貧血 anemia
貧血総論
定義Hb値が、♂:13g/dl未満、♀:11g/dl未満(byWHO)
共通する
症状
息切れ、動悸、労作時狭心症、皮膚・粘膜の蒼白化、微熱傾向、収縮期心雑音(上部胸骨左縁〜さらに左側にかけて連続性に聴取される)、静脈コマ音etc.      ※立ちくらみは、貧血の症状ではない
分類
小球性低色素性貧血
MCV<80、MCHC<31。鉄欠乏性貧血、慢性疾患に伴う貧血、鉄芽球性貧血サラセミア、無トランスフェリン血症etc.
正球性正色素性貧血
80≦MCV≦100、31≦MCHC≦36。出血、溶血性貧血、遺伝性の赤血球形態異常症、発作性夜間性血色素尿症、骨髄線維症、白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、癌の骨髄転移、赤芽球癆、腎疾患・内分泌疾患などによる二次性貧血、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群etc.
大球性(正色素性)貧血
MCV>100、31≦MCHC≦36。出血、溶血性貧血、巨赤芽球性貧血etc.
検査
血清鉄
基準値は80〜160μg/dl。鉄を利用するはずの赤芽球が異常をきたす疾患(鉄芽球性貧血再生不良性貧血赤芽球癆etc.)で上昇する      ※鉄は十二指腸〜空腸上部で吸収される
血清フェリチン
鉄を収容する巨大球状蛋白で、貯蔵鉄の量をよく反映する。鉄不足で減少し、貯蔵鉄を有効利用できない疾患で上昇する
トランスフェリン(Tf)
肝で合成される血清蛋白で、鉄の担体として働く。鉄不足で上昇し、トランスフェリン自体の産生不足などで低下する
総鉄結合能(TIBC)
血清中のトランスフェリンが結合しうる総鉄量であり、TIBCの増減はトランスフェリンの増減を意味する
不飽和鉄結合能(UIBC)
TIBC−血清鉄。鉄と結合せずに余っているトランスフェリンの量を反映する
トランスフェリン飽和度
血清鉄/TIBC×100(%)。トランスフェリンのうち、血清鉄の運搬に寄与しているものの割合を表す
血漿鉄消失時間(PIDT1/2
注射した56Feが血液中から消失するまでの時間で、通常は放射能が半分になるまでの所要時間で表す。赤血球造血能の亢進している疾患鉄欠乏性貧血溶血性貧血、出血性貧血、巨赤芽球性貧血etc.)で短縮し、赤血球造血能の低下している疾患で延長する
赤血球鉄利用率(%RCU)
注射した56Feの何%が赤芽球形成に利用され、結果的に赤血球に取り込まれたかを示す数値。鉄欠乏が直接の原因である鉄欠乏性貧血で上昇し、造血能の低下している疾患、無効造血をきたす疾患、溶血性貧血では低下する
ハプトグロビン
α2分画に属する蛋白質で、赤血球から遊離したHbの担体として働く。溶血性貧血で低下する。一方、炎症性疾患で増加する
直接Coombsテスト
患者の赤血球に抗ヒト免疫グロブリン抗体を加えて、赤血球が凝集するか否かを調べる検査。赤血球膜の表面にすでに抗体が付着している場合、抗原抗体反応が起こり、凝集する
間接Coombsテスト
患者の血清に正常人の赤血球を加え、さらに抗ヒト免疫グロブリン抗体を加えて、赤血球が凝集するか否かを調べる検査。患者血清中に抗赤血球抗体があると、抗体は正常人の赤血球に付着して、感作された状態になる。ここに抗体を加えると、抗原抗体反応が起こり、凝集する

溶血性貧血のまとめ
概念何らかの原因で赤血球寿命が短縮し、その結果として貧血をきたした疾患の総称
分類
 血管内溶血血管外溶血


G6PD欠損症遺伝性球状赤血球症
PK欠損症
Hb異常症


発作性寒冷Hb尿症(PCH)
発作性夜間血色素尿症(PNH)
赤血球破砕症候群
PCH以外の自己免疫性溶血性貧血(AIHA)
   狭義のAIHA寒冷凝集素症(CAD)
基本的に先天性の酵素欠乏による溶血性貧血はCoombs試験(−)、後天性溶血性貧血はCoombs試験(+)。ただし、後天性のものでも、発作性夜間血色素尿症、微小血管性溶血性貧血はCoombs試験(−)
症状貧血症状、黄疸、胆石、脾腫(特に血管外溶血の場合)、血管内溶血では茶褐色尿(Hb尿orヘモジデリン尿)
検査
血液⇒貧血(原則として正球性正色素性貧血)、網赤血球↑↑、赤血球寿命↓
骨髄⇒過形成
鉄動態⇒無効造血と同じ(PIDT1/2%RCU↓)、血管内溶血では血清鉄↓
生化学⇒I-Bil↑、糞便・尿中のウロビリノーゲン↑1、ハプトグロビン↓、LDH↑、AST↑、ALT→、葉酸↓2etc.
   ※1 尿中にはBilは排泄されない(I-Bilが難溶性だから)
   ※2 溶血性貧血では、盛んな赤血球生成が持続すると葉酸の需要が増加し、葉酸欠乏を招くことがある

貧血をきたす疾患




















鉄欠乏性貧血
iron deficiency anemia
【概念】鉄の不足⇒Hbの合成↓⇒貧血鉄欠乏性貧血の末梢血塗沫May-Giemsa染色(赤血球の大小不同、変形、菲薄)
【疫学】全貧血の半数以上
【原因】鉄の吸収↓(偏食、胃全摘後etc.)、鉄の喪失(消化管出血、月経etc.)、鉄の需要>供給(未熟児における乳児期後期、思春期、妊娠時、授乳時etc.)
【病態】・第1段階(前潜在性鉄欠乏状態)…フェリチン↓↓、鉄吸収↑
・第2段階(潜在性鉄欠乏状態)…血清鉄↓、UIBC↑
・第3段階(鉄欠乏性貧血)…血清鉄↓↓、Hb↓、RBC↓
【症状】貧血に共通する症状+スプーン状爪舌炎口角炎、食道粘膜の萎縮・web形成、嚥下障害、萎縮性胃炎、異食症etc.
   ※Plummer-Vinson症候群=舌炎+口角炎+嚥下困難
【検査】
末梢血⇒小球性低色素性貧血、赤血球の異常(大小不同、ドーナツ状、奇形、菲薄etc.)、Plt↑
骨髄⇒過形成(M/E比↓)、赤芽球↑、鉄芽球↓↓
鉄代謝⇒血清鉄↓フェリチン↓↓、トランスフェリン↑、TIBC↑、UIBC↑、トランスフェリン飽和度↓↓、PIDT1/2↓、%RCU↑↑
【治療】鉄の補充(経口投与が原則)、必要に応じてVit. Cなどの還元剤の併用
※吸収障害をきたす疾患(潰瘍性大腸炎etc.)では静注
⇒治療が奏効すれば、まずRet.↑。その後、RBC↑、血清鉄↑が起こる。治療は貯蔵鉄が正常化するまで継続する
無トランスフェリン血症
【概念】トランスフェリンの産生不全⇒貧血
【原因】先天性(AR遺伝、全世界で8例)と、後天性(肝硬変などの重篤な肝障害による)
【検査】鉄代謝⇒血清鉄↓、フェリチン↑、トランスフェリン↓↓、TIBC↓
鉄芽球性貧血
sideroblastic anemia
【概念】赤芽球系におけるヘム合成系の障害⇒鉄の利用不能⇒貧血
鉄は赤芽球のミトコンドリア内に蓄積
鉄芽性貧血の骨髄血塗沫May-Giemsa染色(赤芽球系細胞の増加)
鉄芽性貧血の骨髄血塗沫鉄染色(環状鉄芽球)
【原因】
先天性…多くはXR遺伝によるδ-ALA合成酵素の活性低下が原因
後天性…特発性と二次性がある
・特発性=MDSの1病態である環状鉄芽球を伴う不応性貧血(RARS)
・二次性…薬物(イソニアジドクロラムフェニコールetc.)、金属鉛、慢性アルコール中毒、慢性疾患などによる
【症状】特有の症状はなく、緩徐進行性の貧血だが、ヘモジデローシス(肝や脾などの組織へのヘモジデリンの蓄積)、二次性ヘモクロマトーシス(全身臓器へのヘモジデリンの蓄積、皮膚が青銅色に変色)などが出現することもある。後天性特発性鉄芽球性貧血の場合、白血病への移行の確率が高い
【検査】
末梢血⇒二相性小球性低色素性と正球性正色素性のRBCが混在)、しばしば奇形赤血球
骨髄⇒過形成(M/E比↓)、環状鉄芽球
鉄代謝⇒血清鉄↑フェリチン↑、トランスフェリン↓、TIBC↓、UIBC↓、トランスフェリン飽和度↑↑、PIDT1/2%RCU↓無効造血)      ※ヘモクロマトーシスと同様の鉄動態
【治療】ピリドキシン(Vit. B6)の大量投与。その他、慎重な輸血(⇒ヘモジデローシスに注意)、デスフェラールの投与(⇒鉄キレート剤で、ヘモジデローシスを予防する)




















再生不良性貧血
aplastic anemia
【概念】骨髄の低形成⇒汎血球減少再生不良性貧血の骨髄穿刺標本(脂肪に置換)


 
【原因】先天性…Fanconi貧血(全世界で約700例、AR遺伝、4〜12歳の間に発症)
後天性…特発性(大部分を占める)と二次性(肝炎後、薬剤、放射線etc.)がある
【症状】貧血症状+白血球減少による易感染性+血小板減少による出血傾向(紫斑、鼻出血etc.)
※Fanconi貧血では、心・腎・骨格の先天奇形、低身長、色素沈着、身体・知能の発育不全などを伴う。血液腫瘍や固形癌の発症も高率にみられる
【検査】
末梢血⇒汎血球減少(WBCの中では好中球↓が著明)、正球性正色素性貧血、網赤血球数↓
   ※長期経過の中で大球性正色素性貧血となる
骨髄⇒低形成、脂肪髄、鉄芽球の比率↑
鉄代謝⇒血清鉄↑フェリチン↑、トランスフェリン↓、TIBC↓、UIBC↓↓、トランスフェリン飽和度↑↑、PIDT1/2↑↑、%RCU↓
【治療】50歳未満の重症例⇒同種骨髄移植
50歳以上の重症例・中等症例⇒免疫抑制療法ALG(or ATG)シクロスポリンA(+ダナゾール)〕
軽症例⇒経過観察      その他、支持療法として成分輸血を必要に応じて行う
※ALG(抗リンパ球グロブリン)、ATG(抗胸腺細胞グロブリン)…副作用に血清病があり、通常はアナフィラキシー反応予防目的でステロイドを併用する
Fanconi貧血⇒蛋白同化ホルモン、支持療法、骨髄移植
赤芽球癆
pure red cell aplasia
(PRCA)
【概念】赤芽球のみの低形成⇒貧血赤芽球癆の骨髄血塗抹(赤芽球をほとんど認めない)
【原因】
先天性…Diamond-Blackfan貧血(全世界で約400例、乳幼児期に発症)
後天性…急性赤芽球癆(主にパルボウイルスB19が原因)と慢性赤芽球癆(自己免疫疾患(SLE etc.)、薬剤(フェニトイン、チアンフェニコールetc.)、リンパ球系悪性腫瘍などが原因)がある
【症状】
Diamond-Blackfan貧血…貧血の他、顔面・骨格の奇形をしばしば伴い、血液腫瘍・固形癌の合併も高率でみられる
急性赤芽球癆…一時的な貧血。基礎疾患に溶血性貧血があった場合には、低形成発作を起こし、重篤になることもある
慢性赤芽球癆…慢性の貧血。しばしば胸腺腫を合併する
【検査】
末梢血⇒正球性正色素性貧血、網赤血球数↓
骨髄⇒赤芽球系のみの低形成
鉄代謝⇒血清鉄↑フェリチン↑、TIBC↓、UIBC↓、PIDT1/2、%RCU↓(再生不良性貧血と同じ)
【治療】Diamond-Blackfan貧血⇒プレドニゾロンの投与、骨髄移植
急性赤芽球癆⇒特別な治療不要
慢性赤芽球癆⇒ステロイド・シクロスポリンAの投与、胸腺腫の摘出


















ビタミンB12欠乏性貧血
【概念】ビタミンB12の欠乏⇒チミン合成不能⇒DNAの合成阻害⇒巨赤芽球の形成⇒無効造血⇒貧血
【原因】摂取不足…極端な菜食主義etc.
内因子(IF)の欠乏…胃全摘後、胃粘膜の高度な萎縮(悪性貧血)etc.
回腸の吸収障害…条虫の回腸寄生、盲係蹄症候群、短腸症候群、重篤な回腸炎、Imerslund症候群(先天的なIF受容体欠損)etc.
巨赤芽球性貧血の末梢血塗沫(好中球の過分葉、赤血球の形態異常)


 


ビタミンB12欠乏性貧血の骨髄血塗沫(巨赤芽球、赤芽球系の増加)
【症状】一般的な貧血症状の他、消化器症状としてHunter舌炎(舌乳頭の萎縮による)が、神経症状として亜急性連合性脊髄変性症(脊髄後索・側索を障害)や末梢神経障害がみられる。また、年齢不相応な白髪もみられる
【検査】
末梢血⇒汎血球減少大球性正色素性貧血、奇形赤血球、網赤血球↓、好中球の過分葉
骨髄⇒過形成巨赤芽球(核が小さく細胞質だけが大きい)
鉄代謝⇒無効造血の所見PIDT1/2%RCU↓)、血清鉄↑、フェリチン↑
Vit. B12代謝⇒血清Vit. B12値↓、尿中メチルマロン酸(MMA)↑、Schilling試験にて原因の鑑別
その他…溶血性貧血様の変化(血清I-Bil↑、血清LDH↑、血清ハプトグロビン↓、尿・便中ウロビリノーゲン↑)、血清リゾチーム値↑。さらに悪性貧血では抗内因子抗体or抗壁細胞抗体が認められる場合がある。また、萎縮性胃炎に伴う胃癌の合併率が高いため、上部消化管の内視鏡検査や造影検査が必要となる
【治療】Vit. B12の筋注      ※葉酸投与は禁忌(神経症状がかえって悪化する)
葉酸欠乏性貧血
【概念】葉酸の欠乏⇒チミン合成不能⇒DNAの合成阻害⇒巨赤芽球の形成⇒無効造血⇒貧血
【原因】摂取不足…食欲不振、偏食etc.
吸収不足…吸収不良症候群、薬物(経口避妊薬、フェニトイン、葉酸拮抗薬etc.)、慢性アルコール中毒etc.
葉酸の需要>供給…妊娠時、成長期、炎症、悪性腫瘍罹患時
【症状】一般的な貧血症状の他、消化器症状としてHunter舌炎(舌乳頭の萎縮による)がみられる。また、年齢不相応な白髪もみられる      ※Vit. B12欠乏性貧血でみられる中枢神経障害はあまりみられない
【検査】
末梢血、骨髄、鉄代謝⇒ビタミンB12欠乏性貧血と同様
葉酸代謝⇒血清葉酸値↓、尿中FIGLU↑、Schilling試験にて原因の鑑別
その他…溶血性貧血様の変化(血清I-Bil↑、血清LDH↑、血清ハプトグロビン↓、尿・便中ウロビリノーゲン↑)、血清リゾチーム値↑
【治療】葉酸の補充












































遺伝性球状赤血球症
hereditary
spherocytosis(HS)
【概念】赤血球の膜上の蛋白質の先天的な異常⇒赤血球の形態・膜透過性の異常⇒血管外溶血⇒貧血
【原因】80%近くはAD遺伝で、第8染色体短腕に原因遺伝子がある
【疫学】わが国で最も多い先天性溶血性貧血
【症状】貧血、黄疸、脾腫がみられるが、自覚のない場合も多い。診断のきっかけとしては、ビリルビン胆石や、急激な貧血症状の増悪(低形成発作、溶血発作)であることが多い
【検査】
末梢血⇒正球性正色素性貧血、小形の球状赤血球、網赤血球↑、赤血球寿命↓
骨髄⇒過形成(M/E比↓)
鉄代謝⇒無効造血の所見(PIDT1/2↓、%RCU↓)
生化学⇒血清I-Bil↑、血清ハプトグロビン↓、尿・便中ウロビリノーゲン↑、LDH↑、GOT↑
その他…赤血球膜の脆弱性↑(浸透圧抵抗試験、自己溶血試験)      ※Hb尿はみられない
遺伝性球状赤血球症の末梢血塗沫May-Giemsa染色
【治療】学童期以降の摘脾
ピルビン酸キナーゼ
(PK)欠損症
【概念】Embden-Meyerhofの嫌気性解糖系の酵素欠損(AR遺伝)⇒ATPの産生↓⇒ポンプ機能の低下⇒細胞内脱水⇒血管外溶血⇒貧血
【症状】貧血(正球性正色素性貧血)、黄疸、脾腫、胆石
【検査】溶血性貧血に共通の所見+有棘赤血球
【治療】摘脾
グルコース6リン酸
脱水素酵素
(G6PD)欠損症
【概念】五炭糖リン酸系の酵素欠損(XR遺伝)⇒NADPHの産生↓⇒赤血球が酸化される⇒血管内溶血⇒貧血
【疫学】マラリア浸淫地に多く、患者数は全世界で約4億人と推定されているが、わが国では滅多にみられない
【症状】原則として無症状。解熱鎮痛薬・サルファ剤・抗マラリア薬などの内服、ソラマメの摂取、感染症などにより、突然急性溶血発作をきたし、褐色尿(ヘモグロビン尿・ヘモジデリン尿)を呈する。また、マラリア感染に対する抵抗性が強いという特徴も有する
【検査】無症状の時期には、異常所見なし。発作時には、溶血性貧血の所見+Heinz小体
【治療】特に治療の必要はない。急性溶血発作をきたす誘因の回避が重要








鎌状赤血球症
【概念】Hbを構成するβ鎖の異常(AR遺伝)⇒異常なHb(HbS)のゲル化⇒血管外溶血による貧血+血管閉塞
【疫学】アフリカの熱帯地域(マラリア浸淫地)の黒人に多くみられる
【症状】慢性の溶血性貧血による症状(貧血、黄疸、脾腫)+血管閉塞による症状(閉塞部位の疼痛発作、臓器障害、成長発育遅延)
【検査】溶血性貧血一般の所見+鎌状化した赤血球
【治療】効果的な治療法はなく、3歳までに半数が死亡する
不安定
ヘモグロビン症
【概念】グロビンのさまざまな部位のアミノ酸の変異(AD遺伝)⇒Hb分子の不安定化⇒血管外溶血⇒貧血
【検査】通常の溶血性貧血の所見+Heinz小体
サラセミア
thalassemias
【概念】グロビンの1つないしそれ以上の鎖の合成障害(常染色体性)⇒血管外溶血⇒貧血
【疫学】地中海沿岸から東南アジアにかけて広く分布する
【症状】典型例では貧血、黄疸、脾腫。重症例では、幼少時から骨変形や成長発育不全を伴うこともある
【検査】
末梢血⇒小球性低色素性貧血、奇形赤血球(特に標的赤血球)、HbF↑、HbA2
骨髄⇒過形成(M/E比↓)
鉄代謝⇒血清鉄↑PIDT1/2%RCU↓無効造血
   ※鉄芽球性貧血と同様の鉄動態
サラセミアの末梢血塗沫(標的赤血球、断片化赤血球)
【治療】有効な治療法なし。重症例では頻回の輸血が必要となるが、輸血の際にはヘモクロマトーシス予防のために鉄キレート剤を併用しなければならない      ※鉄剤の投与は禁忌


















狭義の自己免疫性
溶血性貧血
autoimmune
hemolytic
anemia(AIHA)
【概念】赤血球膜に対する自己抗体(温式抗体、IgG抗体)⇒感作赤血球の脾における貪食(血管外溶血)⇒貧血
AIHA(末梢血塗沫May-Giemsa染色)
AIHA(骨髄血塗抹May-Giemsa染色)
【原因】特発性と続発性(膠原病、CLL、悪性リンパ腫、AIDS etc.)がある
【疫学】10〜30歳の若年層(女性に多い)と60歳以降の高齢層の2峰分布
【症状】緩徐進行性の貧血、黄疸、脾腫
Evans症候群=ITPを合併したAIHA
【検査】
末梢血⇒正球性正色素性貧血球状赤血球、網赤血球↑
骨髄⇒過形成(M/E比↓)
Coombsテスト…直接Coombsテストではほとんどの場合陽性
                      間接Coombsテストでは約70%で陽性
赤血球浸透圧抵抗試験⇒食塩の浸透圧抵抗の低下
【治療】ステロイドがfirst choice、免疫抑制剤がsecond choice。他には摘脾も行われる。輸血はなるべく避けた方がよい
寒冷凝集素症
cold agglutinin
disease(CAD)
【概念】赤血球膜に対する自己抗体(冷式抗体、IgM抗体)⇒寒冷暴露による感作⇒感作赤血球の脾における貪食(血管外溶血)⇒貧血
【原因】特発性と続発性(悪性リンパ腫、CLL、伝染性単核症、マイコプラズマ肺炎etc.)がある
【症状】軽度の貧血症状+血行障害に伴う症状(チアノーゼ、疼痛)
【検査】軽度の溶血性貧血の所見+寒冷凝集素力価↑
【治療】特異的な治療法なし。寒冷暴露の回避が重要
発作性寒冷
血色素尿症
paroxysmal cold
hemoglobinuria(PCH)
【概念】赤血球膜に対する自己抗体(冷式抗体、IgG抗体)⇒寒冷暴露による感作⇒常温で血管内溶血⇒貧血
【症状】寒冷曝露後に暖められると、頭痛、腹痛、ヘモグロビン尿が起こる
【検査】溶血性貧血の所見+Donath-Landsteiner試験にて溶血(+)
【治療】特異的な治療法なし。寒冷暴露の回避が重要
薬物による
免疫性溶血性貧血
drug induced immune
hemolytic anemia
【分類】
 原因薬剤機序溶血の
種類
Coombs試験
直接間接
自己免疫型α-メチルドパetc.赤血球膜を抗原とする自己抗体が産生される(AIHAと同様)血管外(+) 
ペニシリン型
(薬物吸着型)
ペニシリンetc.薬物が赤血球膜に密着⇒異物として認識される血管外(+)(−)
薬物依存性
抗体型
イソニアジドパラアミノサリチル酸リファンピシン解熱鎮痛薬etc.薬物が赤血球膜に緩く結合し、赤血球膜と薬物の双方を抗原として抗体が産生される血管内(+)(−)
発作性夜間血色素尿症
paroxysmal nocturnal
hemoglobinuria(PNH)
【概念】後天的な突然変異による赤血球膜・白血球・血小板上のアンカー蛋白の合成不全⇒補体に対する感受性↑⇒夜間のみの発作性血管内溶血、汎血球減少
【疫学】中年以降に発症、性差なし
【症状】貧血症状、黄疸、褐色尿(起床後最初の排尿時に顕著)。しばしば腸間膜静脈血栓による突然の腹痛をきたす。鉄欠乏性貧血を合併しやすい他、再生不良性貧血に移行することもある
※褐色尿を呈するのは血管内溶血の場合のみで、血管外溶血をきたす疾患ではみられない
【検査】
末梢血⇒汎血球減少正球性正色素性貧血NAP↓
骨髄⇒過形成(M/E比↓)
鉄代謝⇒血清鉄↓、フェリチン↓、TIBC↑、UIBC↑
生化学⇒血清I-Bil↑、GOT↑、LDH↑
その他…AChE↓Ham試験砂糖水試験で溶血(+)、Hb尿、ヘモジデリン尿、Coombs試験(−)、赤血球表面抗原の活性(DAF活性)↓
【治療】特異的な治療法なし。輸血を行う場合には、補体を含まない洗浄赤血球を使用する
赤血球破砕症候群
【概念】赤血球の血管内での物理的・機械的破壊⇒貧血、断片化赤血球の出現、褐色尿
【原因】人工弁設置後、細小血管障害性溶血性貧血(DIC、TTP、HUS、癌の全身転移etc.)、行軍ヘモグロビン血症
慢性疾患に伴う貧血
【概念】慢性感染症、RA、悪性腫瘍などの慢性疾患にしばしば合併する小球性低色素性貧血
【原因】肝や脾に蓄えられた貯蔵鉄が赤芽球へ引き渡されないため(?)
【検査】鉄代謝⇒血清鉄↓、フェリチン↑トランスフェリン↓TIBC↓、UIBC↓
メトヘモグロビン血症
【概念】ヘム鉄が酸化されてFe3+の状態になる(メトヘモグロビン)⇒酸素運搬能力↓⇒貧血
【原因】先天性…チトクローム還元酵素系の酵素欠損、異常ヘモグロビンによるHbM症etc.
後天性…酸化剤の摂取・過剰暴露(解熱薬のフェナセチン、アニリン、ニトロベンゼン、TNTetc.)
【症状】チアノーゼ、頭痛、めまい、黒色尿(Hb尿)etc.
【治療】還元作用のあるアスコルビン酸(Vit. C)・リボフラビンの内服、メチレンブルーの注射etc.
多血症 polycythemia
真性多血症
polycythemia vera
(PV)
【概念】骨髄の造血幹細胞の腫瘍性増殖⇒循環赤血球量↑、白血球数↑、血小板数↑
【疫学】中高年に好発。男性に若干多い
【症状】血液の粘稠性の増加による循環障害…顔面紅潮、頭痛、耳鳴、易疲労感、血栓形成、出血傾向etc.
血球の処理亢進に伴う症状…肝脾腫、高尿酸血症、痛風発作、尿酸結石etc.
ヒスタミン過剰に伴う症状…皮膚掻痒感、消化性潰瘍etc.
その他…鉄欠乏状態(←Hb合成亢進)
【検査】
末梢血⇒RBC↑↑、Hb↑↑、Ht↑↑、循環赤血球量↑↑WBC↑Plt↑、PaO2→、NAP↑
骨髄⇒著しい過形成
鉄代謝⇒血清鉄↓、TIBC↑、UIBC↑、PIDT1/2↓、%RCU↑
生化学⇒血清Vit. B12、不飽和Vit. B12結合能↑、血清LDH↑尿酸値↑、ESR↑↑、EPO↓↓
その他…Ph1染色体(−)      ※Ph1染色体(+)であれば、CMLと診断される
【診断】
真性多血症の診断基準
大基準…@循環RBC↑、ASaO2≧92%、B脾腫
小基準…@Plt↑、AWBC↑、BNAP↑、C血清Vit. B12↑or不飽和Vit. B12結合能↑
   大項目を3つ満たすもの、あるいは大項目の@・A、小項目のうち2つを同時に満たせば、真性多血症
【治療】50歳未満の低リスク患者…瀉血のみ
70歳以上、高リスク患者…骨髄抑制薬であるヒドロキシウレアなどの投与      その他、対症療法も行われる
【予後】死因として最も多いのは血栓形成で、その次は白血病への転化。また、骨髄線維症への移行もみられる。診断後の平均生存期間は約10年
続発性多血症
【概念】腎からのEPO↑↑⇒骨髄の過形成⇒赤血球のみの増加
【原因】
PaO2↓に伴う代償的EPO産生過剰…高所滞在、先天性チアノーゼ心疾患、換気不全(肺気腫、Pickwick症候群、慢性CO中毒etc.)、メトヘモグロビン血症etc.
EPO産生腫瘍…腎癌、肝癌、小脳血管芽細胞腫etc.
【検査】
血液⇒RBC↑、Hb↑、Ht↑、WBC→、Plt→、NAP→、血清Vit. B12→、PaO2EPO↑↑
骨髄⇒過形成(M/E比↓)
相対的多血症
【概念】循環赤血球量は増加していないが、RBC・Hb・Htが上昇
【原因】ほとんどが脱水による血液濃縮が原因。その他、ストレスが原因のこともある
【検査】CBCにおけるRBC↑、Hb↑、Ht↑以外はすべて正常(循環赤血球量も正常)
【治療】経過観察でよい場合が多い
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