母斑
   遺伝的素因or胎児期の突然変異などによる皮膚の限局性の発達異常。正常or未熟な器官が同所性に過形成を起こしたり低形成を起こしたりしたもの、あるいは異所性に出現したものをいう




表皮母斑
【概念】表皮の先天的過形成
【症状】皮疹…出生時〜幼少児期に発症。黄褐色調で表面が疣状になったり、線状〜列序性の配列をとったりする
合併症…表皮母斑症候群では、中枢神経障害(痙攣発作、運動障害etc.)、眼・骨格系の異常を合併
【検査】組織学的には、角質増殖、表皮肥厚、乳頭腫症
脂腺母斑
【概念】表皮・脂腺を含む表皮付属器・結合組織の過形成
【症状】皮疹…頭部や顔面に好発。出生時はあまり目立たず、頭部では一見先天的な脱毛症のように見えることがある。成長とともに扁平〜疣状に隆起し、黄〜褐色調の局面となる
合併症…一部の症例で基底細胞癌が発生
























扁平母斑
【原因】基底層のメラノサイトの機能亢進(メラニン産生亢進)
【疫学】ほとんどの人にみられる
【症状】皮膚面から隆起しておらず、境界が非常に淡い褐色の色素斑
【診断】乳幼児期より多発する症例では、von Recklinghausen病やAlbright症候群との鑑別が必要
色素性母斑
(母斑細胞母斑)
【概念】本来なら存在しないはずの母斑細胞(胎児期に、神経堤細胞がメラノサイトor Schwann細胞への分化を果たすことなく、分化を停止した細胞のこと)が表皮〜真皮で増殖したもの
【分類】母斑細胞の存在レベルにより、境界母斑(表皮基底層に分布)、複合母斑(表皮基底層・真皮に分布)、真皮内母斑(真皮に分布)に分けられる
【症状】皮疹…出生直後にみられることはほとんどなく、幼児期より出現。黒色〜皮膚色で、形態・大きさはさまざまで、時に巨大色素性母斑となって、体幹や四肢、顔面のほとんどすべてを覆ってしまうこともある
合併症…脳神経系にも母斑細胞がみられる場合を神経皮膚黒色症という
【診断】悪性黒色腫との鑑別が必要となる場合がある
【治療】しばしば自然消退し、基本的に治療不要(切除、電気凝固を行う場合もある)
若年性黒色腫
【概念】母斑細胞の増殖により起こる複合母斑。良性の疾患
【症状】幼児・小児の顔面に好発。典型例では、急速に発育し肉芽腫のようにみえる半球状、指頭大ほどまでの赤褐色〜黒褐色の小結節
【診断】悪性黒色腫との鑑別が必要であるが、病理組織上でも鑑別が困難な例もある
青色母斑
【概念】真皮メラノサイトの良性腫瘍性増殖
【症状】顔面・手背・足背に好発。比較的硬い数mm程度の境界明瞭な青色の結節。出生時〜出生後比較的早期に出現
【診断】巨大化した場合は、悪性黒色腫との鑑別が重要
太田母斑
nevus of Ota
【概念】眼と上顎部の青褐色の色素斑が特徴的で、眼上顎褐青色母斑ともよばれる太田母斑
【疫学】日本人、特に女性に多い。50%は出生後間もなく発生するが、思春期に生じるものもある
【症状】
皮疹…通常片側性で、三叉神経第1・2枝支配領域に、濃淡さまざまな青色〜褐色斑が出現
皮膚以外の症状…時に眼底・眼球強膜・虹彩・口腔粘膜・鼓膜に色素斑
【検査】組織所見にて、真皮メラノサイトと基底層のメラニンの増殖
【治療】Qスイッチ・ルビーレーザー照射
 
蒙古斑
【概念】胎児期の真皮メラノサイトの残存
【症状】出生時から殿部や腰仙部に扁平な青色斑が認められる。通常は学童期頃までに自然消退する
























正中部母斑
【概念】毛細血管の拡張による、境界不鮮明で隆起のない薄い紅斑
【疫学】新生児期の20〜30%にみられる
【症状】サーモンパッチ…眉間・前額正中部・人中などに生じたもの。ほとんどの症例で2歳くらいまでに消失する
Unna母斑…項部に生じたもの。成人まで残る場合が多い
単純性血管腫
ポートワイン母斑
【概念】真皮上層の小血管の拡張性変化
【疫学】新生児期の1.5%に認められ、全血管腫の約45%で、サーモンパッチに次いでよく遭遇する
【症状】皮疹…出生時から認められる隆起のない赤色斑
合併症…Sturge-Weber症候群Klippel-Weber症候群などの母斑症の部分症状のことがある
【治療】自然消退せず、色素レーザー光線治療が行われる
いちご状血管腫
【概念】未熟な毛細血管内皮細胞が腫瘍性に増殖したもの
【症状】顔面に好発。典型例では、出生時は何も認められなかった皮膚面に、生後2週〜3ヶ月頃に"虫に刺された跡のような"紅色の小丘疹が集合する形で初発。数週間のうちに急速に大きく隆起し、"いちごを切って載せたような"赤い腫瘤となる
【治療】5〜7歳までに自然消退するので、経過観察が原則。眼球を圧迫するもの、生後6ヶ月を過ぎても増殖傾向のあるもの、口唇にできたもの、出血をくり返すものではステロイドの内服or局注、レーザー治療etc.
   ※放射線照射は禁忌
海綿状血管腫
【概念】成熟した静脈性奇形血管が増殖したもの
【症状】出生時からみられる柔らかい皮内〜皮下の淡青色の腫瘤
【治療】自然退縮しないため、切除が行われる
Kasabach-
Merritt症候群
【概念】乳幼児の巨大血管腫+血小板減少
【症状】血管腫…四肢や躯幹に淡紫紅色の皮下硬結。血管腫内では出血を伴い、患肢は紫赤色の緊満性に腫大
血小板減少…DIC症状を引き起こす
【治療】放射線療法ステロイドの全身投与。DICに対しては、ヘパリン投与、FOY点滴静注、血小板輸血etc.
被角血管腫
【概念】角質の増生を伴う血管腫
【症状】・ミベリ型…思春期女子の指趾背面・手背・足背に対称性に血管腫が多発
・陰嚢型…中年以降の陰嚢に血管腫が多発
・母斑型…生下時から片側性、列序性に下肢に血管腫が好発
※びまん性体幹性被角血管腫=Fabry病の皮膚症状
【検査】組織にて過角化と表皮直下の血管拡張
老人性血管腫
【概念】直径5mmくらいまでの光沢のあるルビー色のドーム状丘疹で、中〜高年に多い
リンパ管腫
【概念】リンパ管拡張によって、直径1cmくらいまでの小水疱が集合し、多発する。頸部に好発
後天性
リンパ管拡張症
【概念】手術・放射線治療・外傷などをきっかけとしてリンパ管の中枢側に閉塞が置き、その支配領域のリンパ管が限局性に腫脹するもの
母斑症
   皮膚以外の臓器にも母斑性病変を認めるもの。先天性疾患で、しばしば遺伝的or家族性に発症し、多数の全身症状がみられる
結節性硬化症
(Bourneville-Pringle病)
tuberous sclerosis
(TS)
【概念】多系統の過誤腫形成を特徴とする母斑症で、顔面の血管線維腫、知能障害、てんかん発作を3主徴とする
【疫学】頻度は10000〜15000人に1人
【原因】AD遺伝であるが、突然変異例の方が多い
【症状】皮膚症状…顔面血管線維腫(3歳頃より顔面の鼻唇溝を初発として、半米粒大くらいまでの淡紅色丘疹が生じ、次第に大きくなり、数も増えていく)、爪囲線維腫(Koenen腫瘍ともいう。多くは思春期以降にみられる)、なめし皮様皮膚(躯幹、特に腰仙部に認められる)、木の葉型白斑(生後数ヶ月までに、躯幹・指趾に脱色素性母斑が出現)etc.
中枢神経症状…てんかん発作(特に点頭てんかん)、知能障害、脳室上衣下巨細胞星細胞腫etc.
その他…眼症状(網膜過誤腫etc.)、心症状(心臓横紋筋腫、不整脈etc.)、腎病変(腎血管筋脂肪腫、嚢胞腎etc.)、肺病変(過誤腫性肺脈管筋腫症)etc.
【検査】頭部CT・MRIにて脳内の結節や石灰化
【治療】対症療法のみ
【予後】致死率が非常に高い
神経線維腫症1
(von Recklinghausen病)
neurofibromatosis
type 1(NF1)
【概念】皮膚の色素沈着斑と皮膚・皮下腫瘍を臨床的特徴とする母斑症
【疫学】わが国に約4万人の患者数
【原因】AD遺伝であるが、突然変異の発生率が50〜70%と高い
【症状】皮膚症状…神経線維腫(典型例では、思春期頃より、正常皮膚色〜褐色、粟粒大〜鶏卵大で半球状に出現)、色素斑(大きいカフェオレ斑、小さい雀卵斑様色素斑がこの順に生直後〜早期より全身に出現)、貧血母斑(約70%に、小児期より胸部に認められる)、若年性黄色肉芽腫(幼児期に顔面などに出現するが、1年ほどで消失)etc.
その他…眼症状(虹彩過誤腫、視神経膠腫etc.)、中枢神経・消化管・副腎・心血管の各症状(神経線維腫の発生による)、脊椎側彎症・骨欠損・四肢の骨折(←神経線維腫による圧迫症状)、縦隔腫瘍etc.
   ※両側性聴神経鞘腫・髄膜腫は、神経線維腫症2型の症状
【治療】対症療法のみ
Sturge-Weber症候群
【概念】片側性に脳軟膜・眼・顔面皮膚に血管腫を生じる非遺伝性の母斑症
【症状】皮膚症状…単純性血管腫(出生時より、顔面半側の三叉神経第1・2枝領域に火焔状母斑が認められる)
中枢神経症状…てんかん、片麻痺、知能障害etc.(←皮膚病変と同側性に生じた脳軟膜の血管腫による)
眼症状…先天性緑内障(牛眼)(←皮膚病変と同側性に生じた脈絡膜血管腫による)
【検査】頭部CT・MRIにて血管腫の像or石灰化
【治療】対症療法(緑内障に対する治療、てんかん発作に対する抗痙攣薬投与etc.)
Klippel-Weber症候群
【概念】四肢片側の単純性血管腫に、その下の肢の肥大・延長を合併する非遺伝性の母斑症
von Hippel-Lindau病
【概念】家族性に発生する血管芽細胞性の網膜腫瘍に、小脳・肝・膵・腎などに単発or多発性の血管芽腫を合併するAD遺伝性疾患
【症状】皮膚症状…色素性母斑
中枢神経病変…小脳・延髄・大脳の血管芽腫(⇒小脳失調、頭蓋内圧亢進症状)、網膜血管腫
他の臓器の病変…膵・腎嚢胞、腎細胞癌、精巣上体腫瘍、肝腫瘍、褐色細胞腫etc.
【検査】EPO↑、多血症
神経皮膚黒色症
【概念】皮膚と脳軟膜における母斑細胞とメラノサイト増殖によって起こる非遺伝性の母斑症
【症状】皮膚症状…巨大な色素性母斑で、有毛性のことが多い。しばしば悪性黒色腫を発生
中枢神経症状…脳圧亢進症状、痙攣、精神障害etc.
【治療】対症療法のみ
Peutz-Jeghers症候群
【概念】皮膚粘膜の色素斑と消化管ポリポーシスを生じるAD遺伝性の母斑症
【症状】皮膚症状…出生時〜幼児期にかけて、口唇・口腔粘膜・手掌足底に単純黒子が多発
消化管症状…小児期〜思春期にポリープが多発。主病変は小腸で、通常は無症状
色素失調症
(Bloch-Sulzberger
症候群)
【疫学】男児は致死性であることが非常に多く、実際に目にする患者は女児がほとんど
【症状】皮膚症状…出生後、主に四肢に線状〜播種状に紅斑・小水疱・痂皮が出現(炎症期)。2〜3ヶ月すると、水疱は消失し、疣状の角化性丘疹が四肢を中心に生じる(疣状苔癬期)。さらに数ヶ月すると、渦巻状・線状・列序性配列の紫褐色色素斑が躯幹や四肢に生じる(色素沈着期)。これらの変化は、一般に幼小児期になると消退する
その他…眼症状(白内障、斜視etc.)、歯の異常(欠損、発育不全etc.)、骨の異常(小人症、小頭症etc.)、中枢神経症状(痙攣、知能障害etc.)etc.
【治療】生命予後はよく、合併奇形に対する治療が中心
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