光線性皮膚疾患
日光皮膚炎
dermatitis solaris
【概念】いわゆる"日焼け"のことで、急性の紫外線傷害で起こる
【機序】第一次黒化…UVA(長波長紫外線)の作用による。照射直後から表皮内還元メラニンが酸化される
第二次黒化…UVB(中波長紫外線)の作用による。照射後3日頃より、メラニンの多量生産に伴う色素沈着が起こる
【症状】肌の黒化、灼熱感を伴った紅斑・浮腫、水疱形成、疼痛、色素沈着etc.
【予防】サンスクリーンの塗布(UVBカット能はSPF、UVAカット能はPAとして表される)
【治療】冷湿布、カーマインローションの塗布、ステロイドの外用、U度熱傷としての治療etc.
光老化
photoaging
【概念】慢性の紫外線傷害
【機序】紫外線による皮膚の構成要素の直接の傷害、フリーラジカルの産生、内因性老化に伴う抗酸化能の低下
【症状】色素沈着、項部菱形皮膚(深いしわ)、毛細血管拡張、皮膚の粗そう化、光線角化症(日光角化症、老人性角化症などともよばれる)
【病理】膠原線維の変性、弾力線維の過形成、弾力線維の変性(光線性エラストーシス)、炎症細胞浸潤
【治療】光線角化症は有棘細胞癌の前癌状態であり、外科的切除が第1選択となる








薬剤性光線過敏症
drug-induced
photosensitivity
【概念】治療や検査の目的で薬剤を全身投与した時に、その薬剤やその代謝物質が光エネルギーを吸収するために起こる皮膚症状
【分類】光毒性(理論的にすべての人に起こりうるもの)、光アレルギ―性
【原因】抗菌薬(サルファ剤テトラサイクリン系ニューキノロン系グリセオフルビンetc.)、抗癌剤、抗精神病薬(クロルプロマジンetc.)、サイアザイド系利尿薬(クロロサイアザイドetc.)、血糖降下薬(SU剤)、NSAID、ソラレン、筋弛緩薬、降圧薬etc.
【症状】光毒性⇒一般に日焼け反応型(日光露光部に限局する浮腫性紅斑)
光アレルギー性⇒皮疹はきわめて多彩
【検査】MED測定、作用波長の測定、光パッチテスト、光内服試験etc.
【治療】遮光+薬疹に準じた治療
種痘様水疱症
hydroa
vacciniforme
【概念】先天性の光線過敏症
【疫学】春〜初夏にかけて好発し、冬には軽快。3〜4歳頃から認められるようになるが、思春期頃には自然治癒する
【症状】露光部位に中心臍窩を有する水疱形成→痂皮化→瘢痕治癒
【治療】遮光、サンスクリーン剤の使用
色素性乾皮症
xeroderma
pigmentosum
【原因】紫外線特異的エンドヌクレアーゼを含むDNA損傷の修復機能に関与する分子の異常(AR遺伝
【分類】A〜Gの7つの遺伝的相補性群+バリアントの計8群に分類。わが国で多いのは重症のA群
【症状】
皮膚症状…少量の日光照射で高度の日焼けを生じることで気づかれる。長い年月の中で、淡〜黒褐色の色素沈着、色素脱失、毛細血管拡張・萎縮、皮膚の乾燥などを呈するようになる。その他、小児期から露光部に皮膚腫瘍(ケラトアカントーマ、基底細胞癌、有棘細胞癌、悪性黒色腫etc.)がみられることもある
   ※毛髪部は侵されない
皮膚以外の症状…A群では、眼症状(羞明、角結膜乾燥、角膜潰瘍etc.)、神経症状(5〜6歳頃から進行性の運動失調、知能低下etc.)などがみられる
【検査】UVBに対するMED↓、UVAに対する紅斑反応、羊水穿刺による出生前診断が可能
【治療】遮光、サンスクリーン剤・カバーマスクの常用
物理・化学的皮膚障害
熱傷
burn
【分類】
熱傷深度分類
T度熱傷
(epidermal burn)
紅斑がみられる。ふつうの日焼け程度で、特別な治療は必要ない皮膚の構造と熱傷深達度分類
U度熱傷
(dermal burn)
水疱形成がみられる。浅U度と深U度に細分類される
浅U度熱傷(US)≫
一般に水疱の下がピンク色を呈する。皮膚付属器の大部分が残っており、そこから表皮が再生してくるため、通常2週間以内に治り、治癒後肥厚性瘢痕を生じることも少ない
深U度熱傷(UD)≫
一般に水疱の下が白っぽい。皮膚付属器があまり残っておらず、治癒までに2週間以上要する上、治癒後も肥厚性瘢痕を生じることが多い
V度熱傷
(deep burn)
陶磁器用と表現される白色調を示す。炭化がみられることもある。組織の壊死が起こっている。皮膚付属器が完全に残っておらず、熱傷範囲が広い場合には皮膚移植が絶対的に必要となる
熱傷面積
緊急時には、9の法則(成人用)あるいは5の法則(幼児・小児用)を用いて、おおまかに計算する。緊急処置後には、Lund and Browderの図表を用いて、正確に計算する
9の法則、5の法則、Lund and Browderの図表
重症度分類(Artzの基準)
U度30%以上、V度10%以上、顔面・手・足の熱傷、気道熱傷、軟部組織の損傷・骨折の合併が重症熱傷と診断され、総合病院にて入院加療が行われる
   ※"burn index=U度熱傷面積(%)×1/2+V度熱傷面積(%)"で、10〜15以上が重症と判断される
特殊な熱傷
気道熱傷喉頭浮腫や進行性の低酸素血症を引き起こし、呼吸障害が出現する危険があるので、気道の確保が初期に必要となる。また、細菌感染予防のために、初期から抗生物質の全身投与が必要とされる
電撃傷傷が非常に深い。表面だけを治すための植皮を初期に行ってしまうと、敗血症を招くことがある
化学熱傷酸・アルカリ・重金属などによる
【症状】合併症…1次性ショック(受傷後数時間以内に、血管運動神経反射による血行障害が原因で起こる)、2次性ショック(受傷後数時間から48時間以内に、循環血漿量の減少が原因で起こる)、Curling潰瘍、DIC、感染、肥厚性瘢痕、有棘細胞癌etc.
【検査】カテコラミン↑、グルカゴン↑、副腎ホルモン↑、GH↑、インスリン↓、毛細血管透過性↑、血漿TP↓、細胞外液量↓、血清Na・Cl↓、血清K↑、肺動脈楔入圧↓、CVP↓、血漿膠質浸透圧↓組織間液膠質浸透圧↑etc.
【治療】
T度熱傷局所冷却後に、汚物を洗浄・除去し消毒する
U度熱傷浅U度の場合は、できる限り水疱を保存する(深U度の場合は除去)。水疱が破れてしまっている場合には、水疱膜を清潔に切除し、創傷被覆材を用いて、水分保持・感染防止・ガーゼとの接着防止を図る
V度熱傷
初期治療として、
   1. 気道の確保(気道熱傷のある場合)
   2. 静脈路の確保(中心静脈も含め2〜3本)
   3. 乳酸加リンゲル液の点滴開始(Na・水分の補給)
   4. 膀胱へ留置カテーテルの挿入(適切な輸血が行われているかの指標として用いる)
   5. 胃ゾンデの挿入
   6. 鎮痛剤・鎮静剤の投与
   7. 壊死組織等のde´bridement(顔面・頸部・手の創に対しては行われない。筋膜上切除が一般的)
   8. 検査に必要な採血、X線検査
が行われる。その後は、迅速な植皮が必要となる      ※全血輸血は禁忌
その他、必要に応じて、減張切開四肢の全周に及ぶV度熱傷、頸部・胸部のV度熱傷が適応)、コロイドの投与(受傷後12時間以内には原則として行わないが、血漿TPが3.0g/dl以下の場合には受傷直後からAlb製剤による補正が必要)etc.
輸液治療
@受傷後48時間以内…循環血漿量の補充が目的。等張電解質液(乳酸加リンゲル液)or高張電解質液を使用。尿量≧25ml/体表面積(m2)/時間、Ht値≦45%、3cmH2O≦中心静脈圧≦8cmH2Oを目安に行う
※最初の24時間は、Baxter法(4(ml)×U度・V度の熱傷面積(%)×体重(kg))に基づいて輸液量が定められる。ここで求められた量のうち1/2を8時間で輸液し、残り1/2を16時間で輸液すればよいといわれる。次の24時間にはコロイドや5%ブドウ糖液の輸液が行われる
A受傷後48時間以降…第3スペース内に存在していた細胞外液が血管内に戻ってくるので、低K血症・低蛋白血症・肺水腫・血ガスデータに注意が必要
凍傷
frostbite
【概念】−10〜−40℃の環境に長時間さらされることによる組織の凍結と融解によって生じる細胞変性・壊死
【分類】
 症状治療
第1度白色蝋様の硬化した皮膚。暖めると境界鮮明な軽度の浮腫性紅斑温浴、ビタミンE軟膏の外用
第2度疼痛、硬結のある浮腫性紅斑、大小の水疱形成、潰瘍化etc.温浴、ビタミンE軟膏の外用、PGE1などの血管拡張薬の投与、ヘパリンの投与、二次感染予防etc.
第3度皮膚・筋肉・骨の壊死、高度の血行障害・疼痛第2度と同様の治療を行うが、最終的には壊死部分の切断をすることが多い
凍瘡
chilblain
【概念】いわゆる"しもやけ"
【疫学】外気温が5℃前後で、日差10℃前後の温度変化がある時に生じやすい。真冬ではなく、初冬や春先に好発。学童期・思春期の女性に好発。指・趾・自潰などの身体末梢部に好発
【原因】皮膚の微小循環障害
【症状】患部の冷感、紫紅色の腫脹、爪甲大の浮腫性紅斑、掻痒感(暖まると増強)
【予防】寒冷にさらさない、手足を濡らさない
【治療】ビタミンE軟膏の外用、抗ヒスタミン薬・ビタミンE・PGE1などの内服
褥瘡
decubitus
【概念】壊死組織を伴った難治性の慢性皮膚潰瘍
【原因】
外力・内力による
限局性圧迫
←可動性の減少、知覚・運動障害
          ↓
局所循環障害
(組織の虚血)
←局所的因子(骨の突出)
          ↓  ←組織の耐久性の低下  ←外的因子(摩擦、ずれetc.)、内的因子(栄養不足、貧血、動脈圧低下etc.)
組織の壊死
          ↓  ←感染の合併
褥瘡発生
【症状】
深達度による分類
・1度…圧迫を除いても消退しない発赤
・2度…水疱、びらんを伴う浅い潰瘍。創は真皮にとどまる
   ⇒1度・2度は浅い褥瘡で、治療により皮膚は再生治癒する
・3度…皮下脂肪にまで傷害が及ぶ深い潰瘍
・4度…筋肉から骨にまで傷害が達する深い潰瘍
   ⇒3度・4度は深い褥瘡で、治療を行っても壊死組織を伴い瘢痕治癒する
※好発部位は荷重域であり、仰臥位状態では殿部、背部、脚部(仙骨部、大転子部、踵部etc.)などに好発する
【予防】日常的な感染予防対策…褥瘡処置前後の手洗い、清潔操作etc.
除圧・減圧…2時間ごとの体位変換、減圧用具(ウォーターベッド、ウォーターマットレスetc.)、局所的褥瘡予防用具etc.
栄養管理…十分なカロリーと蛋白質の摂取、貧血の予防etc.
【治療】
 概念治療
急性期褥瘡発生後間もない場合、傷害範囲が不明な場合、発赤・水疱・出血を伴う場合etc.ドレッシング材による創面の保護、生理食塩水による感染の制御(抗生剤、強い消毒剤は原則として使用しない)、疼痛の軽減etc.




黒色期
(炎症期)
黒色壊死組織が付着した状態外科的デブリドマンによる壊死組織の除去、壊死下膿貯留の切開・排膿etc.
黄色期
(壊死期)
感染・滲出液過多・不良肉芽の存在する状態壊死組織の化学的デブリドマン(酵素製剤などを使用)、吸水材による滲出液のコントロール、創面の洗浄による感染の予防、抗生剤の全身投与etc.
赤色期
(肉芽形成期)
肉芽形成の盛んな状態肉芽形成を促進させるために、適切な外用薬の塗布、ドレッシング材による湿潤環境作り、外力からの保護etc.
白色期
(上皮形成期)
肉芽組織が収縮し始め、表皮形成がみられるようになった状態上皮下を促進させるために、適切な外用薬の塗布、ドレッシング材による湿潤環境作り、外力からの保護etc.
薬疹
中毒性表皮壊死症
toxic epidermal necrolysis
(TEN)
【概念】薬疹の最重症型TEN(びらん、紅斑、痂皮形成、表皮剥離)
【原因】80%以上は薬剤性。アスピリン、サルファ剤、バルビタール、ペニシリンなどで好発
【病理】表皮全層の壊死、表皮の真皮からの剥離
【症状】
皮膚症状…広範囲の有痛性紅斑→水疱形成→全身の表皮・粘膜の剥離(熱傷様のびらん面となる)
皮膚以外の症状…発熱、全身倦怠感、重篤な肝・腎障害、消化器症状(下痢、下血、嘔吐etc.)、造血器障害(汎血球減少etc.)、ショック状態etc.
【検査】Nikolsky現象(+)
【治療】原因薬剤の中止、全身熱傷に準じる治療、ステロイドの大量投与
【予後】致命率は高齢者ほど高く約30%に達する
粘膜・皮膚・眼症候群
(Stevens-Johnson症候群)
mucocutaneous ocular
syndrome
【概念】多形滲出性紅斑の重症型
【原因】原因は多彩で、薬剤やウイルス感染などを基盤にして起こる一種のアレルギー反応と考えられる。約半数は薬剤が原因と考えられ、抗生物質、抗てんかん薬などで起こりやすい
【症状】全身症状…高熱、関節痛etc.
皮疹…全身に紅斑を伴う表皮下水疱が出現し、多くはびらんとなる。びらんは眼・口腔・外陰部の粘膜部で著明。侵される皮膚面石は10%未満
【検査】ESR↑、CRP↑、WBC↑、肝機能異常、腎機能異常etc.
【診断】尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、TENとの鑑別が必要
【治療】ステロイドの全身投与、(二重感染予防のために)抗生剤の経口投与、(全身状態悪化時には)輸液etc.
【予後】死亡率は約10%。時に中毒性表皮壊死症(TEN)に移行することがあるので、注意深い経過観察が必要
多形紅斑
【疫学】薬疹の中では、紅斑丘疹に次いで多い
【原因】抗生物質、NSAID、抗てんかん薬が原因となることが多い
【症状】皮疹…標的状or虹彩状の環状紅斑が多発
【予後】粘膜・皮膚・眼症候群に移行することがあり、要注意である
その他の薬疹
【疫学】高齢者にピークをもつ
【原因】抗生物質が最多で、NSAID(非ピリン系)、循環器薬などが次ぐ。多くはW型アレルギー反応による
【種類】
紅斑丘疹疫学…薬疹の約50%を占める
症状…左右対称で、播種状に紅斑・丘疹が出現。時に紅皮症に移行
蕁麻疹症状…時にアナフィラキシーショックを起こす
湿疹症状…強い掻痒感を伴う失湿疹
紅皮症症状…全身にびまん性潮紅と落屑を生じる。多くの場合、発熱、リンパ節腫脹、肝・腎障害を合併
扁平苔癬原因…降圧薬、利尿薬、循環改善薬、抗結核薬etc.
症状…広範囲に紫紅色の扁平苔癬が生じる
紫斑症状…下肢を中心に、アナフィラクトイド紫斑や浸潤のある紫斑が生じる
光線過敏薬剤性光線過敏症
SLE類似症状原因…ヒドララジン、プロカインアミド、イソニアジド、サラゾピリンetc.
固定疹原因…NSAID、フェニトイン、アロプリノール、ミノサイクリンetc.
症状…薬剤服用の数分〜数時間後に、掻痒感・ピリピリ感を伴う円形の境界鮮明な褐色斑が、粘膜・皮膚移行部を中心に生じる。同じ薬剤を服用するたびに、同一部位に発症する
天疱瘡原因…D-ペニシラミン、ACE阻害薬etc.
【検査】in vivo検査…スクラッチテスト、プリックテスト、皮内反応、貼布試験、内服試験etc.
in vitro検査…リンパ球幼若化試験(リンパ球刺激試験)
【治療】原因薬剤の中止をまず行う。アナフィラキシーショック型では、気道確保、ステロイド・エピネフリン投与、輸液が必要。発疹に対しては、必要に応じてステロイドや抗ヒスタミン薬の投与
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