急性白血病 acute leukemia |
【概念】 | 分化を忘れた異常クローンの腫瘍性増殖⇒骨髄中の白血病芽球≧有核細胞全体の30% |
【分類】 | - 急性骨髄性白血病(AML)
- MPO染色で芽球≧3%が原則。Auer小体(+)の場合が多い
M0 未分化型骨髄芽球性白血病 | 最も未分化なAMLで、MPO陽性芽球<3% 電顕or免疫学的検査にて骨髄系の徴候(+)andリンパ系の徴候(−) |
M1 骨髄芽球性白血病 | ほとんど分化傾向を示さないが、M0よりは分化している |
M2 分化型骨髄性白血病 | 分化傾向を伴うAMLで、幼若芽球の10%以上が前骨髄球以降に分化している しばしばAuer小体(+) |
M3(APL) 前骨髄性白血病 | MPO陽性芽球≒100% 前骨髄球の形態をもった白血病細胞が増殖(針状のAuer小体、faggot細胞を認める) t(15;17)(q22;q21)の相互転座がみられ、予後不良 |
M4(AMMoL) 骨髄単球性白血病 | 顆粒球系と単球系の双方への分化傾向を示す白血病細胞が増殖、しばしばAuer小体(+) エステラーゼ染色にて、顆粒球系細胞はクロロアセテートEに染まり、単球系細胞はブチルアセテートEに染まる(単球系はさらにNaF抑制試験陽性) |
M5(AMoL) 単球性白血病 | 単球系の性格を示す白血病細胞が増殖、しばしばAuer小体(+)
エステラーゼ染色にて、ブチルアセテートEにのみ染まり、NaF抑制試験(+)・M5a…増殖の中心が幼若な単芽球。MPO陽性芽球<3% ・M5b…増殖の中心が比較的成熟した細胞で、核には単球様の切れ込み |
M6 赤白血病 | 赤芽球系の異常クローン(赤白血病細胞)と、骨髄芽球が増殖 (赤白血病細胞が骨髄中の芽球の50%以上、骨髄芽球が30%以上) 赤白血病細胞は、核が未熟で巨赤芽球様、さまざまな奇形を伴い、PAS染色で強陽性 |
M7 巨赤芽球性白血病 | 巨核球の性質を示す白血病細胞が増殖したもので、MPO陽性芽球<3% 電顕or免疫学的検査にて巨核球系の徴候(+) Down症と関連が深い他、30%以上に骨髄線維症の合併がみられる |
- 急性リンパ性白血病(ALL)
- MPO染色で芽球<3%が原則。Auer小体(−)
L1 | 小形で核小体のはっきりしないリンパ芽球様の白血病細胞が増殖。小児のALLで特に多い |  |
L2 | 比較的大型で核小体のはっきりした白血病細胞が増殖 成人のALLによくみられる |
L3 (Burkitt型) | 表面に免疫グロブリンを認める、Burkittリンパ腫に酷似した大型の細胞が増殖。この80%はt(8;14)の染色体異常を有する |
ALLの80%近くは分化初期のB細胞白血病で、common ALLとよばれる
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【疫学】 | 好発年齢は小児(特に2〜4歳)と中高年齢層。前者ではALLが中心、後者ではAMLの方が多い |
【原因】 | 染色体の突然変異が原因で、不明な点が多い。AMLに多い二次性白血病の原因としては、化学療法(アルキル化剤、エオトポシドなどのトポイソメラーゼ阻害薬)、放射線照射などがある。ALLの一部ではPh1染色体が検出される |
【症状】 | 骨髄抑制による症状…貧血症状(動悸、息切れ、倦怠感etc.)、易感染性、出血傾向(皮膚の点状出血、粘膜出血etc.) 臓器浸潤による症状…肝脾腫、リンパ節腫脹(特にALL)、骨痛、関節痛、髄膜炎(特に小児のALLに多い)、AMLでは緑色腫・眼球突出、M4・M5では歯肉腫脹・歯肉出血 その他…M3ではDIC |
【検査】 | 末梢血⇒WBC↑↑、幼若芽球(+)、白血病裂孔(+)、RBC↓、Hb↓、Ht↓、Plt↓、NAP↓〜↑ 骨髄⇒一般に過形成、白血病芽球が占領(≧有核細胞全体の30%) 生化学⇒血清LDH↑、血清尿酸↑、M4・M5では血清・尿中リゾチーム↑、ALLではTdT活性(+) |
【予後】 | 成人のAML…60〜80%で完全寛解導入、5生は15% 小児のALL…90%が完全寛解、5生は60%以上(予後不良因子…1歳以下or10歳以上、男児、WBC≧2万、Burkitt型、T・B細胞表面マーカー(+)、縦隔腫瘤、中枢神経浸潤、Ph1染色体(+)etc.) |
【治療】 | 化学療法…寛解導入療法→地固め療法→強化療法→維持療法 ・寛解導入療法:AMLではダウノルビシン(DNR)・シタラビン(Ara-C)中心。ただし、M3ではATRA※ ALLではL-アスパラギナーゼ(ASP)・ビンクリスチン(VCR)・プレドニゾロン(PSL)※ATRA(レチノイン酸)の副作用…ATRA症候群(肺浸潤を伴う低O2血症)、皮膚・粘膜の障害、高脂血症etc. ・地固め療法:寛解導入直後の強力化学療法 ・強化療法:間欠的な強力化学療法 ・維持療法:持続的な毒性の低い化学療法 骨髄移植…50歳以下、化学療法による治癒が困難なケースが適応の中心 支持療法…必要に応じて、赤血球輸血、血小板輸注、抗生剤投与、輸液、アロプリノール投与etc. |
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hairy cell leukemia |
【概念】 | 形質細胞の前段階のB細胞由来の白血病 |  |
【疫学】 | 中年以降の男性に好発 |
【症状】 | 緩徐進行性で、巨大脾腫などをきたす |
【検査】 | 汎血球減少、酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(+)、骨髄dry tap、毛髪状突起を有する白血病細胞 |
【治療】 | IFNα、デオキシコルホマイシン |
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骨髄異形成症候群 myelodysplastic syndrome(MDS) |
【概念】 | 造血幹細胞に生じた異常クローンの増殖⇒無効造血による汎血球減少(or二系統の血球減少) |
【疫学】 | 高齢者に好発。高率に急性白血病に移行(前白血病状態) |
【分類】 |
病型 | 末梢血中 芽球 | 骨髄中 芽球 | 白血病への 移行 | その他の特徴 |
不応性貧血(RA) | <1% | <5% | low risk群 | |
環状鉄芽球を伴うRA (RARS) | 骨髄中の環状鉄芽球>15%、鉄芽球性貧血の一部を構成 |
芽球増加を伴うRA(RAEB) | <5% | 5〜20% | high risk群 | |
移行期のRAEB(RAEB-t) | ≧5% | 20〜30% | RAEBが急性白血病に移行しつつある段階。Auer小体(+)。WBC↑ |
慢性骨髄単球性白血病 (CMMoL) | <5% | <20% | 末梢血中単球↑、WBC↑、血清リゾチーム↑ |
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【症状】 | 貧血症状(動悸、息切れ、倦怠感etc.)、易感染性、出血傾向(皮膚の点状出血、粘膜出血etc.) |
【検査】 | 末梢血⇒汎血球減少(RBC↓、Hb↓、Ht↓※、WBC↓or↑、Plt↓)、芽球(+)、血球の形態異常(好中球の偽Pelger-Hue¨t核異常、巨大血小板)、NAP→or↓ ※しばしば大球性正色素性貧血となる 骨髄⇒過形成、芽球<30%、無効造血 その他…50〜70%で染色体異常 |  |
【治療】 | low risk群⇒経過観察が中心。必要に応じて支持療法(赤血球輸血、血小板輸注、抗生剤・G-CSFの投与) high risk群⇒支持療法に加えて、骨髄移植、AMLに準じた強力化学療法、少量Ara-C投与etc. |
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慢性骨髄性白血病 chronic myelocytic leukemia(CML) |
【概念】 | 多能性幹細胞が腫瘍性増殖 |
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【原因】 | フィラデルフィア染色体(Ph1染色体)=t(9;22)(q34;q11)の相互転座、bcr/ablのキメラ遺伝子の作り出す蛋白が強いTk活性を有する |
【疫学】 | 中高年齢層に多いが、頻度はAMLの約1/4 |
【症状】 | 緩徐進行性で、自覚症状をあまり伴わず、偶然発見されるケースがほとんど。進行すれば、巨大脾腫、肝腫大、食欲不振をきたす |
【検査】 | 末梢血⇒白血病裂孔(−)、WBC↑↑(幼若芽球<成熟白血球)、 Neutro.↑、Eosino.↑、Baso.↑、NAP↓↓、RBC↓、Hb↓、Plt↑(後に↓) 骨髄⇒過形成(M/E比↑)、巨核球↑ 生化学⇒血清Vit. B12↑、不飽和Vit. B12結合能↑、血清尿酸↑、血清LDH↑、血清ヒスタミン値↑ |
【予後】 | 骨髄移植を行わない限り、診断確定後平均3〜4年で急性転化を起こして死亡する ※急性転化=骨髄と末梢血の芽球比率≧30%、急性白血病に類似する病状(急性白血病様の臨床症状、白血病裂孔(+)、NAP↑etc.)を呈する。骨髄は二次性骨髄線維症となり、dry tap化する |
【治療】 | 慢性期の治療 骨髄移植…50歳以下、HLA一ドナーの得られるケースでfirst choice IFN-α療法…骨髄移植の適応がない症例に対するfirst choice。効くケースと効かないケースの差が激しく、副作用も多い ※最近ではIFN-αよりも副作用の少ないイマチニブが第1選択になりつつある ヒドロキシウレア…臨床症状改善の意味しかなく、急性転化の予防はできない 急性転化時の化学療法⇒ビンクリスチン(VCR)+プレドニゾロン(PSL)の併用療法 |
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慢性リンパ性白血病 chronic lymphocytic leukemia(CLL) |
【概念】 | 異常クローンをもった小形のリンパ球(95%はB細胞系)が骨髄を中心に腫瘍性に増殖⇒液性免疫不全(細胞性免疫不全も伴う) |
【疫学】 | 欧米では頻度が高く全白血病の約30%を占めるが、わが国では約3%で比較的まれ。好発年齢は60歳代 |
【症状】 | 低危険度群(頻度が高い)…ほとんど無症状で、リンパ節腫脹、肝脾腫がみられるのみ 高危険度群…発熱、体重減少、食欲不振、リンパ節腫脹、肝脾腫、液性免疫不全の易感染傾向、自己免疫疾患・悪性腫瘍の合併 |
【検査】 | 末梢血⇒RBC↓、Hb↓、Ht↓、WBC↑↑、Plt↓、NAP→ 骨髄⇒小型リンパ球の著増 その他…血清γ-グロブリン↓、ツ反(−)、PHA試験(−)、直接Coombs試験(+)、血清Vit. B12→ |  |
【治療】 | 低危険度群⇒経過観察のみ 高危険度群⇒シクロホスファミドの投与etc. |
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成人T細胞白血病 adult T-cell leukemia(ATL) |
【概念】 | HTLV-1感染後、20年以上を経て、T細胞系の白血病/リンパ腫を発症 |  |
【原因】 | HTLV-1の垂直/性行為/血液感染(主に母乳感染) |
【疫学】 | わが国に約120万人のキャリアが存在し、その半数近くが西南地域に偏在している。キャリアが本症を発生する確率は年間0.05% |
【分類】 | くすぶり型(リンパ球≦4000、無症状)、慢性型(リンパ球>4000、無症状)、リンパ腫型(リンパ節腫脹あり)、急性型(さまざまな臨床症状を呈して急速に進行) |
【症状】 | リンパ節腫大、肝脾腫、皮膚浸潤(紅斑、皮下結節、丘疹etc.)、消化器症状(←粘膜浸潤、高Ca血症) 合併症…慢性肺疾患、他臓器癌、M蛋白血症、慢性腎不全、慢性皮膚真菌症etc. |
【検査】 | 末梢血⇒WBC↑↑、花弁状の腫瘍細胞flower cell その他…血清抗HTLV-1抗体(+)、血清Ca↑、血清LDH↑、ツ反(−) |
【治療】 | くすぶり型・慢性型⇒無治療で経過観察 リンパ腫型・急性型⇒non Hodgkinリンパ腫に準じた治療法が行われるが、予後は著しく不良 |
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骨髄線維症 myelofibrosis (MF) |
【概念】 | 異常クローンをもった造血幹細胞が腫瘍性増殖⇒全身の骨髄組織の線維化、髄外造血とそれに伴う巨大脾腫、白赤芽球症 |  |
【分類】 | 特発性骨髄線維症…60歳前後に好発 続発性骨髄線維症…悪性腫瘍の骨髄転移、白血病、骨髄腫、悪性リンパ腫、結核、ベンゼン中毒などによる |
【症状】 | 緩徐進行性で、貧血症状と脾腫が中心症状。その他、右季肋部痛、肝腫大、門脈圧亢進症状etc. |
【検査】 | 末梢血⇒正球性正色素性貧血、白赤芽球症※、WBC↑、NAP↑、Plt↑、血球の形態異常(涙滴赤血球、巨大血小板etc.)
※白赤芽球症(leukoerythroblastosis)…末梢血中に通常は認められない幼若顆粒球系細胞と赤芽球が同時に出現する状態。骨髄線維症の他、悪性腫瘍の骨髄転移などでみられる 骨髄⇒線維化(dry tap)、低形成、巨核球↑、骨組織の硬化、骨梁肥厚 生化学⇒血清LDH↑、血清尿酸↑、血清I-Bil↑、ALP↑、血清リゾチーム↑、血清Vit. B12→ |
【予後】 | 平均生存期間は4〜5年で、感染と出血傾向が主要な死因。また、経過中に急性白血病様の転化をきたすこともある |
【治療】 | 特異的な治療法なし |
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類白血病反応 |
【概念】 | 何らかの基礎疾患に対して血液系が反応した結果、白血病に類似する血液所見を呈するに至った疾患 |
【原因】 | 基礎疾患として、悪性腫瘍の骨髄転移、感染症(粟粒結核、伝染性単核症、百日咳etc.)、無顆粒球症の回復期、急激な溶血反応の回復期、大出血の直後etc. |
【検査】 | 末梢血⇒WBC↑↑or幼若芽球の出現、NAP↑ |
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無顆粒球症 |
【概念】 | 好中球数<200〜300/μl |
【原因】 | 臨床上は薬剤によるものが重要 ・アミノピリンなどのピリン系解熱薬では、U型アレルギーによる血球破壊が起こる ・クロルプロマジンなどのフェノチアジン誘導体、メチマゾール・プロピルチオウラシルなどの抗甲状腺薬、抗血小板薬であるチクロピジンなどでもみられる(非アレルギ―性) |
【症状】 | アレルギ―性⇒投与後数日に、悪寒、発熱、壊疽性口内炎、扁桃炎、有痛性頸部リンパ節腫脹などの症状が出現 非アレルギ―性⇒投与後数週間に、発熱等の感染症状が出現。敗血症に至ることもある |
【検査】 | 末梢血⇒WBC↓、Neutro.↓↓、Lymph.→ 骨髄⇒低形成〜過形成、時には類白血病反応もみられる |
【治療】 | 原因薬剤の中止、感染症対策(感染予防、抗生物質投与、G-CSF投与)、ステロイドの投与 ※顆粒球輸血は禁忌(GVHDの危険がある) |
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伝染性単核症 infectious mononucleosis (IM) |
【概念】 | EBVがB細胞に選択的に感染⇒B細胞の不死化⇒CTLが活性化⇒免疫応答による炎症反応 |
【原因】 | 若年成人以降のEBVへの初感染が原因。CMV、HBV、HCV、風疹ウイルスなど多くのウイルスでも本症に類似の症状をきたすことがある(伝染性単核症症候群) |
【症状】 | 数週間の潜伏期の後、発熱、咽頭痛、頸部リンパ節腫脹、扁桃発赤(しばしば白い偽膜を形成)、肝脾腫、発疹etc. |
【検査】 | 末梢血⇒WBC↑、Lympho.↑↑(CD8陽性のCTL、Tsが増加)、異型リンパ球 生化学⇒AST↑、ALT↑、ALP↑ ウイルス抗体価
IgM型VCA抗体 | 潜伏期〜急性期(次第にIgG型に置換される) |
IgG型VCA抗体 | 急性期〜回復期(終生、防御抗体となる) |
IgG型EA抗体 | 急性期〜回復期(感染早期からIgG型が出現) |
IgG型EBNA抗体 | 回復期(∵NAはnuclear antigenの略) |
免疫学的検査⇒B細胞の寿命↑、ポリクローナルなγ-グロブリン↑ |  |
【治療】 | 予後は良好で、数週間で治癒する ※ペニシリン系は禁忌 |
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悪性リンパ腫 malignant lymphoma |
【概念】 | リンパ系細胞が腫瘍性増殖@リンパ組織(リンパ節・脾etc.) |  |
【分類】 | - Hodgkin病(HD)
リンパ組織生検にて、Reed-Sternberg(RS)細胞(核が鏡像を呈する、巨大な核小体を有する多核の巨細胞)
Rye分類(組織学的分類)
リンパ球優位型(LP型) | 異常増殖しているリンパ球の中に、少数のRS細胞がみられる |
結節硬化型(NS型) | 結節状に束ねられた増殖リンパ球の中に、RS細胞が散在 |
混合細胞型(MC型) | リンパ球だけでなく、Mφ・形質細胞・好酸球などがRS細胞を取り囲む。さらに線維化や壊死巣が認められる |
リンパ球欠如型(LD型) | リンパ球が著減し、代わって線維性組織の増殖が強いタイプ。RS細胞は増加傾向にある |
Ann Arbor分類(病期分類Cs)
CsT | 1つのリンパ節領域 or 1つの節外部位への侵襲 |
CsU | 横隔膜の上下のいずれか一方で、複数のリンパ節領域 or 1つ以上のリンパ節領域+節外部位への侵襲 |
CsV | 横隔膜の上下に及ぶ複数のリンパ節領域への侵襲。あるいはこれに1つの節外部位への限局的侵襲 and/or 脾への侵襲 |
CsW | 1つ以上の節外部位へのびまん性侵襲 |
6ヶ月以内における10%以上の体重減少、38℃以上の発熱、盗汗があればBとする。これらがなければAとする |
- 非Hodgkinリンパ腫(NHL)
- 単クローン性の腫瘍性増殖に基づく疾患。表面マーカーにより、主に縦隔内に発生するT細胞型と主に腹部に発生するB細胞型に分けられる
LSG分類(浸潤度からの分類)
濾胞性 リンパ腫 | 腫瘍細胞が結節状に増殖し、濾胞を形成。予後は概して良好 B細胞に由来し、ほとんどがt(14;18)(q32;q21)という相互転座をもっている 中細胞型、混合型、大細胞型に細分化される |
びまん性 リンパ腫 | 腫瘍細胞がびまん性に増殖しているタイプ。わが国の悪性リンパ腫の大半を占め、予後は不良 腫瘍細胞の起源はB細胞系とT細胞系の両方があるが、T細胞系の方がさらに予後不良 小細胞型、柱細胞型、大細胞型、多形細胞型、リンパ芽球型、Burkitt型に細分化される※Burkittリンパ腫…東アフリカの男児に好発するが、わが国ではまれ。B細胞由来で、しばしば白血化する。EBVとの関連、c-MYC遺伝子の異常との関連が認められ、t(8;14)(q24;q32)、t(8;22)(q24;q11)、t(2;8)(p12;q24)という3種類の相互転座が見つかっている |
- その他の悪性リンパ腫
・免疫芽球性リンパ節症(IBL)…全身のリンパ節で、免疫芽球(単クローン性のB細胞)と形質細胞(多クローン性)が腫瘍性増殖。症状としては発熱、体重減少、発汗、皮疹(丘疹性紅斑が多い)などがみられる。自己免疫性疾患の合併が多く、Coombsテストで陽性を示す場合が多い ・菌状息肉症…皮膚症状を中心とするT細胞系リンパ腫の一種 ・Se´zary症候群…菌状息肉症が白血化したもの。菌状息肉症とSe´zary症候群をあわせて皮膚T細胞系リンパ腫(CTCL)ともよばれる
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【疫学】 | compromised hostに好発 Hodgkin病⇒欧米では多いが、わが国では数%。発症年齢のピークは30歳前後と60歳以降 非Hodgkinリンパ腫⇒わが国では90%以上を占める |
【症状】 | - Hodgkin病
- リンパ節腫脹…頸部リンパ節に初発する場合が多く、連続性に進展。最終的に肝脾腫を伴う
全身症状…間欠熱(典型的にはPel-Ebstein型)、盗汗、体重減少、掻痒感、感染症(帯状疱疹etc.)の合併etc.
- 非Hodgkinリンパ腫
- リンパ節外組織(口蓋扁桃、消化管etc.)に初発、非連続性に進展。全身症状はまれであるが、しばしば白血化がみられ、予後はHodgkin病に比べて不良。Burkittリンパ腫の場合、幼児における顎骨周辺の腫瘤、年長児における腹部腫瘤(この場合、腸重積症で発症することもある)が初発症状として多い
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【検査】 | 末梢血⇒正球性正色素性貧血、WBC↑〜↓、Lymph.↓(絶対的リンパ球減少症)、Neutro.↑、Eosino.↑ 生化学⇒ESR↑、CRP↑、血清LDH↑、可溶性インターロイキン2受容体(sIL-2R)↑、血清ALP↑、血清Ca↑、血清銅↑、γ-グロブリン→ 免疫学的検査⇒細胞性免疫↓(ツ反(−)、PHA試験↓)、液性免疫→ 病期決定のための検査…99mTc-コロイドを用いたリンパ管造影、67Ga-citrateを用いた腫瘍シンチ、胸・腹部の各種画像検査、骨髄穿刺or生検etc. |
【治療】 | T・UA期のHodgkin病⇒放射線照射(横隔膜より上ではマントル照射、下では逆Y字型照射) UB・V・W期のHodgkin病⇒化学療法(ABVD療法etc.)が中心 非Hodgkinリンパ腫⇒化学療法(CHOP療法etc.)が中心 |
【予後】 | Hodgkin病の予後…リンパ球優位型が最も予後がよく、リンパ球欠如型が予後不良である 非Hodgkinリンパ腫の予後規定因子…年齢(60歳以上は予後不良)、血清LDH値、パフォーマンスステイタス(2以上は予後不良)、節外病変の数(2個以上は予後不良)、病期 |
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M
蛋
白
血
症 | 骨髄腫 myeloma |
【概念】 | 骨髄に存在する形質細胞が腫瘍性増殖⇒単クローン性高γ-グロブリン血症(M蛋白血症) |
【分類】 | 免疫グロブリンの種類により、IgG骨髄腫、IgA骨髄腫、IgD骨髄腫、IgE骨髄腫、Bence Jones型骨髄腫※に分けられる ※Bence Jones型骨髄腫=56℃で白濁し、100℃で再溶解するという性質をもつBence Jones蛋白(BJP)のみを産生する骨髄腫。BJPの正体は過剰に生産されたL鎖である 腫瘍の増殖様式から、孤立性骨髄腫、多発性骨髄腫、びまん性骨髄腫に分けられ、白血化したものは形質細胞性白血病とよばれる |
【疫学】 | 70歳代の高齢者に好発。IgG骨髄腫が全体の半数以上を占める | |
【症状】 | 骨病変…腰や背中の疼痛で初発する場合が多い。脊椎の圧迫骨折や病的骨折もみられる ⇒骨病変の結果、高Ca血症となり、消化器症状、意識障害を伴う 貧血症状…動悸、息切れ、倦怠感etc. 蛋白異常による症状…易感染性、Bence Jones型骨髄腫では近位尿細管障害、続発性アミロイドーシス ※リンパ系病変はめったにみられない |
【検査】 | 骨Xp⇒punched out lesion 末梢血⇒中等度の正球性正色素性貧血、連銭形成 骨髄⇒低形成傾向、異型性の強い形質細胞、核周囲明庭 生化学⇒単クローン性高γ-グロブリン血症、M蛋白、Alb↓、ESR↑↑、血液の粘稠度↑、凝固障害、Ca↑、β2-MG↑ その他…続発性アミロイドーシス、血清Chol↓、腎不全の所見 |
【予後】 | 診断後の平均生存期間は約40ヶ月 |
【治療】 | 化学療法(MP療法 or CP療法)、放射線照射、軽度の定期的な運動療法、十分な輸液、易感染性に対する対策etc. |
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マクログロブリン 血症 macroglobulinemia |
【概念】 | リンパ球様のIgM産生細胞が腫瘍性増殖⇒単クローン性高γ-グロブリン血症(M蛋白血症) |  |
【疫学】 | 発生頻度は骨髄腫の1/10程度。高齢者に多い |
【症状】 | リンパ系病変…リンパ節腫脹、肝脾腫etc. 過粘稠度症候群…神経症状(めまい、頭痛、痙攣etc.)、心不全、凝固障害、眼底異常所見(網膜静脈のソーセージ様蛇行、出血斑etc.) その他…クリオグロブリンに伴うRaynaud症状・寒冷蕁麻疹、易感染傾向etc. |
【検査】 | 末梢血⇒中等度の正球性正色素性貧血、連銭形成 骨髄⇒低形成、異常なリンパ球様の腫瘍細胞 蛋白異常…高γ-グロブリン血症、M蛋白、IgM↑↑、IgG→、ESR↑↑、Sia water試験(+) |
【予後】 | 骨髄腫よりは予後良好であるが、平均生存期間は60ヶ月程度 |
【治療】 | 化学療法(シクロホスファミドetc.)、過粘稠度症候群に対する血漿交換、ステロイドの投与etc. ※貧血症状は目立たず、輸血が必要なことは少ない |
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H鎖病 (重鎖病) |
【概念】 | 免疫グロブリンのH鎖を産生するリンパ球様の細胞が腫瘍性増殖 |
【疫学】 | きわめて珍しい疾患 |
【症状】 | 悪性リンパ腫に近い |
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monoclonal gammopathy of undetermined significance (MGUS) |
【概念】 | M蛋白を認めるものの、多発性骨髄腫のような徴候を欠くもの。以前はbenign monoclonal gammopathyとよばれていた |
【症状】 | 特に症状はない |
【検査】 | 血液⇒高γ-グロブリン血症、M蛋白以外の血清免疫グロブリン→、ESR↑ |
【治療】 | 経過観察でO.K. |
【予後】 | 10〜20%は多発性骨髄腫に移行する |
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血球貪食症候群 hemophagocytic syndrome |
【原因】 | 悪性リンパ腫(LAHSとよばれる)、ウイルス感染症(VAHSとよばれる。特にEBウイルスが多い)が多い。他には、膠原病(特にStill病、SLE)、悪性腫瘍(固形癌、急性白血病)etc. |
【病態】 | 上記のような原因⇒高サイトカイン血症⇒Mφの異常活性化⇒自己血球の貪食 |
【症状】 | 汎血球減少による症状(貧血、易感染性、出血傾向etc.)、黄疸、肝脾腫、リンパ節腫脹etc. |
【検査】 | 血液検査⇒汎血球減少、LDH↑、フェリチン↑↑(←活性化されたMφから産生される)、AST↑、ALT↑、Bil↑、ハプトグロビン↑etc. |  |
【病理】 | 血球貪食像(@骨髄) |
【治療】 | 原疾患の治療 |
【予後】 | 特にLAHSは予後不良 |
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