髄液鼻漏 cerebrospinal rhinorrhea |
【疫学】 | 小児にはまれ |
【原因】 | 外傷(前頭蓋底骨折etc.)⇒副鼻腔・乳突蜂巣への骨折の進展 |
【症状】 | 耳出血・鼻出血が先行 |
【検査】 | テステープ⇒糖反応(+) |
【治療】 | 2〜3週間の抗生物質投与が原則で、腰椎穿刺による髄液持続ドレナージを同時に行う。緊急手術の適応はないが、2週間以上髄液漏が続いたり、反復したりする場合は開頭硬膜補填術(硬膜形成)の適応となる |
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頭蓋内気腫 (気脳症) pneumocephalus |
【概念】 | 空気が頭蓋内に入って、硬膜外・硬膜下・クモ膜下・脳実質などに貯留する状態 |
【原因】 | 副鼻腔or乳突蜂巣部の骨折、隣接する頭蓋底骨の腫瘍浸潤による骨菲薄化etc. |
【症状】 | 合併症…頭蓋内圧亢進症状、髄液漏、髄膜炎etc. |
【検査】 | 頭部Xp(⇒気体像) |
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挫傷性脳出血 contusional hemorrhage |
【原因】 | 脳挫傷 |
【検査】 | 頭部CT(⇒斑状・地図状出血) |
【治療】 | 脳圧下降薬、止血薬、ステロイドなどによる保存的治療が第1選択 ※硬膜切開・開頭術を行うと、急激な圧の減少により、再出血が起こる危険が高い |
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腱膜下血腫 subgaleal hematoma |
【概念】 | 骨縫合線と無関係に広がる血腫。小児では巨大化することが多い |
【原因】 | 頭蓋骨骨折を伴うことは少ない |
【症状】 | 激しい疼痛 |
【治療】 | 急性期は保存的治療(安静、冷却)。大きな血腫により脳実質の圧迫症状が著しい場合は、血腫除去術 |
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急性硬膜外血腫 acute epidural hematoma |
【概念】 | 頭蓋骨内面に密接した硬膜と頭蓋骨内面との間に生じる血腫 |
【疫学】 | 頭部外傷の1〜3%。部位的には、側頭部が最多。若年〜中年にかけて多くみられ、高齢者にはみられにくい |
【原因】 | 出血源…中硬膜動脈とその分枝、静脈洞、板間静脈etc. | |
【症状】 | 外傷後、意識清明期(lucid interval)がみられやすい(動脈性出血では約6時間、静脈性出血では2〜3日)。放置すると、脳ヘルニア徴候(血腫と同側の動眼神経麻痺、同側の大脳脚圧迫による対側片麻痺※etc.)が起こり、末期には除脳硬直に至る。後頭蓋窩硬膜外血腫では、早期から小脳症状を伴うことが多い ※血腫と同側の片麻痺をみる場合もある。これはヘルニアの圧迫による中脳の対側偏位のために、対側の大脳脚を走る錐体路が障害されて起こるもので、この時に対側の大脳脚に生じた圧痕はKernohan's notchとよばれる |
【検査】 | 頭蓋骨Xp⇒硬膜動脈を横切る線状骨折 ※小児では骨折線がみられないことも多い 頭部CT⇒頭蓋骨に接した凸レンズ状の高吸収域、midlineの健側偏位etc. ※受傷直後1時間はCT上変化が明らかでないこともある |
【治療】 | 開頭による血腫除去+出血源の止血 |
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急性硬膜下血腫 acute subdural hematoma |
【概念】 | 硬膜とクモ膜の間に生じる血腫 |
【原因】 | 出血源…脳挫傷or脳表から上矢状洞に流入する架橋静脈の損傷 |
【症状】 | 頭部外傷直後から意識障害がみられる。高度の脳挫傷を伴うことが多い。放置すると、切迫脳ヘルニアの徴候として、瞳孔不同や除脳硬直がみられることが多い |
【検査】 | 頭部CT⇒三日月型の高吸収域、midlineの健側への偏位etc. |
【治療】 | 緊急開頭による血腫除去+出血源の止血 |
【予後】 | 早期に手術しても、脳挫傷・脳腫脹が著明なことが多いため、死亡率は40〜60%と高率 |
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脳内血腫 intracerebral hematoma |
【疫学】 | 受傷後数日を経過して血腫化する遅発性血腫が多い |
【症状】 | 硬膜下血腫を伴うことが多い |
【検査】 | 頭部CT⇒高吸収域の血腫、脳浮腫による低吸収域 |
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慢性硬膜下血腫 chronic subdural hematoma |
【疫学】 | アルコール多飲者・老人に多い | |
【原因】 | 軽微な頭部外傷による、架橋静脈が硬膜を貫く部分からの少量の出血が原因 |
【症状】 | 受傷後3週間〜6ヶ月に、記銘力低下(特に高齢者)、片麻痺、意識障害、尿失禁などで発症 |
【検査】 | 頭蓋骨Xp⇒骨折線は認められないことが多い 頭部CT⇒三日月型の血腫(densityはさまざまで、ニボー形成や石灰沈着がみられることもある)、midlineの偏位 |
【治療】 | 穿頭・洗浄術が第1選択 |
【予後】 | 血腫内容の洗浄除去のみで大部分は軽快に向かう |
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カウザルギー causalgia |
【原因】 | 末梢神経不完全損傷(特に正中神経、脛骨神経、上腕神経叢) |
【症状】 | 灼熱痛、皮膚の浮腫・発赤・蒼白などがみられ、慢性期には筋・骨・皮膚の萎縮、関節の拘縮を残す |
【治療】 | 交感神経ブロック、αブロッカー、消炎鎮痛薬、理学療法 |
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脊髄損傷 spinal cord injury (SCJ) |
【疫学】 | 好発部位…第5・6頸椎、胸腰椎移行部 |
【原因】 | 脊椎の骨折・脱臼と合併する鈍力、脊髄の過屈曲・過伸展etc. |
【症状】 | 錐体路症状、感覚障害、交感神経ブロックによる症状(低血圧、徐脈、陰茎持続勃起etc.) |
【検査】 | まず行うべき画像検査は臥位脊椎Xp(少なくとも正面・側面の2方向)。CTやMRIはXpで診断しきれない場合に行う |
【鑑別】 | 完全損傷と不完全損傷の鑑別は肛門反射の有無で行う |
【治療】 | 急性期⇒安静、全身ステロイドの投与、脊髄除圧術、体位変換(⇒褥創予防)、排尿の管理 慢性期⇒機能訓練、膀胱直腸管理 |
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