基
底
核
の
変
性
疾
患 | Parkinson病 |
【原因】 | 黒質緻密部の変性 |
【疫学】 | 50〜60歳に好発 |
【病理】 | Lewy小体(エオジン好性の封入体を細胞内に抱えた変性した色素神経細胞) |
【病態】 | ドパミンのみならずセロトニン、ノルアエピネフリンも枯渇している |
【症状】 | 寡動(無動)…動作の開始の遅延、動作緩慢、変換運動障害、仮面様顔貌、流涎etc. 安静時振戦(4〜6Hz)…典型的には丸薬まるめ運動。左右差あり。随意運動にて軽快 筋固縮…鉛管現象、歯車現象 姿勢反射異常…極端な前傾姿勢、後方突進運動、Parkinson病様歩行(加速歩行、すくみ足) その他…Myerson徴候、自律神経障害(起立性低血圧、発汗障害(脂漏性顔貌)、便秘、神経因性膀胱etc.)、奇異性運動(視覚的な目標があれば歩けるetc.)、階段の下降困難、抑うつ、痴呆(認知操作緩慢、集中力低下、無気力、記憶障害etc.)etc. |
【治療】 | - 薬物療法…L-DOPA※1+末梢性脱炭酸酵素阻害薬、中枢性抗コリン薬※2、ドパミンアゴニスト(ブロモクリプチンetc.)、ドパミン遊離促進薬(アマンタジンetc.)、L-dops(ドロキシドパ)、MAOB阻害薬
- ※1 L-DOPAの副作用…消化器症状(悪心・嘔吐、食欲低下etc.)、循環器症状(動悸、不整脈、起立性低血圧etc.)、不随意運動(口唇ジスキネジア、舞踏運動、全身性のジストニアetc.)、精神症状(幻視を中心とする幻覚、せん妄etc.)、長期投与に伴うwearing off(薬剤の効果が短くなる)、突然の服用中止による悪性症候群、on-off現象、up and down現象etc.
※2 抗コリン薬…痴呆合併例、高齢患者では使用は避けるべきである
- 脳外科的治療法…脳破壊手術(高周波熱凝固療法)、脳深部刺激療法、細胞移植術etc.
|
|
Parkinson症候群 (パーキンソニズム) |
【概念】 | 寡動・安静時振戦・筋固縮・姿勢反射異常がParkinson病以外で出現した病態。四大症状がすべて揃うことはまれ |
【各論】 | - 血管障害性パーキンソニズム
- 概念…血行不良のために、黒質とその周辺組織が壊死することによって出現するパーキンソニズム
原因…多発脳梗塞、Binswanger型脳症etc.
- 薬物性パーキンソニズム
- 原因…抗精神病薬(クロルプロマジンなどのフェノチアジン誘導体、ハロペリドールなどのブチロフェノン誘導体、スルピリドなどのベンズアミド誘導体etc.)、ドパミンD2受容体拮抗薬、抗うつ薬、制吐薬etc.
治療…薬物の中止(速やかに改善する)。ドパミン作動薬は有効である
- 常染色体劣性若年発症パーキンソニズム(ARJP)
- 原因…6qに存在するparkin遺伝子が原因遺伝子
症状…20歳代で発症。Parkinson病に類似するが、日内変動が大きく、自律神経症状が少ない
- その他
- 原因…CO中毒の後遺症、Mn中毒、正常圧水頭症、Wilson病etc.
|
|
線条体黒質変性症 striato-nigral degeneration (SND) |
【概念】 | 黒質の色素神経細胞と線状体(特に被殻)の神経細胞の変性をきたす疾患。多系統萎縮症としても扱われる |
【症状】 | パーキンソニズムが主症状で、小脳症状・自律神経症状を伴う |
【検査】 | MRI⇒T2強調画像・プロトン密度強調画像にて変性した線状体が高信号 |
【治療】 | L-DOPAの投与は無効 |
|
びまん性Lewy小体病 diffuse Lewy body disease(DLBD) |
【概念】 | 脳幹から大脳皮質にかけてびまん性にLewy小体が出現する疾患 |
【分類】 |
| 通常型 | 純粋型 |
発症時期 | 主に老年期 | 主に初老期 |
症状の特徴 | Alzheimer病類似の記銘障害で発症し、比較的早期にパーキンソニズムが出現 | パーキンソニズムで発症し、経過とともにAlzheimer病類似の痴呆症状が加わる |
病理所見 | 老人斑、神経原線維変化(+) | 老人斑、神経原線維変化(−) |
|
【症状】 | Alzheimer病類似の痴呆症状※+パーキンソニズム ※生々しい幻視を反復する、動揺性の認知障害が認められる、抗精神病薬に対する感受性が著しく高いという3点において、Alzheimer病と異なる |
|
進行性核上性麻痺 progressive supranuclear palsy (PSP) |
【概念】 | パーキンソニズム・眼球運動障害・偽性球麻痺・痴呆などを呈する非遺伝性疾患 |
【疫学】 | 初老期〜老年期に好発 |
【病理】 | 脳幹の高度な萎縮(神経細胞の脱落)、神経原線維変化 |
【症状】 | パーキンソニズム…パ−キンソン様歩行、筋固縮(特に後頸部に著明で、下方視困難を呈する)etc. 眼球運動障害…特に下方注視麻痺が顕著で、極度の後屈姿勢となる 偽性球麻痺…構音障害、嚥下困難etc. 皮質下痴呆…記銘障害、思考過程の緩慢化、人格変化etc. |
【治療】 | 確立された治療法なし。L-DOPA無効 |
【予後】 | 数年の経過で増悪し、筋固縮が体幹・四肢に及び、やがて寝たきりとなって死亡する |
|
皮質基底核変性症 corticobasal degeneration |
【概念】 | 大脳皮質と基底核に著明な萎縮を認める非遺伝性疾患 |
【疫学】 | 初老期〜老年期に好発 |
【病理】 | 中心溝周囲の非対称性萎縮、基底核(特に黒質)の萎縮、過剰にリン酸化されたタウ蛋白の蓄積 |
【症状】 | 皮質痴呆…失語、失認、失行、皮質性感覚障害(alien hand etc.)、大脳皮質の巣症状etc. パーキンソニズム…ジストニア・ミオクローヌスを伴う |
【治療】 | L-DOPA無効 |
【予後】 | 進行性の経過をとり、数年で寝たきりとなって死亡する |
|
Huntington病 Huntington's disease |
【概念】 | 舞踏運動を主症状とする、きわめて浸透率の高いAD遺伝性疾患。CAGのtriplet repeat病で、父から子への表現促進現象が認められる | |
【疫学】 | 30〜50歳に好発。わが国での発症率は100万人に1人程度で、欧米に比べるとかなりまれ |
【病理】 | 線状体(特に尾状核)の著明な萎縮、大脳(特に前頭葉)の萎縮 線状体・黒質のGABA作動性ニューロンの変性・脱落(⇒相対的ドパミン亢進状態) |
【症状】 | 不随意運動…舞踏運動が中心(初期は物を落としたり、急に不器用になったと訴える程度) ※運動失調(−) 皮質下痴呆…思考過程の緩慢化、人格変化(意欲の減退、易怒性etc.)、末期には無言無動状態 |
【検査】 | 画像診断(CT・MRI)⇒側脳室前角の拡大(butterfly appearance) |
【治療】 | 対症療法のみ。ドーパミン受容体遮断薬(ハロペリドールetc.)の投与などが行われる |
|
小舞踏病 chorea minor |
【概念】 | リウマチ熱の主症状の1つ |
【疫学】 | 5〜15歳に発症。男女比は1:2 |
【原因】 | A群β溶連菌感染と密接な関係がある |
【症状】 | 舞踏運動(初期は物を落としやすくなった、急に不器用になった、急に落ち着きがなくなったetc.)が主で、性格変化を伴うが、知能は正常 |
【治療】 | 積極的な治療が不要の場合もあるが、舞踏運動が強い場合にはハロペリドールなどのドパミン受容体遮断薬を用いることもある。その他、リウマチ熱に準じたPCGの長期内服療法も行われる |
【予後】 | きわめて良好(2〜3ヶ月後にほとんど症状が消失)。しかし、約1/3の症例で再発がみられる |
|
本態性振戦 essential tremor |
【原因】 | 約30%は家族性に発症(AD遺伝) |
【症状】 | 姿勢時振戦がほとんど唯一の症状 |
【治療】 | β-ブロッカーが有効。その他、アルコール飲用でも軽減する |
【予後】 | きわめて良好 |
|
ジストニア dystonia |
【概念】 | 体幹や四肢の捻じれるような力強い持続的なゆっくりした運動で、それに伴って姿勢異常を呈するもの |
【分類】 | - 特発性ジストニア
| 特発性捻転ジストニア | 痙性斜頸 | Meige症候群 |
概念 | ジストニアを主訴とする原因不明のAD遺伝性疾患 | 頸のジストニアを主訴とする疾患 | 顔輪筋が痙攣様に収縮する疾患 |
好発年齢 | 10〜20歳 | 30〜50歳頃 | 50〜60歳頃 |
症状 | 体幹・四肢の近位筋が侵され、ジストニア特有の姿勢が出現。ただし、初期は歩行時に足が痙攣したり、ステップがおかしくなるのみ | 頸を斜め後ろに振り上げる不随意運動 | 眼輪筋・顔面表情筋・舌・咽喉頭の筋肉の痙攣様収縮、開眼困難、顔面の変形、構音障害 |
治療 | ボツリヌス療法が第1選択。難治例には視床VL核破壊術 | ボツリヌス療法 | ボツリヌス療法 |
- 症候性ジストニア
- 周産期異常・脳血管障害・脳炎などに合併
|
|
脊
髄
小
脳
変
性
症 | Freidreich失調症 Friedreich's ataxia |
【概念】 | 脊髄後索(特に胸髄以下)と脊髄小脳路を中心に変性が起こるAR遺伝性疾患。GAAのtriplet repeat病 |
【疫学】 | 10歳前後で発症。欧米には多いが、わが国ではきわめてまれ |
【症状】 | 脊髄後索障害⇒失調性歩行、深部感覚障害(特に下肢)、Romberg徴候(+) 脊髄小脳路障害⇒腱反射消失、筋力低下、小脳症状(構音障害、測定異常、眼振etc.) 錐体路障害⇒Babinski徴候(+) その他の症状…骨格異常(凹足、脊椎後側彎)、心筋症、DM etc. |
【治療】 | 酒石酸プロチレリン(TRH-T) |
【予後】 | 20歳くらいまで症状が進行し、車椅子生活を余儀なくされる。死因としては心筋症や感染症etc. |
|
オリーブ橋小脳萎縮症 olivo-ponto-cerebellar atrophy(OPCA) |
【概念】 | オリーブ-橋-小脳系のニューロンが強く障害される非遺伝性疾患。その他、黒質-線状体系や自律神経系のニューロンの変性も起こり、多系統萎縮症としても扱われる |
【疫学】 | わが国で最も多い非遺伝性SCD。好発年齢は中年以降 |
【症状】 | 小脳症状…初発症状のことが多い。小脳性運動失調、構音障害、眼振、筋緊張低下etc. パーキンソニズム…安静時振戦、筋固縮etc. 自律神経症状…排尿障害、便秘、陰萎、起立性低血圧、睡眠時無呼吸症候群etc. |
【検査】 | MRI⇒ある程度進行すると、T2強調画像・プロトン密度強調画像にて変性部位の高信号 |
【治療】 | 酒石酸プロチレリン(TRH-T) |
【予後】 | 予後はさまざま。数年以内に寝たきり状態となり、感染症や突然死などで死亡することが多い |
|
遺伝性オリーブ橋 小脳萎縮症 hereditary olivo-ponto- cerebellar atrophy |
【概念】 | オリーブ-橋-小脳系のニューロンが著明に変性するAD遺伝性疾患(Menzel型オリーブ橋小脳萎縮症ともよばれる)。原因遺伝子が2つあることが分かり、現在ではそれぞれSCA-1とSCA-2という病名を使うことになっている。いずれもCAGのtriplet repeat病である |
【症状】 | 小脳症状が前景に立ち、パーキンソニズムや自律神経症状はあまり目立たない |
【治療】 | 酒石酸プロチレリン(TRH-T) |
|
皮質性小脳萎縮症 cortical cerebellar atrophy(CCA) |
【概念】 | 小脳皮質の萎縮のみが著明な非遺伝性疾患 |
【原因】 | アルコール性が最多。それ以外には、悪性腫瘍やウイルス感染に伴う免疫応答、甲状腺機能低下症、重金属・フェニトイン中毒etc. |
【症状】 | 小脳症状が中心で、進行は一般に緩徐 |
【治療】 | 酒石酸プロチレリン(TRH-T) |
|
遺伝性皮質小脳萎縮症 hereditary cortical cerebellar atrophy |
【概念】 | 小脳皮質の萎縮のみが著明なAD遺伝性疾患。最近、原因遺伝子が分かり、SCA-6とよばれるように変わってきている。CAGのtriplet repeat病である |
【症状】 | 小脳症状が中心。緩徐進行性で、生命予後は比較的良好 |
【治療】 | 酒石酸プロチレリン(TRH-T) |
|
歯状核赤核淡蒼球 ルイ体萎縮症 dentato-rubro-pallido- luysian atrophy(DRPLA) |
【概念】 | 歯状核-赤核と淡蒼球-ルイ体の2系統が同時に侵されるAD遺伝性疾患。CAGのtriplet repeat病で、父から子への表現促進現象がある |
【疫学】 | わが国に多い |
【症状】 | 20歳以下発症の場合…症状は重篤。痙攣とミオクローヌスが中心で、小脳性運動失調、痴呆を呈する 40歳以上発症の場合…不随意運動(特に舞踏運動)、小脳性運動失調、痴呆が中心 |
【検査】 | MRI⇒T2強調画像・プロトン密度強調画像にて広範な大脳白質の高信号域 |
【治療】 | 酒石酸プロチレリン(TRH-T) |
|
Machado-Joseph病 (MJD) |
【概念】 | 多数の脳神経核(基底核、歯状核、動眼神経核、前庭神経核etc.)を中心に広範な萎縮が認められるAD遺伝性疾患。SCA-3ともよばれる。CAGのtriplet repeat病で、父から子への表現促進現象が認められる |
【疫学】 | 平均25歳で初発 |
【症状】 | 症状は多彩で、小脳性運動失調、ジストニアを中心とする不随意運動、外眼筋麻痺、眼振、舌線維束攣縮・舌萎縮、顔面の線維束攣縮、錐体路徴候、筋萎縮、パーキンソニズム、びっくり眼などが10年くらいの経過の中で徐々に出現してくる |
【治療】 | 酒石酸プロチレリン(TRH-T) |
|
脊髄小脳失調症タイプ7 spinocerebellar ataxia type-7(SCA-7) |
【概念】 | オリーブ-橋-小脳ニューロンの変性を中心とするAD遺伝性疾患。CAGのtriplet repeat病で、父から子への表現促進現象が認められる |
【症状】 | 小脳症状が中心で、自律神経症状やパーキンソニズムを伴う。OPCAと異なり、眼症状として網膜黄斑変性・視力障害を伴う |
【治療】 | 酒石酸プロチレリン(TRH-T) |
|
Shy-Drager症候群 |
【概念】 | 自律神経症状を中心とし、パーキンソニズムと小脳症状が加わった非遺伝性の変性疾患。線条体黒質変性症(SND)・オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)とともに、多系統萎縮症(MSA)として扱われる |
【疫学】 | ほとんどが中年以降に発症 |
【症状】 | 自律神経症状…起立性低血圧(中核症状)、食事性低血圧、発汗障害(下肢に初発)、排尿障害、便秘、陰萎、Horner症候群etc. パーキンソニズム…筋固縮、不随意運動etc. 小脳症状…小脳性運動失調etc. |
|
急性小脳失調症 |
【疫学】 | 1〜4歳の幼児に好発 |
【原因】 | アレルギ―性の機序が考えられている。先行感染(特に水痘)がみられる場合が多い |
【症状】 | 急性に、小脳症状(体幹失調、失調性歩行、眼振、測定障害、動作時振戦、変換運動障害、筋緊張低下etc.)が出現。2週間以内にピークを迎え、その後次第に軽快する。意識障害、発熱、頭痛、項部硬直をきたすことは原則としてない |
【検査】 | MRI⇒本症軽快後に小脳の萎縮像 その他、検査では特異的なものはない(髄液正常、脳波正常のことが多い) |
【治療】 | 特に治療は必要ない |
【予後】 | 予後良好で、何も後遺症を残さない |
|
運
動
ニ
ュ
|
ロ
ン
の
変
性
疾
患 | 筋萎縮性側索硬化症 amyotrophic lateralis sclerosis(ALS) |
【概念】 | 上位および下位運動ニューロンが系統的に侵される疾患 |
【疫学】 | 発症率は10万人に1人程度。中年以降(40〜60歳に好発)に発症 |
【原因】 | 約95%は孤発性。残りの約5%はAD遺伝形式の家族性ALS(FALS) |
【病理】 | 下位運動ニューロン障害…脊髄前角細胞・脳幹の運動神経核(外眼筋支配の運動核を除く)の脱落 上位運動ニューロン障害…皮質脊髄路・皮質延髄路の萎縮、大脳運動野のBetz細胞の脱落 |
【症状】 |
| 下位ニューロン障害 | 上位ニューロン障害 |
皮質脊髄路 障害 | 筋萎縮(遠位筋に強く出現。特に目立つのは母指球筋)、線維束攣縮、進行すると呼吸不全 | 四肢の痙性麻痺、深部反射亢進、病的反射(Babinski徴候etc.) |
皮質延髄路 障害 | 球麻痺(舌の萎縮と線維束攣縮)⇒構音障害、嚥下障害 | 偽性球麻痺(下顎反射の亢進)⇒構音障害、嚥下障害 |
陰性所見…感覚障害、直腸膀胱障害、眼球運動障害 原則として生じないor生じにくい所見…褥瘡、痴呆 |
【検査】 | 筋電図⇒神経原性筋萎縮(随意収縮時の高振幅電位、安静時の線維束攣縮) 筋生検⇒神経原性のパターン(1本の神経に支配されている筋線維全体が萎縮) |
【予後】 | 常に進行性で、呼吸筋麻痺によって2〜3年で死亡する |
|
脊髄性進行性筋萎縮症 spinal progressive muscular atrophy (SPMA) |
【概念】 | 下位運動ニューロン(脊髄前角細胞)だけを系統的に侵すAR遺伝性疾患 |
【分類】 |
| T型(Werdnig-Hoffmann病) | U型 | V型(Kugelberg-Welander病) |
重症度 | 重症 | 中等症 | 軽症 |
発症時期 | 妊娠後期〜生後6ヶ月以内 | 1〜2歳頃まで | 小児期〜思春期 |
症状 | 子宮内胎動の欠如、floppy infant、筋緊張低下、筋力低下・筋萎縮(近位筋優位)、腱反射低下、線維束攣縮、陥凹呼吸etc. | 筋力低下、筋萎縮、腱反射低下、線維束攣縮etc. | 筋力低下・筋萎縮(近位筋優位)、腱反射低下、線維束攣縮などをきたす。これらは下肢帯筋に著明で、動揺性歩行、登攀性起立を呈する |
予後 | 進行性で、2〜3歳頃までに呼吸不全や栄養障害によって死亡 | | 進行はきわめて緩徐で、天寿を全うすることもまれではない |
|
【検査】 | 血液検査(⇒CK→)、筋電図(⇒高振幅多相性) |
|
Kennedy-Alter-Sung病 |
【概念】 | 下位運動ニューロンを選択的に侵すXR遺伝性疾患。球脊髄性筋萎縮症(BSMA)ともよばれる。CAGのtriplet repeat病である |
【疫学】 | 男性にのみ発症。20〜30歳代に好発 |
【原因】 | X染色体上のアンドロゲン受容体遺伝子の異常 |
【症状】 | 下位運動ニューロン障害⇒四肢の筋力低下、弛緩性麻痺、深部腱反射↓、線維束攣縮、筋萎縮、球麻痺症状(軟口蓋麻痺(誤嚥、閉鼻声)、舌萎縮、舌の線維束攣縮etc.) 女性化徴候…女性化乳房、精巣萎縮 |
【検査】 | 血液検査⇒CK↑、耐糖能異常 |
【予後】 | 進行は緩徐で、生命予後は比較的良好 |
|
脊髄空洞症 syringomyelia |
【概念】 | 脊髄に空洞を生じる疾患の総称 | |
【疫学】 | 好発部位はC5〜C6の下部頸髄 |
【原因】 | Chiari奇形(特に1型)、外傷、クモ膜の癒着性の炎症性の後遺症、原因不明の変性疾患、脊髄髄内腫瘍etc. |
【症状】 | 温痛覚のみ障害される解離性感覚障害(肩掛け型となることが多い)で初発。その後、 前角障害⇒下位運動ニューロン障害(⇒筋力低下、筋萎縮、線維束攣縮、深部腱反射↓etc.) 側角障害⇒交感神経節前細胞障害(⇒Horner症候群) 側索障害⇒錐体路症状(⇒下肢の痙性対麻痺、下肢の深部腱反射↑、病的反射出現etc.) 延髄空洞症を併発した場合には、球麻痺症状(\・]・XI・XII脳神経核の障害による)、顔面の解離性知覚障害(典型的には口を中心としたタマネギ状の温痛覚脱失。三叉神経脊髄路核の障害による) |
|
亜急性連合性脊髄変性症 subacute combined degeneration of the spinal cord |
【原因】 | Vit. B12の欠乏⇒メチオニンの不足⇒神経障害(∵メチオニンの誘導体は神経の髄鞘の維持に必要) |
【疫学】 | 胸髄が最も侵されやすい |
【症状】 | 先行症状…巨赤芽球性貧血 脊髄後索障害⇒深部感覚障害、Romberg徴候(+)、運動失調 脊髄側索障害⇒錐体路症状(下肢の痙性麻痺、深部腱反射↑、病的反射etc.) 末梢神経障害⇒感覚障害(特に四肢末端の錯感覚)、筋力低下etc. |
|