脱髄疾患
多発性硬化症
multiple sclerosis
(MS)
【概念】中枢神経系に脱髄巣が多発性に生じ、それらに基づく多彩な症状が増悪と寛解をくり返す疾患(時間的・空間的多発性が特徴的)
【疫学】脱髄疾患の中で最多。高緯度地域に好発し、わが国では比較的少ない。好発年齢は15〜50歳
【原因】自己免疫学的機序による中枢神経の脱髄多発性硬化症の頭部MRIのT2強調画像(高信号の脱髄巣)
【症状】
脳神経障害…球後性視神経炎(⇒視力障害)、核上性の外眼筋麻痺(特にMLF症候群)、核上性の三叉神経障害、顔面神経麻痺(主に中枢性)、偽性球麻痺etc.
上位運動ニューロン障害(錐体路症状)…痙性麻痺、深部反射↑、病的反射、表在反射↓、筋力低下(⇒異常な筋疲労感)etc.
感覚ニューロン障害…脊髄後索障害(⇒深部感覚障害⇒運動失調)、脊髄側索障害(⇒温痛覚障害)、しびれ感、自発痛、Lhermitte徴候、有痛性強直性痙攣etc.
※Lhermitte徴候…頸部を他動的に前屈した時に、電撃痛が背筋に走る。三叉神経障害が原因
自律神経障害…排尿障害(無抑制性膀胱、反射性膀胱)etc.
小脳障害…眼振、失調性歩行、測定障害、変換運動障害、爆発性・断綴性言語etc.
精神症状…多幸、抑うつ、約1/4の症例で知能障害(皮質下痴呆)etc.
陰性症状…大脳巣症状(てんかん、失語、失認、失行etc.)、錐体外路症状、下位運動ニューロン障害
【検査】
頭部MRI⇒T1強調画像にて低信号(活動性病変では造影効果あり)、T2強調画像・プロトン密度強調画像にて高信号、FLAIR画像にてovoid lesion(脳室周囲に点在する高信号)
髄液検査⇒圧→、細胞数→〜(T cell主体)、蛋白、糖→、IgG↑、オリゴクローナルバンド(+)、ミエリン塩基性蛋白(+)
眼底検査⇒乳頭蒼白etc.      ※血液検査では異常(−)
【治療】急性増悪期⇒ACTHやステロイドのパルス療法
再発予防⇒IFNβの隔日皮下注      ※ステロイドには再発予防効果はない
慢性期⇒リハビリテーション
【予後】再発・寛解をくり返すうちに、徐々に症状が重くなっていくが、生命予後は悪くない
本症の中には、初発症状が重篤で、そのまま神経障害が固定してしまうこともある
急性散在性脳脊髄炎
acute disseminated
encephalomyelitis
(ADEM)
【概念】散在性に脳と脊髄に急激な脱髄性病変を引き起こす疾患
【原因】ウイルス感染後or予防接種後1〜3週間を経て発症するものと、特発性に発症するものとがある
【症状】多彩な神経症状が急激に出現する。初発症状は意識障害が中核をなし、しばしば発熱を伴う
【治療】ステロイド
【予後】単相性のものが大半で、治療の反応性がよく再発が少ないため、予後は比較的良好だが、中には一気に死亡するケースもある
白質ジストロフィー
leukodystrophy
【概念】脳の白質に著明な脱髄が起こる疾患の総称
【原因】先天的な髄鞘形成不全が原因
【各論】
副腎白質ジストロフィー(ALD)
概念極長鎖飽和脂肪酸が副腎や白質に蓄積し、結果的にこれらの機能不全をきたす疾患
原因ペルオキシゾームを構成する膜蛋白の異常(XR遺伝)
症状
小児型…小児期に発症し、性格変化、行動異常、知能低下などで始まり、視神経障害、小脳失調、歩行障害、副腎皮質機能不全の症状などを呈し、数年以内に死亡する
成人型…若年成人に発症し、痙性対麻痺による歩行障害で発症し、副腎不全を伴うが、進行は比較的緩徐
異染性白質ジストロフィー(MLD)
原因arylsulfatase Aの欠損or低下⇒スルファチッドが蓄積⇒髄鞘形成糖脂質のバランスが崩れて、中枢神経・末梢神経が脱髄
疫学家族性に発症する
症状
乳幼児型…乳幼児期に発症。知能障害、小脳失調、歩行障害、視神経障害、四肢麻痺などの多彩な症状を呈し、速やかに死亡する。髄液検査にて蛋白細胞解離がみられる
成人型…成人期に発症。精神症状、痴呆、四肢麻痺、深部反射↓などの症状を呈し、徐々に進行して死亡する
Krabbe病
原因galactocerebrosidaseの欠損(AR遺伝)⇒ガラクトスフィンゴシンが乏突起細胞に蓄積⇒乏突起細胞の壊死により、中枢神経・末梢神経が脱髄
症状乳児期に精神発育遅滞、視神経障害、錐体路症状などで発症し、速やかに除脳硬直に陥り、多くは1年以内に死亡する
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