の患者が発生している
【症状】1〜5日の潜伏期の後、全身倦怠感、悪寒を伴う発熱、水様性下痢で発症する。発熱が1〜2日続いた後、腹痛、テネスムス、膿血便便などの赤痢症状が出現する。S状結腸の病変が強くなると腸管壁が肥厚し、左下腹部に有痛性の腸索を触れるようになる
【検査】培養はS-S培地を用いる
【治療】経口的な水分補給、抗生物質の投与(ニューキノロン系が第1選択。小児にはホスホマイシン)
















腸チフス
typhoid fever
パラチフス
paratyphoid fever
【原因】チフス菌Salmonella typhi…サルモネラ属の一種
パラチフス菌Salmonella paratyphi…サルモネラ属の一種。パラチフスを起こすのはA群のみ(B群・C群はサルモネラ感染症を起こす)
【疫学】日本を除くアジア、東欧、中南米、アフリカの各国で広く流行
【感染】ヒトにだけ病原性を有する。感染症法の2類感染症で、輸入感染症として重要。糞口感染(or感染者からの接触感染)により、小腸粘膜(特にPeyer板)に侵入し、Mφ内で増殖し(細胞内寄生)、第1次菌血症を起こす。その後、網内系細胞に貪食され、再び増殖した後、第2次菌血症を起こす。胆石などの胆道系疾患があると、胆嚢保菌者となりやすい
【症状】潜伏期…10日間以上
第1週…発熱(典型的には39℃台の稽留熱)が中心。第1週の終わり頃から、脾腫とバラ疹(直径数mmの紅色丘疹)が出現
第2週…消化器症状(下痢or便秘)、高熱、全身衰弱状態、無欲様顔貌、比較的徐脈
第3週…Peyer板の壊死による潰瘍化が起こり、時に腸穿孔をきたす
第4週…症状は軽快。一部で胆嚢保菌者となる      ※テネスムスはあまりみられない
【検査】血液検査⇒WBC↓(Eosino.消失)Widal反応(+)
培養検査…第2週までは血液培養、第3週以降は糞便培養・尿培養、治癒判定には胆汁培養
【治療】クロラムフェニコール系が長い間第1選択であったが、耐性菌の顕在化などにより現在はニューキノロン系が第1選択となっている。小児ではホスホマイシンなどを使用
サルモネラ感染症
【原因】サルモネラ属菌(チフス菌、パラチフス菌A以外)
【感染】病原性は弱く、大量の菌を摂取した場合に食中毒を起こすだけ。原因食物としては、乳製品肉類など
【疫学】食中毒の原因として1番多い
【症状】8〜48時間程度の潜伏期の後、腹痛、下痢(多くは水様性)、発熱を起こす。予後良好で、数日で軽快する場合がほとんど
【治療】輸液などの対症療法で十分だが、ニューキノロン系、アンピシリン、ホスホマイシンなどが有効














コレラ
cholera
【原因】コレラ菌Vibrio cholerae…好気性菌。短桿状(コンマ状)の形態。ビブリオ属の一種。鞭毛で活発に運動する。コレラを起こす(コレラ毒素を産生する)のはVibrio cholerae O1のみ(O1抗原をもたない菌はNAG Vibrioとよばれ、食中毒の起炎菌として扱われる)
【分類】古典型(ガンジス川流域の風土病で、6回の世界的流行を起こした)、エルトール型(インドネシア原産で、第7次流行を起こした)の他、コレラ様症状を起こすO139型(ベンガルコレラ)が知られている
【疫学】熱帯・亜熱帯地域で発生し、世界のコレラ患者は年20〜25万人。日本では輸入感染症が主で、バリ島で集団発生のあった1995年を除いて、毎年2ケタ台の患者数が続いている。ほとんどがエルトール小川型(汎流行)
【感染】
経口感染(水系感染を含む)による。酸に弱く、大部分は胃酸によって殺菌されるが、小腸粘膜上皮細胞内で増殖する場合がある。そこで産生されるコレラ毒素(CT)の働きにより、腸管上皮細胞からNa+・Cl-・水が分泌される
感染症法の2類感染症。代表的な輸入感染症で、増加傾向にある
【症状】激しい下痢(米のとぎ汁様)、脱水症状、体内総K量の減少、代謝性アシドーシス、過呼吸、コレラ様顔貌(眼窩の凹み)、洗濯婦の手(手がしわしわ)、痙攣、意識障害、ショック状態etc.      ※発熱(−)、腹痛(−)
【治療】脱水の治療(電解質を含んだ十分な輸液)、抗生物質の投与(テトラサイクリン系、ニューキノロン系、ST合剤)
腸炎ビブリオ腸炎
【原因】腸炎ビブリオVibrio parahemolyticus…ビブリオ属に属する。コンマ状の形態。鞭毛をもち、運動性を有する。塩分を好み、普段は海水中に生息
【感染】本菌の付着した海魚を摂取することによって、感染型食中毒を起こす
【疫学】食中毒の原因として2番目に多い。発生は夏季に集中
【症状】12〜24時間の潜伏期の後、下痢(腐敗臭が特に強い)、胃痙攣様の上腹部痛、嘔吐、発熱をきたす。予後良好で、数日以内に軽快
【治療】輸液などの対症療法で十分
Vibrio vulnificus
感染症
【感染】本菌の付着した海産物・海水から感染する
【症状】健常人ではほとんど問題となるような症状を呈さないが、肝硬変・DMなどが基礎疾患にある患者では重篤な軟部組織感染症を伴う敗血症が起こる
【予後】肝硬変患者では致命的になる可能性がある







ペスト
plague
【原因】ペスト菌Yersinia pestis…自然宿主は野ネズミ
【感染】
ネズミなどの囓歯類に感染し、その値を吸ったノミがヒトを刺すことによりヒトに感染する。その他、腺ペスト患者からの接触感染、肺ペストからの飛沫感染が起こりうる
感染症法で1類感染症に指定されており、生物兵器としての使用が危惧されている
【疫学】わが国では1926年を最後に1例も発生していない。世界的にみても発生地域は限られている
【症状】全身のリンパ節腫脹、疼痛、発熱が起こる。病勢とともに全身衰弱、痙攣、意識障害が起こり(腺ペスト)、腺ペストがさらに進行すると気道に排菌されるようになる(肺ペスト)
【予後】早期に治療しなければ致命率は100%に近い
仮性結核菌(Yp)・
腸炎エルシニア
(Ye)感染症
【原因】仮性結核菌Yersinia pseudotuberculosis、腸炎エルシニアYersinia enterocolitica
【感染】野性動物や家畜の腸管内に生息しており、これらの動物により汚染された水の摂取あるいは菌の付着した肉類の摂取により経口感染する。細胞内寄生菌で、腸管上皮細胞に侵入した後、付近のリンパ節で増殖する
【症状】Ye感染症…数日の潜伏期の後、発熱、下痢、腹痛を中心とする感染性食中毒を起こす
Yp感染症…Ye感染症の症状+発熱の数日後に、川崎病様の症状が出現し、さらに半月後くらいに関節炎をきたすことがある









インフルエンザ菌
感染症
【原因】インフルエンザ菌Haemophilus influenzae…ヘモフィルス属に属する。通性嫌気性菌。成人の鼻咽頭の常在菌
【分類】莢膜抗原によりa〜f型に分類されるが、特にb型(HIBとよばれる)が病原性が強い
【症状】
呼吸器感染症…a〜f型すべてが起炎菌となりうる。鼻咽頭炎、副鼻腔炎、喉頭蓋炎、中耳炎、肺炎、慢性呼吸器疾患(気管支拡張症やCOPD etc.)の急性増悪etc.
全身症状…b型の場合、敗血症、小児の髄膜炎の起炎菌となりうる
【検査】チョコレート培地での培養
【治療】βラクタマーゼ産生菌が約30%あり、第1選択は第三世代セフェムとニューキノロン系(感受性試験でβラクタマーゼ非産生菌と分かれば、アンピシリンを使用)
軟性下疳
soft chancre
【概念】下疳=陰部がただれて潰瘍を起こすこと
【原因】Haemophilus ducreyiヘモフィルス属の一種
【感染】性行為感染
【症状】数日の潜伏期の後、陰部に有痛性の潰瘍を形成し、鼠径部リンパ節が腫脹する
【治療】マクロライド系、ST合剤
クレブシエラ感染症
Klebsiella infection
【原因】クレブシエラ属Klebsiella…分厚い莢膜をもった通性嫌気性、非運動性の菌。口腔内・腸管内の常在菌。弱毒菌ではあるが、本来的にペニシリン耐性なので、ペニシリン系の長期投与により、菌交代現象をきたして臨床症状を呈する
【分類】4種類ある。臨床上最も問題となるのは肺炎桿菌K. pneumoniaeで、他にはK. oxytoca etc.
【症状】
肺炎クレブシエラ肺炎のGram染色(莢膜を有するGram陰性桿菌、多核白血球)原因…K. pneumoniae
疫学…compromised hostに二次性肺炎を起こすことが多いが、大量飲酒者などに一次性肺炎を起こすこともある
症状…二次性肺炎の場合には緩徐進行性で、微熱、咳嗽、喀痰(糸を引く粘稠性の高い痰)などをきたす。一方、一次性肺炎の場合には急激に、高熱、激しい咳嗽、多量の粘稠性の喀痰、胸痛、呼吸困難、チアノーゼなど重篤な症状をきたす
その他の
症状
原因…K. oxytocaが多い
感染…compromised hostに日和見感染として発症
症状…出血性大腸炎、尿路感染症、胆道感染症、髄膜炎、敗血症、肝膿瘍、眼内炎etc.
【検査】肺炎の場合、胸Xpにて空洞形成
【治療】第三世代セフェムが第1選択(アミノグリコシド系も有効)
セラチア感染症
【原因】セラチア属…クレブシエラ属に類似。弱毒菌ではあるが、タフな菌である
【症状】compromised hostに日和見感染を起こす。尿路感染症、敗血症etc.
【検査】本菌の一部は培養にて赤〜桃色の色素を産生
【治療】第三世代セフェム、アミノグリコシド系
百日咳
whooping cough
(pertussis)
【原因】百日咳菌Bordetella pertussis…ボルデテーラ属の一種。好気性菌。百日咳毒素(PT)をはじめとする5種類以上の毒素を産生
【疫学】夏季に好発。世界的にみられるが、わが国では予防接種の普及により減少傾向
【感染】飛沫感染により気道に入った菌は、線毛細胞に付着・増殖し、毒素によって線毛運動を抑制する。血中には侵入せず、常に気道粘膜にとどまる。感染力はカタル期に最も強い。終生免疫
【症状】
新生児〜生後2ヶ月…無呼吸発作、痙攣(より重篤)etc.
   ※抗体が胎盤移行しないため、新生児でも罹患することがある
生後3ヶ月〜学童期…約2週間の潜伏期の後、カタル期(症状は軽い咳嗽のみ)→痙咳期(刺激により突然痙攣するような咳発作を連続して起こす。発作中は息が吸えず、呼吸困難・チアノーゼ・顔面の浮腫状紅潮などをきたす。発作後は深くて長い笛声音が聴取される)→回復期(次第に発作の回数・程度が軽減)と進行
成人…無症状or気管支炎
合併症…肺炎(二次感染)、中耳炎、肺気腫、皮下気腫、無酸素血症による脳症・痙攣、脳浮腫・頭蓋内出血、結膜下出血、嘔吐
【検査】血液検査⇒WBC↑(特にLympho.↑↑)、CRP→
培養検査…Bordet-Gengou培地などの特殊な培地が必要
【予防】3種混合ワクチン(DPTワクチン)
【治療】マクロライド系、テトラサイクリン系、アンピシリン、第三世代セフェムなどが使用されるが、抗生物質が著効するのはカタル期のみ
ブルセラ病
brucellosis
【原因】ブルセラ菌…好気性菌。細胞内寄生菌
【感染】人畜共通感染症で、感染した家畜との接触、乳製品の摂取によって、ヒトに感染する。感染症法の4類感染症
【症状】発熱(典型的には波状熱)、リンパ節腫脹、肝脾腫etc.
【治療】ストレプトマイシン、テトラサイクリン系
緑膿菌感染症
Pseudomonas
aeruginosa

infection
【原因】緑膿菌Pseudomonas aeruginosa…シュードモナス属に属する。好気性菌で、発酵は行わない。土壌、下水、ヒトや動物の腸管などに存在し、特に湿った場所を好む傾向がある。栄養要求性が低く、栄養分のほとんどない場所でも生息できる。健常人にはほとんど無害だが、非常にタフな菌で、分厚い莢膜を有し、粘液を分泌し、バイオフィルムを形成するため、薬剤が効きにくい。病棟で頻用される消毒液(クロルヘキシジン、逆性石鹸)中でも生息可能である
【感染】compromised hostに対する日和見感染の代表的な菌種で、院内感染の原因として重要
【症状】慢性呼吸器感染症患者に対する肺炎、尿路通過障害をもった患者や尿道カテーテル留置患者に対する膀胱炎・腎盂腎炎、慢性中耳炎の増悪、敗血症、髄膜炎、心内膜炎etc.
【検査】長時間培養すると、緑色の色素を産生
【治療】カルベニシリン・スルベニシリン・ピペラシリンなどのペニシリン系、アミノグリコシド系第三世代セフェム、ニューキノロン系etc.
レジオネラ症
legionellosis
【原因】レジオネラ菌Legionella pneumophila…土壌中や河川に広く分布。非常にタフな菌で、栄養要求性が非常に低い。細胞内寄生菌
【疫学】細胞性免疫の不十分な新生児の他、基礎疾患を有し、抗癌剤や免疫抑制剤を使用中の患者などに好発
【感染】塵埃を介した気道感染。感染症法の4類感染症
【症状】肺炎…数日の潜伏期の後、突然、高熱、咳嗽、喀痰などを呈し、適切な治療が行われないと、症状は急速に進行し、呼吸困難、意識レベルの低下をきたし、死亡することもある
【検査】グラム染色にて不染、通常の培地にて発育しない(BCYE-α培地が必要)
【治療】マクロライド系(エリスロマイシンetc.)、リファンピシンの他、ニューキノロン系が有効
カンピロバクター
感染症

campylobacter
infection
【原因】カンピロバクター属…微好気性菌。らせん状orS字状の鞭毛を有する菌。家畜の腸管内に常在
【疫学】感染性下痢症の起炎菌の中でもかなりの部分を占めるカンピロバクターのGram染色(鞭毛を有するGram陰性桿菌)
【感染】人畜共通感染症の1つで、本菌に汚染された生焼けの肉類生ミルクの摂取により経口感染
【症状】
感染性食中毒…2〜11日の潜伏期の後、発熱、腹痛、下痢(最初は水様、後に粘血便)をきたす。一般に予後良好で、数日以内に軽快するが、compromised hostの場合には敗血症を起こすこともある
その他の症状…Guillain-Barre´症候群
【検査】スキロー培地による培養、糞便の直接鏡検
【治療】輸液などの対症療法で十分だが、マクロライド系の投与は有効
嫌気性菌感染症











バクテロイデス
感染症
【原因】バクテロイデス属Bacteroides…ヒトの口腔・大腸の常在菌(大腸正常菌叢の99%以上を占める)
【感染】内因性感染。好気性菌が先行感染を起こし、酸素を消費した後に、嫌気性菌である本菌が増殖するという二相性の感染形式をとる
【症状】腸管穿孔による化膿性腹膜炎肝膿瘍、胆嚢炎etc.
【検査】肥だめと同じような特有の臭い、培養には嫌気性菌様の特殊な培地が必要(他の嫌気性菌にも共通)
【治療】βラクタマーゼ阻害薬を合剤にしたペニシリン系、第三世代セフェム、カルバペネム系etc.






























ペプトストレプト
コッカス感染症
【原因】ペプトストレプトコッカスPeptostreptococcus…連鎖状につながるG陽性球菌。口腔内の常在菌で、粘膜の凹みに大量に生息している
【感染】内因性感染。主に誤嚥が原因
【症状】肺炎
【治療】PCG


















破傷風
tetanus
【原因】破傷風菌Clostridium tetani…クロストリジウム属に属する。自然界では芽胞の形で土壌中に広く生息している
【疫学】発展途上国を中心に年間100万人近くの死亡例があり、途上国では重要死因の1つとなっている。わが国では年間50名前後の発症(ほぼ横ばい)
【感染】本菌の生息する土壌でケガをすることによる創感染。創傷部位が壊死を起こしたり、好気性菌との混合感染を起こしたりした場合にのみ、体内で増殖して、外毒素(神経毒)を産生する。外毒素(神経毒)は運動神経に親和性を有し、運動神経終末を常時興奮させる。一度罹患しても免疫はできない。感染症法で5類感染症
【症状】通常2週間以内の潜伏期の後、顔面・頸部の筋の痙攣による症状(首の周りのつっぱり、舌のもつれ、開口障害(牙関緊急)、嚥下障害、発語障害、痙笑etc.)で初発。その後、筋症状は全身に広がり、後弓反張、全身痙攣、喉頭痙攣などによる窒息などを呈するようになる。全経過を通じて、意識と知覚障害は侵されないので、痙攣のたびに患者は相当な疼痛を訴える
【予防】DPTワクチン(トキソイドを使用)
創の洗浄、壊死組織の除去(de´bridement)、トキソイドの筋注(⇒能動免疫を強化)、PCGの投与(⇒これ以上の毒素の産生を抑制)、リスクが高い場合にはさらに抗破傷風ヒト免疫グロブリン(TIG)の注射(⇒体内の毒素を中和)
【治療】創の洗浄、壊死組織の除去、TIGの大量投与、鎮静薬筋弛緩薬(ジアゼパムetc.)の投与(⇒筋緊張を低下)、呼吸管理、暗い個室に収容(⇒刺激の回避)
【予後】一般に約2/3(新生児や老人では90%以上)が死亡する。感染から初発症状(開口障害)出現までの時間、初発症状から全身痙攣までの時間(onset time)が短いほど、予後不良
ボツリヌス症
botulism
【原因】ボツリヌス菌Clostridium botulinum…クロストリジウム属に属する。芽胞の状態で土壌中に広く分布
【感染】毒素型食中毒をきたす。原因食物として、ソーセージ、いずし、真空パックされた辛子蓮根、瓶詰めのキャビアなどが知られている(毒素は易熱性なので、加熱食品は原因とならない)。経口感染により、体内に入った毒素は神経筋接合部に入り込み、AChの放出を阻害する。感染症法の4類感染症に指定されており、生物兵器としての使用が危惧されている
【症状】
12〜36時間の潜伏期の後、眼症状(眼瞼下垂、散瞳、複視、羞明etc.)、唾液分泌不全、球麻痺症状(嚥下困難、発語困難etc.)、排尿障害、発汗障害などで発症する。重篤な場合には、呼吸筋麻痺をきたして、死に至る。全期間を通じて、意識障害、痙攣、知覚神経麻痺、発熱はみられない
乳児ボツリヌス症…乳児(特に生後3週間〜8ヶ月)が、食物(ハチミツetc.)中の本菌の芽胞を摂取することによって起こる。芽胞は乳児の大腸で発芽し、ここで毒素を産生することにより発症する。初発症状は便秘で、やがて泣き声の弱小化、哺乳力の低下、無気力様顔貌、全身の筋緊張の低下(floppy infant)などをきたし、重篤な場合には突然呼吸停止を起こす
【診断】Guillain-Barre´症候群(GBS)との鑑別が問題となることがある。本症では顔面領域の症状が先行して、次第に下行していくのに対して、GBSでは下肢から発症して、次第に上行してくるという違いがある
【治療】ウマ血清による毒素の中和、必要に応じて呼吸管理
ウェルシュ菌
感染症
【原因】ウェルシュ菌Clostridiumu welchii(正式名称はC. perfringens)…土壌中に広く芽胞の形で生息ガス壊疸の足Xp(びまん性のガス像)
【症状】
ガス壊疸感染…創から侵入し、蛋白分解酵素を含んだ外毒素とガスを産生。進行すると、外毒素は血中に入り、溶血毒としても作用
症状…疼痛、握雪感、筋肉壊死(主に殿部、下肢)、肥だめ様の腐敗臭、黄疸、DIC、ショックetc.
治療…創の洗浄、壊死組織の除去、PCGの投与、高圧酸素療法
食中毒感染…中間型食中毒をきたす。至適発育温度が40〜50℃であり、一度作った料理を冷蔵庫で保存し、温め直して食べた場合に起こりやすい
症状…8〜12時間の潜伏期の後、腹痛、下痢、発熱などをきたす
治療…予後良好で、特別な治療は不要
※ガス壊疸は、Gram陰性桿菌(大腸菌、緑膿菌etc.)と嫌気性菌(バクテロイデスetc.)との混合感染で起こることもある。この場合には、DMなどの基礎疾患があり、自覚症状が軽度の場合が多い
偽膜性腸炎
pseudo-
membraneous
colitis
【原因】Clostridium difficile…クロストリジウム属に属する。土壌中およびヒトや動物の腸管内に芽胞として常在している。本菌の産生する毒素が本症の原因となる
【誘因】抗生物質(クリンダマイシン、アンピシリン、セフェム系etc.)の長期投与による正常細菌叢の破壊
【症状】抗生物質を1〜2週間使用した場合に、下痢(粘血便)、発熱、腹痛、しぶり腹などの大腸炎症状を起こす
【検査】大腸内視鏡検査⇒偽膜
便検査…便培養にてC. difficile(+)、便中から本菌の毒素
【治療】抗生物質の投与中止を行う。重症例に対しては、輸液とバンコマイシンの経口投与を行う
マイコバクテリウム感染症(抗酸菌感染症)
   抗酸菌とは、通常の酸やアルカリによって脱色されにくい性質を有する菌のことである
結核
tuberculosis
【原因】結核菌Mycobacterium tuberculosis…細胞壁に多量のろう脂質を含み、酸・アルカリ・有機溶剤・種々の消毒剤に抵抗性を示す。グラム染色では部分的にまだらにしか染まらず、加温染色法(Ziehl-Neelsen法etc.)により赤く染められる。ここまではすべてのマイコバクテリウムに共通の性質で、結核菌に特異的にみられる性質としてはナイアシン産生性があげられる。細胞内寄生菌である
【疫学】日本国内で約2300人が結核で死亡している。1999年に結核非常事態宣言が出されたが、近年は減少傾向で、新登録患者数は年間3万人強、総登録患者数は8万人強(罹患率は10万人対で約25)。男女比は1.9:1。栄養状態・免疫状態の衰えた高齢者、HIV感染者、低所得階級層などに好発。結核が原因の死亡は年間約3000人
【感染】経気道感染(大部分が飛沫感染、一部が塵埃感染)により肺胞に侵入・増殖して、初感染巣を形成すると同時に、所属リンパ節腫脹をきたす(初期変化群)。細胞性免疫が十分にあれば石灰沈着を伴って治癒するが、不十分な場合に下記の症状をきたす
【症状】
一次
結核症
初感染巣の広がりによる症状。肺病変は下葉に好発。その他、所属リンパ節腫脹、頸部リンパ節腫脹、髄膜炎、腎結核、骨結核、副腎結核、関節結核、粟粒結核(急激に全身症状をきたし、時に類白血病反応を起こす。末期になるまで排菌はみられない)、胸膜炎、胸水貯留、管内性散布(気道を介した全肺野への散布)、喉頭結核etc.
※肺からの血行性散布が起こりやすい臓器は、脾、肝、骨髄、腎、副腎、眼etc.
二次
結核症
成人の肺結核のほとんどを占める。初感染時に結核菌の作った小病巣がいったん治まった後に、抵抗力の減弱に伴って再燃し、数年から数十年後に発病するもの(内因性再然)。肺病変は肺後上部(S1、S2、S6)に好発し、空洞形成、娘病巣などを伴う。その他、初感染結核症と同様の症状がみられる
【検査】
胸部Xp⇒石灰化、空洞形成etc.
ツ反⇒通常陽性。感染初期、アネルギー(麻疹・風疹などのウイルス感染、サルコイドーシス、悪性リンパ腫、粟粒結核、ステロイド剤・免疫抑制剤投与中etc.)では陰性となる
塗抹染色検査…Gaffky号数が決定される
培養検査…小川培地が必要(培養結果が出るまでには3週間以上必要)
核酸検査            ※胸水からの結核菌の証明は困難
粟粒結核の検査…肝生検、骨髄生検、経気管支肺生検、眼底検査(⇒脈絡膜に結節)
【治療】
耐性菌の少ないイソニアジドとリファンピシンを優先的に使用し、これにストレプトマイシンorエタンブトールを組み合わせる3剤併用療法が中心(WHOは、これにピラジナミドを加えて4剤併用療法を行うことを勧告している)。薬物治療開始後1〜3ヶ月の間に初期悪化がみられることがあるが、治療継続で解消される。治療は6ヶ月間行う
抗結核薬とその副作用
イソニアジド(INH)肝機能障害、末梢神経障害(四肢のしびれ感、灼熱感など。ビタミンB6不足が原因)、SLE様症状
リファンピシン(RFP)消化器症状、血小板減少症、感冒様症状、肝機能障害、アレルギー症状(腎不全、ショック症状etc.)etc.
ストレプトマイシン(SM)第[脳神経障害腎障害
エタンブトール(EB)視神経障害(球後視神経炎)
ピラジナミド(PZA)肝機能障害、高尿酸血症
サイクロセリン(CS)精神障害(精神錯乱、てんかん様発作etc.)
パラアミノサリチル酸塩胃腸障害、アレルギー反応
非定型抗酸菌感染症
atypical mycobacteriosis
(AM)
【原因】非定型抗酸菌atypical mycobacteria…結核菌以外の抗酸菌の総称。土壌中および健常人の皮膚・口腔に生息。弱毒菌で、ナイアシン非産生性。ヒトからヒトへの感染はない
【分類】Runyon分類により、4菌種に分けられる。その中で最も多いのがMycobacterium avium complex
【感染】ヒトからヒトへの感染はなく、隔離・N95マスクの着用などは不要
【症状】compromised hostや慢性肺疾患患者に対する二次性肺炎として発症する場合がほとんど
【治療】抗結核薬が効きにくい(あまり有効な薬がない)
Hansen病(らい)
leprosy
【原因】らい菌Mycobacterium leprae
【感染】感染には乳幼児期からの頻繁かつ濃厚な接触が必要で、成人の感染のリスクはほとんどない。創傷や粘膜からの感染と考えられている
【症状】
類結核型
(T型)
細胞性免疫が比較的保たれている患者に起こる。症状は末梢神経・皮膚の一部に限局し、結核のような病理変化をもたらし、知覚麻痺が中心症状となる
らい腫型
(L型)
細胞性免疫が低下した患者に起こる。全身にらい腫を形成(小指大の結節性皮疹、獅子面様の顔面などの皮膚症状の他、失明、鼻閉、鞍鼻、顔面神経麻痺による兎眼などをきたす)
【検査】末梢神経機能検査(⇒知覚障害、筋萎縮etc.)、抗酸菌染色、抗PGL-1抗体価↑、PCR法etc.
【治療】リファンピシンDDS(サルファ剤の一種)を中心に多剤併用療法
放線菌属感染症
放線菌症
actinomycosis
【原因】放線菌Antinomyces…放線菌属に属するG陽性嫌気性多形性桿菌。口腔・大腸などの常在菌
【感染】内因性感染。増殖すると化膿性or肉芽腫性病変を起こし、多数の瘻孔を形成。瘻孔から膿汁が排出され、膿汁内にドルーゼor硫黄顆粒とよばれる黄色い菌塊が観察される
【症状】
顔・頸部
放線菌症
齲歯などから侵入・増殖して起こる。下顎に化膿性or肉芽腫性病変を形成。板状硬で、皮膚の発赤、皮膚と粘膜の間の瘻孔形成、膿汁排出がみられる
肺放線菌症誤嚥により起こる。肺内に化膿性or肉芽腫性病変を形成。症状は肺真菌症に類似し、喀痰中のドルーゼ、胸膜炎、胸壁への瘻孔形成などが認められる
【治療】PCGが著効
ノカルジア症
nocardiosis
【原因】ノカルジア菌Nocardia…放線菌に属するG陽性好気性多形性桿菌。土壌中にのみ生息。弱毒菌だが、抗酸性を示すノカルジア肺炎のGram染色(分節状分枝状の菌糸)
【感染】外因性感染。本菌の付着した塵埃を吸入することにより感染
【症状】肺ノカルジア症…ほとんどが日和見感染として発症
【治療】
サルファ剤が第1選択。他にミノサイクリンも有効
 
スピロヘータ感染症













































梅毒
syphilis
【原因】トレポネーマTreponema…スピロヘータ科に属するらせん状のG陰性細菌。活発に運動する。高温。低温、乾燥に弱い
【感染】性行為感染、垂直感染を起こす(5類感染症
【症状】
後天性梅毒の症状
第1期梅毒
(3週間〜3ヶ月)
約3週間の第1次潜伏期の後、陰茎・陰唇などの侵入部位に初期病変を形成。初期硬結(無痛性の硬結)、やがて潰瘍化(硬性下疳)をきたす。その他、無痛性横痃(鼠径部リンパ節の無痛性腫脹)を伴う。これらは約1ヶ月で自然消失し、第2次潜伏期に入る
第2期梅毒
(3ヶ月〜3年)
風邪様症状をみた後、全身のリンパ節腫脹、粘膜疹第2期梅毒疹バラ疹、皮疹、白斑、膿疹etc.)、扁平コンジローム(陰部などに生じる)、梅毒性乾癬(手掌・手足などに生じる)、梅毒性脱毛(びまん性or虫喰い状の脱毛)などを呈する。これらは消失・再発を繰り返す
第3期梅毒
(3年〜10年)
皮膚・粘膜・骨・肝などにゴム腫(凝固壊死の一種)、結節性梅毒などが生じる
第4期梅毒
(10年〜)
変性梅毒ともよばれる。進行麻痺(精神神経症状が中心)、脊髄癆(脊髄障害が中心)、大動脈瘤(大動脈炎が原因)などを起こす
先天性梅毒の症状
胎児梅毒妊娠後期の胎内感染が原因。死産or早産が起こる
乳児梅毒
(早発性先天性梅毒)
生後数週から数ヶ月の間に、第3期に相当する梅毒を呈する。典型的には、Parrot溝(口の周囲に出現する放射状の瘢痕)・梅毒性鼻炎(鞍鼻etc.)による老人様顔貌、Parrotの仮性麻痺(長管骨の骨軟骨炎があり、疼痛のために手足を動かさない現象)、脈絡膜炎、水頭症、肝脾腫、リンパ節腫大、体重増加不良などを呈する
晩発性先天性梅毒学童期以降に第3期に相当する梅毒を呈する。典型的には、Hutchinsonの三徴Hutchinson歯牙(永久歯が短く、ビア樽状で、咀嚼する部分が陥凹)、実質性角膜炎内耳性難聴)を呈する
【検査】
トレポネーマの検出…トレポネーマは染色されにくく、培養が不可能である上、トレポネーマが検出されうるのは第T期の硬性下疳、第U期の扁平コンジローム・粘膜疹のみである。菌が生存していれば、暗視野顕微鏡墨汁染色にて観察可能だが、菌が死滅している場合には鍍銀染色が必要となる。その他、間接蛍光抗体法(FTA法)やさらに精度を上げたFTA-ABS検査が行われる
血清学的検査…脂質抗原法である梅毒血清検査(STS法)、トレポネーマ抗原法であるTPHA検査
STSTPHA臨床的意義
未感染or感染後1ヶ月以内
生物学的偽陽性(BFP)orこれからTPHAが陽性になる場合
治癒後の梅毒
感染力のある梅毒
※生物学的偽陽性(BFP)…正常妊娠、膠原病、慢性肝炎、肺結核・麻疹などの感染症etc.
【治療】PCGが第1選択。その他、エリスロマイシン、テトラサイクリン系が使用されることもある
治療開始後約半日で、発熱や皮疹の増悪をみることがある(Jarisch-Herxheimer現象)が、治療は継続してよい
【予防】Treponema pallidumは4℃、72時間の保存で死滅するため、保存血を介した梅毒の感染はない
回帰熱
relapsing fever
【原因】回帰熱ボレリアBorrelia recurrentis…スピロヘータ科に属するらせん状のG陰性細菌。シラミやダニが媒介
【疫学】日本では発生例はない
【症状】波状熱を起こし、解熱に際してしばしばショック症状をきたす
【治療】テトラサイクリン系が有効
ライム病
Lyme disease
【原因】ライム病ボレリアBorrelia burgdorferi…スピロヘータ科に属するらせん状のG陰性細菌。マダニが媒介
【疫学】日本では1987年に第1例が報告されたが、集団発生は今のところみられていない。春から夏にかけて好発
【感染】マダニの咬傷により感染。感染症法の4類感染症
【症状】
第1期1〜3週間の潜伏期の後、咬傷部位から遠心性に紅斑が広がる(慢性遊走性紅斑)。その後、感冒様症状が出現するが、多くの場合いったん軽快する
第2期1〜3ヶ月後から始まる。諸臓器で本菌が増殖するために起こる。多数の慢性遊走性紅斑の他、関節炎、末梢神経縁、髄膜炎、心臓の伝導障害、多彩な神経徴候(両側性の顔面神経麻痺etc.)などが起こるが、その後いったん軽快する
第3期数年後から始まる。諸臓器における免疫反応が原因。変形を伴う大関節炎、慢性萎縮性肢端皮膚炎(ACA)などが起こる
【検査】抗ライム抗体価↑(感染の約4週間後〜)
【治療】テトラサイクリン系の他、ペニシリン系、第三世代セフェムが有効


















レプトスピラ
感染症
leptospirosis
【原因】レプトスピラLeptospira…らせん状の細菌。ネズミなどの哺乳類の腎臓に生息し、これらの尿中に排菌される
【疫学】熱帯・亜熱帯の国々で散発的流行・風土病化が認められる
【分類】2種類あるが、病原性を有するのはL. interrogans属。さらに血清型により約180種類に分類されるが、この中で臨床上最も重要なのは黄疸出血性レプトスピラL. interrogans serovar icterohaemorrhagiae
【感染】本菌で汚染された水田・河川・池・どぶなどを介した経皮感染によりヒトの体内に侵入。ヒトからヒトへの感染は原則としてない。感染症法の4類感染症
【症状】
Weil病(黄疸出血性レプトスピラ症)
第1期(発熱期)数日の潜伏期の後、突然39℃以上の高熱で発症。高熱は数日間稽留し、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛(特に腓腹筋痛)、関節痛、球結膜充血などの症状を伴う。第1期の終わり頃には、腎炎所見(蛋白尿、尿沈渣にて細胞成分)が認められるようになる
第2期(黄疸期)黄疸出血傾向(皮下出血、粘膜出血)を呈する。重症例では、鼻出血、吐血、血尿、血便、意識障害、心筋炎による循環不全、腎不全、髄膜炎などを起こし、死亡することもある
第3期(回復期)回復。時に一過性の発熱がみられる
その他のレプトスピラ症
福岡県の七日熱、静岡県の秋疫病などの風土病を起こす。症状はWeil病の軽症で、予後良好
【検査】血液検査⇒ESR↑、CRP↑、WBC↑(主にNeutro.)、Bil↑(T-Bil↑、I-Bil↑)、AST・ALT→〜↑、BUN↑
尿検査⇒蛋白尿、尿沈渣にて細胞成分(+)
本菌の検出…第1期では血液培養、第2期以降では尿培養or尿沈渣の暗視野顕微鏡による検鏡、血中抗体価↑(第2期以降)、核酸検査
【予防】水田、牧場、下水溝などで作業をする人に対してゴム手袋・ゴム長靴の装着を勧めるとともに、予防接種を行う
【治療】アミノグリコシド系(ストレプトマイシンetc.)、テトラサイクリン系、ペニシリン系が有効
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