筋疾患
筋疾患・神経筋接合部疾患の分類
 原因検査・徴候










進行性筋ジストロフィー
(PMD)
遺伝etc.左右対称の筋萎縮・筋力低下(多くは近位筋が著明)、Duchenne型・LG型・FSH型など病型により症状は異なる
先天性ミオパチー遺伝生下時から筋緊張低下・筋力低下、非進行性or緩徐進行性、筋線維にcore(+)
筋強直性ジストロフィー
(MYD)
遺伝青年期に遠位筋優位の筋強直・筋萎縮・筋力低下、精神症状、心筋障害、若ハゲ、白内障、性腺機能低下、骨異常、ミオトニー
多発性筋炎(PM)自己免疫近位筋群の筋痛を伴う対称性の筋力低下
内分泌性ミオパチー甲状腺機能異常etc.T3・T4↑or↓
代謝性ミオパチーDM、糖原病、血清Kの異常etc.高血糖、HbA1C↑、低K血症etc.
薬剤性ミオパチーステロイド、甘草、スタチン系薬剤内服歴
ミトコンドリア脳筋症ミトコンドリアの遺伝子変異低身長、知能低下、筋力低下、感音性難聴、血清・髄液中の乳酸↑・ピルビン酸↑





重症筋無力症(MG)自己免疫外眼筋麻痺、眼瞼下垂、動揺性の筋力低下、抗AChR抗体、誘発筋電図でwaning、テンシロン試験(+)、胸腺腫
Lambert-Eaton症候群
(LES)
悪性腫瘍(肺小細胞癌etc.)体幹・下肢の筋力低下、深部腱反射↓、高頻度連続刺激EMGでwaxing、テンシロン試験(−)
中毒ボツリヌス、有機リンetc. 








































Duchenne型
筋ジストロフィー
【疫学】人口10万人に対して約3人。筋ジストロフィーの中では最多。2〜5歳で発症
【原因】ジストロフィンの欠損(XR遺伝)。約1/3は孤発例
【症状】初発症状は「転びやすい」、「走れない」、「階段が登れない」、「ジャンプができない」など。症状は常に進行し、やがて動揺性歩行(Trendelenburg歩行)、登攀性起立(Gowers徴候)、腓腹筋の仮性肥大、深部反射↓(ただし、アキレス腱反射は最後まで残る)などがみられるようになる。さらに進行すると、脊柱の前彎・側彎、股関節・膝関節の拘縮、翼状肩甲、心筋障害(拡張型心筋症)、呼吸筋障害、約1/3の症例で精神遅滞etc.
【検査】
生化学的検査⇒CK↑↑(新生児期〜)、LDH↑、AST↑、アルドラーゼ↑、尿中クレアチン↑、尿中クレアチニン↓etc.
筋電図⇒筋原性のパターン
組織学的検査⇒筋原性変化(筋線維の大小不同、壊死した線維の存在と再生像)、ジストロフィン抗体による免疫染色で染色されない
その他…心電図異常
【治療】特異的な治療法はなく、寝たきり状態を遅らせるための理学療法が中心
【予後】10歳前後で歩行不能となり、20歳代で死亡する場合が多い。最大の死因は呼吸不全
Becker型
筋ジストロフィー
【疫学】5〜40歳で発症
【原因】ジストロフィンをコードするコドンの異常(XR遺伝)
【検査】血液検査(⇒CKetc.)、筋電図異常、組織学的検査(⇒ジストロフィン抗体による染色でpatchyに染まる)
【予後】Duchenne型よりもはるかに軽症で予後良好
顔面肩甲上腕型
筋ジストロフィー
facioscapulohumeral
muscular dystrophy
(FSHMD)
【概念】顔面、肩甲帯、上腕を優位に侵すジストロフィー(AD遺伝)
【疫学】20歳代で発症
【症状】顔面の筋萎縮…初発症状。閉眼不能、閉口不能、特有の顔貌(下唇の突出)etc.
肩甲周囲・上腕の筋萎縮…腕の挙上不能、翼状肩甲etc.
【検査】筋電図(⇒筋原性のパターン)、筋生検(⇒筋原性のパターン)、血液検査(⇒CK→〜
【予後】極めて緩徐に進行し、生命予後は良好
肢帯型筋ジストロフィー
limb-girdle muscular
dystrophy(LGMD)
【概念】四肢近位筋が侵されるジストロフィーの総称(AD遺伝or AR遺伝)
【症状】腰帯の筋力低下(⇒動揺性歩行、登攀性起立)、肩甲帯の筋力低下(⇒上肢の挙上困難、翼状肩甲)などで発症し、多くの場合は比較的緩徐に進行する。まれに心不全や呼吸不全に至ることもあるが、精神遅滞を伴うことは原則としてない
【検査】血液検査(⇒CK↑〜↑↑)、筋生検(⇒ジストロフィン抗体染色は正常、α-SG抗体染色では不染)
福山型先天性
筋ジストロフィー
Fukuyama-type
congenital muscular
dystrophy(FCMD)
【概念】先天性筋ジストロフィー+脳奇形
【疫学】乳幼児期に発症する先天性筋ジストロフィーの大半を占める。日本人に多い
【原因】フクチンの異常(AR遺伝)
【症状】乳児期早期(時に出生時)から近位筋優位の筋力低下が明らかで、定頸不能、閉口不能、流涎、重度の精神遅滞、発語不能、関節拘縮などを呈する
【検査】頭部CT(⇒大脳皮質の構築異常etc.)、血液検査(⇒乳児期早期からCK↑↑)
【予後】10歳頃には起き上がれなくなり、その数年後に死亡




















筋緊張性ジストロフィー
(筋強直性ジストロフィー)
myotonic dystrophy
(MD)
【概念】筋強直(ミオトニー)と筋ジストロフィーを来す疾患。AD遺伝形式のtriplet repeat病筋緊張性ジストロフィー(舌のクローバー状収縮)
【疫学】15〜40歳に多い。性差ではやや男性に多い。日本では欧米に比べてずっと少ない
母親が本症の場合、約10%の確率で新生児に筋症状が認められる(先天性筋緊張性ジストロフィー)
【症状】
筋強直症(ミオトニア)…多くの場合、初発症状
把握ミオトニア:手を握ると開きにくい(バスの吊革を手放せずに降り損なうetc.)
叩打ミオトニア:筋や舌をハンマーで軽く叩くと収縮したまま(舌のクローバー状収縮etc.)
筋ジストロフィーの症状
進行性の筋力低下・筋萎縮(四肢の遠位筋と胸鎖乳突筋で著明
   ・顔面筋萎縮⇒斧のような逆三角形の顔貌      ・咽頭筋障害⇒嚥下困難、構音障害
   ・心筋障害⇒心電図異常      ・消化管の平滑筋障害⇒便秘、下痢、胃拡張   などもみられる
多系統変性
白内障(ほぼ必発)、男性で前頭部の若はげ性腺機能低下(必発)、一部で精神遅滞、心筋障害etc.
【検査】
筋電図⇒筋原性変化(振幅の低下)+ミオトニア放電(弛緩せず興奮したまま)。スピーカーに接続すると、急降下爆撃音が聞かれる
血清生化学⇒CK→〜、低γ-グロブリン血症
筋緊張性ジストロフィーの筋電図(ミオトニア放電)
【治療】対症療法のみ。ミオトニアに対する抗てんかん薬・抗不整脈薬、筋力低下に対する理学療法
【予後】緩徐進行性で、生命予後は比較的良好

 
先天性ミオトニア
(Thomsen病)
congenital myotonia
【原因】骨格筋Clチャネルの異常(AR遺伝or AD遺伝)
【疫学】幼児期〜学童期に発症
【症状】
筋強直症(ミオトニア)…「歩行開始時の第1歩が出にくい」、「階段を駆け上がれない」、「握ったラケットを離しにくい」など。運動開始時には強く現れるが、反復しているうちに軽快していく(warming up現象)
その他の症状…筋肥大      ※筋力低下(−)
【予後】日常生活への影響もそれほど大きくなく、予後は良好
先天性パラミオトニア
congenital
paramyotonia
【概念】寒冷曝露によって、顔面や手指にミオトニアが起こるAD遺伝性の疾患。高K性周期性四肢麻痺と同一の疾患
【症状】しばしば高K性周期性四肢麻痺を呈する
先天性ミオパチー
congenital myopathy
【概念】筋線維の先天的な異常によって、出生時or乳児期に筋症状(筋力低下、筋緊張低下etc.)を呈する疾患の総称
【病理】細いT型筋線維が半分程度を占める
【症状】運動発達の遅れはあるが、筋症状は基本的に進行しない
【分類】
ネマリンミオパチー
病理…筋線維に糸くず状の構造物(ネマリン小体)
症状…出生時にfloppy infantとなる重症型から、成人になって筋力低下に気づく軽症型までさまざま
セントラルコア病
病理…筋線維の真ん中に、果物の芯のような不染領域
原因…リアノジン受容体の異常(AD遺伝)
症状…新生児期から筋力低下をきたし、時にfloppy infantとなる
合併症…悪性高熱の危険が極めて高い
筋管ミオパチー
病理…胎児期にみられる筋管様の構造物が出生後も筋線維中にみられる
症状…出生時にfloppy infantとなる重症型から、成人になって外眼筋症状で気づかれる軽症型までさまざま
ミトコンドリア異常症
(ミトコンドリア脳筋症)
mitochodrial disorders
【概念】ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常(多くは母系遺伝)⇒好気呼吸不全⇒脳・筋などの臓器障害
【各論】
慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)
原因…mtDNAの大欠失(ほとんどが孤発例)
症状…20歳頃から、進行性の外眼筋麻痺(眼瞼下垂、眼球運動障害etc.)を呈する他、網膜色素変性症による視力低下、心伝導障害(脚ブロック、房室ブロックetc.)、骨格筋の筋力低下・筋萎縮、小脳失調、精神発育遅滞、低身長などがみられる
Kearns-Sayre症候群(KSS)…CPEOの重症型で、進行性外眼筋麻痺、網膜色素変性症、心伝導障害を三徴とする
脳卒中様症状を伴うミトコンドリア脳筋症(MELAS)
原因…mtDNAの点突然変異(母系遺伝)⇒tRNAの翻訳能力の低下
症状…小児期(5〜15歳)に、脳卒中様発作(頭痛、嘔吐、痙攣、一過性半身麻痺、半盲etc.)を反復する。また、運動時には乳酸アシドーシスに基づく異常な疲労感を訴える。その他、筋壊死による筋力低下と筋萎縮を伴うこともある
合併症…難聴、DM、心筋症、腎尿細管障害、低身長、知能障害etc.
検査…頭部CT・MRI(⇒発作直後は虚血性病変)、血液検査(⇒乳酸↑、CK↑、AST↑、LDH↑etc.)、SDH染色(⇒血管壁にミトコンドリアが集簇)、筋生検(⇒Gomori染色にてragged red fiber
予後…やがて寝たきり状態となって死亡する
ミオクローヌスに伴うミトコンドリア異常症(MERRF)
原因…mtDNAの点突然変異(母系遺伝)⇒tRNAの翻訳能力の低下
症状…主に小児期に発症。初発症状はミオクローヌスだが、やがて痙攣発作小脳失調、筋力低下・筋萎縮などが加わる
合併症…難聴、DM、心筋症、低身長etc.
検査…筋生検(⇒Gomori染色にてragged red fiber
周期性四肢麻痺
periodic paralysis
【概念】四肢の筋肉が一過性に麻痺(弛緩性麻痺)する状態が周期的に起こる疾患
【分類】
 低K性周期性四肢麻痺高K性周期性四肢麻痺
原因圧倒的に続発性が多い。特に甲状腺機能亢進症が多いが、原発性アルドステロン症なども原因となりうるほとんどが原発性で、AD遺伝形式をとる。骨格筋のNaチャネルの異常による
疫学圧倒的に頻度が高い
10〜40歳に好発。東洋男性に多い
頻度は低い
幼児期〜学童期に好発
症状
発作時⇒四肢の弛緩性麻痺(下肢近位筋が初発⇒後に遠位筋・上肢に進行)、深部腱反射消失、意識障害(−)、感覚障害(−)
発作間欠時⇒無症状
発作時⇒四肢の弛緩性麻痺(多くの場合下肢のみ)、深部腱反射消失、意識障害(−)、感覚障害(−)
発作間欠時⇒無症状
検査発作時⇒血清K値↓
発作間欠時⇒血清K値→
発作時⇒血清K値↑
発作間欠時⇒血清K値→
誘因過労・過食・飲酒etc.
これらのイベントの数時間後、休息時に症状が出現することが多い
食事・軽い運動・寒冷暴露etc.
これらのイベントが終了した直後に症状が出現することが多い
治療
発作時⇒Kの経口投与
発作間欠時⇒K保持性利尿薬、アセタゾラミド、原疾患の治療
発作時⇒ブドウ糖の静注
発作間欠時⇒K摂取制限、アセタゾラミド
神経筋接合部疾患
重症筋無力症
myasthenia gravis
(MG)
【概念】骨格筋の神経筋接合部において、抗AChR抗体により刺激伝達が障害される自己免疫疾患
【疫学】有病率は10万人に数人程度。20〜30歳の女性と50〜60歳の男性に好発。5歳以下の幼児にも小さなピーク
【症状】
主症状…動揺性の骨格筋の筋力低下・易疲労感、筋萎縮(−)
○侵されやすい骨格筋:外眼筋(⇒眼瞼下垂・複視)、咽頭筋(⇒嚥下困難・構音障害)、四肢近位筋、重症例では呼吸筋      ※全外眼筋麻痺で、眼位はほぼ正中位で、瞳孔は正常
○誘因・増悪因子:疲労(夕方に増悪)、感染症、外傷、手術、月経、妊娠、ストレス、薬物(クラーレなどの筋弛緩薬、アミノグリコシド系、ポリミキシン、D-ペニシラミン)
合併症…胸腺腫;その他の自己免疫疾患(SLE、RA、SSc、甲状腺機能亢進症etc.)
筋無力症性クリーゼ…補助呼吸が必要になった状態で、MG患者の10%前後でみられる。原因は、MGそのものによる場合と抗ChE薬の過剰投与による場合(コリン作動性クリーゼ)に大きく分類される。テンシロンテスト陽性であれば前者であるが、陰性であれば後者と考えられ、使用薬剤の中止を行わないといけない
【検査】血液検査⇒IgG値↑、90%以上で抗AChR抗体(+)      ※眼筋型では抗AChR抗体の陽性率が高くない
テンシロンテスト(+)…抗ChE薬のテンシロンを静注すると、症状が30秒〜5分間改善
誘発筋電図⇒3〜20Hzの低反復刺激で振幅の減衰(waning
画像診断…胸部Xp・胸部CTで胸腺腫(10〜15%)
【治療】
薬物療法…抗ChE薬(ネオスチグミン・ピリドスチグミンetc.)、副腎皮質ステロイド
外科治療…胸腺摘出術(拡大胸腺摘出術が主、胸腺腫大がなくても行う)
その他…血漿交換、免疫グロブリン大量静注療法
筋無力症性クリーゼ⇒まず気道確保して呼吸管理を行わなければならない。その上で、原因検索
【予後】約10%は難治性
Lambert-Eaton症候群
(LES)
【概念】シナプス前神経末端からのACh放出が障害されるために起こる全身の神経筋伝達疾患。肺小細胞癌が高頻度に合併する
【疫学】喫煙歴を有する40〜70歳の男性に好発
【原因】電位依存性Caチャネルに対する抗Caチャネル抗体
【分類】
【症状】
主症状…筋力低下・易疲労性、腱反射↓
○侵されやすい筋:四肢筋(下肢優位)・体幹近位筋(特に腰)      ※眼症状や球症状はきわめてまれ
その他…AChのムスカリン様作用の障害(=口渇、便秘etc.)
【検査】誘発筋電図⇒高頻度連続刺激(20〜50Hz)で電位の増高現象(waxing
画像診断…胸部Xp・胸部CTで肺野に陰影(約70%)
テンシロン試験(−)
【治療】合併腫瘍の治療、塩酸グアニジン、ステロイド、免疫抑制薬、血漿交換etc.

神経筋接合部疾患の鑑別
 重症筋無力症Lambert-Eaton症候群ボツリヌス中毒
症状の特徴
侵されやすい筋
部位による差がある
外眼筋・咽頭筋
全身でみられる
下肢・体幹近位筋
部位による差がある
外眼筋・咽頭筋・呼吸筋


低頻度刺激decrementdecrementdecrement
高頻度刺激increment(≧2倍)increment(1.4〜2倍)
最初のM波大きい小さい(≦1mV)小さい
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