進
行
性
筋
ジ
ス
ト
ロ
フ
ィ
| | ジ ス ト ロ フ ィ ノ パ チ | | Duchenne型 筋ジストロフィー |
【疫学】 | 人口10万人に対して約3人。筋ジストロフィーの中では最多。2〜5歳で発症 |
【原因】 | ジストロフィンの欠損(XR遺伝)。約1/3は孤発例 |
【症状】 | 初発症状は「転びやすい」、「走れない」、「階段が登れない」、「ジャンプができない」など。症状は常に進行し、やがて動揺性歩行(Trendelenburg歩行)、登攀性起立(Gowers徴候)、腓腹筋の仮性肥大、深部反射↓(ただし、アキレス腱反射は最後まで残る)などがみられるようになる。さらに進行すると、脊柱の前彎・側彎、股関節・膝関節の拘縮、翼状肩甲、心筋障害(拡張型心筋症)、呼吸筋障害、約1/3の症例で精神遅滞etc. |
【検査】 | 生化学的検査⇒CK↑↑(新生児期〜)、LDH↑、AST↑、アルドラーゼ↑、尿中クレアチン↑、尿中クレアチニン↓etc. 筋電図⇒筋原性のパターン 組織学的検査⇒筋原性変化(筋線維の大小不同、壊死した線維の存在と再生像)、ジストロフィン抗体による免疫染色で染色されない その他…心電図異常 |
【治療】 | 特異的な治療法はなく、寝たきり状態を遅らせるための理学療法が中心 |
【予後】 | 10歳前後で歩行不能となり、20歳代で死亡する場合が多い。最大の死因は呼吸不全 |
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Becker型 筋ジストロフィー |
【疫学】 | 5〜40歳で発症 |
【原因】 | ジストロフィンをコードするコドンの異常(XR遺伝) |
【検査】 | 血液検査(⇒CK↑etc.)、筋電図異常、組織学的検査(⇒ジストロフィン抗体による染色でpatchyに染まる) |
【予後】 | Duchenne型よりもはるかに軽症で予後良好 |
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顔面肩甲上腕型 筋ジストロフィー facioscapulohumeral muscular dystrophy (FSHMD) |
【概念】 | 顔面、肩甲帯、上腕を優位に侵すジストロフィー(AD遺伝) |
【疫学】 | 20歳代で発症 |
【症状】 | 顔面の筋萎縮…初発症状。閉眼不能、閉口不能、特有の顔貌(下唇の突出)etc. 肩甲周囲・上腕の筋萎縮…腕の挙上不能、翼状肩甲etc. |
【検査】 | 筋電図(⇒筋原性のパターン)、筋生検(⇒筋原性のパターン)、血液検査(⇒CK→〜↑) |
【予後】 | 極めて緩徐に進行し、生命予後は良好 |
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肢帯型筋ジストロフィー limb-girdle muscular dystrophy(LGMD) |
【概念】 | 四肢近位筋が侵されるジストロフィーの総称(AD遺伝or AR遺伝) |
【症状】 | 腰帯の筋力低下(⇒動揺性歩行、登攀性起立)、肩甲帯の筋力低下(⇒上肢の挙上困難、翼状肩甲)などで発症し、多くの場合は比較的緩徐に進行する。まれに心不全や呼吸不全に至ることもあるが、精神遅滞を伴うことは原則としてない |
【検査】 | 血液検査(⇒CK↑〜↑↑)、筋生検(⇒ジストロフィン抗体染色は正常、α-SG抗体染色では不染) |
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福山型先天性 筋ジストロフィー Fukuyama-type congenital muscular dystrophy(FCMD) |
【概念】 | 先天性筋ジストロフィー+脳奇形 |
【疫学】 | 乳幼児期に発症する先天性筋ジストロフィーの大半を占める。日本人に多い |
【原因】 | フクチンの異常(AR遺伝) |
【症状】 | 乳児期早期(時に出生時)から近位筋優位の筋力低下が明らかで、定頸不能、閉口不能、流涎、重度の精神遅滞、発語不能、関節拘縮などを呈する |
【検査】 | 頭部CT(⇒大脳皮質の構築異常etc.)、血液検査(⇒乳児期早期からCK↑↑) |
【予後】 | 10歳頃には起き上がれなくなり、その数年後に死亡 |
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筋
緊
張
症
候
群 | 筋緊張性ジストロフィー (筋強直性ジストロフィー) myotonic dystrophy (MD) |
【概念】 | 筋強直(ミオトニー)と筋ジストロフィーを来す疾患。AD遺伝形式のtriplet repeat病 | |
【疫学】 | 15〜40歳に多い。性差ではやや男性に多い。日本では欧米に比べてずっと少ない 母親が本症の場合、約10%の確率で新生児に筋症状が認められる(先天性筋緊張性ジストロフィー) |
【症状】 | - 筋強直症(ミオトニア)…多くの場合、初発症状
- 把握ミオトニア:手を握ると開きにくい(バスの吊革を手放せずに降り損なうetc.)
叩打ミオトニア:筋や舌をハンマーで軽く叩くと収縮したまま(舌のクローバー状収縮etc.)
- 筋ジストロフィーの症状
- 進行性の筋力低下・筋萎縮(四肢の遠位筋と胸鎖乳突筋で著明)
・顔面筋萎縮⇒斧のような逆三角形の顔貌 ・咽頭筋障害⇒嚥下困難、構音障害 ・心筋障害⇒心電図異常 ・消化管の平滑筋障害⇒便秘、下痢、胃拡張 などもみられる
- 多系統変性
- 白内障(ほぼ必発)、男性で前頭部の若はげ、性腺機能低下(必発)、一部で精神遅滞、心筋障害etc.
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【検査】 | 筋電図⇒筋原性変化(振幅の低下)+ミオトニア放電(弛緩せず興奮したまま)。スピーカーに接続すると、急降下爆撃音が聞かれる 血清生化学⇒CK→〜↑、低γ-グロブリン血症 | |
【治療】 | 対症療法のみ。ミオトニアに対する抗てんかん薬・抗不整脈薬、筋力低下に対する理学療法 |
【予後】 | 緩徐進行性で、生命予後は比較的良好
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先天性ミオトニア (Thomsen病) congenital myotonia |
【原因】 | 骨格筋Clチャネルの異常(AR遺伝or AD遺伝) |
【疫学】 | 幼児期〜学童期に発症 |
【症状】 | 筋強直症(ミオトニア)…「歩行開始時の第1歩が出にくい」、「階段を駆け上がれない」、「握ったラケットを離しにくい」など。運動開始時には強く現れるが、反復しているうちに軽快していく(warming up現象) その他の症状…筋肥大 ※筋力低下(−) |
【予後】 | 日常生活への影響もそれほど大きくなく、予後は良好 |
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先天性パラミオトニア congenital paramyotonia |
【概念】 | 寒冷曝露によって、顔面や手指にミオトニアが起こるAD遺伝性の疾患。高K性周期性四肢麻痺と同一の疾患 |
【症状】 | しばしば高K性周期性四肢麻痺を呈する |
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先天性ミオパチー congenital myopathy |
【概念】 | 筋線維の先天的な異常によって、出生時or乳児期に筋症状(筋力低下、筋緊張低下etc.)を呈する疾患の総称 |
【病理】 | 細いT型筋線維が半分程度を占める |
【症状】 | 運動発達の遅れはあるが、筋症状は基本的に進行しない |
【分類】 | - ネマリンミオパチー
- 病理…筋線維に糸くず状の構造物(ネマリン小体)
症状…出生時にfloppy infantとなる重症型から、成人になって筋力低下に気づく軽症型までさまざま
- セントラルコア病
- 病理…筋線維の真ん中に、果物の芯のような不染領域
原因…リアノジン受容体の異常(AD遺伝) 症状…新生児期から筋力低下をきたし、時にfloppy infantとなる 合併症…悪性高熱の危険が極めて高い
- 筋管ミオパチー
- 病理…胎児期にみられる筋管様の構造物が出生後も筋線維中にみられる
症状…出生時にfloppy infantとなる重症型から、成人になって外眼筋症状で気づかれる軽症型までさまざま
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ミトコンドリア異常症 (ミトコンドリア脳筋症) mitochodrial disorders |
【概念】 | ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常(多くは母系遺伝)⇒好気呼吸不全⇒脳・筋などの臓器障害 |
【各論】 | - 慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)
原因…mtDNAの大欠失(ほとんどが孤発例) 症状…20歳頃から、進行性の外眼筋麻痺(眼瞼下垂、眼球運動障害etc.)を呈する他、網膜色素変性症による視力低下※、心伝導障害(脚ブロック、房室ブロックetc.)※、骨格筋の筋力低下・筋萎縮、小脳失調、精神発育遅滞、低身長などがみられる※Kearns-Sayre症候群(KSS)…CPEOの重症型で、進行性外眼筋麻痺、網膜色素変性症、心伝導障害を三徴とする
- 脳卒中様症状を伴うミトコンドリア脳筋症(MELAS)
原因…mtDNAの点突然変異(母系遺伝)⇒tRNAの翻訳能力の低下 症状…小児期(5〜15歳)に、脳卒中様発作(頭痛、嘔吐、痙攣、一過性半身麻痺、半盲etc.)を反復する。また、運動時には乳酸アシドーシスに基づく異常な疲労感を訴える。その他、筋壊死による筋力低下と筋萎縮を伴うこともある 合併症…難聴、DM、心筋症、腎尿細管障害、低身長、知能障害etc. 検査…頭部CT・MRI(⇒発作直後は虚血性病変)、血液検査(⇒乳酸↑、CK↑、AST↑、LDH↑etc.)、SDH染色(⇒血管壁にミトコンドリアが集簇)、筋生検(⇒Gomori染色にてragged red fiber) 予後…やがて寝たきり状態となって死亡する
- ミオクローヌスに伴うミトコンドリア異常症(MERRF)
原因…mtDNAの点突然変異(母系遺伝)⇒tRNAの翻訳能力の低下 症状…主に小児期に発症。初発症状はミオクローヌスだが、やがて痙攣発作、小脳失調、筋力低下・筋萎縮などが加わる 合併症…難聴、DM、心筋症、低身長etc. 検査…筋生検(⇒Gomori染色にてragged red fiber)
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周期性四肢麻痺 periodic paralysis |
【概念】 | 四肢の筋肉が一過性に麻痺(弛緩性麻痺)する状態が周期的に起こる疾患 |
【分類】 |
| 低K性周期性四肢麻痺 | 高K性周期性四肢麻痺 |
原因 | 圧倒的に続発性が多い。特に甲状腺機能亢進症が多いが、原発性アルドステロン症なども原因となりうる | ほとんどが原発性で、AD遺伝形式をとる。骨格筋のNaチャネルの異常による |
疫学 | 圧倒的に頻度が高い 10〜40歳に好発。東洋男性に多い | 頻度は低い 幼児期〜学童期に好発 |
症状 | 発作時⇒四肢の弛緩性麻痺(下肢近位筋が初発⇒後に遠位筋・上肢に進行)、深部腱反射消失、意識障害(−)、感覚障害(−) 発作間欠時⇒無症状 | 発作時⇒四肢の弛緩性麻痺(多くの場合下肢のみ)、深部腱反射消失、意識障害(−)、感覚障害(−) 発作間欠時⇒無症状 |
検査 | 発作時⇒血清K値↓ 発作間欠時⇒血清K値→ | 発作時⇒血清K値↑ 発作間欠時⇒血清K値→ |
誘因 | 過労・過食・飲酒etc. これらのイベントの数時間後、休息時に症状が出現することが多い | 食事・軽い運動・寒冷暴露etc. これらのイベントが終了した直後に症状が出現することが多い |
治療 | 発作時⇒Kの経口投与 発作間欠時⇒K保持性利尿薬、アセタゾラミド、原疾患の治療 | 発作時⇒ブドウ糖の静注 発作間欠時⇒K摂取制限、アセタゾラミド |
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